私をあげる

私を捧げる…



だから…

だからお願い…お館様…



私を───────…見て…











Because you give me, are you no use with me?













「お館様」


「………」


決して、見てはくれない。
決して、アレから目を逸らしてはくれない。


「…そんなに龍神の神子がいいのですか?」


「……」


真剣な面持ちで、ずっとずっと見つめるアクラム。
金髪青眼の鬼の少女、は悲しげな表情で視線を馳せていた。



何故…そんなに龍神の神子に固執するの?
どうして…同じ鬼の一族である仲間の…私を見て下さらないの?



疑問は言葉にはできなかった。
返ってくる言葉が、怖かったから。
必要とされなくなることが、これ以上ないという程にには怖かったから。


「失礼…しました…」


「…どこへ、行く」


踵を返し、肩を落としたまま立ち去ろうとした。
そんなときにかかったアクラムの言葉に、反射的に振り返った。


「え?あの…?」


「どこへ行くのだと、聞いたのだ」


ビクついてしまうほど、圧力のある声。
肩をすくめてしまう程、手の届かない存在。


「…いえ 決まっているわけでは…」


「では、何故行く」


「…お館様の…お邪魔はしたくはありませんので」


どこに行くという決まりがなかった今、答える言葉は決まっていた。
だから、聞き返されたアクラムの言葉も予想の範疇だった。

途切れがちの言葉のまま、その意を口にした。


「…何故、邪魔だと?」


「─────え?」


その切り返しは全くの予想外。
口から漏れたのは、喉から飛び出たのは、間抜けな問い返しの声だった。


「だって…お館様は、龍神の神子を見るのに夢中で…」


「私はただ、神子の力が欲しいだけだ 神子に興味はない」


その言葉を聞けば、胸が躍るような気がした。
アクラムは力を求めていた。
それは誰もが分かっていた事だったけれど、あそこまで夢中になっていてはそう思ってしまう。

だからこそ、今のアクラムの言葉はには嬉しいものだった。


「して、は私に何用か?」


「あ、そうでした 私…どうしてもお館様にお伝えしたい事があったんです!」


アクラムの問い掛けで、なぜここに来たのかを思い出した。
すっかり、その話をする前に龍神の神子に気がいってしまっていたから。


「何だ」


「…お館様、お誕生日…おめでとうございます」


その言葉に、アクラムは驚きの視線を向けた。

誕生日。
それは、その人がこの世に生を受けた日。
鬼であろうと、人であろうと、それは変わりのないもの。

誕生日。
それは、かけがえのない大切な人の生まれた日。
心から、感謝するであろう日。


「…まさか、に祝ってもらえるとはな クククク」


「お館様?」


嬉しそうに笑う声。
キョトンと軽く首を傾げは青眼を青眼で見つめた。

青と青がぶつかり、混ざり合う。
艶やかに明るく、しっかりと混ざり合う。


 お前の誕生日…楽しみにしているといい
 とっておきの何かを…渡してやろう」


その言葉に、ドクンと胸が脈打った。
一体何をくれるのだろうか。
一体どんな言葉を、口にしてくれるのだろうか。

ドキドキと、高鳴る鼓動は止まらない。


「はい!お館様…私、楽しみにしていま─────」


「少し…黙れ」


「んんんんん!?」


楽しみにしている事を告げ、ここを立ち去ろうとした
しかしアクラムの唇で、その言葉は途切れてしまった。

熱く、深く、眩暈のするような接吻にの瞳はトロンとしていた。


「お前からの祝いものは、これでいい」


何も用意していなかった
アクラムの言葉に、紅潮していた頬は顔全体に広がった。
湯気でも出てくるんじゃないかと思う程の、茹蛸状態だった。


「お館様、少しお人が変わられたんじゃないですかっ!?」


「…お前の前だからだろう」


またも、アクラムの言葉は胸を高鳴らせる。
もう我慢の限界だ、といわんばかりには「失礼しましたぁ!」と叫び立ち去って行った。







ねぇ…お館様…

確かに貴方は…私を見て下さいましたよね…?

それだけで…私は十分幸せでございます…






.........................end




アクラム夢っす!
ラブラブ(?)になると、アクラムってどーなるかが分からない;
てか、アクラムじゃなくなってる気がして…;

とりあえず、十二月四日はアクラムの誕生日という事で…
アクラム誕生日フリー夢小説、ここに完成です!

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