「駄目!!やめて!!逃げて!!!ヒューズ中佐!!!」
銃口を向けられ、しかも最愛の妻の姿で。
ヒューズの身体は完璧に硬直してしまっていて、目の前の攻撃から逃げられない。
パァァァァンッ!!!!
「い……」
その瞬間、の目の前で惨劇が巻く開けられた。
「いやあぁぁぁああぁぁああぁああああぁぁあああああああ!!!!!!!!」
声を張り上げて、傷だらけの身体を引きずりヒューズの元へ駆け出していた。
「この状況で逃げないなんてねぇ……」
ヒューズの元に駆け寄り、ヒューズの息があるかどうかを確認するを見下ろす偽者のグレイシア。
へと静かに銃口を傾けた。













時ヲ切リ裂ク雷ノ……… 第10話













「この状況で、よく平然としてられるね。」
「!」
その声でハッとしては視線を上げた。
そこには自分の顔に向けられた銃口が待ち構えていた。
いくらでも、脳天に銃弾を打ち込まれたらひとたまりもない。
ドンッ!!!
「っ!」
引き金を引く瞬間を見たは急いで横へと飛びのいた。
すれすれの所に銃弾が打ち込まれ────
「あーあ…逃げられちゃったー…」
は背中を向けたまま駆け出していた。













「ハァハァハァハァ………」
荒い息をしながら懸命に走り続けていた。
「どうしよう……ヒューズ中佐が…ヒュ……っ!」
走りながらも脳裏を横切るのは、先ほど目の当たりにしたヒューズの瀕死の姿。
助けることも出来ずに、ただただ走って黒い影から逃げるしか出来ない。
ガッ………!
も相当な痛手を負っていて、WILDHALFの回復の早さが追いつかず。
しかも、今は懸命に逃げている中でゆっくり止まって休んでいるときよりも回復は遅い。
足が地面の出っ張りに引っかかり、地面へと倒れこむ。


「おいおい勘弁してくれよ。家で女房と子供が待ってるんだ……」

助けられなかった……
目の前で倒れていく、ヒューズ。

「くそったれ……」

目の前で姿を変えた黒い影に、舌打ちするヒューズ。
私は────全てを見ていたのに。


「…っ!どうし……どうして私は………役立たずな…の?」
ギリッと奥歯を噛み締め、倒れた地面を掴むように拳を握り締めた。
どうして…無力なの……?
虚しい思いだけがの脳裏を横切り続ける。
「───…今ならきっと……まだ間に合うっ!!!」
そう声を上げると、ダラダラと流れる血など気にせず駆け出した。


「いい嫁さんになるぞ。うちの嫁さん程じゃないけどな。」

響くは、ヒューズの楽しい笑い声。


「ヒューズ中佐!!!!!!!!」
急いで戻ってくれば、そこには血だらけで電話ボックス内に倒れている姿1つ。
先ほどまで居たはずの黒い影は存在しなくて、は急いで倒れているヒューズに駆け寄った。
「すぐに……病院にっ……!」
そう思い、ヒューズの呼吸があるか脈があるかを確認する。
手を伸ばしたヒューズの肌が冷たくて、眠っているように閉じている瞳がどこか哀しくて。
「っ!」
肌に触れた手をハッとして離した。
「……もう…手遅、れ……」
そう呟くと、それを待っていたかのようにズルズルズルとはその場に座り込んでしまった。
両手で口元を押さえ、声を押し殺し息を呑む。
あそこで逃げていなければ、ヒューズを救えたかもしれない。
あそこでヒューズの背後から横に移動しなければ、最悪の事態は免れたかもしれない。
「あーあ。馬鹿だねぇ…戻ってきちゃうなんてさ。」
「っ!!貴方はっ!!」
聞こえた声でようやく、自分にかかる影があることに気付いた。
ハッとして視線を上げれば、そこには先ほどとは違う姿をした黒い影が。
黒い髪に黒い服───その姿は第5研究所で意識を失ったエドワードを運んできたあの時の姿が。
「…この事を黙っていてくれるなら、見逃してあげるよ?」
「何をバカな事を!!」
ニヤリと口元に大きな笑みを浮かべ呟く黒髪の少年。
しかしは眉間にシワを寄せ、荒々しい口調で言葉を返した。
黙っていられるはずのない出来事。
黒髪の少年の言い方では、見てみぬフリをしろと言っているようなものだ。
「黙ってくれないのなら…アンタ、ここで死ぬことになるよ?どうせ…そのうち元の世界に戻るんだろ?」
ズルズルとしゃがみ込んだまま後ずさりをしながら、黒髪の少年と間合いを取ろうとする。
しかし、黒髪の少年はが後ずさりする度に同じ距離だけ近づいてくる。
まるで、死の範囲の中に居るような感覚に陥ってしまう。
「ああ。でも…結局黙ることになるのか。」
「…え?」
「だって……この男が死ぬところを自分は黙って見てましたーなんて…言えるわけ?」
「!」
ようやくその言葉でハッと気付いた。
結局は、には選択肢は1つしかもともと用意されていなかったのだ。
「可愛そうだねぇ、あんた。この事に絡んでるってバレたら…嫌われ者になるね。」
あははは、と笑いながら黒髪の少年は言葉を続けた。
「ま。バレる事がないなら……見逃してやるよ。」
そういうと、黒髪の少年はに背中を向けて歩き始めた。
その姿を見つめながら、ただ唇を噛み締める
しかし、ふいに黒髪の少年は足を止め振り返るとニヤリとまた笑みを浮かべ。
「とりあえず……」
そう呟くと、黒髪の少年の姿が揺らぎ───気付くと目の前に着ていて。
その少年の腕は鋭い刃物の様なものに変化していて。
ザシュッ!!!
「がはっ!!!」
「口止め料。喋ったら…これ以上大変な目に合うって…覚えておいてよね。」
そういうと、瀕死の傷を負ったを残し黒髪の少年は歩みを進め闇の中へと消えていった。
闇に響くのは、の押し殺した泣き声だけ。













