「はぁはぁ……はぁはっ………っはぁ……」
肩で荒い息をしながら、額から流れる汗を拭う。
息を整えながら、エドワードとアルフォンスが居るであろう第五研究所へと足を向ける。
第五研究所に到着すれば、エドワードとアルフォンスとお別れとなってしまう
それでも、エドワードとアルフォンスを助けたいという一身で駆け続けた。
「私が……第五研究所内にある練成陣…の中央に立って……エドが……錬金術を使えば……」
そこまで言うと、はグッと下唇を噛んだ。
「私は……賢者の石───に……っ。」
そう呟くと、は目をギュッと閉じ、駆け出した。
第五研究所へと────














Nation Alchemist Murder 第七話














「ここ………が。」
そう呟くと、は目を見張った。
「───アル!?」
「…!?」
そこには一人の鎧の人物とアルフォンスが戦っていた。
見た感じではアルフォンスの方が押されている感じで。
の声に気づき、アルフォンスは驚きの声を上げた。
驚くのは当たり前だろう。
エドワードとアルフォンスはに待っているようにと伝えたのだ。
その本人がここに居るのだから。
「何でここに!?」
「エドは!?エドと一緒じゃないの!?」
「兄さんは中に居るよ!」
アルフォンスの問い掛けに、声を張り上げて問いかける
の問い掛けに、アルフォンスは同じく声を張り上げて答える。
その答えを聞き、は悩んだ。
このまま中へ入ってエドワードの元へ向かってもいい。
しかし、そうなると自分の死に目に──自分が賢者の石に練成されるとき、アルフォンスと顔をあわせることがないのではと。
「……アルも一緒に───」
「オレから逃げられると思ってんのかぁ〜」
がそう呟いた瞬間、アルフォンスと対峙していた鎧の敵が声を上げた。
持っていた刃物をゆっくりと上に持ち上げ、ゆら〜りと歩き出す。
「邪魔はさせない───」
そう呟くと、の姿が微かに揺らいだ。
揺らいで、気体の姿となり鎧の敵の周りを揺らいだ。
しかし────
「っ!?」
「オレにはそんなの効かねぇんだよぉ〜〜!」
そういいに向かって刃物を振り上げた。
しかし、はいっこうに動こうとせず、振り上げる鎧の敵の動きを見つめていた。
スカッ!!!
「んなっ!?」
「私はホムンクルスよ……そして能力は身体を気体に変える……」
無駄だという事を相手に伝える為に、呟き始める
「がぁぁぁ!!勝ち目ねーってか!?」
そう叫ぶと、鎧の敵は素早い動きでとアルフォンスの前から姿を消した。
「アルっ!!急いでっ!!」
「えっ!?」
「エドのところに向かうのよ!」
切羽詰ったような声で声を張り上げる
アルフォンスは振り返り、に問い返す。
は、駆け出しながら後ろに居るはずのアルフォンスに声を掛ける。
それを聞き、アルフォンスは無言のままにの後を追いかけた。











