誓います

もう二度としないと

約束します

貴方の為に

私は決して もう人を殺したりしない

私はずっと エド、アルについていく・・・













Nation Alchemist Murder 第五話















「大佐ー!!!」
「ちょっ・・・兄さん!!待ってよーー!!」
元気に駆け出すエドワードの後を、アルフォンスが懸命に追いかける。
今日は、牢に閉じ込められていたが釈放される日。
数日前にロイから手紙で知らせを受け、エドワードはアルフォンスを連れ中央にやってきた。
中央にある1つの刑務所。
そこでが拘束されていた。
「鋼の。やっと来たか。」
「やっとって。早く来たつもりなんだけど?」
「まぁ、いい。こっちだ。」
呟かれたロイの言葉に、エドワードは首をかしげ答え。
ロイに言われて、アルフォンスと一緒にロイの後を追う。
「やっと会えるね、兄さん。」
「あぁ。久し振りだな。」
ロイの後ろを歩きながら、アルフォンスは嬉しそうにエドワードに声を掛けた。
小さく相槌を打ち、エドワードも嬉しそうに呟いた。
「来たようだぞ。」
「「!」」
ロイの声に反応し、エドワードとアルフォンスは嬉しそうな笑みを浮かべ、ロイの指差しているほうを見つめた。
そこには無事釈放され、エドワード達とアルフォンスとロイの居る方へ向かって歩いてくるの姿があった。
「「!!!」」
「エド、アル、ロイ大佐!」
エドワードとアルフォンスは顔を見合わせ、元気良く声を張り上げ。
に向かって駆け出していた。
も笑顔で片手を挙げ、ブンブン振りながら駆け出した。
「久し振りだな!!」
「ええ。すっごい、ね。」
エドワードの嬉しそうな笑みを見て、嬉しそうに微笑む。
「無事、釈放されたんだね。」
「ええ。ホムンクスルだってバレなかったのよ。」
アルフォンスはゆっくりとエドワードの後ろから、に近寄って嬉しそうな声色で話しかける。
コクリと小さく頷き、はフフッと微笑んだ。
「しっ。今ここでする話ではないだろう?」
「「「あ・・・」」」
ロイの言葉を聞き、ハッとした表情を浮かべるエドワードとアルフォンスと
がホムンクルスだとばれたら、つかまって実験材料にされる可能性がある、という事だった。
実際に、人間と動物とのキメラにされた者が捕まったと聞いた事がある。
それを思い出し、ロイの言葉にコクコクと頷き返す
「さて。これから君たちはどうするのだね?」
「大佐こそどーすんだよ?」
「勿論。東方司令部に戻るのだよ・・・」
ロイの問い掛けに、逆にエドワードが問い返す。
その言葉を聞き、ガックリと肩を落とし静かに答えるロイ。
どうやらリザからすぐに戻るよう言われているらしい。
「俺達は・・・」
「いつものように旅・・・だね、兄さん。」
「そうだな。も連れて・・・な。」
ロイの言葉を聞いた後、エドワードが口を開いた。
その言葉の続きを言うように、アルフォンスが言葉を紡ぎ。
笑顔でエドワードがも、と続けた。
その言葉を聞き、は嬉しそうに笑みを浮かべ。
「ええ!」
元気良く返事をした。
「ロイ大佐。本当にお世話になりました。」
ペコリと頭を下げ、ロイにお礼を述べると。
ゆっくりと顔を上げた。
「ふむ。やはりは礼儀正しいな。誰かさんとは大違いだね。」
「んだとっ!!!」
の行動を嬉しそうな笑みを浮かべて見ると。
ロイは関心したように声を漏らし、呟いた。
その言葉に反応したのは、誰でもなくエドワードだった。
「誰も君のことだとは言っていないがね?」
「ぐっ・・・」
図星を掘るようにエドワードは声を張り上げ。
やはり狙い通りだったのか、嫌味ったらしい口調でロイはエドワードに呟き掛けた。
言葉につまり、エドワードはただロイを睨みつけることしか出来なかった。






















