「エドは・・・右腕・・・機械鎧だったんだね。」
いきなり呟かれた言葉にエドワードとアルフォンスは目を見開いた。
にはまだエドワードの右腕が機械鎧だと告げていなかったからだ。
何故知っている。そう思い、エドワードはをジッと見つめていた。
「なんで知っている・・・って顔してるね。」
苦笑しながら、エドワードの表情を見て何が言いたいのか理解した
静かな表情のままエドワードを見つめは口を開いた。
「エドとアルと戦った時に・・・エドの腕を掴んで分かったのよ・・・・」
は短くそう継げた。
この時、の言葉になるほどと納得したエドワードとアルフォンス。
は・・・イーストシティであったときとは性格全然違うね。」
「え?」
いきなりアルフォンスに言われた言葉に一瞬きょとんとした表情を浮かべる
「だって───」















Nation Alchemist Murder 第二話















「だって、。最初は人懐っこい笑み浮かべてた可愛い女の子って感じだったけど・・・」
「こうやって旅をし始めたらの本性見たりって感じだな。」
「・・・へ?」
アルフォンスの言葉、そしてエドワードの言葉を聞き素っ頓狂な声を漏らす
ちょっと失礼な言葉を呟いていたが、そこにツッコミを入れることなくはぽかんと口を開けていた。
「すっごいは大人しくて冷静じゃん。」
「まぁ・・・もともとそういう性格だし・・・」
アルフォンスはクスクス笑いながらを怒らせないように言葉を選んで呟いた。
その言葉に何の反応もせず答える
「それで何処かのお嬢様育ちか・・・と思えばちょっと違うしな。」
「それはどういう意味かしら、エド?」
「ほら、な?」
エドワードの言葉に多少引っかかる所があるのか、スッと目を細め、低い声で呟き返す
すると、クスッと笑ったエドワードが肩を竦めて呟き返した。
ガタガタガタンッ!!!!!
エドワードが呟いた直後だった。
いきなり列車が左右に揺れたのだ。
列車の脱線には至らなかったが、大きな揺れだった。
それと同時に列車内に放送が入った。
『我々、デシズム団がこの列車をジャックした。命が惜しければ静かに我々の指示に従え。』
「・・・列車ジャック・・・」
声が聞こえが短く呟いた。
「みたいだな。」
「つくづくついてないね、ボク達。」
「あぁ・・・そーだな・・・・ハァ。」
エドワードとアルフォンスの言葉が理解できず首をかしげる
そんなの様子を気にせずにエドワードとアルフォンスは言葉を続けていた。
『この中に居る“鋼の錬金術師”の命を奪う事が我々の目的だ。速やかに“鋼の錬金術師”を我々に提供せよ。』
「「「!!!」」」
列車ジャック犯からのアナウンスに驚きの表情を浮かべたのはエドワード本人、そしてアルフォンスとだった。
「オレを・・・狙った犯人?」
眉を潜め、鋭い瞳を煌かせ呟いたエドワード。
「みたいだね・・・どうするの兄さん。」
「放っておくしかないだろ?どうせ分かりはしねぇよ。」
アルフォンスに問い掛けられ、エドワードは苦笑しながら軽く答えた。
その言葉を聞き、はスッと立ち上がり、エドワードとアルフォンスに何も言わずに歩き出した。
?何処に行くんだ?」
「危ないよ?今列車ジャック犯もいるから・・・」
歩き出したに気がつき、エドワードとアルフォンスは声をかけた。
しかし、いつもと変わらぬ表情のが振り返り───
「大丈夫。ちょっと隣の車両に行くだけだから。」
嘘。
エドワードとアルフォンスに嘘の言葉を継げた。
真意は、列車ジャック犯の元に行く。
ただそれだけだった。
しかし、今のエドワードとアルフォンスにそんなことが分かるはずも無かった。
「そうか?あまり危険な事はするなよ?」
「それは兄さんにも言えることでしょ?」
「あっそれを言ったな、アル!!」
の言葉を信じ、言葉をかけてきたエドワード。
そしてエドワードの発した言葉にアルフォンスが素早く反応し、冷たく言い放つ。
そしてエドワードが怒りの声をあげ笑いながらアルを小突いた。
そんなエドワードとアルフォンスを見て、ゆっくりと歩き出した
の姿が隣の車両に消えてから数十分が立った。
「ねぇ、兄さん。遅くない?」
「確かに、な。列車ジャック犯に捕まったか?」
がそんな無茶するとは思えないけど・・・ちょっと心配だね・・・・」
「追いかけてみよう!」
「あぁ!!」
の戻りが遅い、そう感じたエドワードとアルフォンスは急いで立ち上がりの消えた隣の車両へと駆け出した。
ドアを開け、隣の車両にがいるかいないかを確認する。
しかし「隣の車両に行く。」と言ったの姿はなかった。
顔を見合わせ息を呑むと、エドワードとアルフォンスは嫌な予感を胸に秘めながら徐々に隣の車両へ隣の車両へと移動していった。
「ここから先へは行かせないよ〜鋼のおチビちゃん。」
「そっその声はっ───」
まだ先の車両は幾つかある。
そんな中扉の前に立ちはだかったのは、エドワード達の天敵エンヴィーだった。















