「アル!待って!!」
「…?」
急いで駆け出した甲斐があって、はすぐにアルフォンスを見つけることが出来た。
向けられた言葉に反応して立ち止まり振り返ると、の姿が目に留まった。
「何を…悩んでるの?」
そう問いかけても、アルフォンスがすぐに答えてくれるとは思っては居なかった。
の予想通り、問い掛けには何も答えずただただ沈黙するだけ。













時ヲ切リ裂ク雷ノ……… 第8話












「アル…何か答えてよ。」
がそう問いかけると、アルフォンスは何も言わずに歩き出した。
ハッとして、は追いかけるように黙々と病院の廊下を歩き続けるアルフォンスの後を追った。
「ねぇ、アルってば!」
「……別に、何でもないよ。」
「何処がっ!?そんな様子見て何もないなんて思えるわけないじゃん!」
の言葉にアルフォンスは淡々と、少し寂しそうな口調で呟いた。
その言葉にムッとした表情を浮かべ、両手を身体の脇でグッと拳を握り締めて叫んだ。
今…そして、バリーと戦った時のアルフォンスを見た分では“何でもない”とは思えなかった。
には関係ないよ……」
まるで何かを自分の中に押し込めるようにアルフォンスは声を振り絞って呟いた。
その言葉には目を見開いた。
「……私には、何も言ってくれないんだね…」
そう言うと、ソファーに腰掛けたまま地面を見つめるアルフォンスに背中を向けた。
か細い声はアルフォンスにだけに届いたのかもしれない。
「…ほら、エドの所に戻ろうよ。」
だけ先に行っててよ…後から追いかけるから…」
の背中からアルフォンスに向けられた、無理に明るくした声。
アルフォンスにはの表情は見えないが、声の感じからして元気じゃないという事が分かった。
それでもアルフォンスは一緒にエドワードの居る病室へとすぐに向かおうとは思えずに居た。
「…うん、分かった。先に…行ってるね。ちゃんとすぐに来てよね。」
そう言うと、タタタタと小走りに立ち去っていくの足音が響いた。