「どうやら・・・。釈放されたみたいだよ?」
「そう・・・なら、実行し始めましょう。」
「実行〜実行〜」
エンヴィーは笑みを浮かべながら、が釈放されたという事実をラストに話した。
その言葉に笑みを浮かべ、小さな声で呟いた。
───実行───と。
その言葉に、グラトニーが鸚鵡返しをするように呟き。
「あぁ。勿論ボクはそのつもりだよ。」
クスクスと笑いながら、エンヴィーはラストの言葉に賛成した。















「では、ここでお別れだな。」
「ああ。またな、大佐。」
「お世話になりました。」
「いつかまたお会いしましょう。」
駅のホーム。
ロイの切り出しにエドワードは普通に返事を返した。
ペコリと頭を下げながら、お礼の言葉を述べるアルフォンス。
は、またいつか・・・と言葉を返し、笑顔を向ける。
「あぁ、またいつか・・・な。」
そう返すと、ロイはためらうことなく、東方司令部のある東部イーストシティへと向かう列車に乗って行った。
「じゃ、俺達も出発するとすっか。」
「目的地は?」
「・・・・ここ、中央だ。」
エドワードの言葉に、首をかしげながら目的地を問いかけてみる。
エドワードは少し考えた素振りを見せ小さく答えた。
「え??こ、ここ??」
「ああ。一応・・・オレ達が捜し求めている“賢者の石”の情報が手に入ったからな。」
エドワードの言葉を聞き、鸚鵡返しをする
その後エドワードの口から飛び出てきた“賢者の石”の言葉に、目を見開いた。
そういえば、初めて会って旅をしたときも・・・“賢者の石”の情報が流れている街へ街へ向かったっけ。
なんて思い出しながら。
「“賢者の石”か・・・・」
「なぁ・・・。」
「ん?」
呟いたに、静かに声をかけるエドワード。
は疑問の表情でエドワードを見つめた。
「ウロボロス組みは・・・賢者の石と関係してるはずだよな・・・?」
「・・・詳しくは知らないけど・・・私が抜ける前のことなら・・・」
「それでいい。教えてくれ!!」
エドワードの問い掛けに、は静かに言葉を返した。
今は知らないけど、昔の事でも良ければ・・・、と。
エドワードはグッとの肩を両手で押さえ、声を張り上げた。
はどうしよう、とアルフォンスの方に視線を向けた。
「お願い、。」
アルフォンスもエドワードと同じ気持ちだったようだ。
アルフォンスにも言われ、は観念したかのように小さい声でポツリと呟き始めた。
「確かに・・・関係していたわ。でも、私が居た頃はまだ・・・計画途中だった。」
「計画・・・途中?」
の言葉に鸚鵡返しで問い返してきたのはアルフォンスだった。
「そう、計画途中。賢者の石を作る方法は分かっていた。でも、ホムンクルスは錬金術を使えないから・・・」
「そうなのか!?」
の言葉に驚きの声をあげるエドワード。
は、コクリと小さく頷き、言葉を続けた。
「だから、ウロボロス組みは錬金術師に賢者の石を作らせようとしていたの。勿論、その時既に作られてはいたけど。」
「つまり・・・ウロボロス組みは思いっきり賢者の石に関係してる・・・って事だな?」
の説明を聞き、まとめるように問いかける。
その言葉に、はコクリと頷いた。
「分かった。サンキューな、。」
「ありがとう、。」
エドワードとアルフォンスの言葉に、は目を閉じ首を左右に振るった。
お礼を言われる事じゃない、と呟きながら。














