「ねぇ・・・扉が開いてるって事は───」
「入っていいって事だろうな・・・」
の小さな呟きにエドワードは静かに答えた。
場所はサトリート砂漠にある大きな細長い建物。
初めに来たときは、入り口が何処にも見当たらなく、仕方なく建物から一番近い町で休んだりしていたのだが・・・
この日来たら───入り口が開いていたのだ。
中は真っ暗で、明かり一つついていない。
「・・・・入る、よ。」
「ああ。覚悟は出来てる。大丈夫だ。」
、ボク達がついてる。大丈夫だよ。」
「・・・・・うん。」
そう言うと、は入り口の中へと足を一歩進めた────

















隠されしセレトの秘石 第十三話


















「復活〜〜〜!!!」
「良かったな、早く回復できて。」
の叫びを気にしないように、エドワードは苦笑しながらに話しかけた。
「行き先はゲースだったよね?」
「うん。サトリート砂漠に一番近い町。砂漠と森に囲まれた町だね、ゲースは。」
の問いかけにアルフォンスは考え込みながら答えた。
アルフォンスの言葉を聞きながら、はコクコクと頷いた。
「ほら、荷物まとまったんなら、さっさと行くぞ!」
「そだね。、急いで。」
「あーーっ待ってよぉ〜!!」
イスに座ってエドワードとアルフォンスを見つめるをよそに、カバンを手に取るエドワード。
病室のドアの方に顔を向けて、アルフォンスとともに歩き出され、は急いでカバンを手に取り急いで後を追った。
その様子を見ていると、本当に元気に回復したと安堵の息を吐けたエドワードとアルフォンスだった。
「こらぁーーー!!待ってってばぁ〜〜〜!!!」
出遅れたは二人から距離が離れていた。
その為、懸命に叫びながらは二人の後を追ったのだが、なかなか追いつけなかった。
ーー!!おせぇぞぉ!!」
「そっちが早いんでしょぉ!?」
エドワードの声を聞き、はプゥッと頬を膨らませ叫んだ。
するとエドワードは笑いながら、駆け出し始めた。
「あ、兄さん!?」
「アルっ!走れっ!!!」
「えっあっちょっちょっとぉ〜〜〜〜!!!」
いきなり駆け出したエドワードを見て、声を上げるアルフォンスだが、エドワードの言葉を聞き、首を傾げながら駆け出し始める。
は、一瞬戸惑い立ち止まったが、すぐにハッとし急いで二人を追いかけた。
・・・よく思えば錬金術使えばいいじゃん。
二人を追いかけながら、はあることを思い出し、内心苦笑しながら呟いていた。
パンっと両手を合わせ、口元に持ってくるとフゥッと息を後ろに向かって吐いた。
すると、フワッとの身体が宙に浮かび上がり、そのの背中を強い風が後押しした。
びゅおっ!!!
「あーーー!!!てっめぇ、ずっりぃぞ!!!」
簡単に追いついてきたを見て、風の錬成をした事を理解したエドワード。
の事を指差しながら叫ぶエドワードを見て、アルフォンスは苦笑した。
「いやぁ〜楽だわ、楽〜〜」
「ぐぬぅ・・・・このっ!」
クスクス笑いながら楽な態勢を取りながらエドワードの横を宙に浮いて移動する
そんなを見てエドワードは拳を胸の前で握り締めた。
すると、エドワードは思ってもいなかった行動に出た。
「とぅっ!!!」
「のわぇっ!?」
「にっ兄さぁぁあああぁん〜〜〜!?」
声を上げながらに向かってジャンプするエドワード。
足を掴まれ、驚きの声を上げる
そして、エドワードに片腕を掴まれ、いきなりジャンプされたアルフォンスは素っ頓狂な声を上げた。
「ちょっちょっちょっとぉ〜〜〜!!!」
「オレ達もその風に乗せろよな。」
混乱状態のまま、は叫んだ。
そんなに苦笑しながらエドワードは話し掛けた。
そんな二人を見て、アルフォンスは苦笑しながらも溜息を付いた。
「だからって足を掴むなっ足をっ!!!」
「仕方ねぇだろ〜ジャンプしたら足しか掴めなかったんだから。」
「じゃぁ、降りろ。」
エドワードの言葉を聞き、ニッコリと微笑みながらも黒いオーラを出しながら呟く
「無理。」
「降りろ。重い。」
「やだ。」
「ケチ。」
「気にしない。」
「チビ」
「関係ないしっ!!つーか、ちっさい言うな!!」
エドワードとの言い合いが続く中、アルフォンスはどうしたもんかと頭を抱えていた。
実際には頭を抱える事は出来ないのだが・・・
「降りないんなら、チューするわよ。」
「んなっ・・・・いいぜ?出来るもんならしてみろよ。」
そんな中、がいきなり不適な笑みを浮かべながら唐突に鋭い言葉をエドワードに突きつけた。
エドワードは一瞬驚き、目を丸くしたが間を少しあけた後エドワードも不適な笑みを浮かべた。
「・・・本当にしちゃうわよ?」
「構わねぇぜ?」
内心ドキドキしながら答えるエドワード。
そんなエドワードを見て、は一瞬止まるが、パンッと両手を合わせ、口元に手を持ってくるとエドワードの下の辺りに軽い風を吹かせる。
すると、ふわっと宙に浮きエドワードはと同じ位置辺りに上ってきた。
