「“悪魔の研究”とはよく言ったもんだ…恨むぜマルコーさんよぉ………」
「こんな…結果が…出てくるなんて…」
エドワードの言葉に、も淡々とした口調のまま呟くしかなかった。
「…一体何が?」
ブロッシュは、ただならぬ事だと判断し腫れ物に触るようにエドワードに問いかけた。
すると、少し視線を上に上げまるで何かを睨みつけるような視線をしていた。
「賢者の石の材料は………」


それは苦難に歓喜を
戦いに勝利を
暗黒に光を
死者に生を約束する
血のごとき紅き石─────

人はそれを敬意をもって呼ぶ
“賢者の石”と───……













時ヲ切リ裂ク雷ノ……… 第6話














「確かにこれは知らなかった方が……」
「うん…幸せだったかもね。」
エドワードの言葉を紡ぐように、がポツリと呟いた。
既に解読した研究書内容を見ていないエドワードの代わりにが中身を見つめた。
その内容は、エドワードが先ほど言っていた内容を少し難しく専門用語などで書かれているものだった。
「…、資料。」
「あ、うん。」
カサッと音を立てて、持っていた資料を手渡した。
中身をパラパラと確認しながら、エドワードは大きくため息を吐いた。
「この資料が正しければ賢者の石の材料は………生きた人間だ。」
そう言うと、資料を持っていない方の手で口元を押さえた。
「しかも、石を1個精製するのに複数の犠牲が必要って事だ……」
「そんな非人道的な事が軍の機関で…?」
「許される事じゃないでしょう!」
エドワードの言葉にグッと拳を握り締め、ブロッシュとロスが声を張り上げた。
軍は、そんなことをしていい訳じゃない。
まさか、そんな非道なことをしていたなんて思わなかったから。
「……ロス少尉。ブロッシュ軍曹。」
「…はい。」
「なんでしょう…?」
掛けられた声に、顔を見合わせてから返事を返した。
「この事は誰にも言わないでおいてくれないか…」
「しかし…!」
表情が見えない所為か、ブロッシュは抗議の声を上げた。
それでも、にはエドワードの心の匂いが嗅げていた。
だからこそ、静かに見つめるしか出来ずに居たのだ。
「頼む。」
その声に、ブロッシュもロスも困った表情を浮かべエドワードを見つめた。
エドワードは、徐々に俯き始めていた。
「頼むから聞かなかった事にしといてくれよ…」
悲痛なる小さな声が、部屋中に響き渡った。
こんな時、どんな言葉をかければいいのか分からなくてはギュッと胸を握られたような感覚に陥った。















「「……。」」
何も言わず、ソファーを中心に座るエドワードとアルフォンス。
は人の姿のまま、右往左往していた。
「…どうしたんだよ、。」
「え…あ…うん。」
エドワードは、ウロウロするに視線を向けると眉を潜めて声をかけた。
一体、何をウロウロしているんだろうと内心思いながら。
しかし、帰ってきた返事は微妙な言葉だけですぐに黙り込んでしまった。
─…聞けるはずがない…賢者の石をどうするのか…なんて。
グッと下唇を噛み締めて、は内心ポツリと呟いていた。
も喋らなければ沈黙が空間を覆いつくし、時計のカチカチという秒針の音だけが聞こえてきた。
「……兄さん。ご飯、食べに行ってきなよ。」
ソファーの背もたれの方から寄りかかっているアルフォンスが、ソファーに寝そべっているエドワードに声をかけた。
ここ数日間、ロクに食事を取っていなかったエドワード。
と言っても、もそんなに食事を取っているわけではなかったのだが。
