隠されしセレトの秘石 第五話
















「偽名を使って田舎に隠れ住んでいたのか・・・・」
「な・・・───」
「でも、なんで逃げ出したの?」
アームストロングの顔を見上げ、はわざとエドワードの言葉を遮った。
「ドクターが行方不明になった時、極秘重要資料も消えたそうだ。」
「てんめぇ〜〜〜!!」と叫ぶエドワードを放っておき、二人は話を進めた。
「ドクターが持ち出したともっぱらの噂だった・・・」
「噂ねぇ・・・」
「だからこそ、ドクターは我々を機関の回し者と思ったのかもしれん。」
アームストロングとは大きな溜息をつき、ドアの方へと視線を向けた。
「──エドっ!?」
「こんにち・・・」
が叫んだ時、エドワードはドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開けていた。
「わ。」
ドンッ!!!
「うおっ!?」
エドワードが扉を明けきり、最後の言葉を言った瞬間、銃口が見えた。
即座に引き金を引かれたと分かり体をそらした。
すると、後ろに立っていたに銃弾は向かっていった。
「ひゃっ!?」
すると、エドワードが急いでの法に駆け寄り、に向かって飛びついた。
「・・・たたた・・・・っにするのよ!?───っ!?」
倒れた二人の真上を銃弾が通っていく。
ホッと息を吐くエドワードだが、下から聞こえたの声に驚いた。
の顔は真っ赤に染まっていた。
しかも、二人の顔は近く、下手に動くと唇と唇が当たってしまいそうなくらい・・・・
「とっとにかく退いてっ!!」
はそう叫ぶと、エドワードの胸を押した。
「あ、わり・・・」
「なっ何しにきたっ!?」
二人のやり取りを見ていたマルコーは銃を向けたまま叫んだ。
「落ち着いてください、ドクター。」
「私を連れ戻しに来たのか!?」
アームストロングの言葉を全く聞く様子のないマルコー。
「もう、あそこには戻りたくない!お願いだ!!勘弁してくれ・・・・!」
震える手で銃を握り締めながら、マルコーは叫んだ。
「違います。話を聞いてください。」
「じゃぁ、口封じに殺しに来たか!?」
話をと、アームストロングは持っていこうとしたが、マルコーの興奮は収まらず、今度は口封じにと発想し始めた。
「まずはその銃をおろし・・・」
「騙されんぞ!!!」
しまいにはアームストロングの言葉を遮ってマルコーは一人叫び始めた。
アームストロングも、このやり取りには嫌気がさしたらしい。
額に怒りマークをピクピクと付け始めていた。
「落ち着いてくださいと言っておるのです。」
静かに、でも重みのある声でアームストロングはマルコーに箱に入ったアルフォンスを投げつけた。
アームストロングの後ろの方で、とエドワードは「アルっ!?」と叫んでいたが、アームストロングは全く気にする様子はなかった。





















「私は耐えられなかった・・・・・・・・・・」
ポツリとマルコーは呟いた。
場所はマルコーの家の中。
イスに座り、話を聞いてもらう事に。
「上からの命令とはいえ、あんな物の研究に手を染め・・・・そして、それが東部内乱での大量殺戮の道具に使われたのだ・・・」
マルコーは掠れる声でポツリポツリと話し始めた。
その話を聞いていた達は、眉にシワを寄せ、つらそうな顔をして効いていた。
東部の内乱の事を知っているからこそ、辛さが分かるのだ。
「本当に酷い戦いだった・・・無関係な人が死にすぎた・・・私のした事は、この命を持ってしても償いきれるものではない・・・・それでも出来る限りの事をと・・・ここで医者をしているのだ。」
「いったい貴方は何を研究し、何を盗み出して逃げていたのですか?」
そう問いかけたアームストロングの方を見ずに、マルコーは下を向き、悩んだ顔をした。
「賢者の石を作っていた。」
そしてマルコーはハッキリとした口調でそう答えた。
「私が持ち出したのは、その研究資料と石だ。」
「石を持っているの!?」
マルコーの言葉に即座に反応したのはだった。
の言葉にマルコーは小さく「あぁ。」と答えただけだった。
そして、マルコーの後ろにあった本棚からあるビンを取り出した。
そして一言、ポツリと呟いた。
「ここにある。」
と。
それはビンに入った紅い液体だった。
それを見た、エドワード、アルフォンス、アームストロングはきょとんとした顔をした。
