、どうかしたの?」


机に突っ伏して、授業と授業の合間の休み時間を無駄に過ごしていた
そんなが心配で、朔は首を傾げて問いかけた。
短いスカートから覗く白い足が見え、は視線を上げた。


「んー……少し、頭が痛くって」


苦笑を浮かべ、くしゃっと崩した表情を浮かべた。


「おい、大丈夫か?


そんな会話が聞こえていたのか、ひょっこりと姿を現し将臣が首を傾げた。


「それならば保健室に行った方がよいのではないだろうか?」


「おいおい それじゃ、オレの姫君を弁慶の下に連れて行けと?」


違う学年である敦盛と、他クラスのヒノエもそんなことを呟きながら教室の中へと入ってきた。
敦盛の提案に、凄く嫌そうな表情を浮かべるヒノエには不謹慎ながらも笑んでしまった。


「ヒノエくんには悪いけど、敦盛さんの言うとおり保健室に行ってくるよ」


カタンと小さく椅子を鳴らし立ち上がった。
長い髪がサラリと揺れて、それから少しだけ指先で髪を耳にかけた。


「何かされそうになったら、すぐオレに助けを求めるんだよ?いいね、姫君?」


「ふふっ ヒノエくん、心配してるようなことにはならないよ、大丈夫」


気持ちを楽にさせようとしているのがよく伝わってくる。
はヒノエのそんな心遣いに嬉しさを覚え、ニッコリと微笑んだ。


……保健室までついて行こう」


付き添いを買って出たのは敦盛だった。
けれど、敦盛が付き添いなら誰も文句がないのか潔く『いってらっしゃい』と送り出してくれた。


「ありがとうございます、敦盛さん」










Half of the heat










「失礼します」


「はい、どうぞ」


ドアをノックすると聞こえてきた声。
それに呼応するように扉を開いた。


「おや、敦盛くんが保健室に来るなんて珍しいですね」


「いや……私ではなくて……」


「私、なんです 敦盛さんは付き添ってくれてただけで……」


最初にドアをくぐった敦盛に弁慶は驚きの表情を見せた。
けれど首を左右に振り、答えた言葉に続きがドアをくぐった。


さんがですか どうしました?」


「では……私はこれで失礼する」


「あ、はい ありがとうございました、敦盛さん」


弁慶の問い掛けを聞き、もうするべきことはないだろうと判断した敦盛は一礼すると踵を返した。
お礼をつむぐに視線だけを振り返らせて笑みを浮かべると、ゆっくりと保健室のドアを閉めた。


「それで……顔色が悪いようですが、どうかしましたか?」


「ちょっと頭が痛くて……ずっと休み時間は教室で休んでたんですけど、全然よくならなくて」


弁慶に促されるままに、近くの椅子に腰掛ける
そんなに弁慶は近づいていった。


「少し、体温測ってもらえますか?それから、これに記入を」


体温計とボードにはさまれた紙を弁慶から受け取り、は頷いた。
脇に体温計を挟み、体温の測定が終わるまでの間その紙に氏名やクラス、保健室に来た状況を書いていった。

ピピッ

しばらくすると、測定が終わったことを示す音が響いた。


「ええと……ああ、少し熱がありますね」


体温計をから受け取り、弁慶はその数値を見つめ肩をすくめた。


「少しここで休んでいったほうがいいかもしれませんね それでも具合がよくならないのなら、早退することをお勧めしますよ」


体温計と書き終えた紙をしまいながら、弁慶は保健室の奥にあるベッドに視線を向けた。


「それじゃ……少しだけ、休ませてください」


熱があると分かると、先ほどよりも余計にボーっとしてしまう。
頭がぼやけ、身体が熱い。
ベッドの中に身体を滑り込ませ、布団にもぐりながらベッド周りにカーテンを引く弁慶に視線を向けた。


「?どうかしましたか?さん」


「……弁慶さん、ずっと保健室に居ますよね?」


布団から上目遣いで見つめる
そんなに弁慶は苦笑を浮かべ、それから満面の笑みを浮かべた。


「もちろんですよ 生徒を放っておけるはずないですからね」


シャッ……

閉じられたカーテン。
その先に、部屋の明かりに当たり弁慶のシルエットが見える。
ギュッと締め付けられるの胸。


「弁慶さんっ」


とたん、ベッドから飛び起きカーテンから飛び出していたは勢いよく弁慶に抱きついた。
消えてしまいそうなくらいにはかなく見えた弁慶のシルエット。


「のっ、さん?」


「い、今っ……どこか行こうとしませんでしたかっ!?」


それはただの錯覚なのに、それは自身も分かっていることなのに。
どうしても、どこかに行ってしまいそうだと思ってしまった。
思ってしまうと違うと分かっていても止められない。


さんは心配性ですね そして……君はいけない人だ」


振り返り、心配そうな表情を浮かべるを見下ろす。
そして柔らかく笑みを浮かべると、をベッドの方へと向きなおさせる。


「少し、待っててください」


そういうと、弁慶は机の方へと歩んでいった。
「弁慶さん?」と小さく声を掛けるも、何も反応せず引き出しから何か札を出した。
そして、それをもって保健室のドアへと向かう。



どうしようっ
弁慶さんが行っちゃうっ



違うのに、そう錯覚してしまう。
けれど、すぐに弁慶は札をドアに掛けるとパタンと閉めた。
そして内側からドアに鍵を掛けた。


「弁慶……さん?」


よく分からない行動に、は首を傾げるばかり。


「少しの間、僕はこの保健室から出掛けていることになっています」


「え?」


「ですから、今は君だけのものですよ」


苦笑を浮かべ、カーテンの中へと入ってくる弁慶。
はベッドに腰掛けたまま弁慶を見つめ──

シャッ……

また静かにカーテンが閉じられた。
保健室の向こう側からは誰かが寝ているのだろうとしか見えない。
カーテンの内側に誰が居るのかなんて見えるはずもない。


「本当に君はいけない人ですね 僕をこんなにも翻弄する……
 愛していますよ、さん」


ギシ……

ベッドに手をつけば、軋む音。
は弁慶の色香に圧倒され、ベッドの上に完全に乗ってしまう。
そして、そのままジリジリと近づく弁慶から離れようとすればするほど壁際へと追いやられてしまう。



心臓が……破裂しそう……



ドキドキと鳴り止まない心臓の音。
弁慶に聞こえるはずもないのに、聞こえてしまいそうなくらいにうるさくて。
はギュッと胸元を掴んだ。


「私も、大好きです……弁慶さん」


ここは学校。
今は先生と生徒。
だからこそ、立場をわきまえないといけないことを二人は知っていた。
けれど、学校を出れば二人は男と女。
この二人が愛し合い、付き合っている事を誰も知らない。



今だけは……この過ちを見逃して……



そう思った瞬間、弁慶の唇がの唇と重なりあった。


「時間を忘れさせてあげます」


「え?」


さん、熱を下げるには汗をかくのが一番だという事……知りませんか?」


弁慶の言葉にドクンと胸が脈打つ。
ソッと頬に添えられた弁慶の手がやけに熱く感じる。

トサ……

そのまま、弁慶に押し倒される形ではベッドに沈んだ。








.....................end




二十五万ヒット感謝のリクエストの一つ、遙かパラレル的な感じで先生と生徒。
他の八葉さんもとりあえず出演できる範囲で出演させてみましたw
しかし、弁慶さんがエロい……(笑)
リクエストしてくださった方、ありがとうございました!!

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