あれほどエドとアルが捜し求めていた賢者の石
それは……手に入れるには 大きすぎる代物だった
まさか……
まさか 賢者の石が“生きた人間”からしか作る事が出来ないなんて……
それは苦難に歓喜を
戦いに勝利を
暗黒に光を
死者に生を約束する
血のごとき紅き石
人はそれを敬意を持って呼ぶ
“賢者の石”と────……
Nation Alchemist Murder
第六話
「たしかにこれは……知らないほうが幸せだったかもしれねぇ…」
エドワードはグッと拳を握り締めながら、散らばった資料を見つめて呟いた。
「この資料が正しければ、賢者の石の材料は生きた人間……しかも、石を一個精製するのに複数の犠牲が必要って事だ…!」
右手を口元に持ってきて、眉間にシワを寄せ。
信じられない、と言わんばかりの表情で呟き続ける。
アルフォンスも何も言う事も出来ず、もただエドワードの言葉に耳を傾ける事しか出来なかった。
「そんな非人道的な事が軍の機関で行われているなんて…」
「許される事じゃないでしょう!」
エドワードの言葉を信用できないのは、ブロッシュもロスも同じだった。
額に汗を書きながら必死に“違う”という答えをエドワードに求めるロスとブロッシュ。
しかし、アルフォンスもも、エドワードの口から“違う”という言葉が出てこないと理解していた。
「………ロス少尉、ブロッシュ軍曹。この事は誰にも言わないでおいてくれないか。」
下を向いたまま、表情を見せずに静かな口調で呟くエドワード。
しかし、それを有無言わずに頷いてくれるはずもなく。
「しかし……」
「たのむ。頼むから聞かなかった事にしといてくれよ。」
無理だ、と言おうとしたブロッシュの言葉をさえぎり、エドワードが悲痛な口調で呟いた。
そんなエドワードに強く何も言えず、ただ無言でエドワードを見つめる事しか出来なかった。
「私からも………お願いします、ブロッシュさん、ロスさん。」
もエドワードの横に並び、静かに二人を見つめ呟く。
これ以上辛い思いをエドワードにもアルフォンスにもしてほしくなかったから。
にもそう言われてしまっては、駄目とは言えず。
沈黙が空間を支配した。
「………兄さん、。ごはん食べてきなよ。」
「いらん。」
ソファーに身体全てを預けるエドワード。
ソファーの背もたれに背中を預けながら床に座るアルフォンス。
ソファーも足元に背中を預けながら床に座る。
三人は何も言わずにただ部屋の中に座り込んでいた。
その沈黙を破ったのがアルフォンスだった。
静かに二人を気に掛ける言葉を投げかける。
しかし、エドワードは短く返事を返し、天井を見上げるだけだった。
「だけでもってくれば?」
「私も行かない……こんな二人を部屋に残していけない……それに、食欲ないわ……」
天井を見上げたまま小さく呟くエドワードの言葉に、もジッと空間を見つめたまま呟く。
沈黙が流れ、シンとした空間が支配し……
「しんどい、な……」
「………………うん。」
小さく呟くエドワードの声が沈黙を破った。
両手を腹の上に乗せ、ジッと機械鎧を見つめて。
エドワードの言葉に小さく頷くアルフォンス。
は何も言わずに、ただ二人の言葉に耳を傾けるだけ。
「なんかこう……さ。…手の届く所に来たなって思ったら──逃げられて。それの繰り返しでさ……」
そう言うと、ゆっくりと右手を上に掲げるエドワード。
手を開いて、天井にぶら下がる電球を掴むように伸ばし、止める。
「やっとの思い出掴んだと思ったら……今度はつかんだそいつに蹴落とされて……」
そう言うと開いていた手をグッと握り締め。
ゆっくりと顔の方へとおろしていく。
「はは…神サマは禁忌を犯した人間をとことん嫌うらしいな……」
そう言うと顔の方へ近づけた手を額に押し当て。
表情を隠すように顔を腕で覆った。
「オレ達……一生このままかな。」
そう呟くエドワードの言葉に返事をするものなど居るはずもなく。
も何か励ましの言葉を呟こうと試みたが、喉まで出掛かって何も言えず仕舞い。
言ったところで、何の励ましにもならないと分かっていたから。
逆に励ましの言葉を言った所為で、二人の心をよりいっそう深く傷つけてしまう気がしたから。
