とびっきりの笑顔で迎えて








コンコンコンコン。

ノック、四つ。
それが私がアルのいる部屋を訪れる時の合図。


「空いてるよ〜」


明るい声が聞こえ、私はドアを開けて中へと飛び込む。
そこには見慣れた鎧姿のアルが居て……そして、いつもとびっきりの笑い声で迎えてくれる。


「こんばんは、アル また暇かと思って来ちゃったv」


えへ、と笑いながらアルの近くに私は腰掛ける。
鎧姿のアルが夜、眠ることが出来ないと知ったのはつい最近。
だからこそ、私は夜になるとアルの元を訪れるようになった。

それが、最近の私の日課。


「来ると思って待ってたんだよ」


兄さんは寝ちゃったけどね、とアルは声で笑う。
私はいつも思うんだ。
早く、アルの笑顔を“見たい”と。
耳で“聞く”笑顔じゃなくて、目で“見る”笑顔を知りたいって。

それは、私の我儘なのかな?

早く、とびっきりの笑顔で迎えてくれるアルを見たい……


「どうしたの?」


「あ、ううん 何でも──」


「ないわけないよね?」


「う゛……」


アルにはいつも筒抜け状態。
私の反応や心の動きに凄く敏感で……笑ってしまう。


「うん、あのね……」


「何?」


言っていいものかと悩んでしまう考え事だったけれど、言う事をアルは望んでいるから。
だから私は意を決して、言葉を口にしたんだ。


「……とびっきりの笑顔で迎えてくれるアルを……早く見たいなって」


そう言ったら、アルは無言になってしまった。
だから、私は言うべきじゃなかったのかなって思ったんだけど……すぐに、フッと笑い声が聞こえたんだ。


「それじゃあ、ボクは早く元の身体に戻らなきゃだね」


明るく言ってくれるもんだから、私はそんなに気にする事じゃなかったのかなって思ってしまう。
そんな事はないのに。
本人が一番、気にしている事だと思うのに……

私は無神経なほどに……それでも“とびっきりの笑顔で出迎えてくれる”ことを願ってる。









..................end






拍手用に書きあげた夢小説です。
その為、文中に主人公の名前がありませんがあしからず^^

D.C.様でお題をお借りしました。
ありがとうございました。






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