「エ、ド……」
求めるはエドワード達。
それでも、ヒューズの死に自分が関わっていることは口に出来るはずも無く、このまま元の世界に戻れてしまえば1番楽だったのかもしれない。
それでも、元の世界に戻っても今の出来事がずっとの後を追い続けるかもしれない。


恨んで、蔑んで、責めて責めて……

責 め 続 け て……


ようやくがたどり着いたのは、エドワード達が到着しているはずのラッシュバレー。
グワングワンと今だ、あの出来事が脳裏を離れてくれない。
早く忘れて……エド達にばれない様に…しないと…
そんな思いばかりがの心を埋め尽くした。
「辛い……痛い……気持ち、悪い…」
黒髪の少年に傷つけられた箇所は、まだ回復していなくて。
休めば回復は早まるが、それよりも早くエドワード達に会いたくて。
でも───…このまま会ったら何があったと聞かれはしないだろうか…
ドクンッ……!
そんな思いがポッカリ浮かぶと、の鼓動が高く高く高鳴った。
「そんな事より…早くエドの後を…」
気にしていられるほどの余裕なんて無くて、はエドワード達の匂いを追って駆け出していた。
地面に残るは真っ赤な血。














「その約束したの…オレじゃねぇっつーの……」
「兄さん!」
「あ?」
「あれ!!」
エドワードとアルフォンスとウィンリィ、そしてそのメンバーと一緒に居る見知らぬ少女。
4人が歩く絶壁の道の先には壁に寄り掛かり佇んでいた。
それにいち早く気付いたのはアルフォンスで、声を上げて前を指差した。
!やっと追いついたの……どうしたんだよ、その傷っ!!!」
エドワードはようやくが居る事に気付き駆け寄り、明るく声を掛けた。
しかし、その言葉は続けられることはなく意識が集中されたのはの瀕死の怪我だった。
「えへへ……ちょっと…ドジッちゃった…」
そう呟くと、はズルズルズルと壁伝いに地面へとしゃがみ込んだ。
「ちょっとじゃないわよ!大丈夫!?」
「パニーニャ。整備師の居る場所まで、どれくらいだ?」
しゃがみ込むと同じ高さになるように座り込みながら、ウィンリィが声を掛けた。
そんなウィンリィには苦笑を浮かべて視線を向けるだけ。
エドワードは急いで、共に歩いていた少女パニーニャに問い掛けた。
「ええと…もうすぐだよ。」
視線を前へ向けると、そう答えた。
「よし。急ぐぞ!」
「うん!」
そういうと、エドワードはを抱きかかえて駆け出した。
その様子を見てアルフォンスも声を上げ駆け出して、そのあとをウィンリィとパニーニャが追いかけた。
「見えて来たよ!あれ!」
パニーニャが指差す先には、大きく聳え立つ壁の前に立てられた建物が存在した。
そこからは絶え間なくカーンカーンという音が響き渡っていた。
「こんちはっ!」
「パニーニャ!おまえ、こんな山奥までこまめに良く来るなぁ。」
ドアを開け挨拶をするパニーニャに反応したのは、白いタオルを頭に巻いた若い男性だった。
「…私は外で休んでる…中に入ると…迷惑になりかねないし…」
