「帰っておいで、。」

誰が…呼んでいるの?
聞こえる声はには聞き覚えのある声だった。

…早く、私の元に来て?」

エド達じゃ…ない、この声は…
分かるのは、この世界に来てからの声じゃないという事。
つまりは、当てはまる人は絞られてくるわけで。

「……、私を忘れちゃったの?」

その言葉ではようやく思い出した。
それは愛しい愛しい、大好きだった人の声。

「…ご主人!」
「…!!」

が叫んだ瞬間、違う声が響いた。
それは────…












時ヲ切リ裂ク雷ノ……… 第11話













!!!目を覚ませ!!!」
意識の遠のいていたの耳に、聞きなれた声が響いた。
その声の主はエドワードだった。
「ご主…人……今から…行く…よ……」
ゆっくりと伸ばす手は、天へと向かっていた。
その様子を見たエドワードは率直に思った。
何かがを天へと連れて行こうとしているように見えた。
「バカッ!!!何言ってんだ、!」
「…ご主人…ず…っ…──と1人にし…てご…──…んね…」
!何変な事言ってるんだよ!」
「い、ま……傍───……くから……ね…」
エドワードの発言も、アルフォンスの発言も聞こえていないような
ずっと天ばかりを見つめて呟くの視線は虚ろそのものだった。
そんなを見つめて、エドワードが悲痛な声を漏らしていた。
“どうして…どうして…”と。
何度も何度も呟くように。
を連れて行くんじゃねぇーーーーーーーーーー!!!」
「に…兄さん…」
を抱きかかえたまま、その場に座り込んでいたエドワードは空を見上げ声が枯れるんじゃないかと思うくらいの大きな声を上げた。
まるで、悲痛なる悲鳴のように。
そんな兄、エドワードの様子を見つめアルフォンスは短く声を漏らした。
「……。」
そこに居合わせていたパニーニャに関しては、どうする事も出来なくて。
ただ無言で過ごしているしか出来なかった。
「…ごめん、パニーニャ。」
「え?」
「…少し、僕らだけにさせて…」
「悪いな…ウィンリィも…ここで待っててくれ。」
「……主じ……」
虚ろなを1度ギュッと抱きしめると、エドワードはスクッと立ち上がった。
その様子を見て、アルフォンスが真っ先にパニーニャに声を掛けた。
このままここに居ては、説明できない事態が起きるような気がしていたから。
とあまり深い関わりのないウィンリィも、一緒に居合わせるのはどうかと思ったエドワードは横からそう続けた。
その言葉にパニーニャもウィンリィも、顔を見合わせてただ頷くしか出来なかった。
そんな4人を置いて、だけは幻影にとらわれた様に元の世界の主人を呼び続けていた。
「……やっぱりお前…異世界の住人だったんだな…」
ずっと、それが嘘ならイイと思っていた。
ずっと、それが夢ならイイと思っていた。
エドワードはそう思いながらポツリと呟き、をお姫様抱っこしたエドワードは雨の降る中へと足を踏み込んだ。
それに続いてアルフォンスも歩みだし────
雨が3人の身体を叩いていた。













「…ご主人?…ご主人、どこ?」
真っ暗闇の中、は歩き周りを見渡し声を漏らしていた。
探しても探しても、目的の人物の姿は見えなくて。
「……ご主じ…………ん?」
そう呟くと、目に留まったのは2つのスポットライト。
1つのスポットライトには、先ほどから探していた目的の人物…がご主人と呼ぶ少女の姿があった。
「ごっ…ご主人!」
声を上げて、駆け出す
その声に反応するようにご主人は、ニッコリと微笑んでいた。
しかし、目に留まるのはもう1つのスポットライト。
そこには、誰が立つはずなんだ?と。
『誰ヲ……忘レテイルノ…??大切ナ人……───…ナンデショウ?』
呟く声は、ご主人のもので。
だけど、先ほどからを求める口調とは違っていた。
それは、昔から知る本当のご主人そのものの口調だった。
「大切な………ひ、と………私の…ご主人よりも大切な…………」