「…も。何か食べないと。」
「…いらない。」
「いらん。」
アルフォンスの気を利かせた言葉に、もエドワードもバッサリと言い切った。
動く気力すらもなくなっていたエドワードとアルフォンスは、その場から立とうともしなかった。
睡眠やらは取るのだが、それでも魘されて起きてしまう。
アルフォンスに限っては眠れる身体ではない所為か、夜は空を見つめため息を吐いていた。
「…辛い…」
「…ああ、しんどいな…」
「…うん。」
ポツリと弱音を吐いたのは、だった。
それに同意して、エドワードとアルフォンスも肯定するように呟いた。
スッとエドワードは手を天井に掲げ始めた。
まるで、何かを掴もうとするように。
「なんかこう……手の届く所に来たと思ったら逃げられて…それの繰り返しで…」
エドワードの冷たい機械鎧の動く音が、ぎしぎしと聞こえた。
普段は、物音やら声がある為聞こえないのだろうが、ここまでシーンとしていれば聞こえるのだろう。
グッと拳を握り締めると、徐々に自分の方へと機械鎧をゆっくり降ろしていった。
「やっとの思いで掴んだと思ったら、今度は掴んだそいつに蹴落とされてさ…」
「…そうだね…」
エドワードの言葉に、ポツリとそう肯定の言葉を呟くしかアルフォンスは出来なかった。
も、今までのことは話でしか聞いたことがなかった為何も言えなかった。
「はは…神サマは…禁忌を犯した人間をとことん嫌うらしいな…」
「……そんなっ!」
エドワードの言葉に、は叫ぶがそれ以上の言葉が出てこない。
実際、ここまで上手く行かなければそうと考えてしまうのも無理もなかった。
「…オレ達…一生このままかな…」
「「……。」」
冷たい機械鎧を額に当てながら、ポツリと深刻そうに呟くエドワードの言葉にアルフォンスもも答える事が出来なかった。
に関しては、簡単に口にしていい話題ではなかったから。
沈黙と時計の秒針の音が絶え間なく鳴り響いた。
「──なぁアル。オレさ…お前にずっと言おうと思ってたけど、怖くて言えなかった事があるんだ…」
「…何?」
深刻そうに淡々と呟くエドワードに、アルフォンスは視線を後ろに向けるように軽く鎧の頭を右側に動かした。
エドワード自身を見ることは出来なかったが、言葉が紡がれるのを待ち続けた。
──…エド、どうしたのかな?
も、呟いた後すぐに何も言わなくなり沈黙が続き始めた頃に軽く首をかしげ内心呟き視線をエドワードに止めた。
「ちょっ…お待ち下さい!!」
「2人共休んでいるところですので……」
突如聞こえたロスとブロッシュの慌てた声に、エドワードは上半身を起こしアルフォンスも視線をドアの方に向けなおした。
「エルリック兄弟に!!居るのであろう!?」
ドンドンドンドン!!!
「我輩だ!!ここを開けんか!!!」
ドンドンドンドン!!!
続いて聞こえたのはアームストロングの野太い声だった。
ドアを力強く叩きながら声を張り上げた。
──…他の部屋の人に迷惑だなぁ〜
は苦笑を浮かべながら、ドアの方を見つめているとコソコソとエドワードとアルフォンスが喋っている姿が見えた。
「…エド?アル?」
「シーシー!!」
掛けられた声に、エドワードは口元に人差し指を宛がい声を漏らした。
「シカトすんだよ、シカト。鍵かかってるから、居留守決め込むぞ!!」
の喋る口を片手で押さえ、声が漏れないようにするとエドワードは抑えた声でそう言った。
その言葉に、は目を見開き一瞬止まるが──すぐに口を塞がれたままコクコク頷いた。
「聞いたぞエドワード・エルリック!!」
ガキョッ……ドンッ!!!