グッと手を引き、顔を近づける
「のわっ!?・・・っ!!」
の顔が近づいたのを確認するとエドワードは顔を真っ赤にさせた。
「・・・ぷっ!!冗談よ、冗談!」
「・・・へ?」
「何?本当にして欲しかったの、ちゅー?」
「ばばばばば、馬鹿言ってんじゃねぇよ!」
クスクスと腹を抑えながら笑う
顔を赤らめることなく言うを見て、声をドモらせながらも声を上げるエドワード。
「どういう話してるんだよ、二人とも。」
「「あ。」」
アルフォンスの静かな声を聞き、もエドワードも我に帰った。
その瞬間、の顔が真っ赤に染まった。
ななななっなんて事言ってたんだろっあたしっ・・・・・
内心そう呟きながら辺りをキョロキョロと見回す
風を調節し、ゆっくりと地上に降り立つ三人。
「もうすぐゲースに着くから降りるからね?」
「降りてから言うなよな。」
の言葉に笑いながら答えるエドワード。
「そうだよ、。順番逆。」
アルフォンスも同じ意見だったらしく、笑いながら呟きかける。
「ゲースってどういう所なんだろうね。」
「聞いた話だと、キレイな場所みたいだよ。花の多い町って聞いたことがある。」
「へぇ〜花かぁ〜〜・・・広いお花畑とかあるといいな。」
「どうして?」
う〜〜んと身体を伸ばしながら、ニコニコと笑みを浮かべ語るに問い掛けるアルフォンス。
その問い掛けの言葉を聞き、はにっこりと微笑みアルフォンスの顔を見つめた。
「だって、広い花畑の中でのーんびり休めるじゃない。」
「なんだそりゃ。」
アルフォンスの問い掛けに答えたの言葉に反応したのはエドワードだった。
「だってさ、花ってすっごいキレイじゃん。そんな中で寝っ転がって空を見上げる───」
「確かに最高かもね。」
「そーか?」
「そーだよっ!!」
はキラキラと回りに星を散りばめながら、語り続けた。
そんなの言葉をいい所で遮り、アルフォンスが呟き掛けた。
そんな二人の言葉を聞き、首を傾げながら呟くエドワードに向かっては拳を胸の前で握り締め力強く叫んだ。
「オレは図書館があれば十分だけど・・・」
「あ、それはあたしも同意見〜」
エドワードは何で花畑なんだ?と疑問を浮かべたまま呟いた。
その話を聞いてはキャピキャピとはしゃぎながら同意した。
「だって、エド達が元の身体に戻る方法が何か分かるかもしれないんだもんっ」
「・・・それはもだろ?」
「そうだよ。ボク達だけじゃなくて、も元の身体に戻りたいんだろ?」
「うん。この右目・・・元のちゃんとした目に戻したい。」
右手で右目を多い、静かに、闇を含んだ感じの口調で呟く
そんなを見つめ、エドワードもアルフォンスも何も言わなかった。
は何も言ってこない二人を見つめ、フッと笑みを浮かべた。
何も言わないでくれてありがとう・・・
心の中で温かいものを感じながら、密かに二人にお礼を言う
「お。見えてきたぞ。」
「本当だー。うわぁ〜〜ここからでも花がきれいに見えるよぉ。」
「本当だね。良かったじゃん、。」
「うん!」
左手を額にあて、先のほうにある町、ゲースを眺めるエドワードの言葉を聞き、は元気にはしゃいだ。
そんなを見て、微笑みながらアルフォンスは呟き、は元気にそれに答えた。
すると、は急いで駆け出し始めていた。
「あっこら、!!」
「ちょっと、どうしたの?」
エドワードとアルフォンスはいきなり駆け出し始めたの背中を見て叫んだ。
顔を見合わせ、急いでの後を追う二人。
「ほら、二人とも早く〜!!」
「何、急いでんだよ。」
「だって、キレイな花、早く見たいんだもんっ!!!」
「なるほどね。」
ピョンピョンと飛び跳ねながら回転する
エドワードは呆れながらに問い掛けると、は嬉しそうな笑みを浮かべ答えた。
その答えを聞いてアルフォンスは納得した。
は昔から花が好きだよね・・・」
「うん。だって、花を見てると落ち着くというか・・・心が和むっていうか・・・」
「へぇ〜」
「へぇ〜って・・・それだけ?」
「他に何を言えって言うんだよ。」
アルフォンスは昔を思い出し、呟く。
コクコク頷きながらは花が好きな理由を頑張って言葉を選びながら呟く。
そんなの言葉を聞き、エドワードは短く反応したが、に鋭いツッコミを受けた。
ツッコミをウケながらも、苦笑しながら答えるエドワード。
「ん〜〜〜『オレも花は好きだ。』とか『キレイな花もには劣るな。』とか、さ。」
「んな事、オレが言うと思うか?」
「思わなーーい。」
キザな言葉を並べるにエドワードはハァッと大きく溜息を付きながら呟きかける。
そんなエドワードの言葉に、笑いながら軽く答える。
「だったら言うなっ!」
「夢見てもいいじゃんっ!!」
「夢は一人で見てろっ!!」
「あっひっどーい!」
ベシベシエドワードの頭を軽く叩きながら笑い続ける
叩くの威力も軽いため、エドワードは痛くもなく、と同じく苦笑しながら受け答えをする。
「ほらほら、ふざけてると転ぶよ?」
「うきゃぁっ!」
ベダンッ!!!