この姿だし、なんて言葉は紡がずにはそばに居たエドワードに告げた。
人型の方が傷の回復が早く、犬の姿になるより人型のまま外で休んでいたほうが得策だとは判断したのだ。
その言葉に一瞬エドワードは眉を潜めたが、すぐにコクリと頷き返した。
「今日は、お客さんを連れてきたよ。」
「へぇ。機械鎧の注文かな……ってうわ、でっか!!ちっさ!!」
パニーニャの話を聞き呟き返しながら視線を向けると、驚きの声を上げた。
アルフォンスを見てからエドワードを見れば当たり前の反応かもしれないが、その事に全く気付かずにエドワードは“キーキー”と声を上げ始めた。
「この子は整備師のウィンリィ。ドミニクさんの機械鎧に興味があるんだって。」
パニーニャの紹介にウィンリィはペコリと頭を下げ“こんにちは”と挨拶をした。
そんなウィンリィに、若い男性は珍しそうな視線を向けた。
「珍しいね、こんな若い女の子が機械鎧になんて……」
「あら、パニーニャ。今日はお友達を連れてきたの?」
「サテラさん、こんにちは!」
若い男性の言葉を遮って、奥から出てきたのはサテラと呼ばれていたお腹の大きな若い女性だった。
「ちょうど良かった。今、お茶にしようと思ってたのよ〜」
「皆一緒にどうだ?」
ニコヤカに呟くサテラの言葉に、若い男性が言葉を続けた。
「…ねぇ、パニーニャ。この人がドミニクさん?全然無愛想じゃないけど…」
「あはは、違うよ〜」
ウィンリィの問い掛けにパニーニャはクスクスと笑いながら言葉を返した。
「オレはリドル。リドル・レコルト。こっちは妻のサテラ。」
サテラの肩に手を置きながら、リドルと名乗った若い男性が言葉を続けた。
その様子にその場に居たエドワードとアルフォンス、そしてウィンリィは微笑んだ。
カーーーーーン!!
その時、奥の方から高い高い音が響いた。
「無愛想なのは、俺の親父のドミニクだよ。」
リドルが呟くと、視線を追ってパニーニャが奥のほうへと歩みを向けた。
ひょっこり壁から奥へと顔を出すと。
「ドミニクさん、こんちわっ!」
その言葉でドミニクがようやくパニーニャの姿に気付いた。
鉄を打つ手を止めると視線をそちらへと向け、1度ため息を吐くと。
鉄を打つ手を動かし始めた。
「なんだ、また来たのか。」
「何だはないでしょー!この足の支払いもあるのにさ。」
カーン…カーン……!
呟く間に何度も何度も、高い音が鳴り響いた。
「いらんと言っとるだろが。」
言いながらも鉄を打つ手は全く止めず。
パニーニャは腰に手を当て、ため息を吐いた。
「相変わらず冷たいなぁ。」
「義父さん。パニーニャがお客さんを連れて来たんですよ。」
パニーニャの後ろからドアの背に、サテラが顔を出し左手を軽く掲げた。
「時間も丁度いいし、お茶にしませんか?」
「客?」
サテラのお茶、という言葉よりも意識を向けたのは客が来たという事で。
今度こそ完全に動かしていた手を止め、視線をサテラへと向け眉にシワを寄せた。