「「「!!!!!」」」
響いたアームストロングの声と同時に、何かが壊れる音が聞こえた。
何かと思い視線を向けると、壊れたドアノブを片手に扉を開き中へ乱入してきたアームストロングの姿があった。
「何たる悲劇!!賢者の石にそのような恐るべき秘密が隠されていようとは!!」
「なっ…なっ…え!?」
ブワッと涙を流しながら語りだしたアームストロングに驚き、紡がれた賢者の石の秘密に目を見開きは驚きの声を上げた。
「しかもその地獄の研究が、軍の下の機関で行われていたとするのならば、これは由々しき事態であるぞ!!我輩、黙って見過ごす訳にはいかん!」
力強く語るアームストロングの言葉でロスとブロッシュが話をしてしまった事が分かり、エドワードはジロリと2人を無言のまま睨み付けた。
その威圧に驚き、ロスもブロッシュもダラダラと汗を掻きながら視線を外した。
「ごごごごめんなさい…」
「あんな暑苦しい人に詰め寄られたら喋らざるをえなくて……」
慌てて事情を口にするロスとブロッシュだが、誰にも言わないでくれと言ったのに言われた事への怒りは収まらなかった。
その表情のまま、エドワードは2人を睨みつけていると───
「…あれ?右手義手だったんですか。」
「ああ…えーっと、東部の内乱の時にちょっとね…」
「そそ。それで、元の身体に戻るのに賢者の石が必要でして…」
ブロッシュの問いかけに、エドワードもアルフォンスも慌てて言葉を発した。
それに便乗するように、もコクコク頷くが話で聞いたくらいの事情しか知らなかった。
「そうですか…それがあんな事になってしまって…残念ですね。」
「真実は時として残酷なものよの。」
ブロッシュの哀れみの言葉に続いて呟かれたアームストロングの言葉にエドワードは目を見開き動きが止まった。
佇んだまま、言葉も発さず指一本も動かさずに視線を宙に浮かしていた。
「真実…?」
「どうしたの、兄さん?」
「…エド?エードー?」
ポツリと呟きつつも動かないエドワードにアルフォンスもも首を傾げた。
ゆっくりと、エドワードは左手を口元より下の顎辺りに持っていくと。
「マルコーさんの言葉、覚えてるか?」
「「…え?」」
「ほら、駅で言ってただろ。」
エドワードの問いかけの言葉にアルフォンスとが首を傾げて顔を見合わせた。
しかし、マルコーが言っていた言葉が出てこなくて無言で居た。
「“真実の奥の更なる真実”………そうか…まだ何かあるんだ…何かが…」
マルコーの言葉を呟くと、何かに気付いたように呟きアームストロングに地図を見せてくれと言い出した。
1度アームストロングが部屋を出ると、少しの間無言が続いた。
この重苦しい空気の中、誰も口を開く事が出来ないのだ。
「軍の下にある錬金術研究所は…中央市内には現在4か所。」
そう言いながら、ドアを開け入ってきたアームストロングは地図を机の上に広げた。
その地図から見て分かるのは、中央市内の道のあちこちと軍下施設だった。
「そのうちドクター・マルコーが所属していたのは、ここ…第3研究所。ここが1番怪しいな。」
ピッと施設を指差しながら、アームストロングはエドワードに視線を移した。
差された指先の施設を見つめて“うーん…”とうなり声を上げ考え込むと少し肩を竦めて。
「市内の研究所は、オレが国家資格を取ってすぐに全部見て回ってみたけど…ここはそんな大した研究はしてなかったような………」
古い記憶を探り起こし、ポツリと呟くとふと目に留まった他の施設。
「これ…この建物、なんだろう?」
ピッと指差しながら問いかけると、アームストロングへ視線をエドワードは向けた。
「…なになに?」
は身を乗り出し、エドワードの指差す先の施設を見つめた。
しかし良く分からず首を傾げていると、パラパラとロスが持っていた書類のページを捲り始めた。
「…そこは以前、第5研究所と呼ばれていた建物ですが…」
そこまで呟くと、ページからエドワードへと視線を向けなおした。