アルフォンスの注意の言葉の直後、の悲鳴が上がった。
「「!?」」
その声に反応し、エドワードとアルフォンスはを見つめた。
見つめる先には地面に倒れているの姿があった。
「ほら、言わんこっちゃない。」
「もっと早く言ってほしかった・・・・・」
アルフォンスは呆れながらの腕を掴み、起き上がらせる。
曇った声で悲しく答えるは目から涙を流していた。
「おい、大丈夫かよ。」
「痛いわよ、普通に。」
目の前に座り込んできたエドワードの言葉を聞き、は鼻を押さえながら小さく答えた。
「あー・・・ヒリヒリするぅ・・・・」
真っ赤に染まった自らの鼻を摩るは一滴の涙をポロッとたらした。
「ったく・・・ふざけてるからだぜ。自業自得だ。」
「エドだって、ふざけてたじゃない〜〜〜」
「オレは強運なんだよ。」
「ずるい〜〜〜〜」
の傷む鼻をツンと突っつきながら呟くエドワードには手をバタつかせながら呟く。
エドワードとはその後も少し何か言い合っていたが、エドワードがに手を差し伸べ、を立たせた。
「・・・・っ!?」
「どうしたっ!?」
「どうしたの!?」
が立ち上がろうとした瞬間、は顔を歪め、その場に崩れ落ちた。
何が起きたのか理解できないエドワードとアルフォンスは急いで倒れるを支え、声をかけた。
「足・・・挫いたみたい。」
えへ・・・・と言わんばかりに呟くを見て、エドワードとアルフォンスは安心し、肩を落とした。
地面にペタリと座り込むに手を差し伸ばし、「おんぶしてやる。」と短く次げたエドワードの顔は赤く染まっていた。
そのことに気がついたのは、アルフォンスだけだった。
も足を挫いたため、暴れる事が出来ずエドワードの言葉に素直に従い、背負ってもらうことになった。
「ったく、はよく怪我するな。」
「笑い事じゃないよ、兄さん。ゲースに着いたらボク湿布を買いにちょっと出かけるからね。」
「大丈夫だよ、アル。」
笑いながら喋るエドワードに、真剣な面持ちで呟くアルフォンス。
の足を気遣い、湿布を買うと言い出したのだが、は大丈夫と言った。
「でも、湿布を張っておいた方が治りは早いよ。だから、買ってくるよ。」
「・・・・そっか。うん、分かった。アル、ありがとね。」
あたしの事を気遣ってくれて・・・あたしの事を心配してくれて・・・・
アルフォンスにニッコリと笑みを浮かべお礼を述べる
心の中でも、その言葉に続く御礼を述べ、静かにアルフォンスを見つめた。
「何、勝手に二人でムード出してんだよ。」
の下に居るエドワードがムスッとした声で話しかけてきた。
を心配し、ジッとを見つめるアルフォンスと、アルフォンスの言葉が嬉しかったため、ジッと見つめていた
そんな二人が何かムードを出していると勘違いをしたエドワードは不機嫌そうに呟いた。
「何いじけてるのよ、エド。っていうか、コレだけで不機嫌になる、普通?」
ポンポンとエドワードの上から頭を軽く叩く──というより撫でる
その行為が嫌なのかギャーギャーわめき始めたエドワード。
「もしかして・・・あたしとアルが仲良くしてるから、ヤキモチ焼いてくれたのぉ〜?」
「ばっ!!んな訳ねぇだろ。どーしてオレがとアルにヤキモチ焼かなきゃなんねぇんだよ。」
ズキッ・・・・
そうだよ・・・エドはあたしのこと仲間・・・友達・・・家族としか考えていないんだから・・・当たり前じゃない・・・・
の言葉に顔を赤く染め、それでも力いっぱい否定するエドワードの言葉を聞き、胸が締め付けられる
内心自分に言い聞かせるように呟くの瞳から大粒の涙が流れ出ていた。
「っ!?」
の涙に気がついたのは、を背負っていないアルフォンスだった。
「なっ何でもないっ・・・・何でもないから・・・・アル・・・・気に、しな・・・いで。」
途切れ途切れ呟くの瞳からは絶え間なく涙が流れていた。
その涙がエドワードに当たらないよう、は懸命に手で受け止めていた。
服の袖で涙を拭い、時には手で拭い、涙を止めようとする
しかし、何故だかの涙は止まらなかった。
・・・・・・」
アルフォンスはがエドワードの事が好きだということを知っていた。
だからこそ、何故が涙を流しているのか分かっていた。
しかし、を背負っているエドワードは今の状況が分からず混乱していた。
「なっ何が起きてるんだ?」
「な、何でも・・・何でもないよ、兄さん。」
の気持ちを察し、問い掛けてくるエドワードに笑顔で何でもないと答えるアルフォンス。
「本当か?」
「本当だよ。嘘をついてどうするのさ。」
疑り深いエドワードは、もう一度確認するかのようにアルフォンスに問い掛けた。
「何でもないよ、本っ当に。だからゲースに急ごう。」
涙を無理矢理止め、エドワードの上から声をかけた
その声を聞いて安心したのか、エドワードはアルフォンスの言葉を信用した。
「そうだな。さっさとゲースについて宿見つけねぇと、日がくれちまうな。」
そう言うと、エドワードは歩くペースを速めた。