「カルバリン砲てぇのはな、男のロマンだ。」
腕を組みながら、渋い顔をしたドミニクが第一声を発した。
場所は家の外で、そこに丸いテーブルを出しコップを置き、そこに出した椅子に腰掛けている状態で。
ドミニクは、機械鎧技師であるウィンリィと機械鎧を着用しているパニーニャとの3人で話に耽っていた。
「ロマンじゃなくて趣味でしょー?女の子の足にこんなもん付けるかなぁ、普通。」
「うるせい!俺の芸術にケチつける権利は、おめぇに無ぇ!」
「そうそう、芸術よ!」
愚痴を溢すパニーニャに、やっぱり腕を組んだままドミニクは言葉を続け。
その言葉にウィンリィは同意の意思を見せた。
右手の人差し指を立てながら、どこか得意げな表情を浮かべると。
「通常の機能に加えて両足に武器内蔵。それでいて外観は損なわずシンプルに!」
そう言いながら、右手の人差し指はチッチッチッと左右に振りながら。
加えて左手をパーにして横に軽く差し出す形で語り始めた。
「無駄の無い設計は、まさに芸術だわ!」
「いけるクチだな小娘。」
「うふ♡」
呟きながらドミニクの機械鎧を褒めちぎるウィンリィに、ドミニクは少し驚いた様子で。
でも、その様子を悟られないかのような表情で呟くと。
ウィンリィは嬉しそうに右手を頬に添え、微笑んだ。
「従来のカーボン比率に比べてだな、外装の強度と軽量化は装備者の体力に合わせて……────」
そんな話を延々とし始めているウィンリィとドミニク。
その2人を見つめながら頬杖を付くパニーニャは“入り込めない世界”とため息を内心吐いていた。
その一方でエドワードとアルフォンスと、ずっと外で休みながら待っていたはサテラのお腹に宿る子供に興味を示していた。
椅子に腰掛けるサテラを中心に囲むように、サテラのお腹を見つめ。
「この中に子供が入ってるんだ!」
「なんか凄いねぇ〜!」
「うわ〜〜〜感動〜〜〜!」
視線を向けながら、感動の声を上げる3人。
は腰から垂れる尻尾を左右に振りながら、眼差しを向けた。
「ねぇねぇ、あとどれ位で生まれるの!?」
「ああ、あと…半月程かな?」
「さすがに重くてしんどいわねぇ。」
の問い掛けの言葉に苦笑しながら答えるリドルと、少しため息を吐きながらも嬉しそうに呟くサテラ。
その様子を見ながら、もエドワードもソワソワとしていて。
「触ってみてもいいかな!?」
意を決して、エドワードがサテラにそう問い掛けると。
サテラはニッコリと微笑み“ふふ、どうぞ。”と短くだけれど言葉を返した。
「お〜〜〜〜すげぇ〜〜〜〜!何かよく分からないけど、すげ〜〜〜!」
「私も私も!」
エドワードの感嘆の声を聞き、も呟きピトッとサテラのお腹に手を当てた。
そこは、中に居る子供がうごめく様に少し動いていて。
でも、暖かくて。
「妊婦さんのお腹に触るの、初めてだ。」
「私もだよ!なんか…凄く嬉しいなぁ〜♡」
自分の胸に手を当てながら、嬉しそうに笑いながら呟くエドワードと
サテラは、そんな2人を目にし微笑むと。
「“元気に生まれて来てね”ってお願いしながら触ってあげてね。」
「うん!」
サテラの言葉に、力強く頷き返したのはで。
実際はいつも犬だから、こんな風に接することはまずなくて。
初めての経験、と言うのが凄く嬉しかったのだろう。
「…そっかぁ。ボク達も、こんな風に母さんのお腹の中に入ってたんだぁ…」
「なんだか、不思議だな!」
サテラのお腹を見つめながら、アルフォンスが漸く感嘆の声を上げた。
生まれる前の事なんて分かるはずもなく、それはエドワードの“不思議”という言葉で片付けられたが。
何だか変な感じで、何だか凄く不思議な感じ。
「そうね。私もね、自分の身体の中にもうひとつの命があるのって、凄く不思議に感じるわ。」
ふふふ、と微笑みながら瞳を伏せてお腹に両手を乗せてサテラは静かに言葉を紡いだ。
「赤ちゃんは、母親の中で280日過ごして生まれてくるんだってさ。」
「本当に不思議ね。誰も教えないのに、きっかり280日経つと出てきちゃうのよ。」
リドルはサテラの座る椅子の背もたれから手を離し、サテラの隣に佇むとそう口にした。
その言葉に、サテラはコクリと静かに頷き言葉を返した。
「小さくても、ちゃんと意思を持った赤ちゃんなんだね。」
その言葉に、はそう思って口にした。
すると、サテラは自分の言いたかった事を変わりに口にしたに微苦笑を浮かべると小さく頷き“ええ”と返事を返した。
「エド〜〜〜〜〜〜♡」
「あ?何だよ、ウィンリィ。」
呼ばれたことに気付き、視線を向けると。
そこには微笑みながら手招きをしているウィンリィの姿があって。
「ちょっといらっしゃい。ちょっと。」
そう言うウィンリィの言葉と表情を見つめ、エドワードは嫌な予感を覚えた。