時間は少し戻り、が隣の車両に姿を消してから────
「さてと・・・・列車ジャック犯さんは・・・・ここより先かな?」
そう小さく呟くとは小走りで先へ先へと足を進めた。
1つ1つ車両を確認し、列車ジャック犯がいないか見渡す。
「ここにも・・・・いないっ・・・・何処まで続くのかしら・・・・」
そう呟きながら徐々に前へ前へと走っていく
の頭にあるのは既に列車ジャック犯だけだった。
後残り3車両という所だった。
「そんなに急いでどーしたの?」
「っ!!エンヴィー・・・どうして此処に!?」
目の前に現れたのは、と同じホムンクルスのエンヴィーだった。
「ちょっとお知らせしてあげようと思ってね。」
クスクス笑いながら呟くエンヴィー。
この車両には既に人の姿は無く、とエンヴィーだけだった。
というか、が隣の車両に向かい扉を開けたときには既に人は1人も居なかった。
つまり・・・エドワードとアルフォンスが居る車両から前には人は全く居ないのだ。
「お知らせ?」
「鋼のおチビちゃんがこっちに向かっているよ〜」
「!!!!!」
エンヴィーの言葉を聞き、は驚きの表情を浮かべた。
「なっ・・・」
「このまま先に居る列車ジャック犯を殺しにいこうとしてたんでしょ?どーするのかな?」
「っ・・・・エンヴィー・・・エドとアルの足止めをしてもらえない?」
クスクス笑いながら言葉を続けるエンヴィー。
エンヴィーに頼みごとをするのはしゃくだけど・・・そう思いながらはエンヴィーを見つめ、頼みの言葉を口にした。
「僕があの2人を?」
「そう・・・」
「ただじゃねぇ・・・」
そう言いながらを見つめてくるエンヴィー。
その言葉を聞き、クッと声を漏らすとは行動に移っていた。
グイッとエンヴィーの腕を引っ張り自らエンヴィーにキスをしていた。
「コレでいいでしょ!?お願いできるわね?エドとアルに来られると・・・困るのよ。」
「分かったよ〜〜ちゃんと報酬ももらった事だし・・ね。」
の瞳をジッと見つめてニコニコ笑うエンヴィー。
に背を向けると来るであろうエドワードとアルフォンスの元へと駆け出した。
「・・・・最悪。」
そう呟くとは残りの車両を一気に駆け出し抜けて行った。













「てめぇ・・・エンヴィー、なんで此処に居やがる・・・・」
声を低くし、目の前に立つエンヴィーに声をかける。
「ちょっとに頼みごとされててね。」
「っ・・・・どういう・・・事だ!?なんでエンヴィーとが知り合いなんだ!?」
エンヴィーのちょっとした言葉にエドワードは声をあげ叫んでいた。
今にも殴りかかろうとするエドワードをアルフォンスは後ろから腕を押さえ、落ち着かせていた。
「離せアルっ!!!」
「今はの方が先でしょ!?」
エンヴィーを叩きのめす。
そう顔に描かれていた言葉を知り、アルフォンスは本来の目的を呟く。
その言葉を聞き、ハッとする。
「そうだな・・・エンヴィー、てめぇに構っている暇はねぇ!」
そう言うと、エンヴィーの横を通り過ぎようとエドワードは駆け出した。
「おやおや。それはちょっと困るんだよねぇ〜」
そう言うと、エンヴィーはエドワードの腕を掴み、まだ立ち尽くすアルフォンスの方に投げつけた。
「がっ・・!!」
「僕にも面目があるんだ。少し此処で大人しくしててもらうよ、鋼のおチビちゃん。」
「てめぇ・・・・」
「兄さん・・・どうするの?」
アルフォンスに激突したエドワードは、背中に感じた痛みに声を上げる。
そんな事など気にせずにエンヴィーは言葉を続けた。
「強行突破だ!」
そう言うと、エドワードは両手をパンッと勢い良く打ち合わせた。
バチバチバチと見慣れた錬成反応が起こり、エドワードの右腕の機械鎧が甲剣へと形を変えた。
エンヴィーに向かって切りかかろうと腕を振り上げ、振り下ろす。
しかし、エンヴィーに当たる事はなく、紙一重で避けられた。
そして横から来る蹴りを受け、アルフォンスと一緒に車両の後ろに吹き飛ばされる。
「だから言っただろ?僕の邪魔をするなって。ここで大人しくしててよね、鋼のおチビちゃん。」
「大人しくしている義理なんてねぇんだよ!!!」
そう言うとエドワードは甲剣でエンヴィーに切りかかった。
紙一重で避けたエンヴィーだったが、エドワードは立て続けにエンヴィーに攻撃を仕掛けた。
数打ちゃ当たる。
その言葉の通りだった。
繰り出した攻撃の1つが運良くエンヴィーの胸を突き刺していた。
引き抜き、エンヴィーが床に倒れたのを見ると、エドワードは急いで次の車両へと駆け出していた。
その時倒れているエンヴィーは笑みを浮かべていた。
既に全ての出来事が終わっている事を悟り。
スッと立ち上がると、エンヴィーは笑みを浮かべその場を後にした。
