「現在は使用されていない、ただの廃墟です。崩壊の危険性があるので、立ち入り禁止になっていたはずですが…」
「これだ。」
「え?」
「何の確証があって?」
ロスの言葉を聞き、はっきりとした口調で言い切るエドワードには驚きの声を上げ視線を向けた。
同じ意見だったのか、ブロッシュも腕を組んだまま問いかけた。
すると、エドワードは地図の1か所──Central Prison──と書かれた施設を指差した。
「ほら…隣に刑務所がある。」
「えっと……」
「…どういう意味?エド、分かるように説明してくれない?」
エドワードの短い説明の言葉にブロッシュもも良く理解が出来ず首をかしげた。
隣に刑務所があるから、なんだと言うのだろうか…とはエドワードを見つめた。
「賢者の石を作る為に、生きた人間が材料として必要だって事は……」
「あ!材料調達の場所が必要って事!」
エドワードの途中までの言葉にが声を張り上げ呟いた。
の言葉でやっとブロッシュも理解したようで“なるほど”とポツリと呟いていた。
「…でも、刑務所から持ってくるとしても…死刑囚は皆死んだ後にならない?」
あれれ?と眉を潜めてエドワードに問いかけると、アルフォンスは違う違うと呟いた。
アルフォンスも、エドワードが言おうとしている事を理解しているようだ。
「死刑囚ってのは、処刑後も遺族に遺体は返されないだろ?」
その言葉で、は目を丸くさせ“まさか……”と内心呟いていた。
「表向きは刑務所内の絞首台で死んだ事にしておいて…生きたままコッソリ研究所に移動させる。」
「…そこで賢者の石の実験に…使われる、と?」
「ああ…そうすると、刑務所に1番近い施設が怪しいって…考えられないか?」
エドワードの淡々とした言葉に、が確信を得るように眉を潜めて嫌な顔をしたまま問いかけた。
すると、の言葉を肯定するように頷くエドワードが見えては大きくため息を吐いた。
それに気付いていたが、エドワードは話を進めていた。
「死刑囚が…材料…」
「嫌な顔しないでくれよ。説明してるこっちも…嫌なんだからさ。」
ロスの顔色がサァァァっと青くなるのが良く分かった。
そんなロスを見て、ため息混じりにエドワードが呟くとブロッシュが自らの顎に手を添えた。
「刑務所絡みって事は…やはり政府も1枚かんでるって事ですかね。」
「1枚かんでるのが、刑務所の所長レベルか政府レベルかは分からないけどね。」
ブロッシュの言葉に、ため息混じりに返事を返していた。
その言葉にロスもブロッシュも更に顔色が青くなっていった。
「…なんだかとんでもない事に首を突っ込んでしまった様な気がするんですが。」
「だから聞かなかった事にしろって言ったでしょう?」
ロスの言葉に、アルフォンスはため息混じりに呟いた。
言ったのに首を突っ込んできたのだから、自業自得だと言うような雰囲気だった。
「うむ。しかし現時点ではあくまでも推測で語っているにすぎんな。国は関係なくこの研究機関が単独でやっていた事かもしれんしな。」
「うん。」
「…それもそうだね。」
ソファーの背もたれに背中を預け、腕を組みつつ考えながら呟くアームストロングの言葉にエドワードはただ頷くだけの返事をした。
軍人であるアームストロングからすれば、そんな非道な事を国がやっていて欲しくないという願望もあるのだろう。
エドワードも国家錬金術師として軍に身を置く者───アームストロングと同じ思いがあっても可笑しくはなかった。
「…この研究機関の責任者とかは?」
ふと誰なんだろうと思い、アルフォンスがアームストロングに問いかけた。
「名目上は“鉄血の錬金術師”バスク・グラン准将と言う事になっていたぞ。」
「あ。なら、そのグラン准将って人にカマ掛けてみたら?」
「無駄だ。」
「…え?」
アームストロングの言葉にピンと人差し指を立て、が提案をした。
しかし、即座にアームストロングはカマ掛けても徒労に終わると一言でスッパリと言い切った。
「…先日、傷の男に殺害されている。」
「!」
