ゴロゴロゴロ………
雷が鳴り響く中、黒と白の毛並みの一匹の犬が雨に濡れて歩いていた。
「…………。」
ただ、もくもくと雨宿りをするわけでもなく、鳴くわけでもなく。
「……??」
歩いていると、明るい光が地面から放たれ、犬はピタリと立ち止まった。
その光の部分を見つめ、首を傾げる。
円が二つに、三角形が円の中に二つ、その三角形と重なるように五角形の図が一つ描かれていた。
青白い光を放ち、地面に描かれていた。
その円に触れるように前足を伸ばせば、いきなりカァァァァっと光だし。
犬はその光に包まれ、姿が消えた。












時ヲ切リ裂ク雷ノ……… 第1話













「……あ!兄さん、目が覚めたみたい!!」
そう呟く声が聞こえ、ゆっくりと視線を上げる。
犬の前には一体の大きな鎧をまとった人。
そして椅子に腰掛けた金髪金目の少年が一人居た。
「本当か?」
鎧の声に反応し、金髪金目の少年が近寄ってきた。
ただ、怖くて怖くて警戒しつつ二人のやり取りを見つめる事しかできない犬。
「警戒すんなって。オレ達は雨の中倒れてるお前を見つけただけだよ。」
そう言いながら、犬の頭を軽く撫でる。
そんな金髪金目の少年を見て、鎧が小さく「兄さんが優しいのって珍しいなぁ〜」と呟いた。
勿論、即座に「うっさい。」と叱咤されたようだが。
……なんでこんなに優しいんだろ。
そう思いながら犬は二人を見上げていた。
それに……いい匂い。まるで………あの人のそばに居るみたい……
金髪金目の少年と鎧を見つめたまま、ボーっとした表情を浮かべる。
一体ここは何処なのか、一体彼らは誰なのか分かるはずもなく。
また、喋る事もできず問いかける事もできなかった。
コンコンコン………
その時、二人と一匹のいる部屋のドアをノックする音が聞こえた。
ここは……二人の家じゃないの?
犬は即座にそう感じ取った。
普通、家ならばチャイムが鳴ったりするはずなのだが、ノックはドアから聞こえた。
……この人も……この二人ほどじゃないけど……いい匂い。
やはり、ドアの向こうから匂ってくる相手の匂いはいい人がかもし出す匂いで…
犬はくぅぅん、と喉を鳴らした。
「あー……大佐ぁ?」
「あぁ。入ってもいいかね、鋼の?」
「あぁ、構わないぜ、大佐。」
ドアをノックしてきた相手に声を掛ける金髪金目の少年。
その声に反応して、ドアの向こうの人が声を掛け、少年の返事が聞こえればゆっくりとドアを開いた。
「エドワード・エルリック。頼まれていた“生体練成に詳しい錬金術師”を調べておいた。」
そういい書類を持ってツカツカと近寄ってくる大佐と呼ばれた人。
「マスタング大佐…ありがとうございます。」
「いや、気にするな、アルフォンス。」
ペコリと頭を下げてお礼を述べるアルフォンス。
そんなアルフォンスに笑顔を向けるマスタング大佐。
ここで紹介しておこう。
金髪金目の少年がエドワード・エルリックという鋼という二つ名を持つ国家錬金術師。
その隣に佇む鎧の姿をしているのが、エドワードの弟のアルフォンス・エルリック。
そしてドアをノックして現れたのが、ロイ・マスタングという軍人。
地位は大佐で、同時に焔の錬金術師でもある。
「“遺伝的に異なる二種類以上の生物を代価とする人為的合成”───つまり、合成獣の練成の研究者が市内に住んでいてね……」
ロイは無表情でペラペラと書類に書かれていることを読み上げる。
そしてその言葉に無言で耳を傾けるエドワード。
アルフォンスも勿論のこと静かに話を聞いていた。
「で……名前は?」
「──“綴命の錬金術師”ショウ・タッカーだ。」
「綴命の錬金術師……ショウ・タッカー?」
ロイの言葉を鸚鵡返しするように問いかけたのは、アルフォンスだった。
「そうだ。彼は二年前に人語を喋る合成獣の練成に成功して国家錬金術師の資格をとった者だ。」
ペラリと書類を捲り、書かれている事を読み上げる。
その言葉にエドワードとアルフォンスが驚いたのは当たり前だろう。
「人の言葉を喋るの!?合成獣が!?」
「そのようだね。私は当時の担当ではないのでね、詳しい事は知らないが……人の言う事を理解して喋ったそうだ。たった一言“死にたい”と。」
エドワードの驚きの言葉に、同時もせずに返事を返すロイ。
そして、静かに目を細め、続きの言葉を述べた。
たった一言喋った言葉が“死にたい”という事だったとしったエドワードとアルフォンスは何も言えず、ただ唖然とするだけだった。
「その後もエサも食べずに死んだそうだ。まぁ、とにかく……どんな人か会ってみるのがいいかも知れんな。」
そういわれれば、エドワードもアルフォンスも顔を見合わせて、小さく頷き。
それでも、何を言えばいいのか分からずに居た。
「そういえば……その犬は何なのだね?」
さて、行くかと立ち上がったロイの目に映った犬の姿。
犬はじぃっと話が続く間ロイを見つめていたのだが。
ロイは今さっき気づいたようだ。
「あぁ……外雨降ってただろ?濡れてて…気ぃ失ってたからつれてきただけ。」
そう呟き犬に視線を移すエドワード。
「またアルが拾ってきやがってさ。」
「だって、濡れててかわいそうだったんだもん!!」
初めて知った事実に唖然とする犬。
そして、やっぱり優しいんだと再確認した。
「で……犬犬呼ぶわけにもいかぬだろ?名前はなんと言うのだね?」
犬の前に膝をつき、頭を撫でながらエドワードとアルフォンスに問いかけるロイ。
ロイの以外な一面を見たエドワードとアルフォンスは唖然としていたが。
問いかけられた事に気づきはっとした顔をして。