「で、中央でどーするの?」
「これ。」
「え?」
エドワードに問いかけて、見せられた紙。
眉を潜めて、見せられた紙に視線を落とす。
「『National central library 1st branch  Tim Marcoh−国立中央図書館 第1分館 ティム・マルコー−』?」
書かれている言葉を口に出して述べ、疑問の表情を浮かべる。
「ここにマルコーさんの本があるはずなんだ。」
「本?何かあったの?」
の疑問の表情に答えるように呟くエドワード。
その言葉から、また疑問が生まれ。
は首を傾けた。
「ティム・マルコーさんが“賢者の石”について書いた本がこの国立中央図書館 第1分館にあるんだよ。」
「それをエドとアルは必要としているのね?」
の疑問の言葉に答えたのは今度はエドワードではなく、アルフォンスだった。
アルフォンスの説明を聞き、納得したように頷くと、エドワードとアルフォンスの顔を見つめて問いかけた。
その問いにエドワードもアルフォンスも無言で頷いた。
「鋼の錬金術師殿!!」
「「「?」」」
いきなりの声に疑問の表情を浮かべながら振り返るエドワードとアルフォンスと
そこにはは知らない人が居て、エドワードとアルフォンスの知っている人が居た。
「あ、ロス少尉にブロッシュ軍曹。」
誰なのか理解すると、エドワードは二人の名前を呼んだ。
「知り合い?」
「中央で護衛してもらってる人。」
「ごっ護衛!?」
の問い掛けにアルフォンスが答え。
はアルフォンスの言葉に驚きの声を上げた。
「勝手に居なくならないで下さい!!」
「東方司令部の報告によるとスカーもまだ捕まっていないそうですし、事態が落ち着くまで私達が護衛を引き受ける事になっています。」
「それは前にも聞いた。」
ブロッシュの言葉の後にロスが説明を加え。
エドワードはため息をつきながら、呟いた。
「エドとアルが・・・護衛?」
プッと笑いそうになりながら呟き、エドワードとアルフォンスを見つめた。
「笑うな!」
「ごめんごめん。」
が笑いかけている事に気づき、エドワードは鋭く突っ込みを入れた。
苦笑しながら謝り。
「とにかく、少佐ほど頼りにならないかもしれませんが、腕には自信がありますので。」
ロスの言葉を聞き、エドワードとアルフォンスは顔を見合わせた。
どうやらエドワードとアルフォンスは中央に到着後、ロスとブロッシュの話を聞いた後、すぐにロイの元へと急いだようだ。
「しょーがないなぁ・・・」
「『宜しくお願いします』だろ、兄さん。」
エドワードの言葉に、溜息交じりに呟くアルフォンス。
そのアルフォンスの言葉に驚いたのはロスとブロッシュだった。
「兄っ!?ええと・・・この鎧の方は弟さん・・・?」
ロスの言葉にはぁ、と短く返事をした。
「それにしても何故鎧のお姿で・・・?」
額に汗を流しながら、少し戸惑いながら問いかけてきたのはブロッシュだった。
とことんアルフォンスの鎧姿が気になるらしい。
数秒顔を見合わせたエドワードとアルフォンス。
「趣味で。」
汗ダラダラとかきながら声を合わせて呟いた。
そんなエドワードとアルフォンスの言葉を聞きロスとブロッシュは。
「趣味って!?少尉殿、趣味ってなんでありますか!?」
「わからないわ。なんなのこの子達!」
とそれぞれに小さく叫んでいた。
話を逸らすように、エドワードとアルフォンスはある一点を指差した。
「あ!!見えてきた、見えてきた!!」
「あ、ホントだ!」
その言葉にも視線を向けると。
そこには国立中央図書館が見えてきていた。
「ああ、あれが国内最大の蔵書量を誇る国立中央図書館です。全蔵書を読みきるには人生を百回繰り返してもまだ足りないと言われている程です。」
国立中央図書館を前に説明をするブロッシュ。
その説明を静かに聞くエドワードととアルフォンス。
そしてゆっくりと西隣に位置する建物のある方へと足を向ける。
「そしてその西隣に位置する建物がお二方・・いえ、お三方の目的とする第1分館。ここには様々な研究資料や過去の記録、各種名簿等が収められて・・・いるの・・・ですが・・・」
ロスは説明しながら、エドワードとアルフォンスとを前に歩かせる。
そして目の前に到着すると、エドワードとアルフォンスとは驚愕な表情を浮かべる。
「つい先日、不審火によって中の蔵書ごと全焼してしまいました。」
申し訳なさそうに呟くロス。
そんなロスの前に立つエドワードとアルフォンス、そしてはどうしようもなくただたたずむ事しか出来ずに居た。
ロスを攻めても意味などなく。
ただ、焼けて原型をとどめていない建物を見つめていた。