殺害、という言葉には目を見開いた。
傷の男とはついこの間イーストシティで戦った相手だとすぐに分かり唇を噛み締め息を呑んだ。
「傷の男には軍上層部に所属する国家錬金術師を何人か殺された。」
「殺さ……!?」
「そうだ。もしかしたらだが…その殺された中に真実を知るものが居たかもしれん。」
ギョッとは驚きの表情を浮かべ、声を張り上げるとアームストロングがコクリと頷き返した。
エドワードもアルフォンスも、ただ呆然とアームストロングの話を聞くしか出来なかった。
──…余計な事をするんだから…全く。
ハァッと大きく息を吐き、は内心そう思っていた。
傷の男がもしも、バスク・グラン准将を殺害していなかったらカマを掛ける事が出来たかもしれない。
つまり、最短な道で前へ進めることが出来たかもしれない。
「しかし、本当にこの研究にグラン准将以上の軍上層部が関わっているとなると………」
「…ややこしい事になる?」
「ああ。必至だな。」
アームストロングの言葉を遮り、首を軽く斜めに傾げ問いかけた。
すると、力強くに向かって頷き返した。
「まぁ…そちらは我輩が探りを入れてみよう。」
「んじゃぁ…その事は、後で報告よっしく。」
シュルシュルと地図を丸めるアームストロングにエドワードは真面目な面持ちで見つめ頼んだ。
“うむ。”と返事を返すとキランと輝く視線を向け───
「それまでは少尉と軍曹は、この事は他言無用!エルリック兄弟とは大人しくしているのだぞ!!」
「「「ええ!?」」」
アームストロングの指示に、ロスとブロッシュは敬礼をし“ハッ!”と返事を返した。
しかし、ロスとブロッシュと違ってエドワードとアルフォンスとは非難の声を上げた。
引き攣った表情でアームストロングを見つめていると──
地図をバッと開き、指差しながらアームストロングは野太い声でこう言った。
「むう!さてはお前達!!この建物に忍び込んで、中を調べようとか思っておったのだな!?」
その言葉に、エドワードはギョッとした表情を浮かべた。
その隣では、アルフォンスとが“どうしよう、どうしよう”と慌てふためき視線を合わせていた。
「ならん!」
「へ?」
ゴゴゴゴゴゴ、と背景に太くゴツイ文字が浮かび上がりそうな勢いで見下ろすアームストロング。
ヒッ!!と恐怖の声を上げそうになるがゴクリと息を呑み、アームストロングの言葉に素っ頓狂な声を漏らした。
「元の身体に戻る方法がそこにあるかもしれんとは言え……子供がそのような危険を犯してはいかん!」
「わかったわかった!!」
「しないしない!そんな危ない事!」
「ボク達、少佐の報告を大人しく待ってます。」
あまりにも恐ろしい表情で発言してくる為、達は額に汗を掻きながら急いで呟いた。
これ以上恐怖を経験したくない───と言わんばかりに。













「────…なんつってな。」
そう言うエドワード達は、いつの間にか宿の外へ来ていた。
と言っても、それは3人の意思だったのだが。
「オレ達がこんな身体になっちまったのも…オレ達自身の所為だ。」
「だから、ボク達の責任で元の身体に戻る方法を見つけなきゃならないんだ。」
足音をたてない様にコソコソと駆け足で第5研究所へと向かった。
夜だったのが幸いして、抜け出したのも近づいているのも気付かれていないようだ。
コッソリ壁から視線だけを門の方へと向けると───憲兵が1人門の前に立っていた。
「…ふーん………」
「使ってないって言ってたのに…門番が…居るって…」
「怪しいな。」
「うん。怪しいね…それより、どーやって入る?」
憲兵を見てはポツリと呟くと、佇む憲兵を見つめ呟いたエドワード。
同意するようにアルフォンスが呟き、入る方法を2人に尋ねた。
「…エドの錬金術で入り口作るのは?」
「それやると、練成反応の光で門番にバレちゃうかも。」
の提案に、アルフォンスは首を左右に振りながら否定した。
もしも練成反応の光がバレなければ錬金術で入り口を作るのだろうが場所が場所。