「………だ………よ……ケが…!」
足を速めて走っていると、遠くから聞こえてきた誰かの声。
その声に聞き覚えのあるは眉を潜めた。
その事にアルフォンスが気づき、声を掛けてきた。
「どうしたの、?」
「うん……聞き覚えのある声が…」
アルフォンスの問い掛けに、静かに答える
どこか迷いのある口調にアルフォンスは首を傾げながら走った。
「……ら…な人柱……ところだった…………のか?」
「っ!!!」
ところどころだが、近づいているのか次第に声がはっきりと聞こえてきた。
その声が誰のものなのか気づくとは目を見開いた。
「アル!お願い先に行って!!急がないとやばいわ!!」
走りながらも、アルフォンスは自分のペースにあわせて走ってくれていると気づいていた。
しかし、何も言わずに一緒に走っていたが───
声の主が誰だか気づくとはっとした表情を浮かべ。
青い表情を浮かべながらアルフォンスに声を上げた。
「え?でも……」
「私は大丈夫よ!だから……お願い、急いで!」
「あ…うん。分かった。」
そう言うと、アルフォンスは詳しい話を聞かずに急いで駆け出した。
そのペースはさすがエドワードと兄弟であると思わせるほど早かった。
は胸を撫で下ろし、その中で自分の終わりを感づき唇をかんだ。
そして思い出す、エンヴィーのあの言葉。
『完璧な賢者の石へと練成される。』
賢者の石の練成陣の中へと立ち、そこでエドワードかアルフォンスが錬金術を使う。
それで練成陣は発動し───はその練成反応に吸い込まれ、賢者の石へと練成されなおされる。
即ち、元の姿に戻るという事だった。
自我のない、ただの石ころへと───。
「……エド、アル。もうすぐ…………お別れ、だね。」
寂しそうな笑みを浮かべながらも、足はエドワード達の元へと向かう。
スピードも緩めず、ただひたすら運命へと立ち向かうだけだった。
別れは寂しいけど、いつか素敵な出会いが待っている。
「……ちゃんとした…人間に……今度は生まれたいな。」
空を…否、天井を見上げながら、一つの願いを呟いた。
叶う事のない、寂しい願い。
走りながら、瞳を閉じ、再度瞳を開ける。
その瞳には決意の焔が見えていて、は決心した表情のままエドワード達、そしてホムンクルスであるエンヴィーたちのまつ第五研究所最深部へと向かっていった。

