場所は変わって、国立中央図書館。
「ティム・マルコー・・・・えーっと・・・・」
図書館のお姉さんに名前を伝え、研究資料のことを調べてもらっている最中だ。
「ティム・マルコーの賢者の石に関する研究資料・・・やっぱり目録に載ってませんね。」
ペラペラと目録を捲りながら調べていく。
しかし、その目録にはエドワードとアルフォンスの捜し求めている資料はないらしく。
「本館も分館も新しく入ったものは必ずチェックして目録に記しますからね。ここにないという事は、そんな資料は存在していないか。あっても先日の火災で焼失したって事でしょう。」
エドワードとアルフォンスにとって、最悪の事態。
その言葉を聞き、ガクッと肩を落とし、周りにどよ〜〜んとした空気を漂わせた。
「────ってもしもし?」
聞いているのか、と思い図書館のお姉さんはエドワードに声を掛けた。
「どうもお世話になりました・・・」
「ちょっと大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ・・・」
スッと立ち上がり、トボトボと出口に向かいながら、気を落とした口調でお礼を述べるアルフォンス。
はそんなエドワードとアルフォンスを見つめ、どうしようもなく溜息をつくだけだった。
どうにかならないかと、図書館のお姉さんに視線を向けるが首を左右に振られるだけだった。
そんなエドワード達に図書館のお姉さんが声を掛け。
エドワードは抜け殻のように気の抜けた表情で答えた。
「あ!シェスカなら知ってるかも。ほら、この前まで第1分館にいた・・・」
「ああ!」
ふと近くの図書館勤務の人がお姉さんに話しかけた。
シェスカ、という名前を出すと、何かを思い出したかのような表情を浮かべる。
「シェスカの住所なら調べればすぐ分かるわ。会ってみる?」
「誰?分館の蔵書に詳しい人?」
お姉さんの言葉に疑問の表情を浮かべ、問い返す。
その言葉にお姉さんは苦笑しながら。
「詳しいって言うか・・・あれは文字通り“本の虫”ね。」
そういわれ、エドワードとアルフォンスは顔を見合わせた。
は、そんなに凄い人なのかと疑問に思うが。
あって見なければそんな事は分かるわけがなく。
エドワードとアルフォンスとは、とりあえず駄目元でシェスカという人に会ってみる事にした。