「ここね・・・・」
そう呟くとは扉を開けた。
「おやおや?お嬢ちゃんが何のようだ?」
現れたに笑みを浮かべながら近寄ってくるジャック犯達。
「鋼の錬金術師を連れてきてくれたのかなぁ?」
「馬鹿なこと言わないで。鋼の錬金術師は私の獲物よ。」
ジャック犯のつぶやいた言葉を笑い飛ばし、真剣な表情でジャック犯に言い返す。
その言葉が、態度が気にくわなかったジャック犯たち。
「なんだと!?・・・くくく・・・そうか、お前鋼の錬金術師のお仲間だな?」
「・・・今はね。」
ジャック犯の言葉に静かに無表情のまま答える。
「だったら・・・・泣かせてやるよっ・・・お前も、お仲間の鋼の錬金術師もなっ!!!」
そう言うと、近くに居た仲間にジャック犯は指示を出した。
その瞬間、ジャック犯がの身体を押さえ壁に押し付けた。
「・・っ!!」
勢い良く打ち付けられたの体をビリビリとした痺れが襲う。
「泣かせる・・・?どうやって私を泣かせるつもりかしら?」
「くくく・・・威勢のいい女は好きだぜ?」
そう言うと、クイッとの顎を押さえ、顔を上に向けさせた。
しかしは動じることなくジッとジャック犯をにらみつけていた。
「生意気な・・・」
そう言うと、ジャック犯はの服に手を掛けた。
「!!!」
が驚きの表情を浮かべた瞬間、びりびりという音と共にの服が破かれた。
バシッ!!!!
の懇親の一撃がジャック犯のほほをひっぱたいていた。
「残念ね・・・貴方たちに私は殺せないわ。」
そう言うと、は笑みを浮かべていた。
その瞬間、ジャック犯たちの顔色が真っ青になって行った。
「「!!!!!!!!!」」
バタバタとジャック犯が窒息死し、その場に倒れた瞬間エドワードとアルフォンスの声が響き渡った。
勢い良くドアが開けられた。
「・・・エド、アル・・・」
そう言い、ゆっくりと振り返る
「!!何やってんだよ!!」
そう叫び、エドワードは着ていた赤いコートを脱ぎ、服の破れているに気がついたのか肩にそっと掛けた。
「これ・・・どうしたの?」
アルフォンスはを中心に倒れているジャック犯に気がつきに問い掛けた。
しかし、は黙ったまま何も呟く事は無かった。
「大丈夫だ・・・の事はオレが守るから・・・」
まだ会って間もないというのにエドワードはを安心させようとポンッと頭に手を乗せ優しい言葉を投げかけた。
「兄さん・・・・皆死んでるよ・・・・」
「なんだと!?」
「国家錬金術師殺人と同じ殺され方!!」
アルフォンスの言葉にエドワードは驚きの声を上げる。
そしてその後アルフォンスの口から出た言葉にエドワードは目を見開いた。
「なんだと!?でも、こいつら国家錬金術師じゃねぇだろ!?」
「それが不思議なんだよ!!!」
エドワードは倒れているジャック犯たちを見て、叫んだ。
どのジャック犯を見ても銀時計を持っている様子はなかった。
そしてその事で不思議なんだとアルフォンスは呟いた。
「・・・。」
「な、何?」
「ここで・・・何があったんだ?」
静かに声を掛けられ、ゴクリと息を飲んだ
静かに問い返すに、エドワードは真剣な眼差しを向けた。
「隣の車両に移ったら・・・急に睡眠薬かがされて・・・気がついたらここに居た・・・それで・・・一瞬にして列車ジャック犯達が倒れて・・・私にも分からない・・・」
カタカタと身体を震わせながら呟く
それが全て嘘、と言う事は、そしてエンヴィーしか知らないこと。
それでも、今はエドワードとアルフォンスを信用させる事が第一だった。
「そう・・・か。」
の言葉を聞き、ポツリと呟くエドワード。
エドワードはアルフォンスの方に視線を移した。
何か話しているようだが位置的に2人の会話は聞こえなかった。
「なぁ・・・。」
「何?」
「・・・・エンヴィーと知り合いなのか?」
ドクン!
静かにまた話し掛けて来たエドワード。
はエドワードに視線を向け、問い返した。
すると、驚きの言葉がエドワードから発された。
──バレて・・・る・・・───?
「な・・・んで?」
平然を装いながら問い返す
しかし、の胸はドキドキと脈を高らかと打っていた。
「アイツが・・・に頼みごとされたって・・・言ってたから。」
「・・・・あの人・・・エンヴィーって言うんだ。」
エドワードに話を聞き、は胸を撫で下ろした。
ばれているわけじゃない、そう確信したからだ。
「え!?知らな・・・い?」
「丁度車両で会ったから・・・エドとアル見かけたら『私は平気だよ』って伝えてって頼んだんだけど・・・」
「・・・・聞いてねぇ・・・」
エドワードの驚きの声を聞き、安堵の溜息を心の中で吐いた。
そしては冷静な口調で嘘を呟き始めた。
「どうやら・・・言う前に何かあったみたいね・・・」
「兄さんがケンカし始めちゃったんだよ。」
「おっオレは・・・オレは悪くねぇ。」
ハァッと溜息をつきながらエドワードの顔を見つめる
そんなに真実を伝えたアルフォンス。
ケンカ・・・エドらしいかもしれないわね・・・
アルフォンスの言葉を聞き、内心そう呟きながら苦笑していた。
すると、エドワードは視線をフイッと下にずらして呟いた。
「誰もエドが悪いなんて言ってないけど?」
苦笑しながら呟くの言葉に顔を赤くして一瞬顔を上に上げた。
そしてと視線が合った瞬間、パッとエドワードは視線をずらした。
「ぷっ・・・」
「なっ?」
「あはははっはははは・・・エドったら顔真っ赤よ?」
心から笑ってしまった
お腹を押さえながら、笑いながら言葉を続ける。
これじゃ駄目・・・このままじゃ駄目だよ・・・・
心の中では分かっていても、頭では分かっていても行動に移せない。