「ふん……」
カンカンと、何かの器具でエドワードの機械鎧を叩きながら鼻を鳴らすと。
「クローム17%、カーボン1%ってとこか……」
スラスラと分量を口に出来るのは、やはり凄腕だからだろうか。
そんなドミニクを見つめながらウィンリィは腕を後ろで組みながら見つめ。
「強度を上げて、それでいて軽くしたいんですけど。」
「確かに、こいつの身体のわりには重い機械鎧だな。」
ウィンリィの言葉を耳にし、ふむと考えるドミニク。
エドワードは俯き“またパンツ一丁……”なんてポツリと内心呟きながらも、言い返せなくて。
「装備者に負担が掛かるのはよくねぇな。だからこいつ、歳の割には小さいんじゃねぇのかぁ?」
「ちっせ……いや待て!」
ドミニクの“小さい”という言葉にピクリと反応するエドワード。
しかし、ソコよりも強く反応を示したのは小さいと呟く前の言葉だった。
「てぇ事は、もっと軽くすればオレの身長は伸びるのか!?」
「可能性はあるな。」
エドワードの問い掛けに、淡々とした口調でドミニクは肯定の言葉を返した。
さすがのエドワードも、身長が伸びるというのは嬉しくてパァァァァっと背後を明るくさせて喜びを表した。
「うん……やっぱり決めた。」
そういうと、ウィンリィは決心をした表情を浮かべた。
「ドミニクさん!あたしを弟子にしてください!」
「やなこった。」
ウィンリィの必死のお辞儀しながらのお願い。
しかし、ドミニクは小指で耳を穿りながら一刀両断で返事を返した。
「…もう少し考えてくれても…」
「うるせい。弟子は取らねぇって決めてるんだよ。」
ウィンリィの涙の突っ込みに、ドミニクはため息を吐きながら言葉を返し。
しかし、ウィンリィを弟子にするつもりは一切ないようで。
「そこをなんとか…こう、ちゃっちゃとオレの身長が伸びる機械鎧を伝授してくれませんかね、社♡長♡」
「黙れ、このミジンコ。」
エドワードの、悪徳社長っぽい頼みにドミニクはまたもや一刀両断で返事を返した。
しかし、そのワードはエドワードの怒りに触れる言葉で。
まるで分かっていながら口にしたような感じで。
「みじーーーーーーーーー!!」
「ドミニクさん、お願いします!」
「弟子なんざ、いらんっ!」
「私からもお願いします!」
「取らん。」
「そう言わずに!」
「帰れ。」
「みっ…みじんこって言った、ミジンコって!」
「エド、うっさい!!」
エドワードは、ドミニクが呟いたミジンコという単語に只管反応しまくり。
ウィンリィとは必死にドミニクにお願いした。
しかし、ドミニクは一切“よし”と言わなくて。
「ごめんね…うちの親父ガンコ者だからさ…諦めてよ。」
まぁまぁ、とウィンリィとエドワードとを落ち着かせながらリドルが言葉を口にした。
その言葉に、どうしようもなくて“う〜〜〜〜”と3人は唸り声を上げるだけだった。
「おう!さっさと帰れ!」
腕を組みながら、言い切るドミニク。
しかし、その直後カッ!!!と雷が鳴り響き落雷した。
どざーーーーーーーーーーーー!!
「帰れません。」
大雨が降ってしまい、帰れと言われても帰れる天気ではなくて。
「雨が止むまで、うちでゆっくりして行きなさい。」
苦笑しながらも、リドルはそう口にした。
雨のなか、無理矢理帰すほど非道な人じゃなかったのが救いだっただろう。
ドクンッ………!
「っ!」
?」
大雨、雷。
それが揃った瞬間、の胸がドクンと脈を打った。
ガクッと膝を折り、その場に座り込むとの両手は胸の辺りの服をグッと掴んでいた。
それに気付き、エドワードは近くにしゃがみ込み首を傾げた。
「エ、ド……苦し…い……」
そう言いながら、はドサッとその場に倒れた。
「!!っ!!!」
その倒れたのを見た瞬間、普通じゃないと思いエドワードはの身体を支え声を上げた。
しかし、すでにの意識は遠のいていて。
変わりに感じるのは、の身体の異常な熱さ。
「っ…!一体…一体どーなってんだ!?」
そう声を上げた瞬間、の姿がピカッ!!と光を上げた。












To be continued...........................






という事で……時ヲ切リ裂ク雷ノ………第10話をお読みいただきありがとうございます!
ヒューズの事件から、パニーニャ事件へと繋がり、そこでエドワードと再会。
そして……オリジナルへと話が進んでまいります!
いやはや………一体どーなってしまうのでしょうか。
もしかしたら……次回が最終回…かもっ!?(ぉ






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