だからは何も言えず。
「…なぁ、アル……オレ、さ……ずっとお前に言おうと思ってたけど、怖くて言えなかった事があるんだ…」
「何?」
そう切り出したエドワードの言葉に、ピクリと反応した。
こんな仲のいい兄弟でもいえないこともあるもんなんだな、と思いながら。
すると、アルフォンスが静かな口調でエドワードに問い返した。
しかし、そのままエドワードは何も言わず、沈黙していた。
「どうしたの、エド?」
いっこうに話し出さないエドワードに眉を潜めた。
ソファーに横になっているエドワードに問いかける。
しかし、の問いにもエドワードは答えず。
代わりのその沈黙を破る声が他から聞こえてきた。
「ちょっ…お待ち下さい!!」
「三人とも休んでいるところですので………」
「「「!?」」」
ドカドカと突き進む音とドアの外から大きな声で聞こえてくるロスとブロッシュの声。
エドワードとアルフォンスとは顔を見合わせ首をかしげ、扉を見つめる。
「エルリック兄弟!!!!居るのであろう!?我輩だ!ここを開けんか!!」
ドアの向こうから聞こえてきたのは、アームストロングの声だった。
野太い声を上げ、ドンドンと扉を叩く。
「ど…どうしよう?」
アルフォンスはワタワタと焦ったようにエドワードと扉を交互に見つめ、問い掛ける。
「シカトだシカト!!カギかかってるし、居留守決め込むぞ!!」
アルフォンスの問い掛けに、額にダラダラと汗を書きながら。
小声ではっきりとアルフォンスとに指示をする。
しかし、そんな事も無意味に終わった。
がきょ…ぼりんっ……
「聞いたぞエドワード・エルリック!!」
鍵の掛かっているドアノブを掴み、無理やり回したアームストロング。
開かないと分かった瞬間、腕にめいいっぱい力を込めて、ドアノブの周りの扉ごと壊し部屋の中へと入ってきた。
キラーンと瞳を輝かせながら入ってきたアームストロングを見てエドワードは涙を流し。
アルフォンスは両手を上に上げ、ムンクの叫びに負けないような表情を浮かべる。
鎧の癖に何故表情を浮かべられるのかというのは…置いておこう。
「なんたる悲劇!!賢者の石にそのような恐るべき秘密が隠されていようとはっ!!」
アームストロングはどぶわっと涙を大量に流し、グッと拳を握り締めながら力強く呟いた。
「しかもその地獄の研究が軍の下の機関で行われていたとするならば、これは由々しき事態である!!我輩だまって見過ごすわけにはいかん!!」
そう言うと、アームストロングは瞳からだらだらと涙を流しながら叫び。
エドワードとアルフォンスは、ハァッと溜息をついた。
そして口を三角にして怒りを抑えるような表情でエドワードはロスに近寄った。
まるで、何であいつに話したんだ〜〜〜と言わんばかりの表情で。
「ごごごごごご、ごめんなさい……」
「あんな暑苦しい人に詰め寄られたら……喋らざるをえなくて……許してくださいぃぃぃ。」
ロスとブロッシュはエドワードの迫力に汗を掻き。
当時の事を思い出しているのか、さぁぁっと血の気の引いた表情で呟く。
「…あれ?」
その時ブロッシュが何かに気づいた。
眉を潜め、あれ?あれ?と眉を潜めてエドワードを見つめる。
「右手義手だったんですか。」
ブロッシュに言われて、ハッとした表情を浮かべ右腕を見つめるエドワード。
アルフォンスももハッとして顔を見合わせる。
「ああ…えーっと、東部の内乱のときにちょっとね……」
「そそ。それで元の身体に戻るのに賢者の石が必要でして。」
エドワードが言った言葉は、かつて国家錬金術師資格試験を受ける際に、ロイにこう嘘をつけと言われたことだった。
その事を知っているアルフォンスは急いでエドワードの言葉の後にフォローを入れるように言葉を続け。
は墓穴を掘らないように、コクコクと頷く事しか出来ずにいた。
「そうですか……それがあんな事になってしまって残酷……ですね。あまり気を落とさないで下さいね?」
ブロッシュはエドワード達を気遣い、そう呟いた。
そしてアームストロングが涙を噛み締め、右手を顎に添えると。
「真実は時として残酷なものよ。」