「兄さん、ここなんてどう?」
「そうだな・・・結構安いし・・・いいんじゃないか?」
「うん。あたしもここでいいと思う。」
「じゃ、決定だね。」
アルフォンスの見つけた宿は一人一泊3千センズだった。
他の宿も見たのだが、何処も一人一泊5千センズや4千5百センズなどだった。
三人ともこの宿でいいと意見を決めたため、アルフォンスは宿の中へと入っていった。
「いらっしゃい。三名様ですね?」
宿のおばさんが一番最初に入ってきたアルフォンスに問い掛けてきた。
「はい。部屋を二部屋用意してもらえますか?」
「はいよ。えーっと、三人で9千センズだね。」
アルフォンスの言葉に答えたおばさんは、パッと値段を計算した。
9千センズと言われ、はウエストポーチから財布を取り出し、3千センズを取り出した。
「これ、あたしの分。」
そう言いアルフォンスに自分の分のお金を渡した。
エドワードもベルトの後ろにあるポーチから財布を取り出し3千センズを取り出しアルフォンスに渡した。
「全部で9千センズになってると思います。一応確認して下さい。」
「あいよ・・・・9千センズちゃんと貰ったよ。えーっと、コレが鍵だよ。」
そう言うと、お金をレジにしまいおばさんは二つの鍵を取り出しアルフォンスとに手渡した。
「温泉に露天風呂、混浴風呂にプールがあるからね。もし暇なら入っていくといいよ。場所はここのロビーの階段を地下に降りていった所だよ。」
「へぇ・・・お風呂にプールかぁ・・・それで一人3千センズだなんて、安いですね。」
「こうでもしないと人が入って来ないんでね・・・」
はおばさんの話を聞き、関心の声を上げた。
今まで温泉もプールも入ったことがあったが、プールはかなり久し振りのこと。
その為、こんな所で入れるとは──という気持ちになっていた。
「部屋はお嬢さんはこっちの309号室だよ。お兄さん達はこっちの308号室。」
そう言うと、おばさんは一礼し去っていった。
鍵でドアを開け、中へ入ると、結構広い部屋だった。
大きな窓に大きなテーブル。
そして、ベッドが幾つか並んでいた。
「結構広いねー。二人の部屋はどう?」
そう呟くと、は309号室を出て、隣のエドワード達の部屋へと顔を出した。
「あ?あぁ、結構広いな。それより、これからどうする?」
「プール!!!」
「「え?」」
これからどうするかとアルフォンスとに問い掛けたエドワードの言葉に即座に答えたのはだった。
久し振りに入れるかもしれないプール。
それにははしゃいでいたのだ。
「プールっプール!!水着はフロントで貸してくれるんだって!だからプール行こうよぉ〜〜〜!!」
「〜〜〜っ仕方ねぇなぁ・・・・でも、アルはどうするんだ?」
「ボクは・・・・本でも読んでるよ。」
「あ・・・ごめん、アル。」
「気にしないでいいよ。」
プールに入れるとはしゃぐだが、アルフォンスの事を忘れていた。
アルフォンスは鎧なのだ。
プールに入ることなど無理に決まっている。
それを知っているエドワードは、ガシガシと頭をかくとしょうがないと諦め了解し、アルフォンスにどうするか問いかけた。
アルフォンスは一瞬迷ったが、部屋で読書をしていると告げた。
「でも・・・やっぱ三人で行動したいし・・・プールは───」
『プールはやめとくよ』と言おうとしたの言葉を遮ってアルフォンスが、
「プールに行かないとか言わないよね?ボクの事は気にしなくていいから。行ってきなよ。」
「・・・・ありがとう、アル。」
アルフォンスの優しい心遣いに感動した
ギュッと腕を胸の前で握り締め、お礼を言った。
「兄さん。右腕は機械鎧なんだからちゃんとプールから上がったら整備するんだよ?」
「分かってるよ、んな事ぐれぇ。」






