しかも夜という事で光が視線に留まりやすい。
“となると…”とボソッと声を漏らすと視線を上に上げた。
視線の先には大きな塀が続いていて、塀の上には針金が続いていた。
「よし。アル、昇るぞ。」
「分かった。…えーっと、は?」
クイッと指を塀の上に向けると短く呟いた。
すると、アルフォンスは頷き視線をに戻し問いかけるとニッと笑みを浮かべた。
「…エド、アル。ちょっと私に捕まって?」
「「え??」」
の言葉に2人は同時に素っ頓狂な声を上げた。
「ほら、早く!」
「「ちょっ!?」」
なかなか捕まらないエドワードとアルフォンスに痺れを切らし、グイッと手を掴むと。
グッと足に力を込め、一気に塀を飛び越えた。
「こっちの方が早いし簡単でしょ?」
「まぁ…確かにそうだけど…凄いな…」
クスクス笑いながら首をかしげて問うに、エドワードは感心した声を漏らした。
「ねぇ、兄さん。」
「あ?」
「あれ…入り口もがっちり閉鎖されてるよ。」
掛けられた声に声を漏らし振り返ると、指摘された入り口。
視線を向けると、板や何やらでキッチリと閉鎖されていて入ることは出来なさそうだった。
「どーすっか……」
「…あれ!あそこからなら入れるんじゃない?中に。」
悩みだすとトコトン悩むエドワードに、がある1か所を指差した。
建物の1部で、通風孔のような感じで網を外すと奥まで穴が続いていた。
「…奥まで続いてそうだな…アル、。」
ポツリとつぶやくと、アルの鎧の肩の辺りに足を乗せ昇りながらふと振り返り声を掛けた。
何かと思い“何?”と同時に問いかけると通風孔に手を掛けたエドワードが口を開いた。
「ここで待ってろ。」
「ええ?1人で大丈夫?」
いきなりの言葉にアルフォンスは驚きの声を上げて視線を上げた。
肩から通風孔に身体が入り始めているエドワードの顔は見えないが完全に居なくなっていない今。
止めることが出来るのは、話しかける事が出来るのは今しかない。
「大丈夫もなにも…おまえのでかい図体じゃ、ここ通れないだろ?」
「私も行かなくて平気なの?」
はアルと一緒に居てくれ。」
エドワードのいけしゃあしゃあとした発言に、ガンッ!とショックを受けたアルフォンス。
代わりにが問いかけると、違った指示を出してきた。
「んじゃ、ちょっくら行って来る。」
そう言うとゴソゴソと通風孔の奥の方へと、エドワードは姿を消した。
体育座りをし、しょぼーんとショックを受けているアルフォンスの隣に座り込むと。
「…アル、ドンマイ。」
そう短く慰めてみた。
「ハハハ…むしろ、そう言われた方が悲しいよ…」
更にしょぼんとしてしまったアルフォンスを見て、はどうしようと思った。
ここで逆に“ドンマイ”ではなくて“仕方ないよ”と言ったほうが違ったかな…とまで考えてしまった。
「…ねぇ、。」
「何?」
「本当に兄さんと一緒に中に入らなくて良かったの?」
その言葉に一瞬キョトンとした表情をは浮かべた。
「いきなりどしたの?」
「だって…ボクと一緒に居るより、兄さんと一緒に居る方が…は嬉しいでしょ?」
「!!」
アルフォンスの図星を刺す言葉に、は息を呑んだ。
まさか、バレているなんて思って居なかったから。
というか、自身もその気持ちを認めようとしていなかったから。
「それに、もしも賢者の石があることが分かったら…」
「私は元の世界に戻れるかもしれない。そうしたら、エドにもアルにも会えなくなる。」
アルフォンスの言葉を遮り、はポツリと淡々と呟いた。
賢者の石を求めるのは、エドワードとアルフォンスが元の姿に戻る為。
そして──が元の世界に戻る為でもあった。
「…そ、それより遅いねエド。」
その場に居づらい雰囲気が漂い、は急いで他の話題を振った。
すると、アルフォンスもそれ以上問いただす事はせずに“そうだね…迷子にでもなったかな?”と発言した。
その瞬間、頭上から“ヒュゥ…!”という音が聞こえ2人は同時にピクリと反応を示し左右へ飛びのいた。
ズドドンッ!!!!
