───私の招待を勘付いていたようだけど・・・寝てしまったみたいね、ふふふ。
ルイは眠っているの後姿を見つめ、心の中で呟いていた。
───死んでもらうわよ・・・貴方には。
ニヤリと笑みを浮かべると、ルイは手に持ったナイフをに振り下ろした───・・・・・
















隠されしセレトの秘石 第十二話














「!?」
「今ここで・・・貴方に殺されるわけにはいかないの。」
驚くルイに静かに語りかける
はナイフがに刺さる直前に痛む身体を無理矢理動かし、ナイフから避けたのだ。
ゆっくりと身体を起こし、ルイを睨みつける
「動けな・・・・いはずじゃ・・・・」
「えぇ・・・動けないはずよ。でもね・・・ここで死ねないって言ったでしょ!?そのためには・・・無理矢理身体を動かすのよ!!」
信じられないものを見るかのように指を差し呟くルイを睨みつけ怒鳴る
エドワードとアルフォンスと約束したと言う事も、の身体を動かす力となっているのだ。
エドとアルとも・・・『大丈夫だ』って約束した・・・だからっ・・・・
「でも・・・動きは鈍いわね。ふふふ・・・そんな身体で私に勝てるつもり?」
「勝つもりなんてない!エドとアルが来るまで・・・逃げるのみ!!!」
そう呟くと、は急いで窓を開け、外の空気を中に取り込んだ。
パンッと両手を合わせると、は両手を口元に持ってきた。
フゥッと息を吐くと、ルイに向かって強い風が吹き付けた。
こうやってでも・・・・逃げ延びないと・・・
は得意とする風の錬成で上手くルイの攻撃を避ける。
「もしかして・・・病室から出るつもりですか?」
「出る前に出られないでしょ?関係のない人まで巻き添え食わせたくない。」
「あっははははっ。本っ当、お人よしね、貴方は。」
の言葉を聞き、腹を抱えて笑い出したルイ。
「それに、この身体で外へ出ても、逃げ切れないし・・・逆にやられる可能性もあるからね。」
「・・・なるほどね。貴方の考えは本当に面白いですね。」
クスクスと笑いながらの言葉に耳を傾け始めたルイ。
しかし、を攻撃する手をやめようとはしなかった。
ガチャ・・・
さん。検診に来まし・・・・」
ザシュッ!!!
の病室に入ってきた看護婦の喉笛を引き裂き、血が噴出した。
「!!」
「邪魔はさせませんよ。」
驚くに攻撃を仕掛けながら、コテンと倒れる看護婦に冷たい言葉を投げかけるルイ。
既にこの時、の動きは止まっていた。
静かに看護婦の姿を見つめていた。
あたしの所為で・・・あたしの・・・所為・・・・で・・・・
「ぃっ・・・・ぃや・・・・いやぁぁーーーーーー!!!!」
は両手で頭を抱え、大きな声で叫んだ。
「!?」
ルイはすぐにの異変に気がついた。
の首の真下、胸の中央にセレトの秘石の紋様が浮かび上がり始めていたのだ。
危ないと思い、ルイは急いで引き下がろうとした。
が、一歩遅かった。
秘石の紋様は輝き放ち始め、病室中を真っ赤な光が覆った。
すると、倒れた看護婦の傷が癒え始めた。
血がシャボン玉のように浮かび上がり、看護婦の傷口から身体の中に入っていく。
そして、傷口が消え、看護婦は意識を失った。
「「!!!!」」
エドワードとアルフォンスは、外で聞き込みをし、の身体から放たれる紅い光が病室から漏れている事に気がつき、駆けつけてきた。
丁度二人が同時に声を上げ扉を開け放った。
「・・・エ、ド・・・・ア・・・・ル・・・・・」
そう呟くと、は静かに宙から地面に身体を降ろし、膝を地面についた。
「大丈夫か?」
「う・・・ん・・・・」
「くっ・・・威力が・・・・上がっている?」
どうやらティッドからの刺客は紅い光に弱いらしく、ヨロヨロと壁にもたれながら呟いていた。
そんなルイをは静かに見つめていた。
パンっと両手を合わせ、右手の指を左腕につけているリストバンドにこすり付けた。
火花が散り、雷がルイの身体を襲った。
「!?」
その瞬間、ルイは身体を仰け反らせた。
そして動かなくなり、徐々に身体を保つ事が出来ずに、崩れ去っていった。
「ルイさんが・・・・敵だったなんて・・・・」
「ルイのピアス・・・・あれがイレズミの代わりだったようだな・・・・」
「そうみたい・・・・・ね。」
アルフォンスは静かに崩れ去るルイを見つめ、一人呟いていた。
エドワードは、ルイに初めて会ったときの違和感の正体を今理解した。
イレズミの代わりに紋様が描かれていたピアスをしていたルイ。
そのピアスを見て、エドワードは違和感を覚えていたのだ。
「エドとアルが来てくれて・・・・良かった・・・・」
ホッと息を吐きながらは小さく呟いた。
「なんでもっと早くルイを倒さなかったんだ?」
「倒さなかった・・・んじゃない。倒せなかったのよ。」
「「え?」」
エドワードの問いかけの言葉を訂正するように、は一息つくと呟いた。
その言葉の意味が分からず、エドワードとアルフォンスは首をかしげた。
「身体の痛みが酷くて・・・ルイの攻撃を避ける事で精一杯だったの。だけど・・・さっきはルイ、思いっきり隙を見せてたから倒せたって感じ・・・・」