アームストロングの言葉を耳にした瞬間、エドワードの表情が、そしての表情がハッとした顔となった。
「真実……?」
「どうしたの、兄さん?」
呆然と立ち尽くしたまま、アームストロングの呟いた言葉を鸚鵡返しするエドワード。
そんなエドワードに首を傾げながら問いかける。
「マルコーさんの言葉思えてる、アル?」
エドワードの代わりに問いかけるのはだった。
その言葉を聞き、アルフォンスは“え?”と呟いた。
「ほら、駅で言ってただろ。“真実の奥の更なる真実”…………」
エドワードがそう呟き、左手を口元に持ってくる。
何かを思い出すようにポツリとつぶやいた言葉は、が中央でエドワード達に見せてもらった紙に書かれていた言葉だった。
「そうか……まだ何かあるんだ…何かが……」
そう言うと、眉間にシワをよせ、何かを考える。
アームストロングに頼み、地図を出してもらうエドワードとアルフォンスと。
バサッと地図を広げ、アームストロングは。
「軍の下にある錬金術研究所は中央市内に現在4か所。そのうちドクター・マルコーが所属していたのは第三研究所。ここが一番怪しいな。」
そう言いながら地図の1か所を指差す。
「うーん…市内の研究所はオレが国家資格とってすぐに全部回ってみたけどさ。ここはそんなにたいした研究はしてなかったような気がするんだよな……」
「ねぇ…これ、何の建物?」
エドワードが地図とにらめっこをしつつ、国家資格をとってすぐに回った研究所を思い出す。
そんな中、も地図を見つめていて、気になった建物を指差しながら問いかける。
すると、エドワードも顔を上げ、の指差す先に視線を向けた。
「あぁ、それはですね。以前は第五研究所と呼ばれていた建物ですね。」
の問い掛けに答えたのはロスだった。
そう呟きながらペラペラと持っている本のページを捲り。
「ですが、現在は使用されていないただの廃屋です。崩壊の危険性があるので立入禁止になっていたはずですが。」
そういいながら、本に書かれている内容と記憶されていた事を、そしてエドワードとアルフォンスに伝えるロス。
その言葉を聞き、エドワードは何かピンと来たらしい。
地図を見つめ、呆気にとられたような、何か分かったらしい表情を浮かべた。
「これだ。」
短くエドワードはそう呟いた。
その言葉を聞き、ブロッシュは腕を組み、エドワードを見つめ。
「え?何の確信があって?」
そうブロッシュが問いかけてきた。
「うん。私もそれが聞きたい。」
もブロッシュと同じ意見だったらしく。
エドワードを見つめ、呟いた。
すると、エドワードは第五研究所の隣の施設を指差した。
「となりに刑務所がある。」
「えっと……?」
エドワードの言葉にまだ理解できずに居るブロッシュ。
ははっとした表情を浮かべ、エドワードが何を言おうとしているのか理解した。
同時に、まさか──という思いが芽生えた。
「賢者の石を作る為に生きた人間が材料として必要って事はだな。材料調達の場が居るって事だろ?」
そう呟くと、視線を上げ、何かを思い出しながら呟くエドワード。
「たしか、死刑囚ってのは処刑後も遺族に遺体は返されないだろ?」
その言葉を聞き、ブロッシュもどこか理解したような表情を浮かべ。
がエドワードの代わりに口を開いた。
「つまり。表向きには刑務所内の絞首台で死んだことにしておいて、実は生きたままこっそりと研究所に移動させて、そこで賢者の石の実験に使われる……って事でしょ、エド?」
の説明にエドワードはコクリと頷き、を見つめる。
アルフォンスはただ呆然と見つめることしか出来なかった。
「そうすると、刑務所に一番近い施設が怪しいって考えられないか?」
「囚人が材料…………」
エドワードが地図の上に手を乗せ、第五研究所と刑務所を指差しながら呟いた。
ロスがさぁぁっと血の気の引いた表情を浮かべ、呟く。
「嫌な顔しないでくれよ。説明してるこっちも嫌なんだからさ…」
タラリと額に汗を書きながら、嫌な顔をしながら呟いたロスに言葉を投げかけた。
「刑務所がらみって事は、やはり政府も一枚かんでるって事ですかね。」
「一枚かんでるのが刑務所の所長レベルか政府レベルかは分からないでしょうけどね。」