「うわぁ〜〜可愛い水着ぃ〜〜・・・コレにきーめたっ!」
そう言うと、は水着を手に取り飛び跳ねた。
そして横で水着を選んでいるエドワードに視線を移した。
「エドはどれにしたの?」
「これ。は?」
「あたしはこれだよ。」
そう言いエドワードが見せたのは、黒くハイビスカスの赤い模様が裾に描かれたシンプルな水着。
その反対にがエドワードに見せたのは、真っ赤な色で白い水玉模様のビキニだった。
その水着を見た瞬間、エドワードはブッと息を吐き出しそうになった。
「じゃじゃじゃっじゃあ、後でなっ!!」
ギクシャクした感じでそう言うと、エドワードは男子更衣室に入っていった。
その様子を見て、はプッと笑うと、スキップをしながら女子更衣室の中に入っていった。
この水着を来たあたしを見たら・・・エド、どんな反応するのかな〜・・・・ふふふっ。
内心そう呟きながら、エドワードの反応を想像する
すると自然に笑みがこぼれ出ていた。




















「ったく・・・遅いな・・・」
プール内にある時計をチラチラ見ながら、エドワードはまだ現れないを心配していた。
そこに───
「ボク〜〜一人でこんなプールに来てるのぉ?」
「お姉さん達と一緒に遊ばない?」
金髪に鋭い瞳をしたエドワードは、背は小さくともモテない人生を送っていたわけではなかった。
背が小さいという事が可愛いと言い寄ってくる女性もいたし、金髪に鋭い瞳に惚れこんで言い寄る女もいた。
ロイほどモテる訳ではないが、全くモテない訳でもなかった。
茶色いショートカットの髪の毛に水色の水着を着た女に、黒い髪をポニーテールに結った黒い水着を着た女がエドワードに話しかけてきた。
「いや、俺連れいるから。」
慣れているのか、軽くあしらうエドワード。
しかし、それで引くならナンパをしてくる女もそれまでの女ということだ。
「でも、まだ来てないんでしょぉ?」
「すっぽかされたんじゃないのぉ?」
クスクスと笑いながら冷たい言葉をかけてくる女二人。
その言葉にエドワードはカチンときた。
「アイツはそんな奴じゃねぇ!!」
いつの間にか怒鳴っていた。
「な・・・何よ。そんなに怒らなくても良いじゃない。」
そう言いながらも、ジリジリとエドワードに近づいていく茶髪の女。
「ちょっ・・・近づき過ぎだっつーの!!」
「コレだけで顔を赤くするなんて〜〜うぶ〜〜」
「ほんとぉ〜」
顔を赤くし怒鳴るエドワードを見て、笑う茶髪の女と黒髪の女。
「何・・・・してるの?」
「?────っ!!!」
エドワードの後ろから聞こえた聞き覚えのある声。
何かと思い振り返ったエドワードの目に映ったのは、暗い顔をしたの姿だった。
真っ赤な生地に白い水玉のイラストが描かれたビキニを来て現れたが一番初めに目撃したのは、二人の女となにやら話をしているエドワードの姿だった。
エドワードがモテるという事を知っているでも、こういった場面を目撃すれば何とも思わないということはない。
何より、エドワードに好意を寄せているだ。
嫉妬という感情が込みあがってくるはずだろう。
「ねぇ・・・エド。その人達・・・・誰?」
ギュッと太ももの辺りで拳を握り締める
ジッとエドワードを見つめて、言葉を待つ。
が、エドワードは何も言えずに居た。
「私達はぁ〜〜この子をナンパしてたんだけどぉ・・・・貴方がこの子の連れ?」
「だったら何だってのよ?」
茶髪の女は腕を組み、首を斜めにしながらに問い掛ける。
そんな言葉に臆することなく、は強く言い放った。
「だったら、ごめんなさいねぇ〜この子はこれから私たちと遊ぶ事になったのぉ。だから貴方は一人でプールでお遊びしててねぇ〜」
「っ!!!」
黒髪の女がクスクスと笑いながら言い放つ。
実際は断られたのだが、腹いせに嘘をついたのだろう。
「違うっ!!!」
黒髪の女の言葉を聞き、眉間にシワを寄せた事に気がついたエドワードはすぐさまに違うと叫んだ。
しかし、その言葉には耳を傾けていなかった。
ばしっ!!!
持ってきていた水色のタオルをギュッと掴み、エドワードに投げつける
「ってぇなっ!!!何すんだよっ!!!」
投げられたタオルを顔で受け止め、それを手に持ち直す。
エドワードはに視線を移し怒鳴り散らした。
「エドの馬鹿!!!もう知らない!!!」
「っ!?!?」
瞳に涙を溜め、顔を左右に振りながら叫ぶの姿を見て、エドワードはハッとした。
今までに見たことのないの辛そうな、寂しそうな、悲しそうな表情。
はクルッときびす返しをすると、女子更衣室の中に駆け込んでいた。
「まっ待てよっ!!」
「あんな子ほっとけば良いじゃない〜」
「そうよぉ。お姉さん達と遊びましょぉ。」
「オレのことなんてほっとけっ!!邪魔だっ!!」
そんな茶髪と黒髪の女とエドワードの会話を聞きながら、は私服に着替え309号室のの部屋に走りながら戻っていった。
涙を流し、辛く、寂しく、悲しい表情をしたまま、は部屋まで走り続けた。


