「むぅ〜〜〜…今日も出やがったな、こんにゃろう!」
目の前に運ばれてきた病院食。
トレーの上に乗っている牛乳ビンを見つめて、エドワードはうなり声を上げた。
「あーもー…牛乳がなんだってんだよ。オレは絶対飲まねーぞ!」
バンッとトレーの置かれた机を叩くと、嫌そうな口調で呟いた。
「あーあ、オレの代わりに飲んでくれよアル〜〜〜…っても、その身体じゃ無理かぁ…」
「…折角兄さんは身体があるんだから、飲まなきゃ駄目だよ。」
壁に背中をつけたままエドワードの言葉にアルフォンスは答えた。
その言葉には“そうそう。飲まなきゃいつまで経っても成長しないよー?”なんて苦笑しながら言葉を紡いだ。
「成長しないっつーなよ。それに、嫌いなものは嫌いなの!」
ムッとしながら、フォークで皿の中の食べ物をすくい口へと運びつつ言った。
「だいたい、牛乳飲まないくらいで死にゃしねえっつーの!」
そう言うと、もぐもぐと食べ物を口にし栄養を取り入れ始めたエドワード。
その様子をアルフォンスもも静かに見つめていた。
「こう見えても、ちゃんと伸びてんのによ。皆して小さい小さい言いやがって!」
食べながら喋るなよ…と突っ込みたくなるくらい豪快にエドワードは食べながら喋った。
パンに手を伸ばし、パクッと一口噛み飲み込むと───
「アルはいいよな。身体がでかくてさ。」
エドワードの心無いその一言を呟いた瞬間、ガチャッと扉が開きアルフォンスとが同時に立ち上がった。
といっても、アルフォンスとの立ち上がった意味は違っていたのだが。
「ボクは好きでこんな身体になったんじゃない!!!」
「アル!そんな言い方ないでしょ!?」
には関係ないだろ!?ボクの気持ちなんか分かるわけないんだから!!!」
アルフォンスの悲痛な叫びに、その場に居合わせたエドワードと、そして扉を開けて入ってこようとしていたウィンリィが立ち止まった。
「好きで…こんな身体になったんじゃ…ない……」
「あ……悪かったよ。」
グググ、と降ろした拳に力を込めてアルフォンスは声を絞って呟いた。
その言葉に、エドワードはハッとして申し訳なさそうにポツリと呟いた。
「……そうだよ、な…こうなったのもオレの所為だもんな…だから、1日でも早くアルを元に戻してやりたい。」
「本当に元の身体に戻れるって保障は?」
「絶対に戻してやるから、オレを信じろよ!」
「“信じろ”って!」
震える声で昔の事を思い出しながら、エドワードはポツリポツリと言葉を紡いだ。
しかし、アルフォンスの鋭い問い掛けで切り替えされた。
その言葉にエドワードは必死に信じろと言ったが、今のアルフォンスには信じられないようだった。
「この空っぽの身体で何を信じろって言うんだ……!」
「……ア、ル…?」
ワナワナと両手を顔の前に出しながら、震える声で怒りの声で呟いた。
その様子が尋常じゃないような気がして、は短い声でアルフォンスの名前を呼びかけた。
「錬金術において人間は、肉体と精神と霊魂の3つから成ると言うけど…それを実験で証明した人は居たかい!?」
「アル!それ以上言っちゃ駄目!!」
「“記憶”だって、突き詰めればただの“情報”でしかない…人工的に構築する事も可能なはずだ。」
「おまえ…何言って……」
アルフォンスの留まらない言葉に、は危険を察して止めようと声を上げた。
しかしアルフォンスの言葉は留まらない以上に、エドワードの心を突き刺すような言葉を発した。
「…兄さん、前にボクには怖くて言えないことがあるって言ったよね。」
「!!!」
アルフォンスのその言葉で、ウィンリィはアルフォンスが何を考えているのか何となく勘付いた。
「それはもしかして…ボクの魂も記憶も本当は全て…でっち上げられた偽者だったって事じゃないの?」
その言葉にエドワードは眉間にシワを寄せて目を見開いた。
「ねぇ兄さん!アルフォンス・エルリックっていう人間が本当に存在したって証明はどうやって!?」
「ウィンリィ達が覚えてるんだから証明になるでしょ!?」
「そんなの…証明になんてならないよ!ウィンリィもばっちゃんも…皆でボクを騙してるって事もあり得るじゃないか!どうなんだよ兄さん!」
「アル!!!やめてっ…それ以上はっ…!」
アルフォンスを必死に止めようと、懸命に悲鳴に似た声を上げる
それでも、アルフォンスはエドワードに答えを求めていた。
ああ…ずっと元気がなかったのは……このことを悩んで……?
はエドワードを見つめる姿を見て、内心そう思った。
ガンッ!!!!!
「───…ずっと、それを溜め込んでたのか?言いたい事は…それで全部か。」
ずっと黙り込んでいたエドワードが、やっと声を発した。
その問い掛けにアルフォンスは静かにコクリと頷いて答えた。
「──…そうか。」
「エ…エド…?」
ポツリと小さくアルフォンスの頷きに答えるエドワードに声をかける
しかし、エドワードは全く答えずに立ち上がりアルフォンスの隣を通り過ぎていった。
「アルっ!!早くエドを追いかけ───」
には関係ないって言っただろ!?」
急いでアルフォンスの方に振り返り声を荒げた。
しかし、逆に火に油を注いだように怒りだしとアルフォンスは睨み合った姿のまま立ち止まった。
「…関係ないって……なによ…」
ワナワナと震えながらは声を漏らした。
怒りで…と言うよりかは悲しみで…という感じでの口調だった。
「…どうせ私は…どこの世界でも…疎まれる存在なのね……」
「…あ。」
「もう……アルなんて知らない!!」
薄っすらとの瞳には涙が浮かび始めていた。
元の世界でも、今居る世界でも疎まれる存在だと思うと自分の存在意味が分からなくなってくる。
グッと唇を噛み締めると、ウィンリィの声が漏れた。
その瞬間、に悲痛な叫びと同時に地を踏みしめ駆け出す足音が聞こえた。
!」
「…放っておきなよ。」
駆け出したの後姿を見て声を張り上げるウィンリィに冷たい声でアルフォンスは冷たく言い放った。
「……カ…」
「?」
後ろに居るであろうウィンリィから、小さく短い声が漏れてアルフォンスは振り返った。
振り返って目に留まったのは、スパナを手に持ち思い切り振り上げているウィンリィの姿。
「バカーーーーーーーーーーーっっ!!」
ごわんっ!!!
ウィンリィの大きな叫びと同時に、鈍い大きな音が響いた。
「いっ…いきなりなんだよ!」
ぐわんぐわんと、いきなりの打撃に衝撃を受けるアルフォンスは声を張り上げた。
グッとスパナを握り締め、荒い息をしながらウィンリィはアルフォンスを見つめ───
ボロボロといきなり涙を流し始めた。
「ウッ…ウィンリ………」
「アルのバカちん!!」
びくーーっとウィンリィの涙に驚いた瞬間、再度ウィンリィの叫び声とスパナが落ちてきた。
「エドの気持ちも知らないで!しかも、八つ当たりでにも酷い事言って!エドが怖くて言えなかった事ってのはね……」
その言葉にアルフォンスはピタリと動きが止まった。
「アルがエドを恨んでるんじゃないかって事よ!」


