「私だけにはくれないのかね?」

そんな、あの人の言葉に答えようとしている私が居た……











This time to you











私だけにはくれないのかね?


そんな言葉を聞いたのは、去年の今頃だった。
は、そんな言葉を思い出しながら東方司令部の前に佇んでいた。


「どうしよう……本当に来ちゃった 会える……のかな」


ドキドキと高鳴る鼓動。
けれど、ここは東方司令部。
そう簡単に入れるはずもない場所。


「すみません」


「はい 何でしょうか?」


丁度司令部内から出てきた女性に、は声を掛けた。
金髪のキリッとした表情の、綺麗な女性。



ロイさんは……こういう人からも貰っているのかな…?



そんな事を考えてしまう。
は慌てて首を左右に振り、そんな考えを消そうとした。


「あ、もしかして……大佐の言っていたちゃん?」


「え?」


いきなり名前をあてられたことに驚いた。


「お話は大佐から聞いているわ どうぞ、中へ」


「え、あ……はい」



どうして分かるの?
というか…私、ロイさんに今日行くって話してない…



いきなりの展開に、は頭が追い付かずに居た。
それでも、目の前の金髪の女性は歩みを止めずひたすらある方向へと向かっていた。













コンコン


「誰だ」


「リザ・ホークアイ中尉です」


「入れ」


「失礼致します」


簡単なやり取りの後、リザと名乗った女性は扉を開いた。
まずはリザが司令室内に入り、中に居る男性と話をしていた。


「……ということで、来ましたよ、大佐」


「そうか 入れてくれ」


簡単に説明をし終えると、少しだけ溜め息が聞こえた。
その溜め息と間髪入れずに聞こえたのは、の会いたかった人。


ちゃん、入っていいわよ」


軽い声が聞こえる。
仕事場なのに緊張感のない、親しみのある口調だった。


「失礼します……いきなり、お邪魔してすみません、ロイさん」


視線を向ければ、大きな机の前に座るロイの姿があった。
その左右には山積みになった書類の山。


「………また、仕事溜めていたんですね」


どうりでなかなか会えないわけだと、今日初めては悟った。


「いや、溜めていたわけではないのだよ、
 私にもいろいろと忙しい事があってね」


「変わっていませんね、ロイさん」


その様子に、苦笑が漏れる。
最後に会ったのは結構前のはず。

変わっていたらどうしようかと、内心ハラハラしていたのも確か。


「そういうこそ、変わっていないではないか」


「私は変わらず、ロイさんを思い続けていますよ?」


「去年は司令部のみなにチョコを配ったというのにか?」


ロイの言葉に、言葉が詰まる
情けない笑みがこぼれる。


「では、私は失礼致します」


「ああ」


頭を下げ、立ち去るリザの後ろ姿を見送る
そして、扉が閉まった瞬間ロイの方へと視線を向けた。


「綺麗な方ですね」


「怒ると怖いがね」


の言葉に苦笑しながら答えるロイ。
ちょっとだけはジェラシーを感じてしまった。


「今日は、ロイさんにバレンタインのチョコを持って来たんです
 今年は……ロイさんだけに」


頬が徐々に熱くなっていくのが分かった。
は照れから、徐々に俯き始めた。

そんなの視線に、靴が映り込みパッと視線を上げると。


「去年の私の言葉を覚えてくれていたのか?」


目の前にいつの間にか歩いて来ていたロイ。
クイ、とロイはの顎に指を掛け上を向かせた。


「………ロイさんの、願いでしたから
 私も、ロイさんが好きですし……だから、その…今年は喜ばせたいなと思いまして……」


恥ずかしさから言葉は途切れ途切れとなってしまう。
ロイに掴まれている顎から、火が噴き出しそうなくらい恥ずかしかった。


「それは、なんとも嬉しい言葉だ …有り難く頂くとするよ」


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜はいっ」











............................end



バレンタインデーのフリー夢小説です。
ロイが何だかロイじゃないような気がします。
一体誰!?みたいな……つまり、ロイの口調が掴めていない証拠…
煤@オーノー!

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