バタンっ!!!!
「エドの馬鹿っ馬鹿っ馬鹿っ!!!」
ベッドに飛び乗り、枕を殴り始めた
ボロボロと流れ出る涙は止まる様子がなく、枕を殴る力も徐々に弱まっていった。
ポスッと枕に顔を埋めると、は泣き始めた。
声を押し殺し、枕をギュッと掴み・・・・・
ただの嫉妬だと分かってる・・・分かってるけど・・・・感情が止まらない・・・・
はちゃんと理解していた。
エドワードは悪くないと。
ただの自分の嫉妬の気持ちだと。
しかし、それでも感情が止まらず、叫んでしまった。
後悔する気持ちと同時に、悲しむ気持ちがあふれ出てくる。
だからは、ただただ泣く事しか出来なかった。





















「あれ?帰ってきたのかな・・・・?」
隣の部屋で本を読んでいたアルフォンスは、309号室──の部屋のドアが勢いよく閉まる音を聞き、顔を上げた。
しかし、アルフォンスの部屋──308号室のドアはいっこうに開く気配はない。
・・・・どうしたんだろう?
一人で帰ってきたと予想したアルフォンスは首をかしげ、持っていた本をテーブルに置き、イスから立ち上がった。
ばんっ!!!!!!
その時、勢いよくアルフォンスの居る部屋のドアが開け放たれた。
ドアの向こうにはエドワードの姿があった。
その表情は怒りに満ちていた。
「に・・・・兄さん、どうしたの?」
の奴が・・・・」
「え?」
「オレがプールでを待ってたら二人の女にナンパされた。そこをに目撃されて、たぶん怒って先に帰って来ちまったみたいだ。」
怒りの表情を浮かべ、エドワードはアルフォンスに今までのいきさつを話した。
「しかも最後にオレに『馬鹿』って言ってったんだぜ?あったまきた。」
「兄さんの気持ちも分かるけど・・・の気持ちも少しは分かってあげなよ兄さん。」
の気持ち〜?んなの分かるわけないだろ?何も言わずにいきなり怒り出したんだからよ。」
「兄さんはこの部屋に居て。の様子・・・ボクが見てくるから。」
アルフォンスはそう言うと、エドワードの横を通り過ぎ、ドアの方へと歩き始めた。
「ああ・・・・よろしく頼む。」
「うん。」




