「エンヴィー、もう死んでる。」
「あ?あらー根性無いなぁ…」
ラストの言葉に手を止め、視線を向ける。
そして、再度鎧を見つめると───既に魂を定着させている血印が壊れていて、魂は既にそこにはなかった。
「兄さん!!!」
「アル!?」
そんな会話の中、飛び出したのはアルフォンスだった。
声を張り上げ、はしらに背を預け座り込むエドワードを見つめた。
そんなアルフォンスの声に驚き、エドワードは驚きの表情を浮かべ視線を向けた。
「兄さん…その怪我っ!!」
「なんとも無い。それより、よくここまで来れたな。」
アルフォンスの言葉に首を左右に振りながら答え。
忍び込むのにエドワードが入っていった場所はアルフォンスでは通る事が出来ないのは実感済み。
なら、アルフォンスは一体何処からやってきたのか?という疑問をエドワードはアルフォンスにぶつけた。
「ああ。それならが。」
が!?」
アルフォンスの言葉に驚きの声を上げたエドワード。
あれほど宿で待っていろと言ったのだ。
来ていると分かれば驚くのは無理もないだろう。
は今何処に居るんだ!?」
「今、こっちに一人で向かってるはずだよ。」
「馬鹿!なんで一人にした!!」
アルフォンスの言葉で、が今一人だという事が判明した。
すると、エドワードは真剣な表情を浮かべたまま怒鳴り散らした。
「だって、が。」
「いい加減、ボク達が居る事思い出してくんない?」
アルフォンスが何かを呟こうとした瞬間、エンヴィーが間を割って会話に入ってきた。
右手で刀を持ち、刃のない方──つまり、柄の部分を肩に当てながら呟いていた。
「全く、どうしたもんかなー……」
「人柱候補が二人もこんなところにたどり着いちゃうなんてね。」
エンヴィーの呟きを紡ぐように、呟いたのはラスト。
胸の前で両腕を組み、溜息混じりに言った。
エンヴィーはエドワードに視線を向け、歩み寄ると、目の前に剣を差し杖にするような形にしてしゃがみ込んだ。
「お久し振りだね、鋼のおチビさん。ここにたどり着くとは流石だね、褒めてあげるよ。」
ニッコリと微笑みながら、呟くエンヴィー。
しかし、口調が全く怖く、恐怖を感じさせた。
「でも、まずいもの見られちゃったからなぁ………」
そこまで言うと、スッと微笑んでいた表情が真剣な表情に変わった。
ニヤッと口元に笑みを浮かべながら、エドワードに顔を近づけて。
「やっぱりあんたも殺しとこうか?」
「やめて!!!!」
エンヴィーの言葉に、怒りに震えたエドワード。
殴りかかりそうな勢いなのに、アルフォンスは気付いていた。
しかし、エドワードを止めようと声を出そうとした瞬間、第三者の声が響き渡った。
「…?」
その声の主に一番に気付いたのは、エドワードだった。
「やっと来たんだ、。」
「約束どおり……来たわよ、エンヴィー。」
フゥッと溜息をつきながら呟くエンヴィーを、はキッとにらみつけた。
「約束?一体何なんだ?」
の言葉を耳にし、眉を潜めながら問いかけるエドワード。
。一体何なの?約束って?」
エドワードは勿論の事、アルフォンスも疑問に思わずには居られず、問いかけた。
しかし、は視線を地面に向けるだけで何も言わなかった。
否、言う事が出来なかったのだ。
「……。」
ただ無言では静かに練成陣の中へと足を向けた。
そしてエンヴィーをにらみつけた。
「これで…満足?」
低い声で呟くにエンヴィーは笑みを浮かべた。
「上出来だよ、。」
そんなやり取りをただ、見つめるだけのラスト。
何が何だか分からずじまいのエドワードとアルフォンス。
事実を知っているのはエドワードとアルフォンス以外の、エンヴィー、ラストの三人だけだった。
「何……訳の分からねぇこと話してやがる!!」
そう言いながら、駆け出したのはエンヴィーの予想通りエドワードだった。
アルフォンスは何かたくらみがあるのかと思い、行動には移さなかったが。
エドワードが駆け出した瞬間“兄さん!”と叫び、エドワードの行動を止めようと試みたが、意味無く終わった。
の立つ、そしてエンヴィーの居る練成陣へと足を踏み込むエドワード。
その瞬間、エンヴィーは練成陣から外に飛びのき──それと同時にエドワードが両手をパンッと合わせた。
その時、アルフォンスにはエンヴィーとラストが微かに笑ったことに気付き。
「兄さん駄目!!戻って!!」
叫んだが、後の祭り。
パンッと両手を合わせた瞬間、いつもと違う感覚にいち早く気付いたのはエドワードだった。
普通の練成陣は両手をパンッとあわせ、その陣に手を合わせなければ発動しないのだが。
賢者の石を持つが練成陣の中央に立っている。
つまり、陣に手を合わせなくても練成反応が開始してしまったのだ。
「キャァァァァァァアアァァァァァァァ!!!!!!!!」
掠れるようなの悲痛の悲鳴。
その声に気付き、エドワードはハッとした表情を浮かべる。
が、練成をストップさせようにも方法が分からず、ただに駆け寄るだけだった。
しかし、練成反応が激しい為か、青白い稲妻の練成反応の中に居るに近づく事が出来なかった。
「はっはっは!これで完成するっ…賢者の石がっ!完成品に近い…賢者の石が!!」
エンヴィーは喜びの……歓喜の声を上げていた。
「良くやったわね、エンヴィー。これでお父様は喜ぶわ。」
クスクス笑いながら、やはり嬉しそうに呟くラスト。
