なんなの……この、凄い情けない状況は………










In fact, I wanted to surprise you










カシャカシャカシャカシャ…

エプロン姿のの隣で、ボウルに入れたチョコレートをかき混ぜる音。
は、目を幾度も瞬かせながら隣で楽しそうな表情を浮かべる詩紋を見つめていた。


「どうしたの?ちゃん」


「え?あ……」


掛けられた声。
けれど、かき混ぜる手は止まってはいなかった。

少しだけ戸惑う



い、言えない…
詩紋くんの誕生日にチョコレートケーキを作ろうとしていたなんて……



何度も失敗していたを見かねて、手伝ってくれた詩紋。
けれど、これが詩紋宛てのものだなんて、は今更言えるはずもなかった。


「もしかして…ボク、手伝っちゃいけなかった?」


ハッとしたように、詩紋は手を止めた。
子犬のような瞳でを見上げ、眉をハの字に下げた。


「そっ、そんな事ないっ」


そう言った自分の発言に、は「あっ」と後悔した。
ここは一つ、腹をくくって言うしかないと一つ息を呑みこんだ。


「あのね…詩紋くん」


「うん?」


「このチョコレートケーキ……今日、詩紋くんの誕生日だからプレゼント……しようと思ってたんだ」



本当は、美味しいケーキを作って詩紋くんを驚かせたかったんだけど…



詩紋に真実を打ち明けた
勿論、驚かせたかったという事は口にはできなかった。
すでに、無理な願いだったから。


「え……そ、そうだったの!?
 ご、ごめん ボク…やっぱり手伝うべきじゃなかった………よ、ね」


慌てたように言葉を捲くし立てる詩紋。
その言葉に、は苦笑を浮かべ首を左右に振った。


「詩紋くん、一緒に作ってて…どうだった?」


「─────え?あ、楽しかった……けど……」


の問いかけに、もごもごと言い辛そうに、けれどきちんとそう言葉にした。
楽しかった、と聞きは笑みを浮かべた。
その笑みに、詩紋はまた首を傾げ眉を顰めた。


「楽しかったなら、それでいいよ
 サプライズは違っちゃったけど……私も一緒に作れて楽しかったし」


ちゃん……」


「だから、詩紋くん そんな申し訳なさそうな顔をしないで?」


心配そうには詩紋の顔を覗き込んだ。
一人で作るとハッキリ言わなかったも悪かったのだから、詩紋がそこまで気にする必要もなかったのだ。


「でも……」


「もしかして、詩紋くんは……やっぱりいきなり誕生日ケーキをプレゼントされた方が嬉しかった?」


「そんな事はないよ!!ボク、本当に楽しかったし、嬉しかったからっ!!!」


詩紋の言葉には嬉しそうに微笑んだ。

そこで、ふと詩紋の頬についたクリームに気付いた。
親指でそれを拭い、ペロリと舐めると。


「それなら…良かったんだ」


にっこりと微笑み、そう言葉を紡ぐに詩紋は顔を真っ赤に染め上げた。
可愛らしく、女の子みたいに、顔に炎を灯した。


「ハッピーバースデイ、詩紋くん」











...........................end




二月二十五日は流山詩紋の誕生日という事で、誕生日フリー夢小説です。
一緒にチョコレートケーキでも作らせてみようかな……と。

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