賢者の石"というのだから、石だと思っていたものが、液体なのだから、その反応は正しいのだろうが。
「石って・・・これ液体じゃ・・・・」
そう呟くエドワードの前で、キュポッっとビンのふたを開けるマルコー。
「えぇ!?」
そしてまた、エドワードの前で、ビンの中からその液体を机の上に流し始めた。
その行動にはエドワードは思いっきり驚き、大きな声を上げていた。
「・・・・・え?」
そして、机の上に垂らされた液体は一瞬にして丸い石と化していた。
まじまじと、その石を見つめる達をよそにマルコーは説明し始めた。
「『哲学者の石』『天上の石』『大エリクシル』『赤きティンクトゥラ』『第五実体』・・・賢者の石にいくつもの呼び名があるように、その形状は石であるとは限らないようだ。だが、これはあくまで試験的に作られたものでな。いつ限界が来て使用不能になるか分からん不完全品だ。それでも、あの内乱の時、密かに使用され絶大な威力を発揮したよ。」
そう説明するマルコーの言葉にいつの間にか耳を傾け始めた達。
エドワードが何か思い出したような顔をしたのには気付いたが、あまり気にしたそぶりは見せなかった。
「不完全品とはいえ・・・人の手で作り出せるって事は、この先の研究次第では完全品も夢じゃないって事だよな。」
口元にニッと笑みを浮かべながら呟くエドワード。
ガバッと身を乗り出し、ウキウキした顔をしてマルコーを見る。
「マルコーさん!その持ち出した資料・・・見せてくれないか!?」
「えぇ!?」
エドワードのいきなりの言葉に驚き、マルコーは大きな驚きの声を漏らした。
「そんな物どうしようと言うのかね・・・アームストロング少佐。この子はいったい・・・」
「国家錬金術師ですよ。」
マルコーの言葉に、短く答えるアームストロング。
「こんな子供まで・・・・潤沢な研究費をはじめとする数々の特権につられて資格を取ったのだろうが、なんと愚かな!!」
顔を抑えながら、マルコーは言葉を続けた。
「あの内乱の後、人間兵器としての己の在り方に耐えられず、資格を返上した術師が何人いた事かっ!!それなのに君は・・・・」
「馬鹿なマネだというのは分かってる!それでも!!!」
そう言うと、エドワードはギュッと自らの右腕を強く握り締めた。
その様子をは見つめるしか出来なかった。
「・・・それでも、目的を果たすまでは針のムシロだろうが、座り続けなきゃならないんだ・・・・!!」
エドワードの強い言葉が部屋中に響き渡った。
「・・・・・そうか・・・・禁忌を・・・おかしたか・・・」
長い沈黙の後、ポツリとつぶやいたのはマルコーだった。
「驚いたよ。特定の人物の魂の錬成を成し遂げるとは・・・君なら完全な賢者の石を作り出すことが出来るかもしれん。」
「じゃぁ・・・・!」
マルコーの言葉に嬉しそうな笑みを浮かべ、声を上げるエドワード。
勿論、傍に座っていた、エドワードと同じく賢者の石を求めるも嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「資料を見せる事はできん!」
マルコーはハッキリと強い口調で言い放った。
「そんなっ・・・!!」
「話は終わりだ。帰ってくれ。元の体に戻るだなどと・・・それしきのために石を欲してはいかん。」
そう言うと、マルコーはカタンと立ち上がった。
「それしきの事だと!?」
「その言い方は無いんじゃない!?貴方に何が分かるのよ!!」
マルコーの言葉はエドワードとの頭をカチンとさせた。
いくらなんでも言いすぎだと。
「ドクターそれではあんまりな!」
アームストロングも同様のようで、短くマルコーにそう言った。
「あれは見ないほうが良いのだ。あれは悪魔の研究だ。知れば地獄を見ることになる。」
マルコーはエドワードを案じて、見ないほうがいいといっているようだった。
エドワードに背を向け、短く語るマルコー。
「地獄ならとうに見た!」
しかしエドワードはめげなかった。
幼い頃に犯した人体錬成で見た光景を思い出しながら、力強く呟いた。
そういうエドワードの顔を見て、マルコーは一瞬驚きの色を見せた。
「・・・・・だめだ。帰ってくれ・・・」
しかし、マルコーの意見は全く変わらなかった。
そう言われ、とエドワードは顔をあわせ、しぶしぶ駅へ向かって歩き始めた。
























「本当に良いのか?」
「え?」
