「負けるわけにはいかない!!!!!!」
の叫ぶ声と同時にナンバー66が宙を舞った。
「絶対に…!!!」
ゴッ!!!!!!
決意の滲み出たの言葉と同時に、アルフォンスのパンチがナンバー66を襲った。
の尻尾でナンバー66を上に放り投げ隙を作らせ、地面に落ちてきた瞬間を狙ってアルフォンスの拳が飛んでくるという連携技だ。












時ヲ切リ裂ク雷ノ……… 第7話














ドシャァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
「でぇえぇぇぇぇえええぇぇぇ!?」
もの凄い音を立てて地面に突っ伏し、悲鳴に近い野太い声をナンバー66は上げた。
地面に打ち付けた顔をガバッと持ち上げると、アルフォンスとを睨みつけ“にゃろォ〜〜〜!”と怒りに満ちた声を漏らした。
「ちっとは…大人しく斬られやがれってんだ…このデカブツ!」
鉈の様なものと包丁を交互に使い分けアルフォンスを切りつける。
もアルフォンスを傷つけないよう気をつけながら遠巻きに攻撃を仕掛けた。
と言っても、全て攻撃はワザと外していた。
「痛くしねぇからよ!!」
「んな事言われても…」
ナンバー66の攻撃を腕で受け流しながらも抗議の声をポツリと上げるのはアルフォンス。
「アル!後ろ!」
「あ!?」
「ラッキ!」
の慌てた声に反応するが、1歩遅くアルフォンスは後ろに控えていた大きな瓦礫に足を取られ後ろにグラリと倒れそうになった。
その瞬間、ナンバー66は嬉しそうな声を上げ、包丁を構えた。
「あぶなっ……!」
ガキンッ!!
の伸ばす手は遅く、ナンバー66の包丁がアルフォンスの鎧の右腕の肘の部分を捉えた。
その瞬間“肩ロースいただき!”と声を上げもう片方の手に持っていた鉈の様なものを振り上げた。
「そう簡単には行かないよ。」
「うェ!?」
アルフォンスの余裕の言葉の直後、鎧の右腕の肘の部分に引っかかっていた包丁がバキッと音を立てて折れた。
それとほぼ同時にアルフォンスの左の鉄拳がナンバー66の顔面を捉えた。
ドッ…ゴッ!
「!?」
倒れた瞬間の音と、鎧の頭が外れた所に人の頭がないことに気付きハッとした。
それには自身も驚いた所為か、攻撃する手を止めてしまっていた。
「野郎……頭が落ちちまったじゃねぇか。」
のそのそと起き上がりながら、少し怒った口調で呟くナンバー66にアルフォンスは驚きの声色で“その身体…!”と声を上げていた。
「げっへっへっ…ちょいと訳ありでなァ…」
クルクルと地面に落ちていたナンバー66自身の頭を指の上にソレを乗せクルクルと回しながらアルフォンスとに向かって呟きだした。
ガチッと頭を鎧の身体の上に乗せると、まるで笑っているような声色で話し始めた。
「──…そうだ昔話をしてやろう。おめェも聞いた事くらいあるだろ、バリーっつう肉屋の話を。」
「…バリー?」
ナンバー66の言葉に、が反応し首をかしげながら問い返していた。
「“昔、ここセントラルシティにバリーという肉屋のおやじが居ました。バリーは肉を斬り分けるのが、それはもう大好きでした。”」
語りだすというか、話をし始めるナンバー66には“勝手に話し始める馬鹿が居るなぁ〜”という視線を向け唖然としていた。
アルフォンスも、今だ話がつかめずにに視線を向けて首を傾げてはナンバー66に視線を向けて首を傾げていた。
「“でもある日、牛や豚だけでは我慢出来なくなったバリーは…夜な夜な街に出ては人間を解体するようになったのです。”」
「「!」」
ナンバー66の続ける言葉の中に紡がれていた“解体”という言葉にもアルフォンスもハッとした。
人間を解体──…つまり、殺し続けたという事。
「“やがてバリーは捕まりましたが、それまでに餌食になった人間は23人。中央市民を恐怖のどん底に叩き込んだその男の行き先は当然…絞首台でした。めでたしめでたし!”」
そこまで呟くと、ナンバー66はクツクツと不気味な笑い声を薄っすらと上げていた。
