ねぇ、少しは考えてしまったことはない?
あなたの存在が大切過ぎて……ふと、怖い想像を







例えば君がいなくなったとして、







「アル、一緒していい?」


枕を抱きしめて、はアルフォンスの元を訪れた。
鎧の姿となって、もう数年が経つアルフォンスは未だ元に戻る方法が見つからない。
魂だけが鎧に定着している今──考えてしまうと眠れなくなってしまう。


「また、くだらないことでも考えてた?」


「くだらない言わないでよ、アル 私にとっては一大事なんだから」


むっと唇を尖らせて──アルフォンスのそばに座った。
一緒に持ってきた毛布で身体を包み込んで。


「くだらない事だよ これは、禁忌を犯した僕らへの罰なんだから」


「だからって……だからって、嫌だよ」


声を一瞬荒げてしまった
罰だと考えてしまえば簡単かもしれないけれど、だからってそれがくだらないことかどうかなんて人それぞれだ。


「アル……お願いだから、私を置いていかないでね?」


膝をギュッと抱え込み、確認するように問い掛けた。
隣にある気配に寄り添いながら、必死に引きとめようと呟く。



いなくならないで……
身体がなくたっていい……アルって存在があれば、それでいいから……



アルフォンスが元の身体に戻りたい事は知っていた。
知っていたけれど、は戻って欲しいという事よりもいなくならないで欲しいと思う事が多かった。


「それこそくだらない事だよ、


「アルッ?」


アルフォンスの言葉に驚くに苦笑を浮かべ、ぽふっと大きな手での頭を撫でた。
ごつごつして冷たい手が、の頭を包み込む。


「僕はいなくならないよ、置いていかないよ
 を一人にするなんて……心配だしね」


それでも良かった、にとっては。
居なくならない、置いていかない理由が何であろうと──居続けてくれる事には変わりないから。


「約束、破ったら許さないからね?」


「分かってるよ がそういう人だって、僕はよ〜く知ってるしね」


苦笑の色を含む声色で、アルフォンスは言った。
そんな言葉がには嬉しかった。
分かってくれる事が、知ってくれていることが、そこにアルフォンスが居ると確認できるようで。


「……アル」


?どうしたの?」


突如、ギュッと抱き付いたにアルフォンスは不思議そうな声を上げた。
冷たい温もりがひんやりと肌を伝っていく。


「本当に……いなくならないでね?絶対だよ……?」


……大丈夫だよ、僕は絶対に居なくなんてならないから」


何かを察知しているかのように不安がるに、アルフォンスは笑って言いきった。
大丈夫だという根拠もないのに。



本当に……いなくならないで……
アルが居なくなったら、私は……どうすればいいのか分からなくなる



怖いのか、不安なのか、にも分からなかった。
ただ見えない未来に、何とも言えない感情が沸々と湧き上がっていくのだ。


「……約束」


「うん、約束」


冷たく大きな小指と、の小指が交わった。
未来の分からないままの指きり。
それでも、約束があるのとないのとではまったく違うものだった、心持ちが。








...............end





アニメ最終回近くなイメージで書いてました。
ほら、アルが一度居なくなっちゃうじゃないですか。
エドが呼びもどしてくれるけど……(笑)
ということで、まったく関係ないけど二十七万ヒット感謝のフリー夢です、と。
D.C.様でお題をお借りしました。

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