アームストロングのいきなりの言葉にエドワードは首を斜めに傾け問いかける。
「資料は見れなかったが、石ならば力ずくで取り上げる事もできたろうに。」
駅のイスに腰掛けながら問いかけるアームストロングに対し、エドワードは
「あ〜〜〜〜のどから手が出る位欲しかったよ、マジで!!」
と、答えた。
「そりゃそーよね。あたしだって、あの場であの人殴り倒して奪い取りたいくらいだったわよ。」
エドワードの後で、怖い言葉を呟く
でも、その表情は笑っていた。
「でも、マルコーさんの家に行く途中で会った人たちの事を思い出したらさ・・・」
「この町の人達の支えを奪ってまで、元の体に戻っても、後味悪いだけだなーって。」
の言葉の後に、空を見上げながら呟くエドワード。
そしてくるっと横に居るアルフォンスの方に顔をやると、
「また別の方法探すさ。な。」
と話しかけた。
そのエドワードに対して、アルフォンスも明るく「うん。」と答えた。
「そういう少佐も良かったのかよ。マルコーさんの事を中央に報告しなくてさ。」
「そーだよね。一応、ここでドクター・マルコーって人を見つけたわけだし・・・」
「我輩が今日会ったのは、マウロというただの町医者だ。」
エドワードとの言葉を聞きながらもしらを切るアームストロング。
そんなアームストロングの言葉を苦笑しながらエドワードは聞いていた。
「あーあ・・・また振り出しかぁ・・・道は長いよ、まったく。」
「君!」
そう呟いた瞬間、駅の入り口の方から声が掛かった。
振り返ると、そこには知った顔があった。
「マルコーさん・・・」
「・・・・私の研究資料が隠してある場所だ。」
そう言うと、エドワードに紙を手渡した。
「真実を知っても後悔しないと言うなら、これを見なさい。そして、君ならば真実の奥の更なる真実に───いや、これは余計だな。」
そう言うと、くるっときびす返しをし、来た道をマルコーは歩き始めた。
「君達が元の身体に戻れる日が来るのを祈っておるよ。」
そう言いながら、マルコーの姿は徐々に小さくなっていった。
そして、そのマルコーの後姿を見ながら、アームストロングは敬礼をし、エドワードとはペコリと頭を下げた。
「良かったじゃない、エド。」
「あぁ・・・これで一歩前進だなっ!」
「うん!」
はニッコリ微笑み、ポンッとエドワードの背中を叩いた。
そして、エドワードは嬉しそうな顔をしながらグッと拳を握り締めた。
ガタガタガタガタ・・・・・
そんな会話をしているところに、列車が到着した。
急いで列車の中に乗り込み、イスに座る達。
そして、マルコーに渡された紙をゆっくりと開いた。
「何々!?なんて書いてあるの!?」
はエドワードに寄りかかりながら問いかける。
そんな姿を見ながらアームストロングはほほえましい笑みを浮かべていた。
「『国立中央図書館第一分館』『ティム・マルコー』・・・・」
「なるほど・・・『木を隠すには森』か・・・あそこの蔵書量は半端ではないからな。」
エドワードの読み上げた言葉を聞き、アームストロングは納得した顔をして呟いた。
「ここに石の手がかりがある・・・・!!」
「兄さんっ!!道は続いている!」
「───ああ!」
アームストロングの言葉を聞き、喜びの声を上げるエドワード。
アルフォンスはエドワードを見上げながら力強く言った。
その言葉にエドワードも力強く答えた。
そんな二人を微笑んでは見つめていた。
「そういえば、のお父さんも賢者の石じゃないけど、違うものについて研究してたよねー。」
アルフォンスの何気ない一言を聞き、はピクッと身体を揺らした。
軍に殺されたと思っているにとって、セレトの秘石についての話題は結構辛い記憶だったのだ。
「う、うん・・・・セレトのことでしょ?」
「そうそう。あれも賢者の石に相次ぐ力を持つって話だったよね。」
「うん。」
「あれ・・・一体何処に消えたんだろうなぁ・・・・」
「さぁ・・・父さんがきっと上手く隠したんだよ。」
アルフォンスとエドワードの言葉に軽く返しながら呟く
実際のところ、にも事実は分からないのだから仕方がないのだ。
それはエドワードもアルフォンスも分かっている事だった。























「おっ!見えた見えた!」
エドワードは左手をこめかみの部分にあて、その先にある家を見つめて呟いた。
「懐かしいねぇ〜リゼンブール。」
「うん。」
「ウィンリィ元気かなぁ?」