は本心から笑いながら、本来自分がやらなきゃいけないことに焦っていた。
私はエドワードを殺さなきゃいけない・・・・迷っていられないのよ・・・・
そう心の中で呟いた瞬間、は行動に移そうとした。
?」
の異変に気がついたアルフォンスは首をかしげながら問い掛けた。
しかし、はアルフォンスの言葉に答えようとしなかった。
頭にあるのは、エドワードに惹かれ始めている自分への苛立ち。
そして、国家錬金術師を殺さなきゃいけないという思いだった。
はジッとエドワードを見つめたまま、辺りの様子を伺った。
窓は密封状態。
列車は走っているため外の風は強く、窓が閉まっている事に安堵の溜息をつく。
そのの様子にアルフォンスはドクンと変な感覚に襲われた。
今まで見たことのないの表情。
何故か怖さを感じさせていた。
・・────っ・・・」
ジッと立ち止まるに声を掛けてきたエドワード。
しかし、声は徐々に薄れていき、徐々に顔色が悪くなっていった。
その様子を見ていたアルフォンスは慌てだした。
「何っ!?どういうことっ!?何が起きてるの!?兄さん!?」
「ア・・・ル・・・オレ、は・・・・平気・・・だ・・・・」
「そんなことあるはず無いっ!!!何が起きてるの!?」
アルフォンスの声に反応するように、息絶え絶えながら言葉を呟くエドワード。
しかし、苦しそうなのは傍から見て分かった。
そして顔色が徐々に悪くなっている事から、ありえないとアルフォンスは判断した。
!!!!」
その時、ジッと見つめるに向かって聞き覚えのある声が聞こえた。
「・・・エンヴィー。」
は静かに視線をエンヴィーに移し、小さく呟いた。
「僕達の邪魔をするのかっ!?」
「邪魔?別にしていないけど?」
エンヴィーの言葉を聞き、はクスリと笑いながら答えた。
「どういうことなの!?」
エンヴィーとの言葉を聞き、アルフォンスは叫んだ。
「・・・っ。」
アルフォンスの叫び声にビクリと身体を振るわせる。
そのアルフォンスの向こうからジッとを見つめるエドワード。
そのエドワードにも気がつき、そしてその視線に釘付けになり、頬を染める
私は・・・殺さなきゃいけないターゲットに・・・恋してたんだ・・・
初めて確信する自分の気持ち。
でも、それと裏腹にある国家錬金術師への恨み。
もう隠しきれるはずが無いとは思い、笑みを浮かべアルフォンスとエドワードを見つめた。
「まさか・・・全然気付いていなかったなんて驚きよ。国家錬金術師であろうお方が。」
クスクス笑いながらは言葉を続けた。
嫌われるように、自身の気持ちを吹っ切れるように。
その様子をエドワードもアルフォンスもエンヴィーも静かに見つめていた。
「一連の国家錬金術師殺人の犯人は私よ?エドワード・エルリック。いいえ、鋼の錬金術師。」
キッとエドワードをきつい眼差しで見つめる
その時エドワードとアルフォンスは気がついた。
の足が空気に消えるように薄れていっている事に。
「一体・・・何、者・・・・?」
「・・・・エンヴィーと同じホムンクルスよ。元ウロボロス組の、ね。」
息の続かないエドワードが懸命に声を絞り出し問い掛けてきた。
その表情に、エドワードの顔に、ドキリと胸を高鳴らせながらはクスクス笑いながら言葉を続けた。
が・・・・ホムンクルス?」
「そうよ。私の能力は体を気体に変えること。分かった?何故首とかを絞められた譴責も無く窒息死した理由が。」
アルフォンスの掠れる声。
その声を聞き、はっきりとした口調で認める
・・・鋼のおチビちゃんを放してくれない?」
「・・・何故?」
「アイツは人柱候補なんだよ。」
「・・・私がそうやすやす放すと思う?」
「思わないね。」
エンヴィーの声に気付き、は静かに振り返る。
の瞳は深く深く、悲しみの色をしていた。
しかしエンヴィーはそれを気にせず話を続けた。
ごおぉぉぉぉ!!!!
その時だった。
窓が開け放たれ、勢い良く風が中に流れ込んできた。
その瞬間、エドワードを纏っていた気体が風に吹き飛ばされエドワードは息苦しさから解放された。
「・・・ちっ。」
は即座に散らばった自分の体である気体を集め、身体を元に戻す。
「どういうことだ・・・。」
「・・・・・」
エドワードに問い掛けられたが、何も言わずにただエドワードを見つめる
「オレ達と一緒に旅をしたのは・・・・オレを殺すためか?」
「それ以外に何があるというの?」
エドワードは、少しためらいながら聞きたい事を質問してきた。
その言葉に本当の気持ちを伝えたい
しかし、それではらちが明かないという事もは分かっていた。
だからあえて嘘をつく。
の言葉を聞き、エドワードは一瞬悲しげな表情を見せたことには気がついた。
「バレたとなったら・・・一緒に旅なんて無理。さよなら、エドワード。これからの旅は・・・息苦しさに気をつけてね。」
そう呟くとは開け放たれた窓から外へと飛び降りた。
!!!」
急いで駆け出したエドワードは、窓渕に手を掛け、外に居るを見つけようと目を凝らした。
しかし、外に居るはずのの姿は見当たらなかった。
さよなら・・・エドワード・・・・さよなら、鋼の錬金術師・・・私は・・・本気で貴方の命を狙う事にするわ・・・
空気に溶け込んだは静かにエドワードを見つめ、小さく呟いた。
その声はエドワードにもアルフォンスにも届く事はなかった。
「エンヴィー・・てめぇ・・・え!?」
何か問いただそうと振り返ったエドワード。
しかし、さっきまで居たはずのエンヴィーの姿は消えていた。
「・・・・くそっ!!!」
ガンッと列車の壁を蹴飛ばし元の席へと足を向けたエドワードだった。

















