「……」
「エドワード……私はあんたを────」
許しはしないッ
ひゅうううう〜〜〜〜……
静かに風が流れた。
の長い髪をさらさらと靡かせる。
まるで宝石のように、風に靡きながらの髪は輝いているようだった。
「真実を────……真実を知ったときの衝撃、あんたに分かる?」
は冷たい口調でエドワードに声を掛けた。
の髪と同じように、エドワードの髪も風にさらさらと靡いた。
「あれは事故だったんじゃなかったの!?エドワードは、私に嘘を吐いてたの!?」
叫ぶ声は強く強く張り上げたと、は思っていた。
けれど、いざ喉を通り口から出ると何とも情けないほどに震えていた。
それを隠すように、はギュッと拳を握る。
「好きだった 愛してた……信じてた
あの人を失って……でも、エドワードが支えてくれたから立ち直れた!!なのにッ!!!」
「、オレは……」
「何も聞きたくない!言い訳なんてしないで!真実だけを話してよ!」
大切な人がには居た。
けれど、その人を失い生きる気力を失っていた時にエドワードはの支えになってくれていた。
支えは、本当に必要であればあるほどに心の中へ滑り込んでくる。
まるで、雛の刷り込みのように────……大切な人がすり替わっていった。
「ごめん ずっと……隠してたんだ」
その紡がれた言葉で、の瞳から堪えていた大粒の涙が毀れた。
けれど、はそれに気付かないほど心を乱していた。
「あの時、手を伸ばせば……きっと助けられた
まだ……リハビリ途中だった右手でも────……救えたかもしれない」
「エドワードが、あの人の手を放してしまったから!!だから、あの人は死んでしまった!」
「────……ああ」
エドワードの淡々とした呟きに、の胸はギュッと締め付けられた感覚に陥った。
何とも言えない、どうしようもない、虚しさ。
胸を掻き毟り、その元を取り去ってしまいたいほどに。
「なんで!?どうして助けてくれなかったの!?どうして見殺しにしたの!?」
「ごめん……」
「謝罪を聞きたいんじゃないの!!理由を聞きたいの!」
の言葉にただ謝る術しか持たないエドワード。
項垂れ、申し訳なさそうに言葉を口にするのが精いっぱいだった。
「オレだって……オレだって救いたかった!!救えるものなら救いたかった!」
「……エドワード?」
突如叫んだエドワードの言葉に、は眉を顰める事しか出来なかった。
救いたかったなら……どうして救わなかったの?
そんな疑問が沸々と胸を覆った。
「左手は……差し出したんだ だけど……左手だけじゃ……救えなかった
右手、うまく……動いてくれなかったんだ」
ポツリポツリと言葉を紡ぐエドワード。
それは、きっとずっと隠し続けてきた事実。
「オレだってな、悔しかったんだぜ!?禁忌さえ犯していなければ……もっと早く右手が動くようになってればって
だけど……実際、あの時のオレは────……無力だった」
ギリ……
エドワードが奥歯を噛みしめた。
その音が周りに響いて聞こえるのは、きっとそれだけエドワードの神経が張り詰めているから。
「憎ければ、殺せばいい 憎ければ、恨めばいい」
「────それが出来たら、苦労しないよぉッ!!!」
ぼろぼろ……
エドワードの言葉に、の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
殺せたら、恨めたらどれだけの心は楽になったことか。
たとえ、それが一番犯してはならない事だったとしても。
結局、は誰よりもエドワードを愛していたから。
「あの人を殺したエドワードは憎いよ 殺してもやりたい
だけど……だけどね、それ以上に…………エドワードが好きなのぉっ!!」
わっ、と両手で顔を覆った。
俯き、両手の平の上に顔を乗せるようにワンワンと泣く。
「ごめん……償いと言えば聞こえはいいけど……その分、ずっとのそばに居るから」
「────……絶対だよ?絶対、離れちゃ嫌だからね?」
エドワードの言葉に、顔を上げた。
ギュッとその身体に両手を回し、抱きついた。
離さない
鎖で、紐で、見えないもので……ぐるぐるに、あなたを私に縛り付けてあげる
絶対に許さないから……
だから、私のそばで、ずっとずっと償って
ずっとずっと……私を愛して────……
...........end
こういう事もありそうな気がした。
けど、エドが助けられないのってどんなんだろう?と考えた結果、まだ右腕はリハビリ中だったという事に。(笑)
歪んだ愛は、どんな末路を辿るんでしょうね。
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