「さぁ……あ、でもその首輪に名前彫られてるかもしれねぇ!」
そういいエドワードは急いで犬に近寄り首輪を見た。
その首輪にはエドワードが言ったとおり名前が彫られていて………
「……?」
首輪に書かれていたローマ字の名前に気づき、読み上げるエドワード。
名前を呼ばれた事に気づいた犬ことはワンワンワンと声を上げた。
「そうか。お前はと言うのか。」
そういいながらロイはの頭を撫でた。
「さて……行くぞ。」
「あ、おう!行くぞアル!!」
「うん。でも……はどーするの?」
立ち上がりエドワードとアルフォンスに声を掛けたロイ。
エドワードとアルフォンスは反応し立ち上がるが。
の事が気にかかりアルフォンスがエドワードに問いかけた。
「どうするって、外はもう雨やんでるだろ?出す。」
そう言うと、エドワードはをつれて宿の外へと足を赴けた。
「じゃぁな……。」
そういいエドワードはに背を向け歩き出した。
しかし、自身は別れることを了解したわけではなく。
歩き出したエドワードとアルフォンスの後ろを追いかけた。
自分の知らない土地でどんな人が居るかも分からない現状。
この人たちについていくのが得策だと踏んだからだ。
この人たちについていけば、元の場所に戻れると思って。
「ねぇ、兄さん。、ついて来るよ?」
アルフォンスに言われてやっと気づいたエドワード。
はぁ、と大きく溜息をつき。
「ワンワンワンッ!!!」
は大きく吠えた。
「………ついて来たいのか?」
「ワンワンワンッ!!!」
の泣き声に反応し、問いかけるエドワード。
まるで意味を理解しているようにもう一度泣き声をあげる
その様子を見て、顔を見合わせるエドワードとアルフォンス。
「しょうがねーな……飽きるまでな?」
と何とか承諾したエドワード。
エドワードの言った意味は、が飽きるまで勝手について来いという事だった。
その事をきちんと理解したのか、はもう一度ワンと吠えた。
その様子をほのぼのと見つめるロイの姿があった。











カラカラン……カラカラン……
ドアの近くにある呼び鈴をならしながら、タッカーがドアから出てくるのを待つロイ。
その後ろのほうでポケーっとした表情を浮かべ、大きなタッカーの家を見上げるエドワードとアルフォンスの姿があった。
勿論もエドワードの真後ろに待機していて。
「!?」
その時、エドワードが陰り、何かと思うと、エドワード並みの大きさの犬がジャンプしてくるところだった。
「ふんぎゃぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁぁっぁぁぁぁああぁぁぁぁ!!!!!」
エドワードは大きな声を上げ、とは別の一匹の犬に押し倒された。
その様子を見ていたが急いでエドワードに近づき。
貴方名前は?
ワンワン、キュンキュン声を上げながら犬に声を掛ける
しかし、の問い掛けに答える前に第三者の声が答えていた。
「こら、駄目だよアレキサンダー!」
その声に反応し、はフイッと声のしたほうへ視線を向けた。
そこには扉を開けて、現れた二人の人物。
一人は眼鏡をかけた、どこか掴みどころのなさそうなおじさん。
そしてもう一人は、めがねのおじさんの娘であろう小さい少女。
「わぁ、お客様がたくさんだねーお父さん!」
「ニーナ。駄目だよ、犬はちゃんとつないでおかなくちゃね。」
ドアノブを握ったまま、ドアの外に立つエドワード、アルフォンス、ロイそして犬のを見て嬉しそうにニーナと呼ばれた少女が呟いた。
そんなニーナに視線を落とし、エドワードにのしかかったアレキサンダーという犬を指差した。
「まぁ、どうぞ中へ。」
そういわれれば、エドワードとアルフォンスは顔を見合わせて。
「「お邪魔します。」」
丁寧に呟き、中へと入っていった。
「いや、申し訳ない。妻に逃げられてしまってからね……家の中もこの有り様で……」
そういいながら、散らばった本を手に取り片していく。
家に入る際、をどうしようかと迷ったエドワードとアルフォンスだったが。
ニーナがワンちゃんも入ってといったために、も家の中に何故か同行することとなった。
「さて……あらためて、初めましてエドワード君。綴命の錬金術師のショウ・タッカーです。」
椅子に腰掛けながら呟き、まだ佇んでいる三人に椅子を勧めた。
タッカーの後に口を開いたのがロイだった。
「彼は生体の練成に興味があってね。是非タッカー氏の研究を拝見したいと。」
ロイはエドワードを指差しながら呟きタッカーに視線を向けた。
「えぇ。構いませんよ。」
そう言うとずれかけた眼鏡を掛けなおし、まっすぐエドワードを見つめた。
「でもね、人の手の内を見たいと言うなら君の手の内も明かしてもらわないとね。それが錬金術師というものだろう?」
そう呟くタッカーにエドワードは一瞬眉をピクッと揺らした。
そんな話をしているタッカーを見つめるは床に伏せったままだった。
……ヤな匂い……悪意の匂いが…微かにする……
はじぃっと見つめたまま、少し怖い顔をしていた。
しかし、その事に気づいているものは誰一人としていなかった。
「何故生体練成に興味を?」
少し間を置いた後、タッカーはエドワードに問いかけた。
その言葉に明らかに同様の表情を浮かべるエドワード。
どうやらあまり話したくない内容だったらしく。
ロイは急いで間に口を挟んだ。
「あ、いや。彼は……」
「大佐。タッカーさんの言う事ももっともだ。」
言いかけたロイの言葉をさえぎり、呟くエドワード。
上着の服を抑えている灰色の止め具を外し、上着を脱ぐエドワード。
