どうして、私は軍人で、あなたは人造人間(ホムンクルス)なの?
どうして……私達は相容れることが出来ないんだろう

こんなにも……愛しているのに









熱願冷諦









強く強く、求めてしまう
強く強く、願ってしまう

私と彼とを切り裂くものが、なくなってしまえばいいのにと



「あっれー?こんなところで何してんの?」


掛けられた声に、ドキリと胸が高鳴った。
背後から、と分かるとゆっくりと振り返った。


「エンヴィー……」


「ボクじゃ不満なわけぇ?」


くすくすと笑う表情を見つめ、それからハッとした。
慌ててそんなことはないと否定の意味を込めて、首を横に振った。


「そんな事ない 会いたかったもの」


「へーえ それはそれは、嬉しいことを言ってくれるねぇ」


言いながら、にじり寄るようにエンヴィーはに近づいた。
そのまま前かがみになり、の顔をジッと見つめ。


「んっ」


軽い触れる程度のキスを交わす。
それだけで顔が真っ赤に染まりあがる。



もっともっと……強く求めちゃうのに……
エンヴィーはそれをわかってやってるの?

わかってやってるわけ……ない、か



思うのに、そうやって否定する。
それはそんな事ある分けないと諦めているから。
だからこそ、そんな風にあっさり諦めることが出来る。

ただ、諦めることが出来ないのはエンヴィーへの思いだけだった。


「で、は何を考えてるわけ?」


「……私も、人造人間(ホムンクルス)になりたい」


そう言葉にするのは知っているから。
人に賢者の石を流し込み、歳を取る人造人間(ホムンクルス)を作ることが出来ることを。


「はぁ?馬鹿言わないでくんない?」


けれど、返ってくるのは冷たい反応。



どうして……駄目なの?
私はもっと、エンヴィーと一緒にいたいだけなのに



叶わない願いは、より強く願うキッカケになってしまう。
諦められるものはすんなりと諦められるのに、どうしても諦められないものは熱心に願望してしまう。


「ボクは、人間のが好きなんだけど?人造人間(ホムンクルス)になんてなられたら、面白くも何ともないね」


その言葉に、目を見開いた。
好きだという言葉に。
人間で軍人で、そして人造人間(ホムンクルス)という立場に苦しんでいたのに、それがいいという言葉に。


「……私が軍人でも?エンヴィーと敵対する組織にいても?」


「敵対する組織?軍人が?」


くすくすと笑い、の顔を見つめる。


はまだまだ知らないことだらけみたいだねぇ」


そう呟き、人差し指をの唇に押し当てた。
微笑み、そして指を離した瞬間唇が触れ合う。



……どういう、こと?



疑問そうにエンヴィーを見つめる。
けれど、エンヴィーは笑うだけで何も答えない。


はまだ知らなくていい事実なんだよ」


そういうと、踵を返した。


「待って!」


「また、会いにくるからさぁ」


待っててよね、とエンヴィーは微笑み姿を消した。



熱願冷諦
求める時には熱心に願望し、かなわぬ時には冷静にさらりと諦めること

だけど、私はたぶん……叶わない時でも、冷静にさらりと諦めることなんて出来ないと思う
どこまでも醜く、どんなに滑稽でも……願望し続けてしまうと思う

大好き、だから









..................end






二十六万ヒットありがとうございます!
ということで、感謝の気持ちを込めてフリー夢を。
四字熟語の「熱願冷諦」を引用。
意味は文章内にあるので省略。

お持ち帰りと掲載自由、リンクと報告特に必要なし。
再配布や修正加筆等はしないで下さい。
掲載される際は管理人名の記載をお願いします。
コピペでお持ち帰り下さるのが一番手っ取り早いかと思います。






鋼の錬金術師夢小説に戻る