ゴンゴン・・・ゴンゴン・・・・
「あれー??」
扉をノックするブロッシュ。
しかし、家の中からは声が全く聞こえてこなく。
眉を潜めて声を漏らした。
「留守ですかね?」
「明かりがついてるから居ると思うけど。」
ブロッシュは扉をノックしながら、いないのかと思い。
そうエドワードに話しかけた。
が、エドワードは家の中の明かりがついている事に気づき。
それはないと思う、とブロッシュに答える。
「失礼します・・・」
そういいギィィィっと扉を開けると。
「うわっ!なんだこの本の山!!!」
「本当に人が住んでるんですかここ!?」
エドワードの叫び声の後に、ブロッシュも叫んだ。
「何何?」
2人の驚きの声に興味がわき、横からヒョコッと顔を覗かせる
「───えーっと。」
中を見て、どうリアクションすればいいのかと迷う
家の中は本が積み重ねられていて。
人が座るような場所などなくなっていた。
「シェスカさーん!いらっしゃいませんかー?」
「おーい!」
ロスは家の中に入ると、本の山々に向かって声を上げた。
それに続いてブロッシュも中へ入り、声を上げる。
しかし、返事はなく。
「とても人が住んでる環境とは思えないけど・・・・・」
「そうよね・・・こんなところに人なんて住めるのかしら・・・」
アルフォンスとが本の山を見つめながら小さく呟いた。
そのときだった。
かすかに部屋の何処からか“・・・て〜〜〜───だれか〜〜〜”という声が聞こえてきた。
一瞬キョトンとした表情を浮かべ、顔を見合わせたアルフォンスと
そして気のせいかと思っていた声は核心に変わった。
「たすけてぇ〜〜〜〜」
「兄さん!!人っ!!人が埋まってる!!!」
「ちょっとやばいわよ!!」
声がはっきりと聞こえた瞬間、アルフォンスとは同時に叫んだ。
その声に反応し、エドワードが“掘れ掘れ!!”と叫んだ。
本を退かし、中から聞こえてくる声の主の下へたどり着くように懸命に掘り続けた。
「ああああああ、すみません、すみません!!!うっかり本の山を崩してしまって・・・このまま死ぬかと思いました。ありがとうございますー!」
つけている眼鏡を抑えながら、申し訳なさそうな表情を浮かべ謝る女性。
「あの・・・貴方がシェスカさん?」
近寄って、目の前の女性に問いかける
「はい。私がシェスカです。私、本が大好きなもので分館に就職が決まった時は凄く嬉しかったんですが・・・でも本が好き過ぎて・・・その・・・」
そこまで言うともじもじと下を向き。
右手の人差し指を額に当てた。
「仕事中だという事を忘れて本ばかり読んでいたもので、クビになってしまいまして。」
そう呟くと、独り言のようにブツブツと語り始めた。
「あー・・・ちょっと訊きたいんだけどさ。ティム・マルコー名義の研究所に心当たりあるかな。」
「ああ!はい、覚えてます!活版印刷ばかりの書物の中で珍しく手書きでしかもジャンル外の書架に乱暴に突っ込んであったので良く覚えてます。」
エドワードの問い掛けにハキハキと答えるシェスカ。
その言葉を聞き、エドワードは呆気らかんとした表情を浮かべ。
「・・・・・本当に分館にあったんだ・・・・」
「・・・て事は、やっぱり丸焼けかよ・・・・」
はポケーっとした表情で呟き。
エドワードはガックリと肩を落とし呟いた。
「“ふりだしに戻る”だ・・・」
「どうもお邪魔しました・・・」
「お世話になりました・・・」
エドワードとアルフォンスとはガクーーッと肩を落とし、残念そうな表情を浮かべながら、家の出口の方へと足を向けた。
すると、そんな3人にシェスカの声がかかった。
「あのーその研究所を読みたかったんですか?」
「そうだけど・・・今となっては知る術も無しだ・・・」
シェスカの問いにハァっと大きなため息をつきながら答え。
「私、中身全部覚えてますけど。」
そんなシェスカの物言いに一瞬間を空け、振り返ると。
「「「は?」」」
「いえ・・・だから。1度読んだ本の内容は全部覚えてます。一字一句間違えず。」
エドワードとアルフォンスとの間の抜けた素っ頓狂な声に一瞬ためらいながら言葉を紡ぐ。
「時間かかりますけど複写しましょうか?」
その言葉にエドワードとアルフォンスは凄く嬉しそうな表情を浮かべた。
はそんな2人を見つめ、それほどまでに嬉しいんだなー、と見つめながら内心呟いた。
「ありがとう、本の虫!!!」
嬉しさのあまり、シェスカの手を握り返すと、エドワードは失礼な語句を混ぜてお礼を述べた。
あまり礼の言葉にはなってないよーな気がする、と思いながらもそこは何も言わずに。