「そういうことか・・・悪かった。」
「ごめんね、。」
「なななな、なんで二人が謝るのよ?」
の言葉を聞き、納得したエドワードとアルフォンス。
すると、二人はに謝り始めた。
「だって・・・ルイさんを───・・・ルイを連れてきたのはボク達だから・・・」
「オレ達がもっと早く気付いてればこんな事にはならなかったし・・・やっぱり知らねぇ奴一人をの元に残したのも、間違った選択だったし・・・」
「あたし、そんなこと気にしてないよ?」
自分達が悪かったと、話し始める二人。
そんな二人をよそに、笑顔で答える
が気にしなくても、ボク達が気にするの。」
「じゃぁ、さっきの『ごめん』って言葉でチャラ。OK?」
「・・・・ああ。わぁーったよ。」
クスクスと笑いながら言うに、参ったと言わんばかりに後頭部を掻き、エドワードは了解した。
は、絶対言った事は引かない。
それをエドワードもアルフォンスも知っている。
だから、何も言わなかった。
「ほら、ベッドに横になったほうがいいよ。」
「うん。」
「・・・なんだ、その手は。」
アルフォンスはの横に膝をつき、の肩に手を置いた。
コクリと頷くは、エドワードを見つめた。
エドワードの目の前には、自らに両手を差し伸ばし、何か言いたげな表情をするの姿があった。
「おんぶ。自力じゃベッドに行けないから〜」
「〜〜〜〜ったく。」
の言い分も確かなものだった。
身体は痛み、しかもついさっきまでその身体を無理矢理動かしていたのだ。
ハァッと大きく息を吐くと、エドワードはの身体を持ち上げた。
それはおんぶではなかった──
「え!?」
「身体痛いんだろ?だったら、こうやって運んでやるよ?」
驚くをよそに、エドワードは意地悪そうな笑みを浮かべた。
はエドワードにお姫様抱っこをされていたのだ。
エドワードに好意を寄せているからしたら、気が気じゃなかった。
ちょちょちょちょっ・・・ちょっとぉ〜〜〜!?
心の中ではグルグルと風景が回転するほど同様していた。
「・・・・ありがと。」
しかし、現実ではは落ち着いた感じにニッコリ微笑み、お礼を言った。
「あれ?・・・・」
「どうかした、アル?」
ベッドに身体を預けたを見つめ、アルフォンスが何かに気付いた風だった。
そんなアルフォンスを見て、は首をかしげた。
何かおかしいところがあるかな・・・?
「秘石の紋様・・・消えてないよ。」
「「!?」」
アルフォンスの言葉に驚き、は服を軽く下にさげ紋様を確認した。
エドワードもアルフォンスの言葉に驚き、勢いよくの方に視線を移した。
「・・・・本当、だ。」
自らの胸の中央、首の真下に浮かび上がっている秘石と同じ紋様。
はそれを確認すると、ゆっくりと顔を上げエドワードとアルフォンスの方に視線を移した。
「完全復活・・・・したってこと・・・・だよね、これって・・・」
「だよ・・・な。」
の途切れ途切れの言葉に、エドワードは静かに答えた。
アルフォンスは手をアゴらしき部分に当て、何かを考える素振りをした。
「アル?」
「それなら、町で聞き込みしないで先を急いだ方がいいんじゃない?建物があるって事は分かったんだしさ。」
「そうだな・・・完全復活したんだ。先を急ごう。」
「でも、まずはの身体が完全に回復しないと、ね。」
ニッコリ微笑み、アルフォンスは近くに置いてあったイスに腰を掛けた。
置くからもう一つイスを取り出し、エドワードに差し出すアルフォンス。
「ごめんね・・・いろいろと迷惑かけちゃって。」
「迷惑だなんて思っちゃいねーよ、バーカ。」
「馬鹿って言わなくてもいいでしょぉ〜!?」
そんな二人の様子をジッと見つめたまま、静かに答える
そんなに笑いながら、軽く返すエドワードの言葉を聞き、はプゥッと頬を膨らませた。
大好き・・・この先何が待ってるか分からないけど・・・それでも、大好き・・・・
プゥッと頬を膨らませたまま、心のうちにしまい込む気持ち。
アルフォンスはの気持ちに気付き、エドワードの鈍感さを教えてくれた。
勿論、だってエドワードが鈍感なのは知っていた。
それでも、好きと伝えないと笑って答えた。
・・・・間違えたかな・・・選択。
ハハハと笑いながらは内心呟き───
「どーしたの?」
「!?なっ何でもないよ。」
アルフォンスの問いかけに、は我に返った。
ハッとして、アルフォンスの顔を見つめ、にこっと笑い答えた。
父さんに会える・・・話が出来る・・・・
の頭の中はそれだけで一杯だった。
グルグルと巡る思い。
「・・・・やっぱり・・・・」
「あ?」
「やっぱり、サトリート砂漠の建物には・・・・あたし一人で行った方がいいんじゃないかな・・・?」
「なっ何言ってるんだよ!!折角三人でここまでやって来たのに・・・・三人で行こうよ!!」
いきなり発したの言葉にアルフォンスは驚き、叫んだ。
ガタンとイスを倒し、立ち上がると、アルフォンスはを上から見下ろして叫んだ。
そんなアルフォンスを静かには見つめた。
「よく考えると、この事はあたしの問題だと思う。確かに今までエドとアルに一緒に手伝ってもらってたけど・・・それでも、ここまでにしておいた方が───」