「これから会いに行くんだ。行けば分かるだろ。」
「そりゃそうだけど・・・」
そんなことを話しながら先へ進むと、家の前にはウィンリィの叔母のピナコが立っていた。
「よう。ピナコばっちゃん。また頼むよ。」
そう言うと、横を向いてアームストロングを指差した。
「こっち、アームストロング少佐。」
「ピナコ・ロックベルだよ。・・・しかし、しばらく見ないうちに・・・・エドはちっさくなったねぇ。」
エドワードに紹介され、ピナコも名乗る。
そして握手をかわしていた。
すると、ふとアームストロングとエドワードを交互に見つめるピナコ。
「誰がちっさいって!?このミニマムばば!!」
「言ったねドちび!!」
「豆つぶばば!!」
「マイクロちび!!」
「ミジンコばば!!」
ピナコの"ちっさくなった"という言葉に反応したエドワードの出てきた言葉は同じくらいのピナコの身長に対しての言葉だった。
「こらーーーー!!エド!!」
ウィンリィの叫び声に気付き、エドワードはビクッと両肩を揺らした瞬間、家の上の方からスパナが飛んできた。
「ごふっ!!」
そのスパナは上手くエドワードの後頭部に激突した。
「メンテナンスに来る時は、先に電話の一本でも入れるように言ってあるでしょーーーーー!?」
二階のベランダから身を乗り出し叫ぶウィンリィ。
その変わらないウィンリィの姿を見て、は笑い始めた。
「あははっははっはははは・・・・」
「・・・・誰?」
「あたしだよ、あたし!!!久し振りーウィンリィ!!」
「えっ!?っ!?久し振り〜〜!!元気だったぁ〜!?」
の言葉にキャピキャピした声で答えるウィンリィ。
そんな二人の会話の間にある声が飛んできた。
「てめーウィンリィ!!殺す気か!!」
「あははは、ごめんごめん。おかえりー!も、おかえり!」
「うん、ただいま。」
「おう。」


















「んなーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
ウィンリィはエドワードの右腕の壊れようを見て、声を上げていた。
「おお悪ぃ。ぶっ壊れた。」
片手でコップを持ち、飲み物を飲みながら言うエドワード。
言葉では謝っているが、全く悪ぶれた様子のないエドワードだった。
「ぶっ壊れたって、あんたちょっと!!!あたしが丹精こめて作った最高級機械鎧をどんな使い方したら壊れるって言うのよ!!!」
「いや、それがもう粉々のバラバラに・・・」
ウィンリィはヒステリーでも起こしているのではと思うくらいの勢いでエドワードに叫び続けた。
しかしエドワードは、はっはっはと笑いながら軽く答えていた。
そして、またエドワードの頭にスパナが埋まったのだ。
「で、何?アルも壊れちゃってるわけ?あんたらいったいどんな生活してんのよ。」
「あはは・・・・ちょっとイーストシティで二人とも事件にてか・・・変な人に絡まれちゃってね。」
と、が笑いながらフォローを入れていた。
その言葉を聞いてウィンリィはホッとした顔をしていた。
「変な事件に巻き込まれてないんなら良いんだけどね・・・」
「大丈夫よ、それは。」
そう言うと、はウィンリィにニッコリ笑みを浮かべた。
「それより、俺たち急いでるんだ。」
そう言うと、エドワードは理由を簡単にウィンリィとピナコに述べた。
「──で、その賢者の石の資料とやらを手に入れるために、一日も早く中央に行きたいって言うのかい?」
「そう!大至急やって欲しいんだ!」
ピナコの言葉に強く頷きながら答えるエドワード。
「うーーーん・・・腕だけじゃなく、足も調整が必要だね。」
「あら、一応、身長は伸びてるのね。」
「ウィンリィ・・・・てめー・・・」
ピナコの言葉に反応し、ウィンリィが笑いながら呟いた。
エドワードはギロリと軽くウィンリィを睨みつけたが、それは軽くじゃれている感じだった。
「足の方は元があるからいいとして、腕は一から作り直さなきゃならんからな・・・・」
カンカンとエドワードの左足を叩きながら呟くピナコ。
「ええ?一週間くらい掛かるかな?」
そう問いかけるエドワードを見て、スーッと息を吸うとハッキリとピナコは言った。
「なめんじゃないよ。三日だ。とりあえず、三日間はスペアで我慢しとくれ。」
「うん。っと・・・やっぱ慣れてない足は歩きにくいな。」
「大変そうだね、エド。」
スペアの足で立ち上がったエドワードの横に立ちは話しかけた。