その下から現れた機械鎧に驚きの表情を浮かべるタッカー。
「…………なんと………それで“鋼の錬金術師”と────」
エドワードの機械鎧をジッと見つめたまま小さく呟く。
エドワードの機械鎧を見たも同じく驚いていて。
顔を床につけていたのだが、機械鎧が露にされた瞬間、パッとは顔を上げてエドワードを見つめた。

















「そうか、母親を………」
エドワードから過去の話を聞き、納得したタッカー。
両手を合わせて、テーブルに肘を着くタッカー。
「辛かったね。」
短くそう呟くことしか出来ないタッカー。
一瞬見開いていた瞳を細め、シンッとしているエドワードとアルフォンスを見つめた。
「彼の身体について上には東部のあの内乱で失ったと上には言ってあるのでね……人体練成の事については他言無用でお願いしたい。」
スッと左手を胸の辺りに持ってきて事情を話すロイ。
そんなロイに一瞬視線を向けると、カタンと立ち上がったタッカー。
「ああ、いいですよ。軍としてもこれほどの逸材を手放すのは得ではないでしょうから。」
そういいながら立ち上がったタッカーは。
では……と呟き一つのドアに向かって歩き始めた。
「役に立てるかどうかは…分かりませんがね。私の研究室を見てもらいましょうか。」
そう言うとドアを開け、中へと入っていくタッカー。
その後を急いで追いかけるエドワードとアルフォンス。
そしてロイと
「うわぁ……」
ドアの中に入って第一に目に付いたのは合成獣の数だった。
「いやお恥ずかしい。巷では合成獣の権威だなんて言われているけれど…実際のところ、そんなには上手くいっていないんだ。」
右手で頭をかきながら、恥ずかしそうに呟くタッカー。
エドワードとアルフォンスは好奇心旺盛な表情を浮かべて辺りを見渡した。
何処を見ても合成獣合成獣合成獣で。
「あぁ、こっちが資料室だよ。」
そう言うと、キィィッとドアを開きエドワードに見せた。
「おーーー!!」
広い部屋にたくさんの本棚。
そしてたくさんの本が詰め込まれていて。
エドワードはおどろ沖の表情を浮かべ、そして驚きの声を上げた。
「すげーーー。」
「自由に見ていいからね。私は研究室にいるから。」
感動の言葉を漏らすエドワードに苦笑しながら、ここにある本は自由に見ていいと呟くタッカー。
そんなタッカーの言葉を聞き、エドワードは右肘を左手で支え、右手を口元に持っていく。
「よーし。俺はこっちの棚から。」
「じゃぁ、ボクはあっちから。」
ジッと一つの本棚を見つめたまま呟くエドワード。
アルフォンスはそんなエドワードに返事をするように、違う本棚を指差して呟いた。
「私は仕事に戻る。君達には夕方迎えのものをよこそう。」
そう呟くロイの言葉に反応したのはアルフォンスとだけだった。
アルフォンスはロイの方に身体をむけ、一例すると“はい”と短く答えた。
そしてと言えば、まるで人の言葉を理解しているように“ワンワン”と小さくほえた。
まるで近所に迷惑をかけないようにほえる声を抑えて。
「凄い集中力ですね。あの子、もう周りの声が聞こえていないみたいだ…」
「あの歳で国家錬金術師になる位ですからね。半端ものじゃないですよ。」
感心するように、それでどこか羨ましがるような口調で呟くタッカー。
ロイは苦笑しながら、それでもエドワードを自慢するように呟く。
その時、はタッカーから感じていた嫌な匂いをさらに強く感じた。
「いるんですよね………天才ってやつは。」
そう呟いたタッカー。
瞬時にに嫌な匂いの正体が分かった。
……この匂い……“嫉妬、憎しみ、悔しい”そんな匂いだ………
心の中でそう呟き、ジッとタッカーを見つめた。















ゴーンゴーンゴーン……
資料室の時計が5時を差し、音がなる。
しかし、集中しているエドワードはその音に気づいていないらしく。
黙々と本を読み続けていた。
クンクンクン……
がエドワードの服の裾を口で噛み、クイクイ引っ張る。
「お?あぁ……読みふけちゃったみたいだな……」
サンキュー、と言葉を付け加え。
辺りに視線を振りまきながら。
「アル!アルフォンス!」
そう声を上げるエドワードだが、アルフォンスの返事はいっこうに聞こえてこなかった。
「おかしいな。どこ行った……」
そう呟いた瞬間、エドワードに向かってアレキサンダーが飛び掛った。
「ぎにゃぁぁぁああぁぁっぁぁぁぁぁあぁぁぁっぁぁぁぁ!!!」
アレキサンダーに押し倒されたエドワードは、やっぱり大きな声を上げ地面に突っ伏した。
「よぉ、大将。迎えに来たぞー」
そう言いながらタッカーの家を訪れた一人の男。
彼の名前は、ジャン・ハボック。
地面に犬にのしかかられて倒れているエドワードを見て小さく呟いた。
「…………何やってんだ?」
「〜〜いやっ!これは資料検索の合間の息抜きと言うかなんと言うか!」
ハボックに問いかけられたエドワードは、急いで起き上がり、いいわけじみた言葉を述べる。
「で、いい資料は見つかったかい?」
タッカーにそう問いかけられれば無言で答えるしかなく。
「………また明日来るといいよ。」
無言で焦るエドワードに苦笑しながら呟き掛ける。
「お兄ちゃんたちまた来てくれるの?」
嬉しそうに話しかけるニーナ。
そんなニーナに優しくアルフォンスが返事をした。
「うん。また明日遊ぼうね。」
そういいながら手を振り。
をつれてエドワードの後を追った。
「うん!またねーおにいちゃんたちー!!もまたねー!!」
元気良く手を振りながら声を張り上げるニーナ。