ブロッシュの言葉にハァッと大きく溜息をつき呟く。
とことん嫌な事件に首を突っ込んでいるような気がするな〜っと心の中で呟いていたり。
すると、同じ事を考えていたのか、ロスが口を開いた。
「………なんだかとんでもない事に首をつっこんでしまった気がするんですが。」
「だから聞かなかったことにしろって言ったでしょう?」
ロスの言葉を聞き、ハァッと溜息をつき呟くアルフォンス。
確かに材料が何なのか判明したとき、エドワードが言っていた、忘れてくれ、聞かなかったことにしてくれ、と。
「うむ。しかし現時点ではあくまでも推測で語っているに過ぎんな……国は関係なくこの研究機関が単独でやっていたかもしれんしな。」
腕を組み、ムッとした表情を浮かべながら呟くアームストロング。
その言葉を聞き、エドワードが短く“うん”と答えた。
「この研究機関の責任者は?」
「名目上は“鉄血の錬金術師”バスク・グラン准将という事になっていたぞ。」
アルフォンスの問い掛けに、ソファーに腰掛けながら呟くアームストロング。
その言い回し方に疑問を覚えたは首をかしげ。
「名目上は?という事になっていた?」
「そのグラン准将にカマをかけてみるとかは……?」
の問いとエドワードの問いが重なり合った。
しかし、その二つの問いには一つの答えがあれば十分だったことをアームストロングは知っていた。
スッと目を細め、エドワードとを見つめ。
「先日傷の男に殺害されている。」
「「「!!!」」」
そのアームストロングの言葉にはっとした表情を浮かべた。
つまり、さっきのアームストロングの言い回しも、納得がいった。
そして、エドワードが言ったカマを駆けるということも無理ということも。
「傷の男には軍上層部に所属する国家錬金術師を何人か殺された。」
アームストロングは低い声でそう呟き。
「その殺された人達の中に…真実を知る人がいたかもしれない…という事ですか?」
が確信をつくようにアームストロングに問いかけた。
その問いにアームストロングは何も言わず、コクリと頷いた。
「しかし、本当に研究にグラン准将以上の軍上層部が関わっているとなると………ややこしい事になるのは必至だな。」
テーブルの上に広げられた地図をくるくるとしまいながら呟くアームストロング。
「そちらは我輩が探りを入れて後で報告しましょう。」
そう言うと、手に持っていた丸まった地図を脇へ抱え。
視線をスッとエドワードとアルフォンス、そしてに向けた。
「それまで少尉と軍曹。この事は他言無用で頼むぞ!」
後ろに控えるロスとブロッシュに言葉を投げかける。
ロスとブロッシュはビシッと敬礼をし、アームストロングの言葉に返事を返す。
「エルリック兄弟、そしては大人しくしているのだぞ!!」
「「「ええ!?」」」
言われた言葉に文句の声を上げるエドワードとアルフォンスと。
その声を聞けば、アームストロングは一瞬行動を止め。
スッと地図を開くと、第五研究所を指差し。
「むう!さてはお前達!!この建物に忍び込み、中を調べようと思っておったのだな!?」
その図星を突いた言葉にどきーーーんとしたエドワードとアルフォンスと。
エドワードとアルフォンスは目を丸くし、アームストロングを見つめるが。
は平然とした表情を浮かべていた。
「元に戻る方法があるかもしれんが、子供がそのような危ない場所へ赴くのはいかん!!!」
ごごごごごごごご、とアームストロングの存在が大きくなるような勢い。
その怖さ、存在感に怯えたエドワードは“わかったわかった”と連呼した。
「そんな危ない事……し、しないよ。なぁ、アル、。」
エドワードは肩のあたりに両手を持ち上げ、諦めるようなポーズ。
そして意見を求めるようにアルフォンスとに声を掛ける。
「えぇ。まだ死にたくないですし。」
「ボク達、少佐の報告を大人しく待ってます。」
エドワードの問い掛けに、は冷静沈着に呟き。
アルフォンスはコクコク頷きながら、先ほど報告すると言っていたことを思い出し、それを口に出した。
「……本当なのだな?」
今だごごごごごご、と存在感を感じさせるアームストロング。