「何馬鹿な事言ってんだよ。オレ達は、ここで引き下がるつもりはさらさらねぇぜ。」
「そーだよ!何度も言ったじゃないかぁ。」
「でも・・・・」
エドワードとアルフォンスの言葉を聞き、言葉を濁す
何か言いた気な素振りをしているのだが、何も言おうとしない。
「オレ達の命の安全を考えてるんだろ?」
ビクッ・・・・
「・・・やっぱりな。」
エドワードの言葉には、思いっきり反応した。
その様子を見て、エドワードはフゥッと溜息を付き呟いた。
「だって・・・あたしの中に眠るセレトの秘石の力が完全に復活した・・・もう、何が起こるか分からないんだよ?あたしは、自分の事よりも、エドとアルの命の方が大切。」
「そんな事、ボク達は分かってるよ。」
「分かってない!!だから、一緒に行くって───」
「いい加減にしろっ!!!」
「っ!!」
の言い分も間違ってはいなかった。
が、エドワードとアルフォンスからしたら、一人で行かせるほうが心配だったのだ。
そんな、分かっていないにエドワードは大きな声で叱咤した。
そのエドワードの声に、はビクリと肩を震わせた。
「何よ・・・怒れば・・・怒鳴ればあたしが静かになるとでも思ったの!?」
はエドワードの怒りに負けないように、キッと睨みつけながら叫んだ。
そんなの一面を見て、アルフォンスは何も出来ずに見つめていた。
「いい加減にして欲しいのはこっちよ!!!あたしはっ・・・あたしは、二人の事を心配してっ!!!」
そう言うと、は一瞬視線を外した。
間があき、は息を呑んだ。
「怖いの!!!あたしは、二人が死んじゃったらって考えると怖いのっ!!今までだって、そうだった・・・いつ死ぬか分からない中で戦い続けて・・・怖かった。いつもエドとアルの事を気にしてた。だからっ・・・」
「逃げるのか?」
「逃げてないっ!!あたしは逃げようなんてしてないっ!!!」
の言葉を聞き、エドワードは静かに問いかけた。
その問いかけには大声で答えた。
自分に言い聞かせるように───
「それを逃げてるって言うんだよッ!!は恐怖から逃げようとしてるだけじゃないかっ!!!」
いきなりアルフォンスが叫んだ。
その声にはもエドワードも驚き、アルフォンスを見つめた。
「ア、ル・・・・」
「ボク達が死ぬかもしれないっていう恐怖から、は逃げようとしてるじゃないか!!」
「違うっ!!!あたしはっあたしはっ・・・!!!あたしは逃げようとしてないっ!!!」
「傍から見れば、それは逃げだよ、!!ちゃんと考えて!!ちゃんと前に進んで!!」
「エドもアルも何も分かってない!あたしのこと分かってない!あたしは考えたの!!考えた結果がこれなの!!だから──」
「分からねぇよ。」
エドワードを抜かした二人の口論が続いた。
そんな中、エドワードはのある言葉に反応し、の言葉を遮って静かに言い放った。
冷たく、今までに見たこともないエドワード・・・
「話してくれなきゃ分かんねぇんだよっ!!話もしないで分かってくれだと!?ムシのいい事言ってんじゃねぇ!!」
「っ・・・」
「そうだよ、。ボク達の事を心配してくれるのは嬉しいよ・・・でも、他にも道があるかもしれないじゃん。ボク達がいるから、前に進めるって事もあるでしょ?」
「一人で考えねぇで、オレ達の事も頼ってくれよ・・・何のためにオレ達はここにいるんだ?」
力強く怒鳴り散らすエドワード。
そのエドワードの言葉がの胸を突き刺した。
アルフォンスも優しくに語りかけ、エドワードは静かに、静かに優しい目でを見つめた。
嬉しい言葉を、にかけてくれた。
「・・・・エドもアルも・・・人がよ過ぎるよ・・・」
そう言うと、はベッドに身体を埋めた。
「ここであたしの言うとおり、別れておけば寿命が延びたかもしれないのに・・・エドもアルも・・・馬鹿だよ。」
片腕を瞳にあて、振るえる声で呟く
腕の隙間から頬を伝って一滴の涙が流れ出てきた。
「本当に・・・ここで別れなくていいのね?」
「ああ。オレはと一緒にサトリート砂漠の建物へ向かう。」
「ボクもと兄さんについて行くよ。」
その言葉を聞き、はとことん嬉しくなった。
ああ・・・なんて嬉しい事を言ってくれるんだろう・・・ここで別れた方がエドとアルにとっては一番いい選択だったのに・・・本当に二人は・・・優しすぎるよ・・・
二人の言葉を静かに聞きながらは内心呟き───
「・・・・・・・りがと。」
掠れる声で静かに二人にお礼を言った。
そんなの言葉を聞きながら、アルフォンスは笑みを浮かべ地図を広げた。
の身体が治ったら・・・次はここから先にあるサトリート砂漠に向かうんだけど・・・」
「一気にサトリート砂漠には向かえねぇから───ここ。まずはここの町に寄るからな。」
そう言いアルフォンスの言葉を継いでエドワードは呟きながら、地図の一箇所を指差した。
そこは今達がいる町からサトリート砂漠の方面へ進んだ先にある町、ゲースだった。
「分かった。あー・・・身体回復、いつになるかなぁ・・・」
天井を見つめ、は静かにそう呟いた。