それから数日後の事───
「いやぁ・・・すみません。かなりの量だったもので、写すのに5日もかかってしまいました。ティム・マルコー氏の研究所の複写です。」
ドサッと大量の書類を机の上に積み重ね。
スッと指差しながら呟いた。
そこにはドドン、と構えた大量の本が置かれていて。
は目を丸くして見つめた。
「本当にやった・・・」
「世の中にはすげー人がいるもんだなぁ、アル・・・」
かく言うエドワードとアルフォンスもとことん驚いているらしく。
呆気らかんとした表情のまま、ポカーンと口を開けて歓喜の声を漏らした。
「うわぁ・・・そうか、こんなに量があったんじゃこれ持って逃亡は無理だったんだねマルコーさん。」
「これ、本当にマルコーさんの?」
書類の山を見つめて呟くアルフォンス。
そんなアルフォンスをよそにシェスカに問いかけるエドワード。
「はい!間違いなく。ティム・マルコー著の料理研究書。“今日の献立1000種”です!!」
ニッコリ微笑み、シェスカは自信満々に答えた。
そんなシェスカの言葉を聞き、エドワードとアルフォンスとは一瞬耳を疑った。
「“砂糖大さじ1に水少々加え・・・・”本当に今日の献立1000種だわ・・・」
「君!!これの何処が重要書類なんだね!!」
「重っ・・・!?そんな!私は読んだまま覚えたままに写しただけですよ!?」
ロスは書類を手に取り、中身に目を通す。
が、やはり中身は献立1000種のメニューや作り方、材料が載っているだけで。
「という事は同姓同名の人が書いた全くの別物!?お二方これは無駄足だったのでは?」
ブロッシュはシェスカの言葉を聞くと、頭を掻きながらエドワードとアルフォンスに声を掛けた。
「うーん・・・私もそう思うわ・・・」
かくいうも錬金術には詳しくないため、そう思った。
しかしエドワードとアルフォンスは違うらしい。
「これ本当にマルコーさんの書いたもの一字一句間違いないんだな?」
「はい!間違いありません!」
エドワードの問い掛けにシェスカは必死な表情で答えた。
そんなシェスカを見て、ニッと笑みを浮かべると。
資料を口元に近づけ。
「あんたすげーよ。ありがとな。」
そう呟くと資料の山に戻し、いっきに大量の資料の山に手をかけた。
「よし!アル、これ持って中央図書館に戻ろう!」
「うん!あそこなら辞書がそろってるしね。」
エドワードの言葉に続いて、賛成の声を漏らすアルフォンス。
スッと資料に手を伸ばすとしっかりと持った。
「私も運ぶの手伝うわ。」
そう言うと、も笑顔で横から資料に手を伸ばした。
「──っとお礼お礼。」
そう言うとエドワードは懐に腕を突っ込んだ。
取り出すとメモに何かをサラサラと書き。
「ロス少尉!これオレの登録コードと署名と身分証明の銀時計!」
そう言うとポスッとロスの手の上にメモと銀時計を置いた。
「大総統府の国家錬金術師機関に行って、オレの年間研究費から、そこに書いてある金額引き出してシェスカに渡してあげて。」
「はぁ・・・」
「シェスカ本当にありがとな。じゃっ!」
そう言うとエドワードはバタンと扉を閉め、国立図書館へと足を向けた。
その時シェスカの家の中から“キャーなんですかこの金額!!”“こんな金ポンと出すなんてなんなのあの子!!”と声が聞こえてきた。
そんな声はよそにエドワードは嬉しそうな表情でシェスカの家から遠ざかっていった。
「エド。アル。良かったね。」
「あぁ。こんな形で書類を手に入れられるとは思わなかったぜ。」
「そうだね。焼失したって確信した時はどうしようかと思ったよ。」
はエドワードとアルフォンスの横に並び。
二人の顔を見つめて呟いた。
その言葉にエドワードは嬉しそうな表情のまま呟き。
アルフォンスはコクコク頷きながら呟いた。













「“錬金術師よ大衆のためにあれ”・・・って言葉があるように、錬金術師は術がもたらす成果を一般の人々に分け隔てなく与える事をモットーにしている。」
そう呟きながら、借りてきた辞書を机の上に置く。
「けど、その一方で一般人にそのノウハウが与えられてしまう事を防がなければならないんだ。」
「ああ。なるほど。無造作に技術をばら撒いて悪用されては困りますね。」
エドワードの説明を聞き、なるほどと納得し言葉を紡ぐブロッシュ。
「そういう事。で、どうやってそれを防ぐかってーと・・・錬金研究所の暗号化だ。」
書類を手に持ち、ニッと笑みを浮かべながら言葉を続けるエドワード。
「一般人にはただの料理研究所に見えても、その中身は書いた本人しか判らない様々な寓意や比喩表現で書き連ねられた高度な錬金術所ってわけさ。」
「書いた本人しか判らないって・・・そんなのどうやって解読するんですか?」
エドワードの説明からすると、そんな難易な解読をどうするんだと思ったブロッシュ。
しかしエドワードは自信満々で答えた。
「知識とひらめきと、あとはひたすら根気の作業だな。」
「うわ・・・気が遠くなりそうですよ。」
エドワードの言葉を聞き、溜息をつきながら呟くブロッシュ。
ブロッシュの言うとおり、確かにその行為は気の遠くなるような作業だった。
「でも料理研究所に似せてる分、まだ解読しやすいと思いますよ。」
「錬金術は台所から発生したものだって言う人も居る位だしね。」
アルフォンスは苦笑しながらそう呟き。
その続きをが述べた。
!?」
「これくらい私なら知ってるわよ。」
驚きの声を上げたアルフォンスに苦笑を浮かべ。
「さて!!さくさく解読して真実とやらを拝ませてもらおうか!」
そう声を張り上げると、エドワードとアルフォンスはそれぞれに資料を解読し始めた。
は錬金術の知識は全くなく。
手伝う事が出来ず、ただ2人の様子を遠くから見つめるだけだった。