「自分から正体ばらしちゃうなんてお馬鹿だねぇ〜」
「うるさいわよ、エンヴィー。」
列車の去った草原の中央で佇むとエンヴィー。
エンヴィーの言葉に怒りの言葉を浴びせる
しかしエンヴィーは笑っていた。
「僕にそういう口利いていいのかな?」
クスクス笑いながらエンヴィーはに問い掛けた。
「私とエンヴィーは既に関係のない間柄、よ。」
「でも兄弟の縁は切れない、でしょ?」
とエンヴィーは睨み合ったまま立ち尽くしていた。
「戻ってきなよ、。」
「はぁ?」
「僕達の所に戻ってきなよって言ってるんだよ、。」
いきなりの発言に眉を潜めながら声を漏らす。
そんなをジッと見つめながら、聞いた事のない優しい声でエンヴィーはを誘った。
「冗談。戻るわけにはいかないのよ・・・・私の目的のために・・・・」
「目的?・・・列車の大事故で死ななかった事で化け物と呼んで来た国家錬金術師に対しての復讐の事かい?」
「知っているなら止めないで・・・抜けた私を止める資格なんてエンヴィーには無いはずよ。」
エンヴィーの言葉を鼻で笑うかのように、は話を続けた。
の目的。
エンヴィーはそれを知っていた。
目を閉じ、の心を読んだかのような言い振りに一瞬は驚きの表情を浮かべた。
しかし、すぐにエンヴィーをキッと睨みつけ低い声で呟いた。
「なら、僕たちの計画を潰す資格もには無いだろ?」
エンヴィーの言葉にグッと言葉に詰まる
が言った言葉を飲み込むのなら、逆にもエンヴィーたちの計画を潰す資格なんてなかった。
「確かに、ね。でも、私はやらなきゃいけないのよ・・・国家錬金術師を・・・殺さないと。」
「・・・良い事教えといてやるよ、。」
「?」
エンヴィーの言葉を苦笑しながら受け入れる
そんなを見て、ニヤリと笑みを浮かべるエンヴィー。
その言葉が何なのか理解できず首をかしげる形となった。
「軍の大総統は────ウロボロス組の1人・・・ラースだよ。」
「キング・ブラッドレイがっ!?」
エンヴィーの言葉に、信じられないといわんばかりの勢いで声を上げる。
しかし、そんなを苦笑しながら見つめるエンヴィー。
「そりゃ知らないだろうね。だってがウロボロス組から抜けてからラースは生み出されたんだから。」
クスクス笑いながらの驚きの声に答えるエンヴィー。
「でも・・・・ブラッドレイは・・・もう60歳近くの・・・・」
「歳をとるホムンクルス・・・・」
「っ!?」
しかし、エンヴィーの言葉があっていれば、おかしいと気付いたは言葉を続ける。
しかし、その疑問も待っていたといわんばかりにスラスラと答える。
ありえないことに目を見開き、自らの耳を疑う
しかし、あり得ないなんてあり得ない・・・グリードの言葉だった。
「まぁ・・・僕たちの邪魔をしない程度に頑張ってねン。」
エンヴィーはニッコリ笑みを浮かべると、そのままの元から去っていった。
エンヴィーの姿が見えなくなる頃・・・はゆっくりと口を開いた。
「当たり前よ・・・もう、あんたたちなんかに縛られたりしない。私は・・・自由よ。」
はキッとエンヴィーの去った方向を睨みつけたまま立ち尽くしていた。
そして、今の脳裏に浮かんでいるのは、今後どうやってエドワード・エルリックとロイ・マスタングを殺すか、と言う事だった。
「とりあえずは・・・どっかで宿を借りて対策を練るか・・・」
そう呟くと風に流れるかのような速さで、近くの町に足を向けた。