「いや・・・慣れれば平気だよ。」
苦笑しながらエドワードはそう呟いた。
には分からない痛み。
には分からない辛さ。
でも、エドワードにもの辛さ、痛みを分からない部分もある。
「削りだしから組み立て、微調整、接続、仕上げと・・・うわ、完璧徹夜だわ。」
「悪いな、無理言って。」
指折り数えるウィンリィ。
その数を数えると、出てくる答えは"徹夜"だった。
その言葉を聞いたエドワードは罰の悪そうにウィンリィに謝った。
「一日でも早く中央に行きたいんでしょ?だったら無理してやろうじゃないのさ。」
そんなウィンリィの言葉を聞き、エドワードはキョトンとした顔を一瞬した。
「その代わり、特急料金がっぽり払ってもらうからね!!」
と、バシッとエドワードの背中を叩いた。
いつもなら、そのまま「いってぇなぁ。」というエドワードの言葉が待っているはずなのだが、今はスペアの足。
慣れていないため、エドワードはそのまま吹っ飛んではこの中に埋もれていた。























「・・・・・ったく、なんなんだ、あの凶暴女は!!」
「何を今さら。」
エドワードの言葉をよそに、アルフォンスは諦めきった声で呟いた。
「ウィンリィ・・・変わってないね。すっごい懐かしいな・・・・ここ。」
「そっか。はもうかなり来てないことになるもんな。」
の言葉を聞き、エドワードはねっころがっていた身体を起こして呟いた。
「は──三日か・・・」
そう言うと、エドワードはまた、コテンと横になった。
空はキレイな青、白い雲がところどころで流れていて、涼しい風が流れていた。
「・・・・とりあえずやる事がないとなると、本当に暇だな。」
「ここしばらくハードだったから、たまには暇もいいんじゃない?」
エドワードの言葉に笑いながら答えるアルフォンス。
しかし、エドワードは両足をバタつかせていた。
      性に合わねぇ!!」
「「暇なのは
      嫌だぁぁーー!!」
とエドワードの声がきれいに重なり合った。
「そうだ!そんなに暇なら、母さんの墓参りに行っといでよ。」
「墓参り・・・か。そうだな。行ってくるか。──は───」
「あたしはアルとここで待ってるよ。」
エドワードが聞く前には答えていた。
下を向いたまま答えるの姿は暗く見えた。
「そ・・・そうか。分かった。じゃ・・・また後でな。」
そう言うと、エドワードは墓参りに行くために、リゼンブールにある墓場へと足を向けていった。
はこの時考えていた。
父さんは殺された。
確かにそうだと思っている。
だけど、まだ自分はセレトの秘石関連から抜け出せていないのではないだろうかと、疑問に最近思うようになってきていた。
それは、エドワードとアルフォンスと一緒に旅を始めてからだった。
そして、軍が"失踪"と公表したときに。
やめろと父に何度も言いに着ていた軍が、それに逆らった父を早々見逃すだろうか。
普通ならあのまま殺すだろう。
だからまだセレトの秘石関連から抜け出せていないのではと思ってしまう。
だけど、これは予想にしか過ぎない。
だから、危ない目に会って欲しくないから・・・・エドたちには話さない。
そう心の中で決めると、キッと前を睨みつけた。
「リ・・・??」
「あ、アルどした?」
「いや・・・何か悩み事?僕でよければ聞くよ、。」
「ううん。なんでもないよ。」
そう言うと、はスッと立ち上がった。
?」
「ごめん。あたしもちょっと行きたいところあるから。」
そう言うと、はアルフォンスに背を向けて駆け出していた。
行き先は・・・・の父ティッドの研究所。
あそこでセレトの秘石が行方不明になったのだ。
そして、あそこがティッドと最後に顔をあわせた場所だった。


















がちゃ・・・・
「ここに・・・・セレトの秘石が隠してあれば・・・・」
そう言うと、は懸命に部屋中を探し始めた。
しかし、どんなに探してもセレトの秘石は出てこなかった。
あの時の事を思い出そうとすると頭痛が酷く、思い出す事の出来ない
あの時、何か凄い事が起きたんだということはには勘付いていた。
しかし、その出来事を思い出せずには苦しんでいた。
部屋の何処にも秘石は無かった。
しかし、セレトの秘石に関する資料がなくなっていることに気付いた。
しかも、その資料のおき場所はと父ティッドしか知らない秘密のおき場所だった。