「…へぇ〜。お母さんが2年前に……」
「うん。お父さんが“お母さんは実家に帰っちゃった”って言ってた。」
意外な事を聞いたアルフォンスが、本を読みながらニーナの言葉に返事を返す。
その返事を聞き、ニーナはアレキサンダーに寄りかかりながら、ハァッと溜息をつき呟く。
「そっか。こんな広い家にお父さんと二人じゃ寂しいね……」
カチャっと鎧を鳴らしながら、視線をニーナに向けるアルフォンス。
エドワードは話に参加せずにもくもくと本を読み続ける。
その横で、エドワードをジッと見つめながら地面に突っ伏してる
「ううん平気!お父さん優しいし……それに、アレキサンダーも居るもん。」
そう言いながら、ニッコリ微笑みアレキサンダーに抱きつくニーナ。
ギュッと抱きつき、そのまま目を細めて。
「でも………お父さん、最近研究室に閉じこもってばかりでちょっと寂しいな……」
その話を聞き、アルフォンスは何も言えず、ただニーナを見つめる事しか出来なかった。
エドワードも話は耳に入っていたらしく。
瞳を細め、それでも本から視線を外さずに。
「………あーーー毎日本読んでばっかで肩こったな。」
そう言うと、右手を首元に持ってきてゴキゴキと首を鳴らすエドワード。
エドワードの言葉に気づいたアルフォンスは、ニーナから視線をエドワードに向ける。
「肩こりの解消には適度な運動が効果的だよ、兄さん。」
「そーだなー。庭で運動してくっか。」
アルフォンスの言葉を聞き、そう言いながらパンパンと膝を叩き、立ち上がるエドワード。
ビシッとアレキサンダーを指差して。
「オラ犬!!運動がてら遊んでやる!」
とむっとした表情で呟くエドワード。
もスッと立ち上がり、エドワードの足元に擦り寄ると“ワンワン”とほえた。
「あぁ。もな。」
そんなエドワードの言葉を聞き嬉しそうには“わふっ”と返事を返した。
エドワードとアルフォンス……いい匂い……このいい匂い…守りたい。
エドワードの足に擦り寄りながら、心の中でそう呟く
それでも、本来の姿を見せるのは怖いのか、全くそういう素振りは見せず。
それでも、はエドワードとアルフォンスを気に入っていて。
飼い犬が飼い主に情を向けるように、もエドワードとアルフォンスに情を向けていた。
「さ、ニーナも。」
アレキサンダーとをつれて外へと向かうエドワードを見て、アルフォンスはスッと立ち上がり、ニーナに声を掛けた。
まるで、外で遊んで寂しい事を忘れさせようとするように。
そんな気遣いに子供ながら気づいたのか、それとも遊んでくれるのが嬉しいのかは定かではないが。
ニーナは嬉しそうににぱっと笑みを浮かべた。
「うどわぁぁぁあぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!」
アレキサンダーに追いかけられるエドワードは、声を張り上げながら懸命にアレキサンダーから逃げる。
初めの出会い方が追いかけてきたアレキサンダーに圧し掛かられたエドワード。
やっぱり追いかけられると、その記憶が蘇えるのだろうか。
エドワードは必死に逃げ回っていた。
その様子をニーナとアルフォンスは笑いながら見つめていて。
はエドワードと一緒にアレキサンダーから逃げ回っていた。














「今日は降るなこりゃ。」
ゴロゴロと雷のなる音。
その音を聞き、はある日の事を脳裏に蘇えらせた。
自分が見知らぬ世界へとやってきた日の事を。
自分の住んでいた世界では聞いた事もない“錬金術”がこの世界では存在して。
その事が自分とは別の、全く違う世界へとやってきてしまったのだとを理解させた。
そんな事を思い出していた。
「こんにちはー。タッカーさん、今日もよろしくお願いします。」
カランカランと家のドアを近くにある呼び鈴を鳴らしながら。
返事がない為ドアを開けて声を掛けるアルフォンス。
しかし、それでも返事がない事を不思議に思い、アルフォンスは短く“あれ?”と声を漏らした。
「誰もいないのかな…?」
「タッカーさん?」
エドワードとアルフォンスは、タッカーの家の中に入ると。
そのまま名前を呼びながら、家の中を歩き回る。
しかし、それでも返事はなく。
その時、がピクリと立ち止まった。
?」
「どーした?」
立ち止まった事に真っ先に気づいたのはアルフォンスだった。
立ち止まるに声を掛けると、エドワードが気づき。
立ち止まり、とアルフォンスに近寄ってくる。
すると、の異変に気づいたエドワードとアルフォンス。
グルルルルル、と威嚇するように声を鳴らし。
空気の匂いをかぐようにクンクンと鼻を鳴らす。
「「?」」
ヤな匂い……強まってる……それに……この匂いは────苦しみ、疑問…そんな匂いも混じってる……
キバをむき出しにして、は大きな声で激しく鳴きはじめた。
「チッ!?」
その様子に驚いたのはアルフォンスもエドワードも同じだった。
今までこんな風に鳴いたことはなかった
グイッとエドワードの赤いコートの裾を引っ張る
何かを伝えたいのかとしゃがみ込み、を見つめるエドワード。
すると、はまるでどこかへ誘導するように、タタタッと駆け出した。
「あ、待てよ!!」
「兄さん!ついて行ってみよう!」
「ああ。」
走り出したを見て、声を掛けるエドワード。
ポンッとエドワードの肩に手を乗せ、呟き掛けるアルフォンスに、エドワードはコクリと頷く。
静かに駆け足での後を追いかけた。
は先にある一室の前で立ち止まっていた。
そこに駆け寄ったエドワードは、中にタッカーが居る事に気づき。