「兄さん・・・・どういうことだろう。」
「しらねぇよ。」
アルフォンスの言葉に無愛想のまま答えるエドワード。
何故がエドワードの命を狙っていたのか。
何故騙してまでエドワード達と旅をしてきたのか。
どうしてすぐに殺そうと行動に出なかったのか。
──何故最後、死ぬほど寂しそうな、悲しそうな表情をしていたのか。
エドワードとアルフォンスはその事が頭を離れなかった。
場所はデットリード。
と分かれた場所から程遠くない町だった。
デットリードは農業が盛んで、人々も旅人がたくさん来るとの事で、旅人を受け入れてくれやすかった。
すぐに宿も見つかり、エドワードとアルフォンスは宿の1階の酒場で食事を取っていた。
「しらねぇよって・・・・少しは気にしたりしないの?」
「あんな奴・・・もう知るかよ・・・」
「そんなこと言って・・・顔にはハッキリ“気になる”って書いてあるよ?」
「───っ!!!」
アルフォンスは不機嫌なまま食事を続けるエドワードに再度問い掛けた。
すると、エドワードはムスッとした態度のままパクパクと料理を口に運び答えた。
しかし、そんな態度と裏腹に、表情はハッキリと表れていたらしい。
の事が気になる”と。
ズバリ的中させられたアルフォンスの言葉に、エドワードはハッとした顔をし、顔を赤らめる。
「兄さん。此処で少しの聞き込みしてみようよ。見かけた人居るかもしれないし。」
「ヤダね。」
「兄さんがしないならボク1人でも行動するからね?」
「勝手にしろ・・・」
「勝手にするよ!」
アルフォンスはの事を、そしてエドワードの事を気遣い優しく言葉をかけてきた。
しかし、エドワードは表情とは裏腹な態度のままハッキリと“嫌だ”と言い切った。
そんなエドワードに多少カチンと来たのか、さっきまでの優しげな物言いとは違った言い方でエドワードに言葉を発した。
するとエドワードはムスッとした表情でアルフォンスを見つめずに、小さく呟いた。
その言葉を聞きアルフォンスはガタンと立ち上がり、大きな声で怒鳴ると宿の出口から既に出て行ってしまっていた。
カランカランカラン・・・・
景気の良い音が鳴り響き、入り口のドアがキィィと開け閉めされている。
「・・・オレだって・・・何が何だかわからねぇんだよ・・・」
グッとナイフとフォークを握り締めたまま小さく、それでも力強く呟くエドワード。
初めて会ったのは、国家錬金術師殺しと激突し、エドワードと激突して地面に倒れた時。
2度目はイーストシティ、東方司令部の前でロイと会話をしていた時。
そして東方司令部の中にエドワードとアルフォンスとはロイに連れられ入っていった。
そこでエドワードとアルフォンスが旅立つと聞き、一緒に旅をしたいと言ってきた。
「───・・・全ては計画通りって・・・事かよ。」
眉間にシワを寄せ、悲しげな表情でコップに入った水を見つめる。
そこに移るのは、楽しく笑いながら旅をしてきた時のの笑顔。
ただそれだけだった。
ガタンッ!!!!!
エドワードは立ち上がると、食事のお代を会計に置くと一目散にアルフォンスの後を追うように駆け出した。
国家錬金術師を狙っているなら、何故列車ジャック犯を殺した!?
エドワードの脳裏にはその思いで一杯だった。
は国家錬金術師しか狙わず、他の関係のない人間は絶対に殺したりしなかった。
それは一連の国家錬金術師殺人で分かっていたことだった。
なのに、何故それに気付かなかったのだろうとエドワードは心の中で叫んでいた。
あの時列車ジャック犯はこう言っていた。
“鋼の錬金術師の命を貰う”と。
その言葉に反応しては列車ジャック犯を倒しに・・・否、殺しに行ったのではないか。
エドワードはイロイロな事を脳裏に駆け巡らせながら町の中を駆け出していた。
その時だった。
「・・・・お久し振りね、エドワード・エルリック。いえ、鋼の錬金術師。」
「───!?」
人様の家の屋根の上に立ち、月を背に立っていた。
冷たい視線でエドワードを見下ろしている。
!!」
そこに立っていた人物は、だった。