パスワードを入れないと扉が開かない仕組みになっていたからだ。
「────父さんが生きてる!?」
はそのことから、そうとしか考えられなかった。
でも、何で父さんはリゼンブールに戻ってこないんだろう。
とか、何で父さんは自分に会いに着てくれないんだろう。と考えていた。
そして、そのことから、セレトの秘石の実験は続いていて、もまだ関連しているという事がの頭を横切った。
「・・・怖い・・・」
ブルっと身震いしながらはアルフォンスたちの待つウィンリィの家に向かって駆け出した。
外では丁度エドワードがアルフォンスの錬成をするところだった。
「お、。何処に行ってたんだー?」
気軽に話しかけてくるエドワード。
しかし、下を向いたまま何も言わないの様子に違和感を覚え首をかしげた。
それでも、早くアルフォンスの身体を元に戻してやらないとと思い、錬成を開始した。
パンッと両手を合わせ、アルフォンスの身体に触れると、その瞬間、アルフォンスの壊れた部分がバチバチバチと錬成され始めた。
そして、最後には完全にアルフォンスの壊れた部分は治っていた。
そして、もう一度の方にエドワードは振り返った。
?」
どうしたの?」
エドワードとアルフォンスは問いかけた。
しかし、はいっこうに口を開こうとしなかった。
!?どうしたんだよ、!?」
ガシッとエドワードはの肩を掴み前後に揺らしながら言った。
そのとき、の顔が真っ青だった事にエドワードとアルフォンスは気がついた。
「なん・・・でもない。」
そう言うと、はウィンリィの家の中へ一人入っていった。
「・・・・なんだったんだ?」
「・・・さぁ?」
その後、は夕飯も一緒に食べる事を拒み、一人部屋に閉じこもっていた。


















コンコン・・・・
??俺たちだけど、入っていいか?」
その声が聞こえ、はピクッと肩を揺らし、身体を起こした。
「うん・・・いいよ。」
そう言われ、入ってきたアルフォンスの手には握りたての湯気の立っているおにぎりが置かれていた。
「これ、にって、ウィンリィが。」
アルフォンスはそう言うと、近くのテーブルにおにぎりを置いた。
・・・大丈夫か?どうしたんだ?」
エドワードはベッドに身体を起こしているの側にイスを持って来て、向かい合って座ると、問いかけた。
「あの・・・さ。」
「ん?」
の切り出しに反応し、エドワードはを見つめる。
勿論、その後ろに佇むアルフォンスもを見つめていた。
「エドとアルは賢者の石を・・・求めてるんだよね?元の身体に・・・戻るために。」
「ったりめーだろうが!!なぁ。」
「うん!!僕だって・・・元の身体に戻りたいし。」
の質問にエドワードとアルフォンスは元気に答えた。
その姿を見て、は言う事を決心した。
ずっと心の中にためていたことを。
そして、自らの事を。
「あのね・・・・二人に言いたい事があるの。」
そう言うと、は真剣な顔で二人を見つめた。
「セレトの秘石はエドもアルも知ってるでしょ?それは、賢者の石に相次ぐ力を持っているの。もしかしたら元の身体に戻れるかも知れないし・・・そういう力を持っていなくても賢者の石の知識を得る事が出来るかもしれないの。」
「そっそれ本当か!?」
「うん。本当だよ。」
の説明を聞き、期待をする瞳をに向けるエドワード。
「でも、その石は行方不明。だから、あたしと父さんしか知らない、しかもパスワード制の隠し場所に研究資料がしまわれていたの。そこを今日見てきたんだけど・・・なくなってた。」
「「!!」」
「父さん・・・・生きてる。それで・・・まだ研究をしているみたいなの。それか・・・セレトの秘石を取り戻して、研究を続けるのか・・・それは分からないけど。」
「そ・・・そーなのか・・・」
「うん。それで・・・・あたし最近ずっと思ってた事があるの。」
そう言うと、は目を細め、下を向いた。
そして決心すると、グッと両手を握り締めた。
「あたし、セレトの秘石の研究に関連している気がするの。」
「誰が?」
「あたしが。」
「「え!?」」
「だって、あたしの周りの人ばかり死んで・・・しかも、研究をしていた父さんは研究資料を取って逃げていった。そして、おじいさんを殺した犯人が言ってた・・・あたしを殺したらあの方に殺されるって・・・・」
「「!!」」
その言葉を聞いて、エドワードもアルフォンスも驚愕の表情を浮かべていた。