「なんだ、居るじゃないか。」
そういいながら、ドアをキィィッと開ける。
「あぁ、君達か。」
エドワードの声を聞き、不気味に呟くタッカー。
そして、視線をエドワードに向けると。
「見てくれ、完成品だ。」
短くそう告げ、タッカーの目の前にいる犬らしきものを見せた。
スッと立ち上がり、両手を軽く横へ広げるとタッカーは言葉を続けた。
「人語を理解する合成獣だよ。」
そう言うと、もう一度合成獣の方に視線を向けるタッカー。
エドワードとアルフォンスはただ無言でタッカーの言う事やる事を見ているしかなかった。
本当に人語を理解する合成獣なのか、と。
しかし、だけはタッカーに威嚇を続けていた。
その事もあって、油断せずにエドワードはタッカーを見ていた。
「見ててごらん。いいかい?この人はエドワード。」
合成獣に話しかけながら、エドワードの名前を教えるタッカー。
すると、合成獣は尻尾を振り、首を傾げながら。
「えど……わーど?」
短くそう呟いた。
「そうだ。よくできたね。」
頭を撫でながら、褒める言葉を合成獣に投げかける。
その言葉を聞き、合成獣は鸚鵡返しをする。
「よく…でき…た?」
「信じらんねー本当に喋ってる……」
喋る合成獣を見て、感心の言葉を述べるエドワード。
そんなエドワードの横に立ち、タッカーはほっと溜息をつき。
「あーー査定に間に合ってよかった。これで首がつながった。また当分の研究費用の心配はしなくてすむよ。」
頭をかきながら、安心しきった声色で呟くタッカー。
エドワードは合成獣に近づき、しゃがみ込む。
「えどわーど。えどわーど。えど……わーど。えどわーど……。お…にい…ちゃ……」
エドワードの顔を見つめながら、呟き続ける合成獣。
そして最後に……ニーナがエドワードたちを呼ぶときに呟いていた言葉が現れた。
その言葉を聞き、エドワードは目を見開いた。
アルフォンスはどうしたのかと首をかしげ、エドワードとを交互に見る。
エドワードは目を見開いたまま、はずっとタッカーを威嚇したまま。
その事が分からず、アルフォンスはまた首を傾けた。
「タッカーさん。人語を理解する合成獣の研究が認められて……資格を取ったのはいつだっけ?」
静かな口調で問いかけるエドワード。
「ええと……2年前だね。」
そんなエドワードの問い掛けに静かに答えるタッカー。
「奥さんが居なくなったのは?」
その問い掛けでタッカーはエドワードが何を問いかけようとしているのか理解したらしく。
少し間を空けた。
「………2年前だね。」
その答えを聞き、エドワードは何かを理解したらしい。
無表情で、静かな口調で最後の問いをタッカーに投げかける。
「もひとつ質問いいかな。」
そう言うと、エドワードは眉間にシワを寄せ、怒りを堪えた表情でタッカーをにらみつけた。
「ニーナとアレキサンダー、どこに行った?」
その言葉を聞き、アルフォンスももタッカーが何をしたのかを理解した。
アルフォンスはハッとした表情を浮かべ。
はさっき以上に威嚇の声を上げる。
「……君のような勘のいいガキは嫌いだよ。」
タッカーは悪ぶれた様子もなく、エドワードに静かに声を掛けた。
ガッ!!!
その瞬間、エドワードはタッカーの服を掴み、壁へ勢い良く押し付けた。
「兄さん!!!」
「ああ。そういう事だ!!」
アルフォンスの声が響いた瞬間、エドワードが低い声でそう呟いた。
「この野郎…やりやがったな、この野郎!!2年前はてめぇの妻を!!そして今度は娘と犬をつかって合成獣を練成しやがった!!!」
グッと力強くタッカーを壁に押し当てながら声を荒げるエドワード。
「…………!!」
その言葉を聞き、アルフォンスは合成獣を見つめる。
「そうだよな。動物実験にも限度があるからな!人間を使えば楽だよなあ、ああ!?」
グッと胸倉を掴んだまま、エドワードはタッカーに声を掛ける。
怒りに震えながらも、それでもタッカーを手放そうとせず。
「は……何を怒る事がある?医学に代表されるように人類の進歩は無数の人体実験のたまものだろう?君も科学者なら……」
全く悪びれる様子もなく、タッカーはエドワードに向かって呟き続ける。
まるで、動物と人間を合成獣に練成したのは、今後の医学の、人体実験のためだと言わんばかりに。
「ぶざけんな!!!こんな事が許されると思ってるのか!?こんな……人の命をもてあそぶような事が!!!」
そういいながらも、開いた手をフルフルと振るわせるエドワード。
理性も聞いている今は、懸命にタッカーを殴ろうとする開いている手を静止しているエドワード。
「そう、人の命ね!鋼の錬金術師。君のその手足と弟!!それも君が言う“人の命をもてあそんだ”結果だろう!?」
ジッとエドワードの瞳を見つめたまま、まるで自分だけじゃないと言うように呟くタッカー。
その事を言われカッとなったエドワードは開いた手でタッカーの顔を勢い良く殴った。
「同じなんだよ!君も私もね!!」
「違う!」
「違わないさ。目の前に可能性があったから試したのだろ!」
「違う!」
殴られても言葉を続けるタッカー。
その言葉に必死に否定をするエドワード。
「たとえそれが禁忌であると知っていても、試さずにはいられなかった!!ごふっ!!!」
「違うっ!!!」
タッカーの言葉を違う、違うと否定しながらも。
右手でタッカーを殴り続ける。
「オレ達錬金術師は………こんな事………オレは………オレは……!!」
まるで自分を言い聞かせるように呟き、タッカーを殴り続けるエドワード。
最後の一振りを大きく振りかざし。
ガッ!!!!