「ここが・・・・デットリード。」
の佇む場所は、デットリードという町だった。
は既にこの町にエドワード・エルリックが訪れている事を知っていた。
「エドワード・・・いえ、鋼の錬金術師・・・今度こそ命を・・・・」
そう呟くと、一応宿を取ろうと町の中を歩き始めた。
「やぁ、いらっしゃーい。旅人かい?」
町の中を歩くと色んな人が声を掛けてきた。
そのことに少し戸惑いながらも言葉を返す
「え、まぁ・・・・そうですけど。」
「女の一人旅なんて大変だかんな。気ぃ付けろよ〜」
の戸惑う言葉を気にすることなく、町の人達は気さくに声をバシバシ掛けてきた。
「そーいやぁ・・・君が来る少し前に大通りの大きな宿に2人組みの旅人が来たねぇ。今日は珍しい日だ。」
楽しそうに話をする町の人。
その中から聞こえてきた言葉。
“大通りの大きな宿に2人組みの旅人が来た”すなわち、エドワードとアルフォンスの事だろう。
その情報を元に、はエドワードとアルフォンスの止まる宿と同じ宿には足を向けた。
宿に向かい、部屋を一室借り、そこで待機する
隣の部屋は・・・あのエドワードとアルフォンスが部屋を借りているという事がすぐに分かった。
隣の部屋から2人が出てくるのをが見たからだ。
どうやら・・・私の運は尽きてないみたいね。
クスリと笑みを浮かべ心の中で呟く
だが、運が尽きていなくても・・・私にエドワードを殺せるのか・・・
笑みを浮かべた表情はすぐに曇り、悩みの表情へと変化した。
そして下の階から聞こえてくる笑い声。
どうやら皆で仲良く食事〜をしているらしい。
「行動は・・・夜起こす。」
グッと拳を握り締め、ドアを見つめる
そして時間だけが刻一刻と過ぎていった。
そして夜。
下の階からエドワードとアルフォンスの怒鳴り声が聞こえてきた。
『勝手にするよ!』
エドワードとアルフォンスの言い合い。
それは旅をしていても滅多に聞かないことだった。
「・・・ケンカ?」
はそう呟くと部屋の窓から外を見た。
すると宿から駆け出していくアルフォンスの姿が見えた。
それから間もなく、下の階からガタンという大きな音が聞こえた。
それと同時にまた宿から駆け出していくエドワードの姿。
それを見てはフゥッと溜息を付くとカタンと立ち上がった。
「馬鹿ね・・・別行動を取るなんて。まるで私に殺してくださいって言ってるような物じゃない。」
そう呟くと、窓に足を掛け外を見つめた。
涼しい風がを包み込んだ。
それと同時には窓枠を蹴り外へと飛び出した。
2階から1階の宿の外、道路に着地すると近くの家の屋根の上にピョンッと飛び乗った。
そして駆け出すエドワードの後を追って、も駆け出した。
既に日は暮れていて、人々も眠りにつく時間だった。
絶好のチャンス・・・ということだった。
「・・・・お久し振りね、エドワード・エルリック。いえ、鋼の錬金術師。」
「───!?」
人の屋根の上に立ち、月の明かりを背中に浴びながらはエドワードに声を掛けた。
今まで聞かせたことも無い低く冷たい声で。
目を細め、冷たい視線でエドワードを見下ろす
!!」
エドワードは家の屋根の上に立つ人物がだと確認すると声を張り上げた。
「静かにしたほうがいいんじゃない?もう夜よ。」
「そんなことどうでもいい!!」
「あっそ。しかし・・・馬鹿ね、君たち。わざわざ別行動を取るなんてね。」
の言葉に全く耳を貸さないエドワード。
軽くあしらうように呟くと、は不適な笑みを浮かべエドワードとアルフォンスが別行動を取ってしまった事を指摘した。
「アイツは国家錬金術師じゃねぇ!関係ない!」
「勿論私ははなっから鋼の錬金術師の弟の命なんて狙ってないわよ。」
エドワードはビッと片手を横に勢い良く伸ばし、に向かって叫んだ。
その言葉を聞き、馬鹿にするような声で笑った。
そして真剣な表情でエドワードを見つめ、呟きかけた。
の言葉を聞き、安堵の溜息を付くエドワード。
「さてと・・・言ったとおり鋼の錬金術師・・・貴方には死んでもらうわ。」
そう言うと、ニッコリとエドワードに向かって笑みを浮かべる。
その表情には勿論闇は浮かんでいた。
「殺せるんなら・・・殺せよ!」
「───っ!!!」
を挑発するかのように、声を張り上げるエドワード。
はハッとした表情をしエドワードを見つめ───
「いいわ。殺してあげる。」
そう言うと、スッと手を前に出した。
その瞬間、何かを覚悟するかのようにエドワードは両目をギュッと瞑った。
バチバチ・・・ドゴォォォォンッ!!!!!
「なっ────ぐあああぁぁぁっぁあっ!!!!!」
いきなりの爆発音、そして焔に驚き声を上げようとする
しかし、その声は途中で悲鳴へと変化した。
プスプスと丸焦げになった姿で屋根の上から地面へと転落する
「・・・まさかっ!!!」
エドワードはが倒れたのを確認すると、後ろを振り返った。
「兄さん!!」
「待たせたな、鋼の。」
「───っ大佐!!!」