「…てのが、世の中に出回っている昔話。」
「え?」
「この昔話には実は続きがあってよォ。バリーは絞首台で死んだ事になってるが、それは表向きの話だ。」
ナンバー66の続けられた言葉にはハッとした。
それはまるで、宿でエドワードが語っていた予測の範囲内の話に似てきていたからだ。
ポツリと、隣に居るアルフォンスにしか聞こえない声で“まさか…”と呟いた。
「奴はとある場所のガードマンになる事を条件に死刑を免れた…ただし、肉体を取り上げられ魂のみ鉄の身体に定着させられてなァ。」
の感じていた予想が的中した。
つまり、このナンバー66の言っている事があっているのであればエドワードの立てた予測が当たり始めているという事。
まだ、賢者の石がどうとかの話は出ていないから、そこまでは分からないが。
「そう!今、てめぇ等の目の前に居るこのオレ!バリー・ザ・チョッパーとは、このオレの事だァ!!」
「「…誰?」」
まさか、そこまで予想していたわけではなかったとアルフォンスは同時に疑問系でそう呟いた。
確かにエドワードの予想の内容になってはいたが、その本人が目の前に居るとは思わず。
それも驚きだったが、それ以上にバリー・ザ・チョッパーの存在が誰なのかが分からない事が先立った。
「ボク、東部の田舎生まれだから中央で有名だった人殺しなんて知らないし。」
「私も…中央に来たのだって今回が初めてだし。」
ここの世界の住人じゃないし…という言葉は呑み込んで呟いた。
「ぶあ!!田舎者!!」
ガビン!!とショックを受けてナンバー66ことバリーが声を上げた。
「知らないにしたって、オレのこの身体見てそれなりのリアクションてもんがあるだろォ?ノリが悪いぞ!」
そう言いながら、ビシッビシッととアルフォンスを指差した。
「もっとこう…ギャー!!とか、わーー!!とか、なんだその身体!!とかよォ…」
その言葉を聞き、とアルフォンスは顔を見合わせまず自分が───とは自らを指差した。
その行動にアルフォンスは意味が分かったのかコクリと頷いた。
「…だって、アンタだって私の姿見て驚かなかったじゃない?同じよ。」
その言葉に“……そういえばそうだな…”とポツリと同意の言葉を呟いた。
「それにしたって、そっちの鎧の兄ちゃんは…」
そう言うと、アルフォンスは少しの間を空けてカパッと自分の頭を持ち上げた。
そこにはあるべきはずの頭が見えなくてバリーは“ギャァーーーーーーーーーー!!”と悲鳴を上げた。
「わーーー!なんだその身体!変態!」
「ううっ…傷つくなぁ…」
「…アル、ドンマイ。」
驚き声を上げるバリーの言葉にショックを受けポツリと呟くアルフォンス。
すると、がニッと笑みを浮かべて言うとガビンと再度アルフォンスはショックを受けた。
「なんでぇ、死刑仲間かよ。ビビらせやがって。」
「ボクは犯罪者じゃなーーーい!」
バリーのため息混じりの言葉に、アルフォンスは鎧の頭を持ったまま声を張り上げた。
死刑囚と一緒にしないで欲しい!という願望が声から滲み出ていた。
「あァ?じゃぁ…なんでそんなナリしてんだよ。」
「ちょっと訳ありなのよ。」
「生身の身体が全消失した後に、ボクの兄が魂を練成してくれたんだ。」
バリーの言葉にが反応し、不機嫌そうに呟くとアルフォンスが言葉を紡いだ。
「そこまで話さなくてもいいのに…」
「別に構わないよ。全てを語ったわけじゃないんだし。」
ツンツンと横からがアルフォンスを突っつき呟くと、苦笑しながら返事を返した。
その言葉に“うーん…”と声を漏らした。
「…ほぉ、兄貴!げっへっへっ…そうかい兄貴が!!」
げひゃひゃひゃ、と笑うバリーに眉を潜め視線を向ける2人。
一体何がそこまで面白いのだろうか…と。
「…何?何が言いたいわけ?」
「いやわりぃわりぃ。ところで、その兄貴をおまえ信頼してんのか?」
「当たり前だよ!命がけでボクの魂を練成してくれたんだもん!」
の問い詰める声に反応し、笑いながらも謝罪の言葉を紡ぎアルフォンスに問いかけた。