To be continued......





エリ:隠されしセレトの秘石 第十二話を読んでいただきありがとうございます!如何でしたか?今回の話は・・・さて、この回のゲストは───

エド:何処だここ?

エリ:はい、自己紹介自己紹介!!

エド:え、あ・・・・ども。エドワード・エルリックで鋼の錬金術師だ・・・・

エリ:・・・状況に溶け込めてないでしょ?

エド:ったりめーだろ!?

エリ:あっははwwさて、ちょっと今回の話は短めに切らせてもらっちゃいました〜w

エド:どーせ、次の十三話が出るときには、時間が流れてて、の身体が回復してゲースへ向かう───とかいう話にするためだろ?

エリ:エド、正解!!!

エド:それくらい、誰でも分かるっつーの。

エリ:そんな冷たい事言わないのvね?

エド:しかし・・・これからどんな風になるんだ?

エリ:どんな風って・・・決まってなーいww

エド:・・・・はぇ?

エリ:何、素っ頓狂な声だしてんのよ?

エド:今、何つった?

エリ:『決まってなーいww』って言ったの。

エド:・・・・おい!

エリ:はっはいぃぃ〜〜!?(上ずった声)

エド:(エリに攻めより)ちゃんと考えろよ?

エリ:そりゃ・・・・Endingを迎えるためには・・・・考えないと、ねぇ・・・・

エド:ちゃんとHAPPY ENDにしろよな。いいな?

エリ:そりゃ・・・・まぁ、そうしたいけど・・・・一応一番最後の話は決まってるし・・・

エド:何言葉濁してんだよ?まさか・・・が死ぬなんて事はねぇだろぉなぁ?

エリ:(びくっ)なななな、何言ってるのよ!!ヒロインが死んでどーするのさっ!

エド:まぁ・・・先はどうなるかは楽しみって事で取っとくけど・・・・

エリ:そうしてくれると助かるわ。

エド:じゃ、そろそろ終わりにしてもいいんじゃねぇの?

エリ:それもそうね。ここまで読んでくれてどーもありがとねv

エド:次は本編で会おーな♪じゃっ!






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