「いや…なんか暗いっつーか…辛そうっつーか…」

私を心配してくれる人…
気遣ってくれる人………

に触るんじゃねぇ!!を解体させたりなんかしねぇ!!」

私を大切にしてくれる人…
私に優しく接してくれる人…

!やっと追いついたの……どうしたんだよ、その傷っ!!!」

やっとの再開…
心から凄く喜んでくれて…傷を心配してくれた人…

「てめぇの汚い手で触らせたりしない!だ!合成獣じゃない!」

私の求めていた言葉を…
心から言ってくれた人…

私の………大好きな……人……


「────……エド!!!」
思い出した瞬間、はエドワードの名前を声を張り上げて口にした瞬間。
パァーーーー!!!っと真っ暗な空間に光が差したように明るくなった。










「…!!………!!」
視界が開けた瞬間、目に届いたのは大好きだと自覚した…エドワードの顔があった。
現在、の身体はエドワードに抱きしめられていた。
「…エ、ド……?わた、し………」
ポツリと、声を漏らしながら意識を取り戻した事をエドワードに伝える
空に伸びていた手が徐々に引き戻され、エドワードの頬に添えられた。
頬を撫でるように、米神辺りから顎のラインを通るように手を動かして。
「良かった…無事だったんだ!」
「…う、ん……エド…アル、心配かけて…ごめんね…あの、ね…」
「何?。」
エドワードの安堵の声を聞き、はポツリと謝罪の言葉を呟くと。
何かを言おうと、短く声を漏らした。
それに反応するようにアルフォンスが首をかしげた。
「…雷、に…雨………多分、ね……私…もうすぐもとの世界に戻る事になると思うの…」
「「!」」
の突然の言葉にエドワードもアルフォンスも驚きの視線を向けた。
「私がこの世界に来た日も…今みたいに雷雨だったの…だか、ら………ね。」
苦笑を浮かべながら、まるでそれを予想しているように呟いた。
「そんなの…オレは許さないからな!!」
「エド…我侭なんだから…ごめんね…?ずーっと…傍に居られなくて。ずーっと…傍に居たかったよ…」
エドワードの言葉に首を弱弱しく振りながら呟いた。
ずっと一緒に居たかったと、心から思ったことを。
その瞬間、の姿が揺らぎ半透明になった。
抱きかかえるエドワード自身の腕が、薄っすらと見えたのだ。
!?」
「駄目だよ、!まだ…まだとたくさん話が…!」
「無理だよ…アル。もう……時間だ…」
アルフォンスの言葉に返事を返しながら、瞳をゆっくりと閉じた。
その瞬間、一瞬の姿が光り輝き瞳をゆっくりと開いた。
「「!」」
それと同時に、の姿は霧のように光のように消えていった。
「エド…ずっとずっと…傍に居たかったんだよ?…私は、エドの事が……──────」
小さく掠れる、反響し消えていく───
聞き耳を立てなければ、聞き逃してしまいそうな言葉を残して。
しかし、“エドの事が”の先の言葉は…エドワードに届いていたのだろうか。







私は……エドが……………大好きだから。

ずっとずっと…大好きだから。

離れていても。

違う世界に居ても。

私はずっと………エドの、傍に……












..................The end







という事で、11話で完了となります時ヲ切リ裂ク雷ノ………でした。
いかがだったでしょうか?
楽しかったと思っていただけたら、幸いです。
ちょっとした悲恋な感じにも思えますが…
トリップ夢となると、こんなイメージになりますね私は。
と言っても、最後に主人公が元の世界に戻るか戻らないかで変わるとは思いますけど。(笑
というか、ちょっと石田さんの声が聞けてテンションアップアップで書き仕上げちゃいましたw






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