「なっ……誰だ!?」
さっきまでとアルフォンスが居た場所に角の生えた鎧が鉈のようなものを振り下ろしていた。
「OKOK!でかい割にイイ動きだァ。そうでなきゃ遣り甲斐がねェ。」
地面にめり込んだ鉈の様なものをボコッと外しながら、背の部分を肩に乗せた。
「…そんな事聞いちゃいないって!」
「そう焦らすなよ。」
の言葉にクツクツと笑いながら、鎧は鉈の様なものをごんごんと鎧自身の肩に押し当てていた。
「誰だと聞かれたから、取り合えず答えとくかァ。」
「もったいぶんないでさっさと答えて!」
なかなか名乗らない相手にイライラとして、急かすに鎧は笑い声を上げた。
「ナンバー66(ロクロク)だ!もっとも、こりゃあ仕事上の呼び名だがなァ!」
「ナンバー…66?」
聞きなれないそんな呼び名に眉を潜め、ポツリと復唱するように呟いた。
そんなを見てゲラゲラと、さっき以上に笑い声を上げた。
「本名もちゃんとあるけどよぉ…聞いたらおめぇ、チビっちまうからな。とどめ刺す時に教えてやらァ!!」
「…それって、ボク達を殺すって事?」
「げっへっへっ…!なぁに、キレイに解体してやっからよ……安心して泣き叫べ!」
「ふっざけんじゃないわよ!誰が解体なんてさせるもんか!」
アルフォンスの問いかけに、気持ち悪い笑い声を上げながら呟くとの怒りの声が上がった。
そんな事なんて気にせず、ナンバー66はスッと鉈の様なものの他に包丁を取り出した。
「…二刀流もどき!?」
その姿を見て、はそう声を張り上げるしかなかった。









「やられた!!やけに静かだと思ったら……」
そう声を上げたのは、ロスだった。
部屋に入り、窓の外を見るとベッドの縁にくくりつけられたロープが地面近くまで降りていた。
「あ〜〜〜職務怠慢でアームストロング少佐に絞り上げられるぅ〜〜〜〜!」
両手で頭を抱えながら、情けない声を上げるブロッシュ。
一方ロスは顔中に怒りのマークを浮かべ眉間にシワを寄せていた。
「…あのガキどもぉ〜〜〜〜っ!!護衛の身にもなれって言うのよ!!!」
そう言うと、ロスは黒いコートを身にまといながら部屋の出口へと駆け出した。
「ロス少尉?」
「行くわよ!」
「え…どこへっ!?」
「決まってるでしょう!?」
駆け出すロスに気付き、問いかけると怒りに満ちた叫び声で言葉が返ってきた。
「元第5研究所よ!!!」
そうロスが叫んでいたその時、元第5研究所で2つの戦闘の火花が上がっていた事なんて全く知らなかった。










To be continued....................






いやはや……とうとうここまで来てしまった!!!!!!!!!!
結構、この辺りの話って大好きなんだよね。
なんと言うか…エドとアルの心情がよく分かるというか…切なくなるというか…
私の書く小説で、そんな雰囲気が出せるとは思えないけど…ヒロインも含めて頑張ってシリアス進行させてみたいです!(ぉ
でも…私ってギャグとかよりシリアスの方が書きやすいなぁ〜って思うんだけど…
実際読んでる方からするとどーなんだろう…?なんて思ってしまう(笑

てか、当初のヒロインと今のヒロインの性格が大分変わってきているような気がするのは、私だけかな?(ゎ






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