1週間経過───
エドワードとアルフォンスは1週間部屋に閉じこもり、暗号を解こうと試みていた。
しかし、一向に解ける気配はなく。
ただ時間だけが過ぎていった。
はその間、エドワードとアルフォンスのために食料や飲み物を調達したり。
夜食などを作ったりしていた。
「なんあんだこのクソ難解な暗号は・・・」
グデーッと机に突っ伏しながら、大きなため息とともに呟くエドワード。
「兄さん・・・これマルコーさんに直接訊いた方がいいんじゃ・・・」
「いやっ!これは“これしきのものが解けない者に賢者の石の真実を知る資格無し”というマルコーさんの朝鮮とみた!なんとしても自力で解く!」
グデーッとしているエドワードの隣で、同じくグデーッとしているアルフォンス。
溜息交じりに呟き、マルコーさんに訊こうとエドワードに持ちかけるが。
エドワードは首を左右に振ると、ムッとした表情で資料にまた目を通した。
「エド。アル。ちょっと飲み物買ってくるわね。」
ニッコリと笑みを浮かべながら呟くとドアに手をかけた。
「あ、あぁ。気をつけろよ?」
「うん。」
エドワードはスッと顔を上げると、出て行こうとするに声をかけた。
その心遣いが嬉しかったのか、はまた微笑むとキィィっと音を立てて扉を閉めた。
ぱたん・・・・
「さてと・・・今日は何を買ってこようかな・・・」
そう呟きながら、ブツブツ呟き図書館の外へと足を向けた。
店に入ると、すぐに飲み物が売っていそうな場所へと足を向けた。
あたりをキョロキョロ見ながら歩いていると。
ふと目に入ったのは、大量の飲み物たち。
「あった。」
そう呟くと、どれにしようかと体をかがめて見つめる。
「うーん・・・これとこれと・・・・これと・・・・えーっと・・・これとこれ。」
そういって幾つか山の中から取り出す
炭酸飲料だったりお茶だったり、いろいろな飲み物をかごへと入れた。
「簡単なお菓子も・・・作ってあげようかな。」
そう呟くと、材料を集めに店の中を歩き回った。
強力粉、薄力粉、インスタントドライイースト、砂糖、塩。
「ベーグルでいいわよね・・・」
そう呟くと、ポイポイと材料をかごに入れる。
そしてレジの方へと並び、会計を済ませる。















「シェスカさーん!!台所貸してもらっていいですか!?」
そういいながら、シェスカの家を訪ねる。
両手にたくさんの袋。
その中には先ほどかった飲み物や材料が詰め込まれていた。
「えっ!?あ、さん。どうぞ。」
そう言うと、の荷物を少し持ちシェスカは台所へと案内した。
「なんだかあって間もないのにごめんなさい・・・」
「いいですよ。」
申し訳なさそうに呟きながらも、台所を借りる
そんなにニッコリ微笑み呟くシェスカ。
そしては買ってきた材料でベーグルを作り始める。
台所からは香ばしい匂いがしてきて。
の嬉しそうな、楽しそうな鼻歌も聞こえてきた。
そして2時間近くの時間が流れた。
さん?」
「あ、シェスカさん。ありがとう。やっと出来上がったの。」
嬉しそうな表情で出来上がったベーグルを見せる
「ひとつどうぞ。台所貸してもらったお礼です。」
そう言うと、箱に詰めていたベーグルを2つ取り出す。
そしてそれをシェスカに渡す。
「いいんですか!?」
そんなシェスカの言葉にニッコリ微笑み頷く。
ありがとうございます、と呟くとシェスカは渡されたベーグルをほおばった。
「おっ・・・おいしいっ!!」
「ありがと、シェスカさん。」
そんな言葉を聞き、は嬉しそうな笑みを浮かべ。
ベーグルを箱に詰め終わると、それと飲み物の入っている袋を持った。
「じゃぁ・・・私そろそろ行きますね。」
とニッコリ微笑み、一礼する。