馬鹿にするようなバリーの言葉に必死に信頼している事を伝えようとしていた。
しかし、その必死さもバリーには笑えるように見えたようだ。
「おうおう。兄弟愛ってのは美しいねェ。たとえ偽りの愛情だとしても。」
鎧の奥に白く輝く光が見えたような気がした。
それはバリーの魂の輝きなのだろうか。
まるで楽しんでいるかのような口調でバリーはアルフォンスを挑発した。
「…どういう意味?」
「その言い方だと…まるでエドが…」
「おめェ等、本当に兄弟なのかって事よ。」
バリーの言葉にアルフォンスは低いトーンの声で問いかけ、もムッとして言葉を漏らした。
その言葉に、いけしゃあしゃあとバリーは言葉を続けた。
「そりゃ、性格が違いすぎるとか弟のボクの方が身長高いとか言われてるけどさ…」
ムッとして、アルフォンスはバリーの言葉に答えた。
その言葉は、違うところはあるけど列記とした兄弟だ!と言っていた。
「いやいや、そういう意味じゃなくて…おめェよ…」
ポリポリと鎧の頭の部分を掻きながらバリーは言葉を考えると、アルフォンスを真っ直ぐ見据えた。
「その人格も記憶も、兄貴の手によって人工的に創られた物だとしたらどうする?」
「「!!」」
バリーの言葉に、アルフォンス自身もも愕然と立ち尽くしてしまった。
その言葉はまるで、エドワードが自分の為にアルフォンスを創り出したというような…
「そっ……そんな事あってたまるか!」
「そうよ!アルはアルよ!間違いなくアルフォンス・エルリックって言う人間よ!」
愕然としていた2人だが、すぐにハッと我に返り非難の声を上げた。
にはアルフォンスもエドワードも嘘を言っているように思えなかったから。
今まで一緒に過ごしてきたのだから、ここに居るバリーよりも知っているはず。
「げははははははは!」
「な、何が可笑しいって言うの!?」
「“魂”なんて目に見えない不確かな物で、どうやってそれを証明する!?」
「それはっ…!」
「兄貴も周りの人間も、皆しておめェを騙しているかもしれないんだぜ!?」
「それ以上言わないで!!アンタよりアルを私は知ってるわ!」
バリーの言葉に悲鳴のような声を張り上げ、バリーが喋るのを阻止しようとは叫んだ。
涙を流しそうな勢いで、アルフォンスを守るように。
大好きなエドワードの弟を必死に守ろうと────…
「そうだ!おめェという人間が確かに存在していた証は!?肉体は!?」
しかしバリーはの言葉に耳を傾けず、ひたすらアルフォンスへ言葉を差し向けていた。
「…じゃああんたはどうなんだ!」
アルフォンスがそう叫んだ瞬間、門番をしていた憲兵が駆け足で寄ってきた。
「そこの者動くな!ここは立ち入り禁止になっている!」
細長い銃を向け声を張り上げ“すみやかに退……”と呟いた瞬間、バリーの鉈の様な物が憲兵の頭を捕らえた。
「うるせェよ。“じゃああんたはどうなんだ”だと?簡単な事だ!」
鉈の様な物を下ろし、斬られた憲兵から流れる血の水溜りの中にバリーは足をダンッと降ろした。
アルフォンスを見つめながらも、笑い声を上げるのを絶えずやめず。
「オレは生きた人間の肉をぶった斬るのが大好きだ!殺しが好きで好きでたまんねェ。」
そう言うと、左手でグッと拳を握り締めゲラゲラと笑い始めた。
「我殺す故に我在り!オレがオレである証明なんざそれだけで充分さァ!!!」
狂気に満ちたバリーの言葉、声には奥歯をギリッと噛み締めてアルフォンスはただバリーを睨むしかなかった。












「…っ!?」
ドクン、との鼻に黒い黒い嫌な匂いが漂ってきた。
それは、勿論先ほどから分かっていたバリーの匂いも含まれていた。
それ以外にも2つの嫌な匂いと1つの匂いの薄れてきている匂いも漂ってきた。
「…!ア、アル!!!」
その匂いに気を取られていたはハッとした瞬間、丁度バリーがアルフォンスに切りかかる瞬間を見た。
急いで声を張り上げるが、アルフォンスは何かの思いに心が思考が捕らわれていたようで反応がなかった。
ガギンッ!!!