荒い息が病室内に響き渡る。
「…アルがあんな身体になったのは、オレの所為だ…あいつ食べる事も眠る事も痛みを感じる事も出来ないんだ…」
そう言うと、幼いエドワードは顔に濡れたタオルを置いたまま、ギュッとシーツを握り締めた。
それは身体と心の痛みの為だった。
「………あいつ、きっとオレを恨んでる……!」
「そんな事ない!」
エドワードの悲痛なる言葉に、ウィンリィは即答した。
だって、それはあり得ないことだったから。
「アルはおまえを恨むような子じゃないよ。聞いてみれば分かるだろ。」
苦しむエドワードを見て、ピナコは眉をハの字にして呟いた。
「怖いんだ…怖くて聞けないんだ…」
“恨んでる”なんて言われたら、きっとエドワードは立ち直れない。
だからこそ、聞くことが出来ずに居た。

──…だから1日でも早くオレが元の身体に戻してやらなきゃ……─────


「機械鎧手術の痛みと熱にうなされながら、あいつ毎晩泣いてたんだよ。」
涙で震える声で、ウィンリィがそう呟いた。
「それを…それなのにあんたはっ…!」
ガンガンとスパナでアルフォンスを殴りながら、ウィンリィは俯いたまま呟いた。
「自分の命を捨てる覚悟で偽者の弟を作るバカが、何処の世界に居るってのよ!!あんた達…たった2人の兄弟じゃないの。」
ゴシゴシと涙から流れる涙を拭うウィンリィを見つめ、アルフォンスは何も言えなかった。
それでも、ウィンリィの言葉は止まる様子はなかった。
「それにだって…知らない世界にやってきて…あんた達を信じてるのに…あんな風に言うなんて…」
「!」
その言葉に、さっきのの言葉をアルフォンスは思い出した。
──どうせ私はどこの世界でも疎まれる存在──
「…追っかけなさい!エドもも…ちゃんと追っかけなさい!」
ビシッとエドワードとが走り去った方を指差した。
その言葉にアルフォンスは“あ…”と小さく声を漏らした。
「……うん。」
そう言いゆっくり立ち上がると、すぐ近くに座っていたウィンリィが立ち上がりスパナを手にした。
「駆け足!」
「はいっ!!!」