コンコンコン・・・・
「誰ーーー?」
「ボクだよ。」
「アル?」
「そ。」
「入っていいよ。」
ドアをノックすると、ボーっとした感じのの声が返ってきた。
名前を名乗ると入っていいといわれ、ドアを開ける。
鍵はかかっていないらしく、の部屋のドアはゆっくりと開いた。
・・・どうかしたの?」
「んーーー?何でもないよ、アル。」
アルフォンスはが横たわるベッドの近くにあるイスに腰掛問い掛けた。
その問い掛けに枕に顔を埋めたまま、は何でもないと答えた。
「なら、顔上げてよ。」
「いや。」
「なんで?」
「何でもいいじゃん。」
「何でもよくないよ。何でもないなら顔上げなよ。」
「別に枕に突っ伏してても会話出来るでしょ?」
アルフォンスは懸命にの顔を見て話をしようと思い話しかけた。
が、は頑として顔を上げようとしなかった。
「そりゃ・・・・できるけど・・・・」
「アルは・・・エドとあたしが喧嘩したんじゃないかって思って来たんでしょ?」
「っ・・・」
モゴモゴと何も言えなくなったアルフォンスは困っていると、が図星を突く事を聞いてきた。
「残念ながら、喧嘩じゃないよ、アル。」
クスッと笑いながらは呟いた。
「じゃあ、どうしたの?」
「あたしからの一方的な嫉妬。」
アルフォンスの問い掛けに静かに、そして簡単に答える
その口調は重く、悲しみを秘めていた。
「嫉妬なんて、誰でもするものだよ。」
「そりゃ、そうかもしれないけど・・・・」
「ボクだって嫉妬する事くらいあるよ。」
「アル、今『嫉妬なんて誰でもするものだよ』って言ったばっかじゃん。」
アルフォンスの言葉にウケながら、はやっと顔を上げた。
「あ、そうだったね。」
「・・・・ありがと、アル。」
ベッドの上に座り込みながら、ジッとアルフォンスの瞳を見つめる。
そして、腕をアルフォンスに伸ばしはアルフォンスに抱きついた。
「別にボクは何も・・・・」
「いつもあたしを励ましてくれてる・・・・アルは温かいね。」
言いかけたアルフォンスの言葉を遮って、はお礼の言葉をゆっくりと述べた。
そして、ギュッと抱きつきながら、はアルフォンスは温かいと呟いた。
「温かいはずないよ、。ボクは鎧なんだよ・・・冷たい・・・冷たい鎧なんだよ。」
の『温かい』という言葉に反応し、寂しそうに語るアルフォンス。
そんなアルフォンスの言葉を聞き、はクスッと笑った。
「何言ってるの、アル。アルは温かいじゃない。ちゃんと中身があるじゃない。」
「?」
「中身のある人間は───・・・・中身の温かい人間は、外側も温かいんだよ。」
の言葉の意味が分からず首をかしげたアルフォンス。
はそれに気がつき、すぐに言葉を改める。
「───っ!!」
その言葉を聞き、アルフォンスは嬉しそうに反応した。
「今日の嫉妬は・・・あたしが馬鹿だった。もっと大人にならなきゃね・・・・あたし。」
クスッと笑いながらはアルフォンスから身体を離した。
ニッコリ微笑み、アルフォンスを見つめた。
アルフォンスはそんなの笑みと泣きはらした瞳に視線を奪われていた。
「明日はいよいよサトリート砂漠の建物に行く事になるわ・・・・頑張らなきゃね。こんな所でくじけてる場合じゃないわっ。」
「そうだね。じゃあボクは部屋に戻るね。」
「うん。また明日。」
はパンパンっと顔を叩き気合を入れる。
そんなの様子を見て、もう大丈夫だろうと思ったアルフォンスはスクッと立ち上がった。
パタン・・・・
静かにドアが閉まる音が部屋に響いた。
「行っちゃった・・・・・」
そう呟くと、はベッドにまた身体を預けた。
天井を見つめ、横を向けば窓の向こうに見える空を見つめ、逆を向けばドアを見つめ・・・
はその繰り返しで、退屈な時間を送った。
そして、外が闇の呑まれる頃、うとうとと眠くなり闇の中へとは入り込んでいった。



