アルフォンスが振りかざすエドワードの右手をしっかりと掴んだ。
「それ以上やったら……死んでしまうよ、兄さん。」
そういわれ、ハァハァと荒い息をしながらタッカーを見つめ。
下を見つめるエドワード。
歯を食いしばり、怒りを憎しみを抑える。
「………アンタとエドとアルの違いは、心だよ。」
「「「!?」」」
いきなり聞こえた聞き覚えのない声に目を見開くエドワードとアルフォンスとタッカー。
聞こえた場所を見つめると、そこにはが居て。
「エドとアルは……凄く澄んだ綺麗な心をしてる。心の匂いもいい匂いで……」
そう呟き、はエドワードとアルフォンスを見つめた。
タッカーの言葉を聞いていたは居てもたっても居られず。
怖がられるだろうと承知して言葉を喋った。
「でも。でもタッカーさん!アンタの心の匂いは……どす黒いわ!!自分の最愛の娘さえもしっかり見つめられない、嫌な匂いがする心よ!!」
歯をむき出しにして怒る
「なっ!?しゃっ喋ってる!?」
「きっ合成獣!?」
がいきなり話した事に驚いたエドワードとアルフォンス。
喋るということから合成獣ということしか想像のつかないエドワードとアルフォンスは“合成獣”という言葉を口にして顔を見合わせた。
しかし、驚いたのはエドワードとアルフォンスだけだった。
タッカーは、喋るを見てにんまりと笑みを浮かべていた。
「ここまで完璧に喋る合成獣など……はじめてみたよ。」
そう言うと、エドワードに殴られた頬を摩りながら立ち上がった。
ゆっくりとした足取りでに近づき。
「ゆっくりと研究したいものだな…」
そう言うと、タッカーはの首輪をグッと掴んだ。
「ちょっ!?離してよっ!!何するつもりよ!!」
「君を解体して研究するんだよ。」
慌てるをよそに奇妙なほど落ち着いたタッカーは短く告げた。
“解体”という言葉を聞き、の顔は青ざめていった。
「嫌よっ!!私は合成獣じゃないし!解体されても無理だってばぁ〜〜!!」
さっき以上にワタワタと暴れる
しかし、タッカーはを離そうとはせず。
情を寄せ合ってる相手が居ないんじゃ……変身するにも変身できないぃぃ〜〜っ!!
心の中でそう叫びながらも、はワタワタと慌てていた。
がっ!!!
「ぐっ!?」
そんなをよそに、エドワードがもう一度力強くタッカーを殴りつけた。
そしてにらみつけた。
に触るんじゃねぇ!!を解体させたりなんかしねぇ!!」
そう叫ぶエドワードに、はキョトンとした表情を浮かべた。
「てめぇの汚い手で触らせたりしない!だ!合成獣じゃない!」
「はは…奇麗事でやっていけるかよ…」
「タッカーさん。それ以上喋ったら、今度はボクがブチ切れるよ。」
そう叫ぶエドワードとアルフォンスを見つめ。
は凄く嬉しかった。
こんなわけも分からない場所で訳も分からない人たちが居て。
それでもエドワードとアルフォンスと一緒に居るのは居心地が良くて。
そんな相手にそういわれれば…凄く嬉しくて。
は知らずにエドワードに情を寄せていた。
エドワードもアルフォンスも自分に飼い主としてではない情らしきものを寄せてくれていると分かり。
きっと自分を理解してくれる、と思った。
アルフォンスはを見てニッコリ微笑むと。
合成獣にされてしまったニーナとアレキサンダーの元へ近寄った。
「ニーナ…ごめんね。ボク達の今の技術じゃ君を元に戻してあげられない。」
そっと頬に手を添えて、優しい口調で呟くアルフォンス。
は静かにアルフォンスを見つめ、微笑んでいた。
「「?」」
その時エドワードとアルフォンスが首をかしげ、を見つめた。
「?どーしたの?」
「い、いや。今が人間に見えたから…気のせいだろうけど。」
「ボクも同じだよ…兄さん。」
そう呟くエドワードとアルフォンスに一瞬目を見開き驚いた。
そしてクスッと笑うと。
「多分……私とエドとアルの波長が合うんだと思う。だから…私が人間に見えたんだと。」
「そっか…」
の言葉に多少納得できないような表情で呟くエドワードに。
しょうがないなーと苦笑する
アルフォンスもまだ疑問そうに首を傾げ続ける。













「もしも“悪魔の職業”というものがこの世にあるのなら…きっと今回の件はまさにそれですね…」
静かに雨に打たれながら呟く金髪の女性。
女性の名前はリザ・ホークアイ。
ついさっきエドワードがに紹介していた。
勿論ロイにもリザにも……エドワードとアルフォンス以外にはが話すというのは秘密にして。
「悪魔、か。身もフタもない言い方をするならば、我々国家錬金術師は軍属の人間兵器、殺人兵器だ。」
リザの言葉に少し苦笑した口調で呟き。
すぐに真剣な口調に戻したロイは小さく呟き、一段、また一段と階段を降りた。
「一度事が起これば召集され…命令があれば手を汚す事も辞さず……タッカー氏の行為も…我々の立場も、たいした差はないという事だな……」
スッとポケットに手を突っ込み、下を見つめ。
「だがな。彼の選んだ道の先には、おそらく今日くらい──いや、今日以上の苦悩と苦難が待ち構えている事だろう。無理やり納得してでも進むしかないのだよ。そうだろう、鋼の?」
階段を一段一段降りながら、その階段に座り込むエドワードとアルフォンスに声を掛ける。
エドワードは前をジッと見つめたまま。
アルフォンスは語り掛けるロイに視線を移し。
「いつまでそうやってへこんでいる気だね?」
冷たい口調で何も行動しようとしないエドワードに声を掛ける。
ここで立ち止まっている暇はあるのか、と。
君達が捜し求めているものはこんなところで立ち止まっていて手に入るものなのか、と。
冷たい言葉だが、ロイなりにエドワードたちが前に進めるように背中を押しているのだと、は理解した。
ロイの心の匂いをかいだ為に。
「………うるさいよ。」