その威圧感にエドワードとアルフォンスとはコクコクコクコク勢い良く首を縦に振った。
「…分かった。信じよう。では、我輩は探りを入れてくるとしよう。」
そう言うと、アームストロングは部屋のドアのほうへ足を向け。
ロスとブロッシュは部屋の外で待機をする事にした。
「エド……アル。行くんでしょ?」
アームストロングとロスとブロッシュが部屋から出て行き。
アームストロングの気配が遠ざかったのを確認すると、は二人に問いかけた。
勿論、が止めても無駄だと分かっていながらの問い掛けだが。
「当たり前だろ?」
「は危ないから、ここで待ってて。」
エドワードは苦笑しながら答え。
アルフォンスは優しい声色でに待っていてと呟く。
しかし、それを有無言わず呑み込むはずのない。
「いやよ!どうして!?どうして危ないから私は行っちゃ行けないの!?私は…ホムンクルスよ。死なないわ!」
悲痛な表情を浮かべ、それでもロスとブロッシュにばれないくらいの声の大きさで呟く。
しかし、エドワードもアルフォンスも頷くはずはなく。
「確かに…そうかもしれない。でも、目の前でが傷つくのを見ていたら…オレ達戦いに専念できない。」
ポンッとの両肩に手を乗せるエドワード。
心配そうな表情を浮かべ、呟くエドワードの瞳を見つめる。
「でも……」
「には無事に帰ってくるオレ達を待っていてほしいんだ。オレ達には…帰る場所があるって…感じさせてくれ。」
瞳を潤ませながら、それでもついて行きたいという。
エドワードは首を左右に振り、ジッとを見つめて呟いた。
「………うん……わか…った……」
納得はいかないものの、そうまで真剣に言われれば嫌とは言えず。
はしぶしぶ頷いた。
「ありがと、。」
頷いたを見て、エドワードは笑みを浮かべ。
アルフォンスは優しい声色でお礼を述べ。
「行くぞ、アル。」
「うん、兄さん!」
外をジッと見つめ、鋭い声で呟く。
コクリと頷き、顔を見合わせるとエドワードとアルフォンスは部屋のカーテンをロープのようにつなげると。
そこから地面に着地し、第五研究所へと駆け出した。
「…………エド、アル…絶対、無事に帰って…来てね。」
去っていった方を見つめ、呟く。
ギュッと胸の辺りで拳を握り締め、眉を潜める。
つらそうな表情で外をジッと見つめていると。
『どうして追いかけないんだ?』
「!?」
聞こえた声にハッとした表情を浮かべ、何処から聞こえてきたのかと耳を済ませる。
『ここだよ、ここ。』
そう聞こえてきたのは、の真後ろ。
そこには見知った姿の人物が立っていた。
「…………エンヴィー。」
「久し振りだね、。」
「なんの……用?」
が名前を呼ぶと、笑みを浮かべ。
エンヴィーはスッとに向かって歩き出した。
1歩1歩近づいてくるエンヴィーを見て、反射的に1歩1歩後ずさりする。
ぐいっ!!
すると、エンヴィーの手がの腕を捕らえた。
引っ張られ、エンヴィーの方へと身体が動く。
「〜〜っ!?」
すると一瞬のうちにはエンヴィーに唇を奪われていた。
ドンッとエンヴィーの胸を押し、間合いを取る。
「はぁはぁ……なに!?キスをするだけに来たっていうの!?」
外にロスとブロッシュの気配がない事に気づき、怒りの声を上げる。
しかし、エンヴィーは笑みを浮かべているだけで、何も言わなかった。
そしてクスッと鼻で笑うと。
「君にはここで待っていてもらってちゃ困るんだよね。ボク達の計画のために……」
「?」
エンヴィーの言葉を聞き、眉を潜める。
「計画………?」
「そう。計画。その計画には、君が必要でさー。」
クスクス笑いながら、鸚鵡返しするの言葉に答えるエンヴィー。
「それに…君が来れば鋼のおちびちゃんの命、助かるかもしれないよ?」
クスクス笑いながら呟くエンヴィーの言葉を聞き、目を見開く。
「どういうこと!?」
「さぁ?」
「……計画って何?」
何故エドワードの命が助かるかもしれないって言われるのか、という疑問が浮かび。
エンヴィーに問いかけてみる。
しかし、が想像したとおりエンヴィーにはごまかされ。
仕方なく計画の事を問いかけてみる。
「……教えたら協力してくれる?」
「……話次第でね。」