「………。」
音を立て、バリーの鉈の様な物がアルフォンスの左手の鎧にぶつかった。
周りの風景は見えているようだが、先ほどまでのキレが全くなくなっていた。
「どうしたどうしたァ!急に動きが鈍くなったぜェ!?」
そう言いながらもアルフォンスと切り結ぶバリー。
「人工的に創られた魂っつっても完璧じゃねェとみえる!これ位の揺さ振りで動揺するんだもんなぁ!」
エドワードがこの間途中まで呟いた言葉とバリーの心無い言葉に、心を揺すられるアルフォンス。
今、心が揺れているアルフォンスとバリーの間に攻撃を仕掛けられずには唇を噛み締めて切り結ぶ2人を見つめていた。
「う、うるさい!!ボクは……」
しかし、それ以上の言葉が出てこないアルフォンス。
懸命に鎧の腕でバリーの鉈の様な物を受け流していた。
「認めちまえよ、楽になるぜ?」
「くっ……」
ゴッ!!!
アルフォンスの腕を鉈の様な物とバリー自身の鎧の腕で動きを止めると空いているもう片方の手でアルフォンスの腹部を殴った。
「げはははははは!!!スキだらけだぜデカブツ!!」
そう言うと鉈の様な物を振り上げながら、バリーは叫んだ。
「駄目ェーーーーーーー!!」
ハッとしては手をアルフォンスの方へ伸ばし駆け出した。
しかし、距離が距離だった為に手がそこまで届かない。
ドドンッ!!!
「「!?」」
銃声が聞こえた瞬間、バリーの持っていた鉈の様な物が地面に落下した。
何かと思い驚きながらとアルフォンスは銃声のした方へと視線を向けた。
「動かないで!次は頭を狙います。」
ガチャッと銃口をバリーの方へと狙いを定めた。
「大人しく大きい鎧の人と、少女をこちらへ渡してください。」
「ロス少尉……」
「ブロッシュ軍曹!」
銃を構えるロスとブロッシュの姿に助かった…と言わんばかりの表情を浮かべる。
「なんだおめェら。」
「その人達の護衛を任されている者です。」
「ああくそっ!護衛風情がイイ所で邪魔しやがってよ!」
バリーの問いに即座に答えるロスに、チッと舌打ちしながら手に空いた穴を見つめた。
2発分の銃弾が通った痕がバリーの鎧の左手の平に残っていた。
「門番の野郎何やって……ああ、オレがぶった斬っちまったんだっけかァ…失敗失敗。」
“あ…”と、自分が門番の顔を半分に斬った事を思い出したようだ。
その言葉を耳にし、ブロッシュは隣で倒れている顔が半分に切り裂かれた門番に視線をチラリと向けた。
「ふん…面倒なことになっちまったな…」
そう言いながらバリーはアルフォンスととロスとブロッシュを順番に見つめると、ズズズと何かの音が聞こえた。
「……なんの音だ…?」
「…変な…音…よね…」
ブロッシュの言葉に頷きながらも、にも何の音か分からずに首を傾げ同意していた。
その数秒の一瞬で、ズドンッと音を立てて建物が崩れ始めた。
「な…なんだぁ!?」
バリーは唖然として声を上げ、アルフォンスも崩れゆく建物を呆然と見つめていた。
“爆発っ!?”とロスが声を上げると、ブロッシュに声を掛け退避するように指示を急いで出した。
「…アル…」
その崩れる建物を見て、腰の辺りから生えた尻尾を足と足の間にクルッと仕舞い込むと戸惑いながら声を掛けた。
その様子からしては何かに恐れを感じているようで。
「何してるの!逃げるのよ!!」
「!!に、兄さんが!!」
「ちょっ……!」
ロスの言葉にハッとして、建物が崩れているという事はエドワードの身が危なくなっていると気付いた。
アルフォンスの短いその言葉から、もエドワードの身の危険を感じ取った。
嫌な匂いが近づいてくるが、そちらよりもエドワードを心配しアルフォンスの近くへ駆け寄った。
「どこへ行くの!」
「兄さんがまだ、中に居るんだ!」
「離して、ロス少尉!」
走り出そうとするとアルフォンスの腕をロスが掴んだ。
腕を掴むロスにアルフォンスとが懸命に離して欲しいという口調で言葉を紡いだ。