To be continued..................











ひゃぁ〜〜〜ここまで書いたけど・・・危ない危ない。
アルは大佐を呼んでいたらしいねw
しかし、どうして大佐はこんなにも早く到着したとお思いですか?
ふっふっふ。実は、大佐はエドとアルの事が心配になり、あとを追ってきたのだ〜〜!!!
そうっ!!!エド、アル、が旅立ってからイーストシティで国家錬金術師殺しがストップした。
つまり・・・おかしいとふんだんじゃないかな?
しかも初対面のエドが出発すると聞いた時、は物凄い勢いでエドについていきたいとせがんだ。
そこからもししたら・・・と踏んだ───という事(^^)
いやぁ〜〜大佐いなかったら大変な事になってたねぇ〜〜♪
大佐登場シーンからは───次回からっ!!!!
さて、次回予告!!!
「Nation Alchemist Murder 第3話

国家錬金術師の正体は。その事をエドワードとアルフォンスに知られてしまい傍を離れただった。
だが、エドワードの命を狙う──という事はやめず後を追い続ける。そして遂にエドワードに牙が向いた。
そこにのもう1人のターゲットが登場するっ!!!

────『まさが君が国家錬金術師殺しの犯人だったとはね・・・まんまと騙されたわけだ。』

『大佐っ・・・コイツは──コイツはホムンクルスなんだっ!!!』

『私の焔を喰らっては、生きていられまい。』

『2人も揃うとは・・・好都合よ。』

『鋼のおチビちゃん。はボクが頂くよ。』────

Nation Alchemist Murder 第3話をお楽しみに!」






鋼の錬金術師夢小説に戻る