呟くエンヴィーの言葉に、話の内容次第で協力するかしないか決めると呟く。
しかし、その言葉を呟くと、エンヴィーはハァッと溜息をつき。
「それじゃ駄目。」
「協力する為に私が第五研究所に行かなければエドたちが死ぬ?」
むっとした表情を浮かべ、何かを諦めたような表情を浮かべると、問いかける。
すると、エンヴィーは笑顔でコクリと頷いた。
「……分かったわ。協力する。」
その言葉を聞くと、エンヴィーはニッコリ笑みを浮かべ。
「じゃぁ…計画を話すね。」
そう言うと、ストンとソファーに腰掛けた。
「さっさと……話してね?」
そう言うと、もエンヴィーの前に腰掛けた。
「簡潔に話すよ。君が核にしている賢者の石……それはボク達が核にしている賢者の石とは少し違うんだよ。」
「なん……ですって?」
呟きだしたエンヴィーの言葉に驚きの色を隠しきれない。
目を見開き、エンヴィーに問いかける。
「君の賢者の石は今まで作った賢者の石よりも完璧に近い。その石を使えば、より完璧に近い賢者の石を作る事が出来るかもしれないんだ。」
そう言うと、スッとを指差した。
「私の……命が必要って事?」
その呟きにエンヴィーはコクリと頷いた。
「…………どうし……てよ……」
かすれる声で、そして振るえる声で今にも泣き出しそうな表情で呟く。
そんな表情をエンヴィーは見つめていられず。
「あらかじめ第五研究所には賢者の石の練成陣が描かれている。そこに君が立ち、鋼のおちびちゃんが錬金術を使えば……君は練成反応に吸い込まれ……より完璧に近い賢者の石に練成される。」
そういわれた瞬間、はグッと胸の辺りで拳を握り締めた。
「私に……死ねと言うの?」
「……君が賢者の石に練成され。その石は鋼のおちびさんの元へとたどり着く。」
「…え?」
の問い掛けに答えず、言葉を続けるエンヴィー。
その言葉には間の抜けた声を上げる。
「その石を使い、鋼のおちびさん達は人体練成の…真理を見て、扉を開ける。人柱候補へとなるんだ。」
その言葉を聞き、目を見開く。
そしてダンッと立ち上がった。
「それでもっ……完全な人柱候補へとなれるとは限らないっ!!!」
「……ああ。でも……なるかもしれない。」
そういわれ……グッと奥歯を噛み締める。
「確実な人柱候補となれば……エドとアルは……殺されない……でしょ?」
その問い掛けをエンヴィーへとぶつける。
人柱候補は殺してはいけない。
それがあの人との約束ごとだったから。
エンヴィーは静かにコクリと頷いた。
「このまま……私が拒めば……他の人柱候補が完全な人柱候補となり、用済みとなった鋼のおちびさん達は殺される。」
その言葉を聞けば、堪えていた涙が溢れ出すのは当たり前で。
「っ!!!」
キッとエンヴィーを睨みつけると、唇を噛み締めた。
シンッとした空気の中、見詰め合うとエンヴィー。
そして、エンヴィーは静かに“決めるのは次第。鋼のおちびさんの命を助けるのも……次第”と呟く。
エンヴィーは第五研究所の方へと駆け出した。
「………私の命……投げ出しても……絶対助けるから。」
そう呟くと、はエドワードとアルフォンス、そしてエンヴィーが出て行った窓へ足を掛け。
外へと飛び出した。
私の所為で……
二人が死ぬことはないわ………
私はもともと……たくさんの人間の犠牲あって生まれた命
この命 貴方達の命のために投げ出すのならば……拒みはしない……ためらいはしない
だから……決して死なないで……
私が死んだからって……立ち止まらないで……
私は……もう……汚れているから……
エドワード…
貴方に愛してもらう価値なんて……ないから
……次会うときは……さよなら……だから……
はい!!第6話終了!!!
いやぁ〜……ネタバレしてます!
が死にますぅぅぅぅ!!(泣
人柱候補になるとどーなのかってまだ分からない為……
あんな書き方しましたぁ〜ww
ということで、失礼しますねww
次回で……最終回?(汗汗
どーなるかは分からないですが……楽しみにしててくださいvv
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