「バカな事言わないで!!巻き込まれるわ!」
言われても掴む手を緩めようとはせずに、ロスは駄目と声を張り上げた。
「…うーーむ…こりゃあアレだな。」
そうポリポリとバリーは鎧の頭を掻くと“素直にとんずら!”と声を上げ必死に逃げ出した。
そんなバリーに気付き、ブロッシュは急いで銃口をバリーに向けた。
「あ…待て!!」
「おめーらも早く逃げねェと巻き込まれるぜェ!!」
不気味な笑い声を上げながらバリーは逃げ出し、その指摘は外れていなくブロッシュは歯を噛み締めた。
「兄さんが…兄さんが……」
「お願い…エドを助けに行かなきゃいけないのよ!!!」
地面に膝を付いたまま、ポツリポツリと声を漏らすアルフォンス。
それとは逆には荒々しく声を張り上げ、ロスの腕を振り解こうとした。
「今は、あなた達が逃げる事を考えないさい!」
「…来る!」
ロスの懸命な言葉も虚しく、アルフォンスもも未だに崩れる建物の中へ入ろうとしていた。
そんなところに感じた匂いにがいち早く反応を示して、声を上げ視線を移した。
「ちわーーっス。荷物お届けにあがりました。」
そう言いエドワードを担いでやってくる黒髪の変わった黒服を着ている少年が居た。
「兄さん!?」
「エド!」
肩に担がれている姿を見て、安堵と困惑と心配の篭った声を同時に上げた。
「命に別状はないけど、出血が酷いから早く病院に入れてやってね。」
「…え?病院…?」
肩から下ろし、ロスにグッタリとした様子のエドワードを預けた。
「そ、病院。ほんとにもう…あんまり無茶しない様にあんた達しっかり見張っててよね。貴重な人材なんだからさ。」
ハァッとため息を吐きながら黒色の長髪の少年は呟き、ロス達を見下ろしていた。
「何してるんですか、ロス少尉!早く!」
「軍曹!手を貸して!」
しゃがみ込んだままのロスを見て、ブロッシュが急いで声を上げながら駆け寄ってきた。
そんなブロッシュに、1人では運べないと言った。
「……エド…どうし………」
黒髪の少年から嗅げる匂いは、好きな匂いではなく嫌いな嫌な匂いだった。
しかし、それよりもエドワードの怪我の方が気に掛かりガタガタと肩を震わせながらブロッシュに負ぶさる姿を見つめていた。
「あなたも早く逃げて……あれ居ない…?」
逃げるように指示を出そうと声を向けると、既にそこに居なくなっていた少年。
ロスは唖然とした表情を浮かべたが、背後から掛かったブロッシュの声に反応した。
「え…ええ。」
何をしてるんですか…というブロッシュの言葉に、未だ少し戸惑いながらも返事を返すと急いで立ち上がり崩れる建物の前から逃げ出した。














「私…何の役にも経ってないな…」
ポツリとエドワードが運ばれたロスの知人の病院の廊下の椅子に腰掛けて呟いていた。
アルフォンスと一緒に戦っていても、いざという時何の助けも出来なかった。
「…エドも…あんな事になるんだったら…どうして一緒に行かなかったんだろ…」
まるで自分を責めるように、背中を丸くし座ったまま太ももの上に肘を付くと、そこから伸びた手で頭を抱えた。
アルフォンスと一緒でも役に経たないのなら、エドワードと一緒でも役に経たなかったかもしれない。
それでも、アルフォンスの方は危ないという時にロスとブロッシュが駆けつけてきた。
でも中で戦っていたエドワードはあんな状態になるまで1人だったのだ。
「…私が……私がもっとちゃんとしてれば……」
エドはあんな怪我をしなくて済んだかもしれない──…
唇を力強く噛み締めながら、は呟いた言葉の続きを心の中で呟いていた。
さん。」
「…え?」
かけられた声にピクリと反応し、顔を上げた。
そこには、助けに来てくれたロスとブロッシュの姿があった。
何かと思い首をかしげ2人の出方を待っていた。
バッシーーーン!!!