真っ白い・・・・ここは・・・・どこ?
真っ白い空間に一人立つは、周りをキョロキョロと見渡す。
しかし、何処を見ても真っ白で、何も見えなかった。
・・・?
そんな中ふと現れた紅い石。
「何・・・・これ。」
声を漏らし、ゆっくりとその紅い石に近寄る
近づくたびに伝わってくる脈。
ドクンドクンと紅い石は脈を打っていた。
「コレは・・・・何?見覚えがあるのに・・・・思い出せない・・・・」
紅い石に手を伸ばし掴もうとする。
しかし、あと少しというところで紅い石は遠ざかっていく。
ズキッ!!!!
その瞬間、襲い掛かってくる右目の痛み。
偽物の・・・義眼特有の痛み。
それがを襲ったのだ。
「一体・・・・何なの・・・・」
そう呟くと、の身体自身が引っ張られる感覚に陥った。
「っ!?」
グイッと引っ張られるようにの意図とは逆に後ろへ後ろへと引っ張られる。
「まだっ・・・・まだ知りたい事がっ!!!!」



















「っ!!!!」
目が覚め、身体を勢いよく起こした。
びっしょりとかいた汗。
ズキズキと痛む右目の義眼。
そして、ドクンドクンと激しく脈を打つ胸。
それが徐々に落ち着き、周りを見ることが出来るようになったはすぐ横で心配そうに見つめるエドワードとアルフォンスの姿に気がついた。
「エ、ド・・・・ア、ル・・・・」
、大丈夫かっ!?」
?うなされてたけど・・・平気?」
短く二人の名を呼ぶの顔を覗き込み、エドワードとアルフォンスはの事を気にかけた。
「大丈、夫・・・何の夢だか分からない・・・けど・・・一応あたしは、大丈夫だよ。」
額に描いた汗を拭い、エドワードとアルフォンスに笑顔を向ける。
「こんな事で参ってられないしね、あたし。」
ハハハと笑いながらは身体を起こし──
「ごめん。着替えたいから・・・」
そう言うと、エドワードとアルフォンスを上目遣いで見つめた。
二人はハッとした顔をして、急いでの部屋を出た。
二人が部屋から出て行ったのを確認すると、はパジャマのボタンを外し私服に着替え始めた。
「はぁ・・・いったい何の夢を見たのかな・・・あたしは。」
そう呟くと、服の袖に腕を通した。
着替え終わると、近くのイスに腰を掛け、窓の外を見つめる。
これからサトリート砂漠の建物に行くのよね・・・・何が待ち構えているのか・・・・・
空を見つめながらは一人物思いに耽っていた。
あたしの運命は・・・・そしてあたしの中に眠るセレトの秘石は・・・・一体・・・・どうなるのか・・・な。
そう内心呟くと、はうつむいた。
自らの手を見つめ──
もし・・・もし秘石を手に入れられれば・・・あたしもエドもアルも元の姿に・・・戻れるかもしれない・・・












To be continued.......







エリ:はいっ!!十三話目をここにお送りしますっ!!たぶん次回が最終回かと・・・さて、今回のゲストは・・・

アル:次回が最終回ですか・・・・大佐は出てくるんですか?以前にそんな話をしていたような・・・

エリ:アル〜〜〜貴方がやっぱり一番まともかもぉvvvv

アル:あのぉ・・・・質問に答えてもらえないんですか?

エリ:あ、そうそう。大佐はね・・・まだ分からない。けど、出てくる可能性は五分五分ね。

アル:そうですか・・・それで、あの・・・・

エリ:あ、敬語じゃなくていいからね。

アル:あ、はい。じゃなくて、うん。

エリ:(くすくすと笑う)

アル:の運命はどうなるのか気になるんだけど・・・

エリ:それは言えないわね。

アル:どうしてっ!?

エリ:だって、ネタバレになっちゃうもん(笑)

アル:あ、そっか・・・あ、じゃあは兄さんに告白するの?

エリ:あ、やっぱりそれ気になる?

アル:当たり前だよぉ〜〜〜!!!

エリ:そのことについてはちゃんとお答えしましょーvvv

アル:本当!?

エリ:ええ。ちゃんと答えてあげるよ。

アル:じゃあ早速教えてっ!!

エリ:はいよwちゃんとはエドに告白します。以上。

アル:うわぁ〜〜そうなんだぁ〜〜

エリ:楽しみでしょw

アル:勿論w

エリ:でもね、アル。

アル:はぃ?

エリ:世の中いい事ばかりじゃないって、覚えておきなね。ちゃんと覚悟して最終回を迎えてね。

アル:どういう・・・・

エリ:それ以外は何もいえない。

アル:・・・・

エリ:さて、暗くなってきちゃったし・・・この辺で終わりにしよっか♪

アル:あ、そう・・・だね。

エリ:私の言葉はあまり気にしないでいいから。旅を楽しみなさい(^^)

アル:〜〜〜〜はいっ!!

エリ:それでは、ここまでお付き合いしてくださった皆さん。

エリ&アル:ありがとうございますっ!!次回もお楽しみにっ!!!






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