「ただいまー。」
そう言うと、は扉を開けた。
「・・・ふっ・・・・ざけんな!!!!!」
ばしっ!!!
「きゃっ!!」
扉を開けた瞬間、響いたエドワードの叫び声。
それと同時に書類が宙を舞い、の顔に直撃した。
声を上げると、持っていた飲み物とベーグルの入った箱を落とす。
「あ・・・。ごめん・・・」
まさかそこにが居るとは思わず、投げつけてしまった書類。
それがにあたった事を確信すると、小さく謝った。
「なっ・・・何事ですか!?」
するとガチャッと扉が開き、外からブロッシュとロスが入ってきた。
「兄弟げんかですか?まずは落ち着いて・・・・」
「違いますよ。」
ブロッシュの見当違いな言葉を聞き、アルフォンスが違うと説明する。
かくいう先ほど入ってきたにも何が起きたのか判らず。
ただ呆然とするしかなかった。
「では暗号が解けなくてイラついてでも・・・?」
「解けたんですよ。」
ロスの言葉を聞き、アルフォンスは首を左右に振る。
そしてポツリと呟いた。
その言葉にロスもブロッシュもも一瞬思考が回転しなかった。
「暗号・・・解いてしまったんです。」
「本当ですか!?良かったじゃないですか!」
アルフォンスの言葉を聞き、喜びの声で呟くブロッシュ。
しかし、エドワードもアルフォンスもそんな気分ではなかった。
それは傍から見ていても判る事で。
「良い事あるか畜生!!」
エドワードはドスッと床に乱暴に座り込むと、力強く叫んだ。
ガッと床に拳を叩きつけて。
「ど・・・どうしたのよ、エド。アル。」
理解が出来ず、眉を潜めて問いかける
エドワードの近くに膝をついてしゃがみ込む
しかしエドワードは顔も上げず額に右手を当てた。
「“悪魔の研究”とはよく言ったもんだ。恨むぜマルコーさんよ・・・!」
しかめっ面で呟くエドワードにブロッシュが近づき、静かに問いかけた。
「・・・いったい何が?」
と。
「賢者の石の材料は・・・・」
そこまで言うとエドワードとアルフォンスは息を呑んだ。
「賢者の石の材料は??」
しかしそれが何なのか判っていないは、鸚鵡返しで問いかけた。
かつてウロボロス組みに所属していただが。
賢者の石が何で作られているか、なんて考えた事もなかった。
それゆえに、石が何で作られているかも知らず。
「賢者の石の材料は────生きた人間だ!!」
エドワードの悲痛の声が部屋にこだましたような気がした。
ただ、エドワードの言葉に驚愕の表情を浮かべ。
目を丸くしてエドワードとアルフォンスを見つめる事しか出来ずに居た。











To be continued...................










いやぁ〜〜書いちゃいましたよー♪♪
一応2部は本編筋でww
勿論途中で終わりますがww
えーっと・・・一応第5研究所での戦闘シーンのあと、ラストとエンヴィー登場して。
それでちょっとオリジナルに突っ走りエンディング・・・・という形ですね♪↑↑
いやぁ〜・・・ドキドキですね☆☆
直前まで計画していた内容と全く違う方向に進み、自分でも驚いてますww
いやぁ〜〜・・・やっぱり私は小説の内容、もしくはキャラクターに振り回されるタイプらしいww
あー爆笑www
さてと・・・話題を戻して・・・っと。
Nation Alchemist Murder 第5話はどうでしたか?
楽しんでいただけたら光栄です(^^)
感想はBBSかメールか拍手でどうぞ♪♪
勿論P-BBSでもOKです☆☆
それでは、今度はNation Alchemist Murder 第6話でお会いしましょう☆☆☆






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