しかし、エドワードにはそうは伝わらなかったのか、分かっていたが、どうしても反発してしまうのか。
口から出たのはそんな言葉だった。
「軍の狗よ、悪魔よとののしられてもその特権をフルに使って元の身体に戻ってやると決めたのは誰だね?鋼の。君だろう?これしきの事で立ち止まってる暇があるのか?」
エドワードに背中を向け、そのまま階段の一番下まで降りると立ち止まり呟いた。
「“これしき”………かよ。」
エドワードはぎゅっとコートを掴み、噛み締めるように呟いた。
はただ何も言わずにエドワードを見つめる事しか出来ず。
「ああそうだ。狗だの悪魔だのとののしられても、アルと二人で元の身体に戻ってやるさ……」
コートを掴んでいた手を離し、空を掴むように力強く拳を握り締めると。
ゆっくりと立ち上がりながら呟き始めた。
「だけどな、オレ達は──悪魔でもましてや神でもない。」
そう言うと立ち上がり、両手に拳を作り、眉間にシワを寄せ辛そうな表情でロイの背中を見つめていった。
「人間なんだよ!オレ達は──たった一人の女の子さえ救ってやれない…ちっぽけな…人間だ…………!!」
今にもなきそうな表情で呟くエドワード。
泣けばいいのに……、とは内心思った。
泣いて、泣いた後に立ち上がって前に進めばいいのに、と。
「………カゼをひく。帰って休みなさい。」
ロイは短くそう告げると、副官であるリザを連れてゆっくりと歩き出した。
「エドワード君。アルフォンス君。大佐はああ言ってるけど、二人の事を心配しているのよ?」
「……分かってます。」
リザは通り過ぎざまに小さく声を掛けた。
その言葉にアルフォンスは短く答え。
その言葉を聞いたリザはフッと笑みを浮かべた。
「ならいいわ。泣いてもいいけど、泣けないのなら、とことん落ち込みなさい。落ち込んでどん底までたどり着いたら、そこから自力で這い上がりなさい。きっと貴方達の力強い力になるから…それじゃぁね。」
そう言うと、ニッコリ微笑み、リザは既に歩き出しているロイを追いかけた。
「兄さん…宿に戻ろう?も。」
「……あぁ。」
「うん…」
アルフォンスの言葉に小さく頷くエドワードと
エドワードとアルフォンスの落ち込みが鼻でかいで分かり。
「エド。アル。私の秘密……宿に着いたら教えるわ……」
そう呟いた。
その言葉に、エドワードとアルフォンスは顔を見合わせ、小さく頷いた。
そして二人と一匹は無言で宿へと向かった。















「………」
ただ無言で外を見つめるエドワード。
アルフォンスはの身体についた水分をタオルでふき取る。
そして、自分の身体についた水分もそれでふき取り。
椅子に腰掛ける。
エドワードはベッドの上で膝を抱えたまま、外を見つめていて。
「話…初めて平気?」
そう問いかけると、アルフォンスはエドワードの方へ向き直った。
二人で顔を見合わせ頷きあったのを確認すると、は口を開き話し始めようとした。
「その前に……」
「え?」
呟かれたアルフォンスの言葉に疑問の言葉が口から出てきた。
は首をかしげ、アルフォンスとエドワードの方を見つめた。
「その前に、ボク達の話を聞いてほしいんだ。」
「アルと…エド、の?」
アルフォンスの言葉を聞き、ゴクリと息を呑むと。
ゆっくりと問いかけた。
すると、今度はエドワードが頷き、口を開いた。
「あの場面で…オレ達の事を庇ってくれたし。何より……変だって思われるのも省みず、喋ってくれたから…になら話してもいいって思ったんだ。」
はっきりとした口調で呟くエドワードに、はジッと見つめたまま。
そして、話してもいいと思ったと言われれば、やはり嬉しいのか。
尻尾を左右に振り小さく“聞きたい”と述べた。
その言葉がエドワードとアルフォンスの話の幕開けだった。
「オレとアルは……こんな身体してるだろ?これには…訳があるんだ。」
そう呟くと、エドワードは着ていた黒い長袖の服の止め具をパチッと外した。
ごそごそと上着を脱ぎ、ベッドの上に脱ぎ捨てると。
タッカーの家で見せたときと同じ機械の義手がエドワードの右腕につけられていた。
そして今度はエドワードは左足のズボンの裾を掴み捲り上げた。
そこにも形は違っていても、腕についている機械の義手と同じ物がついていた。
「アル。」
そういわれると、アルはコクリと頷いた。
何かと思い、今度はエドワードからアルフォンスに視線を移すと。
アルフォンスが両手で鎧の頭を持ち上げた。
そこにはあるはずのアルフォンスの頭がなく。
に中が見えるように前かがみになるアルフォンス。
その鎧の中には人が居るはずなのだが、見ても空洞で、その異様さには愕然とした。
「驚くのも当たり前だな。オレ達は…自分達の死んだ母さんを生き返らせようとして……こういう報いを受けたんだ。」
「……お母さんを…生き返らせようと?」
エドワードの言葉に鸚鵡返しで問い返す
の言葉にエドワードもアルフォンスも頷いた。
「オレ達の住む、この世界には錬金術というものがあって…化学技術なんだけど、それを用いれば鉛から金をも作り出す事が可能なんだ。物質の構成や材料を“理解”して、それを“分解”して……自分達の作りたい形へと“再構築”する。それが錬金術なんだ。でも、魔法じゃないから練成にも決まりがあって──質量が一のものからは一の物しか、属性が水の物からは水のものしか作り出せないんだ。」
エドワードの説明を聞き、首を傾げる
難しい単語が出てきて理解しがたいのだろう。
「つまり、何かを練成する為には、何かを得る為には同等の代価が必要ってことなんだよ。等価交換、とも言うね。」
エドワードの説明を分かりやすく言う為に、呟くアルフォンス。
アルフォンスの言葉を聞き、やっと理解した
「つまり……水から炎を作ったり出来ないって訳ね?」
「そういうこと。」