「!?」
いきなりのロスの平手打ちに、は驚き目を見開いて固まっていた。
「あんなにアームストロング少佐が、勝手な行動をするなって言ったのに…それをあなた達は!!」
いきなりのロスの怒りの声に、何も言えずその言葉を聞くしかなかった。
「今回の件は、危険だと判断したから宿で大人しく待っていろと行ったのに!少佐の好意を無駄にした上に、下手をしたら命を落としていたのかもしれないのよ!?」
本当に達を心配しているという事が伝わってくるほど、怒るロスとその横でムッとした表情で立っているブロッシュからは匂いが嗅ぎ取れた。
「なっ…なんで怒られなきゃいけな…………」
そこまで声を張り上げただったが、怒られる理由は充分分かる。
なんで…と言っても、ロスはその理由を怒りながらでもキチンと的を得て述べていた。
「…ごめんなさい…」
「分かってくれれば、いいわ…」
素直に謝るに、フッと笑みを浮かべると優しい声色でロスは返事を返してくれた。
「…アルなら…向こうに…」
チラッと視線を向けて、アルフォンスの居るであろう場所をロスとブロッシュに教えた。
もしもの前に会っていないのであれば、アルフォンスの元へにも行くはずと考えた結果だ。
すると、のその言葉にお礼の返事を返すとから聞いた方向へと2人は歩き始めた。
「…危険、か。」
確かにそうだった…と内心思い、コツンと後ろの壁に頭をつけた。















「あれ、?」
「…エド。」
少し離れた場所から掛けられた声に反応し、ポツリと相手の名前を呟いた。
車椅子に乗りブロッシュに押してもらいながらの近くで止まった。
「そんなトコに居ないで、病室行こうぜ?」
「…う、うん……そう、だね…」
いつもと変わらぬ明るい声に少し戸惑う
コクリと頷きながらもなかなか椅子から立ち上がろうとしない。
「…どうした?」
「な、何でも…ない…先に行ってて?」
「…ああ。」
エドワードの心配している声が上から掛かりパッと顔を上げて“どうもしない”という事を伝えた。
そのの言葉を信じてエドワードは分かったと頷くとブロッシュに車椅子を押され病室の方へと向かった。
「…まともに…真っ直ぐエドを………」
ギュッと拳を握り締めながら、蚊が鳴くほど小さな音で“見ることが出来ない…”と呟いた。
自分の責任だ…と思いつめているからすれば、あんな怪我をしているエドワードをまともに見れないのだろう。
「…行かなきゃ…」
気が重い。
なかなか前に進まない足取りで、はゆっくりとゆっくりとエドワードが居る病室の方へと足を進めた。
ガチャ………
「…牛乳残してる。」
扉を開けると、聞こえたのはウィンリィの声だった。
ウィンリィはエドワード達の故郷であるリゼンブールに居たはずでは…?と首を傾げるが聞こえた言葉に反応を示した。
「牛乳?」
「そう。病院食について来た牛乳。エドってば飲んでないみたいなのよ。」
ウィンリィの説明の言葉には“そうなんだ…”とだけしか答えなかった。
すると、ウィンリィはスッと視線をからエドワードへと急に向けた。
それに気付き、エドワードはハッとして視線を逆へ逸らした。
「……牛乳嫌い。」
「…は?」
ポツリと呟くエドワードは冷や汗を掻いていた。
その言葉には素っ頓狂な間の抜けた声を漏らした。
「そんな事言ってるから、いつまで経っても豆なのよう!!」
「うるせー!!こんあ牛から分泌された白濁色の汁なんか飲めるかァー!!!」
「我がままだぞ、エドワード・エルリック!」
「そうだよ、エド!牛乳くらい飲めなくちゃ!」
エドワードのポツリと呟いた言葉に、まず最初に反応を示したのはウィンリィだった。
幼馴染だからか、昔から牛乳を飲まないことを知っていた。
だからこそ、ウィンリィの口から“豆”という言葉が出てきたのだろう。
しかし、エドワードは断固として飲もうとせず最終的にアームストロングと無理に明るくしているの発言が向けられたのだ。
「早く怪我を治したいのならば、栄養はきちんと取らねばならぬ!」
「牛乳以外の他の物で栄養取ってりゃ問題ないだろ!!」
ベッドの上のエドワードと傍に立つアームストロングが言い合う中、アルフォンスが静かに病室から出て行った。
その事に気付いたは“あ…”と声を漏らしてエドワードに言おうとしたがが口を挿む余地がなかった。
「……。」
はエドワードの方へ1度チラリと視線を向けると、少し小走りで出て行ったアルフォンスを追いかけに行った。









To be continued..................






いやはや……またまた長くなってしまったなーと。
と言うか、今PCじゃなくてノートに違う(原作沿いの)ドリー夢を書いてるんだけど…
1話分を書いて、それをドリー夢の1話分にする様にしない!って考えてたのに…
何故か1話分を一気に書いてしまう……(汗
ああ、私ってどーしてこうも馬鹿なんだろう……なんてね(苦笑
まぁ、ノートとこうやって書くのとじゃ長さとかが変わってくるだろうし…
とりあえずは気にせずにノートに書いて、PCで打つときに長いと思ったら半分にするとかにすればいいかな〜と。
…んま、半分にして前半後半が短くなるなら一気にUPすればイイしね。
どーなるかは…神のみぞ知るってトコロかな?(聞くな
てーことで…エドとアルのケンカ直前辺りまでをUPとして…7話目は以上っス♪






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