「………兄…」
「そういえば。」
病院の屋上で見つけたのは、フェンスに寄りかかっているエドワードの後姿。
“兄さん”と声をかけようと声を発した瞬間、エドワードの声で遮られた。
「しばらく組手やってないから身体がなまってきたな。」
「へ?」
エドワードのいきなりの言葉にアルフォンスは素っ頓狂な声を漏らした。
肩を竦めながら、1歩前に踏み出すと。
「まだ傷が治ってないのに、何言ってんだよ………」
そう言い近づくと、エドワードの足蹴りがいきなりやって来た。
“わぁ!?”と驚きの声を上げて、急いで横へ避けると続いてエドワードのパンチがやってきそうな気配。
「ちょ……待った!待った兄さん!」
そう言うも、エドワードの攻撃の手は止まる様子がなかった。
懸命にエドワードの攻撃を受け流していると、エドワードの手が近くの真っ白な布の洗濯物に伸びた。
「傷口が開いちゃうよ!!」
そう声を張り上げた瞬間、真っ白な大きな布がアルフォンスに襲い掛かった。
いきなりの出来事に驚き、息を飲んだアルフォンスに続いてエドワードの蹴りが顔にきた。
バランスを崩したアルフォンスは、そのまま後ろに仰け反り大きな音を立てて倒れた。
「勝った!」
運動をした為、息が上がっているエドワードは倒れているアルフォンスを見つめてそう言った。
その言葉にアルフォンスは大の字で寝たまま耳を傾けていた。
「へっへ…初めてアルに勝ったぞ。」
そう言いながら、アルフォンスの頭上に座り倒れて頭を向け合う形で屋上の床の上に寝転がった。
顔から身体全身に掛かった布を左手で掴みどかし始めたアルフォンス。
「…ずるいよ兄さん。」
「うるせーや!勝ちは勝ちだ!」
ムゥっとしているアルフォンスに、エドワードは卑怯でも勝ちゃいいと言う風に呟いた。
少しの間が空間を埋め尽くし、エドワードの息が空中に響いた。
「…小さい頃から、いっぱいケンカしたよなオレ達。」
「うん。」
目を閉じ、懐かしむように呟くエドワードの言葉にアルフォンスは短く頷き返事をした。
親を取られたと思いアルフォンスを苛めることもあったエドワードだが、それでも大切な弟。
ケンカもしたし、仲良く勉強をしたりもしていた。
そんな思い出が2人の脳裏をサァァァっと勢いよく流れて行った。
「今思えばくっだらねぇ事でケンカしたよな。」
「2段ベッドの上か下か…とかね。」
「あの時オレ負けたな。」
青空を見上げて、ポツリポツリと思い出した内容を口にした。
「おやつの事でいつもケンカしてたっけ。」
「あ〜〜〜〜オレ勝った覚えがねぇや。あ!おもちゃの取り合いとか…」
「ボクが勝った。レイン川で遊んでた時も…」
「オレ、川に突き落とされたっけな。」
「師匠の所で修行中もケンカしたよね。」
「“やかましい”って師匠に半殺しにされたからドローだろ、あれは。」
クスクス笑いながらも、ケンカでも楽しかったその思い出が紡がれた。
どんなにケンカをしても、口を利かなくなるほど仲が悪くなる事はなかった。
「オレがアルの本に落書きした時もな。」
「ボクの圧勝だったね。“ウィンリィをお嫁さんにするのはどっちだ”ってケンカもした。」
「え!?そんなの覚えてねーぞ!!!」
アルフォンスの唐突な告白に、エドワードは慌てて声を上げた。
全く一欠けらも覚えていない内容の話だった。
「やっぱりボクが勝った。でも、2人共フラれたけどね。」
「…あっそう…」
クスクス笑いながら、フラれたという過去を口にするとエドワードは肩を竦めて呟いた。
言葉が続かなくて、間が空いて風が流れた。
それでも、エドワードは言いたい事は決まっていた。
「───…全部、嘘の記憶だって言うのかよ…」
「………ごめん。」
エドワードのポツリと呟かれた言葉にアルフォンスはポツリと小さく謝りの言葉を紡いだ。
「イーストシティでお前言ったよな。“どんな事をしても元の身体に戻りたい”って。」
そう言うと、エドワードは機械鎧の右手をギュッと握り締めた。
機械独特のギギギという音が漏れシンッとした空気が流れた。
「あの気持ちも作り物だって言うのか?」
エドワードのその問い掛けに、アルフォンスは間を開けた。
間を空けてはいたけれど───…空気からアルフォンスが言いたい事がキチンと決まってる事が分かっていた。
「…作り物じゃない。」
「そうだ。絶対に2人で元に戻るって決めたんだ。これしきの事で揺らぐようなぬるい心で居られるかよ。」
床に置いたままの機械鎧の右手をギギギと音を立てて顔の近くに拳を持ってくると決心したように呟いた。
「オレは!ケンカも…心も強くなる!もっともっと……今以上に強くなる!」
そう言ってから震える声で弱弱しく“牛乳もなるべく…の、飲む…ぞ…”と嘘だと思うくらいの口調でエドワードは呟いた。
「うん。もっと…もっともっと強くなろう。」
「ああ!」
エドワードとアルフォンスはゴンと音を立てて拳と拳を付け合せた。
「っててて。」
「ほらー…無理するから。」
「ははは…わりぃな。それより…は?」
「ごめん…兄さん。…探さなきゃ。」
痛そうな声を上げるエドワードを急いでアルフォンスは支えた。
それに大してお礼の意味を含めた謝罪の言葉を呟くと、いつも一緒に居るの姿がないことに気付き問いかけた。
すると、罰の悪そうな顔をして視線を外して声を静かに漏らした。
がどうかしたのか…?」
「…ボク……に酷い事言っちゃったんだ…」
エドワードの問い掛けに少し戸惑いながら答えると、エドワードは自分を支えていたアルフォンスの手を退かした。
「…に何を言ったんだ?」
「……。」
真剣な眼差し───…目が離せなくなるほど真剣な……
アルフォンスは、いつもよりも低い声で問いかけるエドワードからフッと視線を逸らした。
に…“には関係ない”って…強く酷い言い方…しちゃって…」
はなんて言って返してきた?」
「……“どうせ私はどこの世界でも疎まれる存在”って…」
アルフォンスのあの時を思い返す言葉にエドワードは淡々と問い返してきた。
その問いにも少し戸惑いながらアルフォンスは答えると───
「そのまま…出て行くのを見てたのか!?」
「ごめん……兄さん、ごめん…」
エドワードのアルフォンスを攻める声にアルフォンスは弱弱しく謝るしか出来なかった。
ウィンリィにも言われたんだ──…ウィンリィにも怒られたんだ──…
「早く追いかけるぞ!!!」
「…う、うん!」
そう言い歩き出すエドワードを見つめアルフォンスは1拍開けてから頷き歩き出した。
ふらつくエドワードの腕を掴み、支えるようにエドワードの隣に立つとの居場所を探し始めた。
