「それで…その錬金術を使って、お母さんの身体の物質を作り出し、生き返らせようとしたって事?」
理解できたはペラペラと問い掛け始める。
その対応の早さに一瞬目を見開くエドワードとアルフォンスだったが。
すぐにの質問に答えようと口を開いた。
「そういうこと。身体の物質はそこらで買えるから、それで用意して。」
「母さんの魂は、ボク達の血液からの情報で……」
そこまで呟くとエドワードとアルフォンスは目をフッと細めた。
まるで、思い出してはいけないものを思い出そうとしているような表情をする二人。
「身体と魂の代価は用意されていた。でも、人は身体と魂と…最後に精神で出来てるんだ。その精神と等価交換するものがなくて……ボク達は練成に失敗して…」
そこまで呟くと、エドワードはグッと自らの冷たい身体を触った。
「オレは右腕を…アルは身体全てを持っていかれた。」
「兄さんが左足を代価にしてボクの魂を鎧に定着させてくれて……」
「それでアルが鎧の姿って訳ね?」
二人の説明を聞き、呟く
エドワードとアルフォンスはコクリと頷き。
「どんなに正しい情報で練成をしても……人なんて蘇らせる事なんて出来るはずがないんだ。」
「それをボク達は…身を持って知ったんだ。」
エドワードは右手をグッと握り締め、アルフォンスは両手を見つめて呟いた。
そんな重い過去を持っているなんて…とジッと二人を見つめる
「二人がどうしてそんな姿をしているのか…錬金術って何なのか……そして、ここは私が住んでる世界とは全く異なった世界だって分かったわ。」
苦笑交じりの声でそう呟き、床を見つめる
こんな短時間で理解するなんて──と驚くエドワードとアルフォンス。
「そうそう。オレのつけてる手足は“機械鎧”っていう代物なんだ。多分知らないだろ?」
エドワードの言葉を聞き、機械鎧に視線を向け。
問いかけられた言葉にはコクリと頷く
「錬金術の発動は練成陣という模様が使われてるんだ。勿論、オレみたいに違う奴も居るけどな。」
そういいながら笑い、エドワードはをまっすぐ見つめた。
「次は私の番だって言いたいんでしょ?」
笑いながらそう呟くと、ニッコリ微笑み。
何から話そうかとうーんとうなる
「私は……まぁ、見た目は犬なんだけど、ワイルドハーフ種犬なの。」
「ワイルドハーフ種犬?柴犬みたいな種類って事か?」
の言葉に眉を潜めて問いかけるエドワードに、はコクリと頷く。
そして言葉を続けた。
「私達ワイルドハーフは、人と情を寄せ合う事で、人の姿に変身する事が可能なの。犬の時は人の何十倍もの力を発揮できるの。耳も鼻も足もよくなるし、治癒力もあって。ワイルドハーフは怪我を負っても、治癒力が働いて一眠りすれば回復するの。人型になれば、犬型時の約五倍の力が発揮されるの。」
「へぇ〜……何だか凄いな。」
の言葉を聞き、驚きの表情を浮かべるエドワードとアルフォンス。
「ありがと。それでね……自然のものに自らの生命力をマーキングする事で、自由自在に動かす事が可能で。情を寄せている相手がピンチの時とか嬉しい時とかに犬から人に変身する事が可能なの。」
「ピンチの時と嬉しい時?」
の説明で疑問に思った事があったのか、アルフォンスは問いかけた。
その言葉に頷き返すと。
「そう。情を寄せる相手がピンチの時、助けるべく犬から人へ変身して。嬉しいときは…良く分からないんだけど変身するの。私の知り合いにはほねっ子とか、骨つき肉とかで変身する犬や、飼い主の顔を思い出すだけで変身出来る犬が居るわ。」
その言葉を聞いたエドワードとアルフォンスは目を見開いた。
そしては言葉を続ける。
「私達ワイルドハーフがかぐ匂いは、相手の心の匂いなの。いい人なら心の匂いもいい匂いで、悪意を持つ悪い人はいやな匂いがするの。そうやって相手を区別できるの。心をかげるから、何を考えているのかも分かるし、ね。」
苦笑しながらそう続け。
エドワードとアルフォンスの心の中から聞こえてきた、否。
におってきた心を言い当てようとした。
「嘘だぁ〜〜って思ってるでしょ?」
その言葉を聞き、ピクッと反応するエドワード。
「ま、こんな感じ……かな。」
そう呟くとは身体を伸ばした。
「まぁ……難しいけど、なんとか理解したよ。」
「そう?それじゃ……もう寝たほうがいいわね。」
そう言うと部屋の時計を指差した。
時刻は既に午前2時を指していた。
それを見たエドワードとアルフォンスはワタワタと慌てて布団へもぐった。
それを見て、も床に突っ伏して瞳を閉じた。
その頃、タッカーの家で悲劇が起きているとも知らずに……────











To be continued....................











ふえー……連載二つ掛け持ちになるけど……いいやって感じで始めたクロス小説。
ハガレンとWILDHALFのクロスだけど……どうかなぁ〜…
一応一番最後にハガレンの世界についての説明をに。
WILDHALFの世界についての説明をエドとアルにしたけど……
結構難しいのね、これが。
いやぁ〜〜…ここまで苦労させられたのは久し振りだよ(苦笑
でも、楽しいからいいや。
それに苦労はここで終わるしねw
もー説明しなくてすむもん!!!
たとえロイとか辺りに話す事になっても、そのシーンは飛ばすし……ふふっ♪
さて…これでWILDHALFという事だとエドとアルに知られた
最初は、第一話でが喋らないかも──と心配してたけど。
タッカーの話しで会話に参加できて良かったぁ〜vv
ちょっと第一話はセリフが少ないけどww
これから多くなるはずww
頑張るぞぉ〜〜〜vvvって事で次回にぃ〜続くぅ!!!!!






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