「またウィンリィに心配かけちまうな」


肩をすくめるエドワードに、ツキンと胸が痛んだ
機械鎧(オートメイル)の破損。
おのずとウィンリィの世話になるのは当然の事。

なのに……












思えば思うほど牴牾してしまう












あれから数日。
はエドワードを避けるようになっていた。


ー!?おい、!?」


「……!!」


聞こえてきた声に、はハッと息を呑んだ。
そして、その声から逃げるように踵を返し駆け出す。


「あ、!てめ!」


逃げられれば追いたくなるのが人の性。
ましてエドワードが相手となれば、追われるが必至。


「何で追ってくるの!?」


「じゃあ、何で逃げんだよ!?」


逃げながら後ろに居るエドワードに疑問を投げる
その問いに答えることなく、エドワードもに疑問を投げた。


「エドが追ってくるからに決まってるでしょ!?」


「嘘付け!追う前に逃げただろうが!」


背中が怖かった
必死に走って逃げているのに、徐々に距離を縮められている感覚。
後ろを軽く振り返れば、確実に近くなっている姿。


「やだぁ!!来ないでよ!!」


今にも泣き出しそうな震えた声。
この言葉がどれほどエドワードを傷つけることになるのか、は分かっていなかった。


「…………」


ぴたり

は、追ってくる気配が止まったような気がした。
だから、も逃げる足を止め振り返った。


「エ、ド?」


そこに立っていたのは、少しだけ寂しそうな顔をしたエドワードだった。


「そんなに……オレが嫌いか?」


「え?」


問われた疑問を、再度聞き返してしまう。
今のはきっと、聞き間違えたんだとは思いたかった。


はオレが嫌いなのか?顔を見るだけで逃げるくらいに」


「ち、違うっ!」


「違わなくないだろ!?現に、オレから逃げてんじゃねーかよ!」


力なく下ろされていたエドワードの手。
しかし、その叫びと同時に強く握られた。


「────そ、それは……」


「わりぃ もう……近寄んねぇよ」


その言葉が合図だったかのように、エドワードは踵を返した。
ずっとの背中を追ってきていたエドワードの背中が、今はの目に映る。


「まっ────」


ぎゅっ


「────待って!!」


慌ててエドワードに駆け寄り、はその背中に抱きついた。
驚き、背筋が述べるエドワード。
その息が詰まったのが、腕を伝わってよく分かった。


?」


「嫌いなんじゃないの……そうじゃ、ないの
 ただ……エドはウィンリィが好きなんじゃないかって思って……」


その言葉に、エドワードは目を点にした。
幾度も金の瞳を瞬かせ、を見る。


「は?」


間抜けな声が、唇を割って出てきた。


「オレがウィンリィを?」


エドワードの確認する言葉に、はコクコクと頷いた。


「は……はははは 何言ってんだよ、!」


「……え?ちょ、何で笑うの!?」


の言葉に爆笑してしまうエドワード。
けれど、当のはなぜ笑うのかがいまいち理解できなかった。


「とんだ勘違いだぜ?オレは別にウィンリィのことを好きだなんて思ってない
 ウィンリィはオレの幼馴染 ただそれだけだぜ?」


くすくすと、肩を震わせるように笑いを堪え呟く。
そんなエドワードをキョトンとした瞳で見つめることしか、には出来なかった。



か、勘違い?
ずっと勘違いして……エドを避けてたの?私



再確認すると、なんだか恥ずかしい誤算。
まったく無意味なことをしてきた事に、の顔が真っ赤に染まりあがった。


「でも、ウィンリィに嫉妬してくれたわけだ?」


「う」


図星。
罰の悪そうな表情を浮かべ、エドワードに視線を向ける。
けれど、エドワードはとってもご機嫌な笑顔。


「嬉しいよ、 さんきゅー」


ちゅっ

感謝の言葉とともに、リップ音。
互いの唇が重なり合い、すぐに離れる。
それは初々しいキス。


「エッ、エド……」


「はははっ 、顔真っ赤だぜ?」


「んもぉ〜」


茹でだこのように、真っ赤に染まりあがった顔。
笑うエドワードに照れながらも嬉しそうな笑みを浮かべる
その双方の微笑みは、とても幸せそうだった。


「大好き!」


とびっきりの笑顔。
それは、からエドワードに贈るもの。
エドワードにしか見せない、恋人の笑顔。

だから、エドワードもにしか見せない最高級の恋人の笑顔を見せるのだった。









..................end





エドとウィンリィの絆に嫉妬するヒロインもいいかなと。
でも、本家ではウィンリィは確実にエドに思い寄せてるし、エドもまんざらでもなさそうだからね。(笑)
ので、そんな二人を勘違いして一人大暴走するって感じで……
コンセプトは、すれ違いながらも最後は甘甘で。(なってるかなぁ?)






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