そんなラストの口から出てきたお父様と言う言葉。
しかし、の異常に意識が向いているエドワードとアルフォンスはそんなラストの発言に気付いては居なかった。
!!!!」
!!」
エドワードとアルフォンスの悲痛の叫び。
しかし、には届いてはいなくて。
「無理だよ。今のには弟君の声は勿論の事、鋼のおチビさんの声だって聞こえちゃいないよ?」
笑いながら、必死に叫ぶエドワードとアルフォンスに声を掛けた。
!!何してるんだよ!!」
「一緒に……一緒に旅をするんだろ!?」
アルフォンスはそんなエンヴィーの言葉を気にもせず、叫び続けた。
エドワードはが牢獄から出てきたときに約束した一緒に旅をするという事を口にした。
その時、がピクリと反応し、エドワードの方に視線を向けた。
!」
!!」
「…エド……アル…ごめ……ね。私……無理……の。お別……なのよ………」
二人の叫びを無視し、懸命に言葉を紡ぐ
途切れ途切れ言葉を紡ぎ、自分の限界を示していた。
「一緒に……居たか……た。でも………お別……だか………さよ……ら、エド………アル。」
そう言った瞬間、の姿が真っ赤に輝き始めた。
「ようやく出来上がる………あははっ……ははははっ!」
その姿を見て、エンヴィーが歓声を上げた。
パァァァァァァァァンッ!!!
そして真っ赤な粒を撒き散らし、赤い石……賢者の石へと変化した
?」
エドワードは信じられず、石へと変化したを見つめた。
しかし、石へと変化したには自我があるはずもなく、エドワードの言葉に返事などしなかった。
「こ……の……」
「お?」
ズッ……、と立ち上がりながら呟くエドワード。
傷ついた左わき腹を抑え、勢い良く足をエンヴィーへと振り上げた。
「おお!?」
驚きの声を上げ、間一髪のところで避けたエンヴィー。
アルフォンスはただ、石となったを見つめ、放心状態だった。
「あらー……やる気満々だよ、このおチビさん。」
ふーっと息をはきながら、エンヴィーを睨みつけ体制を低くするエドワード。
エンヴィーは右手で頭部をガシガシと掻きながら溜息をつき。
「やだなぁ。ケンカは嫌いなんだよね。怪我したら痛いしさぁ。」
そういいながら、面倒くさそうな表情を浮かべるエンヴィー。
しかし、エドワードは辞めるつもりは無いらしく、エンヴィーを睨みつめたままパンッと両手を合わせた。
「チビチビとうるせーんだよ!てめぇが売ったケンカだろが!!買ってやるからありがたく──」
ゴキンッ………
叫んだ瞬間、何か鈍い音が響いた。
一瞬何が何だか分からず、エドワードは唖然とした表情で“え?”と呟いた。
「なーーーーーーーーーーーーーー!!!!こんな時にぃぃぃ〜〜〜〜!?」
「……機械鎧の故障みたいね。」
「ラッキー♪」
叫ぶエドワードをよそに、冷静に呟くラスト。
エンヴィーは両手を上に上げ、嬉しそうにつぶやいた。
ドスッ!!!!
「げふっ!」
そして同時に激痛がエドワードの腹部を襲った。
エンヴィーの蹴りがエドワードの腹部に命中したのだ。
「殺すってのは冗談。腕が壊れて良かったね。余計な怪我しなくて済んだんだからさ。」
「いいこと坊や。あなたは“生かされてる”って事を忘れるんじゃないわよ。」
ニッコリ微笑みながら、エドワードの髪を離すエンヴィー。
身体に力の入らないエドワードは勢い良く地面へと倒れ込む。
が、間一髪のところアルフォンスがエドワードを支えた。
「兄さん!」
「アル……オレ……を……」
「兄さんは悪くないよ!!」
絶望に浸っているエドワードの呟きをアルフォンスは必死に否定した。
エドワードは決して悪くない、と。
エンヴィーとラストはそんなエドワードとアルフォンスに背を向け、地面に落ちていた賢者の石を手にし立ち去っていった。
全ては計画通り。
最終段階まで、計画は進んできているのだから。














───エド、アル。



私はいつでも……傍に居るよ。



──私はいつでも────二人を応援してるから……



忘れないでね……私の事を───。













.......The end













って事で、Nation Alchemist Murderは最終回を迎えました!!!
ヒロイン死んだーーーーーーーーー!!!!(笑
くそぉって感じっすね。
まぁ……初めからホムンクルスのヒロインは死ぬという設定で書いてきたのですけどね。
じゃないと、原作やアニメと話が合わない(笑
でも、今度は合成獣なヒロインもいいかなーみたいなw
まぁ……ちゃんと設定を考えてやりますけど。
今はまだもう一つのドリー夢を完成させねばなりませぬ。
むぅ………難しい。
さて、この話はいかがでしたでしょうか。
最後のまとめ方が難しく………困り果てました。
おかげで何ヶ月(?)も悩んでしまいました。(ぉぃ
嘘です。
実は、スランプ陥ってました。
何とかぴのこ村のスケジュール会話でスランプ脱出は出来たのですが。
一時、文章の書き方がどうも気に食わなくて駄目で駄目で。
こんなのじゃUPできんーってちゃぶ台ひっくり返すくらい…
いえ、ひっくり返しはしていないのですがね。
と言う事で、全7話をここにお送りします!






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