「…なんで私は、どこでも疎まれる存在でしかないのかな…」
エドワードが居た病院の屋上と対になる、違う病棟の屋上の給水タンクの上に佇んでいた
風に髪を靡かせながら、それを手で押さえて青い空を見上げた。
元の世界でも、ここの世界でもは疎まれ続けていた。
元の世界では大切な人を亡くし、その家族に疎まれ殺されかけて────再度手にかけてしまった。
「哀しい…虚しい…寂しい……どれもあるけど、どれも違う…なんて言えばいいんだろう…この気持ち。」
胸が凄く苦しくなった。
アルフォンスのあの言葉は、確かにその通りだったのだ。
兄弟の問題に口を挿んでイイような間柄じゃなくて。
そう考えると、は余計に胸が苦しくて涙が浮かんできた。
1番に脳裏に浮かび上がるのは、エドワードの姿だった。
「苦しい…苦しいよぉ………」
ガクッと膝を折りその場に座り込みながら両手で顔を覆い声を上げる
ここまで心が辛いのは、ここまで心が苦しいのはあの人へと思いを馳せるから。
「「!!」」
「!?」
聞こえた声は、とても必死なものではハッとして顔を上げた。
視線の先には肩で息をしながらを見つめるエドワードと、その横で申し訳なさそうに縮こまるアルフォンスの姿があった。
コツンと肘でエドワードがアルフォンスを促すと、アルフォンスはゆっくりとの方へと足を進め。
「っ……な、何…?」
胸がきしむ様に痛くなった。
エドワードを見てからパッとアルフォンスへと視線を向けた。
また、何か言われるんじゃないか…そんな事ばかりが脳裏を過ぎった。
……ごめん!」
「へ?」
いきなりの予想もしていなかった言葉には素っ頓狂な声を上げた。
しかし、そんなの反応など関係なしにアルフォンスは勢いよく頭を下へ下げた。
「酷い事…言っちゃって…」
「…アル…」
アルフォンスの謝罪の言葉にはポツリと声を漏らした。
「…ううん。だって…実際、関係ないもん私。兄弟の問題に首を突っ込んでイイ権利なんてないし…」
自分を嘲笑うかのように笑みを浮かべてはポツリと呟いた。
その言葉にエドワードもアルフォンスも首を左右に振った。
しかし、にはその首を左右に振る意味が理解出来ずに、ただ2人を見つめるしか出来なかった。
「…は関係なくなんかねぇよ。」
「…何…言ってるの?」
「だって、はオレ達の大切な仲間だ。それに、オレ達を心から心配してくれた。」
「だから…はボク達を心配する権利だってある。」
の問い掛けに、淡々と交互に言葉を並べた。
その言葉に、は瞳に涙を浮かべてきた。
「だから……ごめんね、。」
「……ううん。ううん…いいの…もう、いいの…」
謝るアルフォンスの言葉が優しくの心に染み込んで行った。
エドワードとアルフォンスに疎まれない存在なら、それで充分。
2人を見つめてはポツリポツリと言葉を紡いだ。
「ありがとう……ありがとう…エド、アル…」
そう言いながら、はポロリと涙を零し近くへ寄ってきたエドワードにすがり付いた。













───…もう、気持ちを隠さない。
大好きだって、キチンと気付いたから。
私の本当の気持ち、それはエド…貴方を愛しているという事。
たとえ、WILDHALFの宿命があったとしても私は今度こそそれに耐えてみせる…─────








To be continued.........................






という事で、8話目をお送りしました!
ようやく、ヒロインが完全に自分の思いを認めました。
ここで恋愛に発展させていければなーなんて思ってますが…上手く行くか心配なもんです…;
という事で、お読みいただきありがとうございます。






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