「となると・・・・あたしは関連しているって・・・・考えるのが普通じゃない?どういった風に関連してるのかは・・・分からないけど。」
「あぁ・・・・」
の言葉にエドワードはそうとしか答えることしか出来なかった。
アルフォンスにいたっては、言う言葉が見つからず、を見つめる事しか出来なかった。
「大丈夫。俺たちが付いてるから。」
「・・・ありがと、エド。」
そう言った瞬間、外から爆発音が聞こえた。
しかも、それはウィンリィの家の近く。
「何!?」
急いでベッドから飛び起きると、部屋を出てベランダへと飛び出した
それに続いてエドワードとアルフォンスも。
「どうしたの!?一体何の音!?」
「ウィンリィとピナコばっちゃんは、家の中にいてっ!!」
アルフォンスの言葉を聞くと、ウィンリィとピナコはコクリと頷いた。
そして、三人がベランダにたどり着くと、ウィンリィの家の前に、一人の女が立っていた。
真っ黒な身体にフィットしたドレス風の服を身にまとっていた。
「あんたが、??」
そう問いかけられ、はコクリと頷いた。
「あの方の命令で、あんたを殺しに来たよ。」
そう言うと、スッと一本の長い剣を宙から取り出した。
それを見たは、一瞬瞳を閉じると、ベランダから一気に地面に降りた。
「「!?」」
その行為に驚いたエドワードとアルフォンスは声を揃えて叫んだ。
しかし、二人の声に気付きながらもは走るスピードを止めようとはしなかった。
パンッと両手を打ち合わせ、左手にいつもつけている鋼のリストバンドに右手をかざした。
その瞬間、青い錬成反応が起こり、一瞬にして鋼のリストバンドが盾へと変化した。
それで敵の攻撃を受ける
そのとき一瞬見えた額にあるイレズミ。
それは、セレトの秘石の中に埋め込まれていた錬成陣と同じイレズミだった。
パンとまた両手を合わせ、リストバンドに戻すと、すぐに女との間合いを取った。
「そのイレズミ・・・・あんた父さんと関係してるの?一体あんた誰?」
「この一戦でそこまで見たの。凄いわね。確かに私は貴方の父さん、ティッド様と関係あるわ。だけど、ティッドさまの命令に従うだけよ、私は。それだけ。」
「・・・・父さんが私を殺そうとしている?」
「ま・・・そういうことね。ちなみに私の名前は・・・シネラ。」
「実の父親が娘を殺そうとするだとっ!?」
今までの会話を聞いていたエドワードはの錬成陣なしでの錬成よりも先に、実の娘を殺そうとしている父親の事を叫んだ。
「私達は、ティッド様の実験しているセレトの秘石の失敗作よ。貴方の見た秘石が出来上がるのはまれなの。大体が、私たちのような人間モドキ。それがティッドさまの力でこの姿になる事が出来るの。」
そう説明しながらもシネラはジッとを見つめていた。
「私達はきちんとティッドさまから今回の目的を聞いているわ。それでこの命令に従っているの。だから・・・死んでね。」
語尾にハートマークがつきそうな口調でシネラは言った。
しかし、はそのまま殺されるような女ではなかった。
「ふざけないでっ!!これで・・・これで父さんが生きているって・・・セレトの秘石がある事が分かった・・・なのに死ねるわけないわ!!」
そう言うと、はパンっと両手を打ち相手をにらみつけた。
右手を左手にある鋼のリストバンドにかざし、盾を錬成する。
そして、そのままシネラに向かって突っ込んでいった。
相手の攻撃を盾で受け止め、すぐに間合いを取る
そして盾に錬成していたものをすぐに弓に錬成しなおした。
そして、近くに落ちていた石を掴み、それを矢に錬成しなおした。
そして、遠距離からシネラに攻撃を仕掛けた。
しかし、いっこうに倒れる様子のないシネラ。
「エド・・・アル。」
「「ん?」」
「援護宜しく。」
そう言うと、鋼のリストバンドを甲剣へと錬成した。
すると、そのままは真っ直ぐシネラに向かって駆け出していた。
「ったく・・・・行くぞっ!!」
そう言うと、エドワードはの後を追って駆け出していた。
パンと両手を突いてシネラの足元を脆い物質に変え、落とし穴を作るエドワード。
地面が沈んだことに気付いたシネラは急いで後ろに飛びのこうとした。
が、すぐにアルフォンスの錬成で出来上がっていた小さな四角い出っ張りに足を取られ、後ろに転げるシネラ。
「ったっ!!」
「とったっ!!」
そう言うと、はシネラの上に乗った。
「そして、甲剣をシネラの額のイレズミにかざし、一思いにグサッと突き刺した。
「ぎゃあぁぁああぁーーーーーーーー!!」
凄い悲鳴と同時にさっきまで実体化していたシネラは手足のない肉片へと変化していった。
「はぁはぁ・・・・」
・・・・」
「大丈夫・・・・戻ろう。」
そう言うと、はエドワードに背を向けウィンリィの家に向かおうとした。
「人体錬成・・・・したんだな?」
エドワードの低い声にビクッと身体を振るわせた。
「そうだよ・・・人体錬成・・・犯した。でも、それはエドたちだって同じでしょ?」
「それはそうだけど───っ!!」
「だから、何も言わないでっ!!あたしだって何も聞かない!だから聞かないで!!」
はそう叫ぶと、急いでウィンリィの家の中へ入っていった。
「でも、アイツ・・・・真理に何を持っていかれたんだ?」
エドワードはタダ一つの疑問だけが残っていた。




















「世話んなったな、ばっちゃん。」
「あたしも、お世話になりました。」
「ああ。」
エドワードとの挨拶に軽く答えるピナコ。
「あれ、ウィンリィは?」
「徹夜続きだったからまだぐっすり寝てるよ。起こしてくるかい?」
ウィンリィの姿がないことに気付いたアルフォンスは、何気なく呟いた。
それにピナコが反応し、起こしてこようか?と問いかける。
「あーーいいよいいよ。起きて来たら機械鎧の手入れはちゃんとしろだの、あーだこーだうるさいから。」
右手を上げてパタパタと振るエドワード。
「じゃぁな。」
「あぁ。気をつけて行っといで。ボウズども、たまにはご飯食べに帰っておいでよ。」
手を振り帰ろうとするエドワード達に優しい言葉をかけるピナコ。
「うん、そのうちまた。」
「こんな山奥に飯食うだけに来いってか。」
「あたしは来てもいいと思うけどねぇ〜」
ハァと大きく溜息をつくエドワードに対して、はニコニコと笑みを浮かべて言っていた。
「ふっふ・・・」
「?なんだよ。」
行き成り笑い始めたアームストロングに気付いたエドワードは、振り返った。
「迎えてくれる家族・・・帰るべき場所があるというのは幸せな事だな。」
「へっオレたちゃ旅から旅への根無し草だよ。」
ニッコリと微笑むアームストロングの言葉を、軽くあしらうエドワード。
「エド!アル!!」
そんなときに掛かった声に気付き、3人はゆっくりと振り返った。
ベランダに起きたてのウィンリィの姿があった。
「いってらっさい・・・」
眠たげな顔のままひらひらと手を振るウィンリィ。
「おう!」
ぽりぽりと頭をかいた後、照れるかのように、エドワードは言った。
右手を上げて、行ってくるな、というように。
勿論アルフォンスもも上半身のみ振り返り手を振っていた。
「エド。アル。二人に言い忘れてたけど・・・あたしね、母さんと父さん、そしてじいちゃんを蘇らせるために人体錬成を行ったの。」
ウィンリィの家から遠ざかりながら、歩くは行き成りそう話題を降ってきた。
「オレ達は、母さんを錬成しようとした。」
そう言うと、三人は向かい合った。
そして笑った。
「そーいやぁ、って、真理に何処持っていかれたんだ?俺たちは見たとおり、右腕と左足、アルが全身だけどよ。」
「あたしは右目。これね、自分で作った偽物の目なの。だから、この右目は、本来は何も無いの。」
は右手で自らの右目を押さえ、小さく呟いた。
「そっか・・・・」
それを聞いたエドワードは短くそう言った。















To be continued...












という事で、何とかここまでっ!!!
の父さん生きてましたね(笑)
しかも何やらの命狙ってるし♪
さて、ちょっとここでネタバラし・・・
という事で、反転しますので、見たい人は見て、見たくない人は見ないで下さいね!!!


実は、父さんの本来の目的はを殺す事にあるんじゃなくて、を殺すようなくらいの勢いで襲い、成長させる事にあった。
ということなんですよ。
そうする事で、父さんの目的が徐々に最終段階へと向かうって訳ですね。



はい、ネタバレ終了!!!
さて、次回は中央ネタです!!
もうすぐオリジナルへ向かっていきますのでお楽しみに!!
といっても、兄弟喧嘩までは普通に行いますけど・・・
一緒に行動しなかったりとかあるので、だいぶオリジナルに近くなるかと思います!(予定)
ま、全ては予定なので変わることも・・・・あります!!(笑)
では、次回をお楽しみに!!!





隠されしセレトリアの秘石に戻る