あなたの後姿を見ていると、考えてしまう
差の開いた、私とあなたの……変わってしまった歳月を
Present you and old you
「あ…将臣くんだ」
ふと、見かけた後姿には足を止めた。
丁度デパートで、バレンタインのチョコレートを買ってきた直後の事だった。
なんだか……思い出すなぁ
海を見つめる将臣の後姿を見ていると、どうしても思い出す事があった。
そう、それはかつて八葉全員で現代へやってきたときの事。
今はもう、元の姿に戻っているけれど忘れられない後姿だった。
「将臣く──んっ」
「おおっ、か どうした?」
後ろからリズミカルな口調で掛けられた声で漸く気付いた将臣は、くるりと振り返り問い掛けた。
長い髪を揺らしながら、風に揺れる髪を手で押さえる。
少しだけ寂しそうな笑みを浮かべていた。
「うん ちょっと……思い出しちゃってね
九郎さんや弁慶さん達が一緒にこの世界にいた時に……一度、こんな感じに将臣くんを見つけた事があったから」
「ああ あの時か……
そうだな 確かあの時もこんな感じだったよなぁ」
の言葉に、納得するように将臣は何度も首を縦に振った。
まだそんなに時間が経ったわけではないのに、なんだかとても昔に感じてしまう。
あの姿の将臣は、もう見る事が出来ない。
二人が同じ歳月分、歳を取らない限りは。
「学校の友達に会った時はヒヤヒヤしたよね」
「ああっ あの時はが上手くやってくれたから助かったぜ」
思い出しながら、思い出話に火が灯る。
楽しそうな声が上がっても、今までずっと聞こえてきた仲間達の声は聞こえない。
あんなに長く一緒にいた、大切な仲間たちには生涯二度と会う事はない。
「……なんだか、懐かしいよね 本当に」
「…ああ、そうだな クリスマスに正月も…みんなで過ごしたもんな」
ちょっぴりシンミリとしてしまう。
そんな空気が嫌で、は明るく楽しげな声を上げた。
「そうだ、将臣くん!実はね──────」
「無理はすんな、」
無理に空気を変えようとしたの気持ちを察した将臣。
優しく包み込むように、をその大きな腕で包み込んだ。
源平合戦の最後に、抱き締めてくれた将臣の腕とは違う、年相応の腕。
「無理なんて……してない、よ」
「うそつけ 声が震えてるぜ」
「将臣くんの馬鹿 そう言うのは気付かないフリしてよ…」
振るえる声を堪えると、ジンワリと目頭が熱くなってくる。
抱き締めてくれる将臣の腕をギュッと掴み、顔を埋めた。
「寂しい あんなに賑やかだったのに……一気に居なくなっちゃって、寂しいよ」
「…… 俺が居るから、だから────」
「分かってる 将臣くんは私の大切な人だもん…傍に居てくれるのは分かってる
だけど……だけど、どうしようもなく寂しくなるんだもんっ」
そうが吐き出す様に言うと、将臣の腕に力が籠った。
もっと強く、を抱き締めた。
「将臣くん…絶対、居なくなっちゃ嫌だよ?傍に…居てよ?」
「ああ」
「絶対だよ?」
「ああ」
こんなにもは弱かっただろうか、と思ってしまう。
それでも、これがだったと思ってしまう。
強さもあれば、それに応じた弱さも存在するから。
それを将臣はきちんと知っていたから。
「─────…もう、大丈夫」
そう言われ、将臣は静かに腕の力を緩めた。
すると、が将臣の頬に唇を押しつけた。
柔らかな感触が、将臣の頬に残る。
「大好き、将臣くん」
「…俺も、好きだぜ」
愛の告白に、二人の頬は紅潮した。
そして、は鞄の中から青い包装紙に包まれた箱を取り出した。
「さっき、渡そうと思ってたやつ バレンタインのチョコレート」
「………買ってきたのか?」
「もちろん」
手渡された箱を受け取り、将臣は軽く首を傾げた。
それが市販のものだと分かると、より将臣はホッとしていた。
「サンキュー」
「いいの 譲くんには内緒だよ?」
喜ぶ将臣に微笑む。
そして、思い出したかのように将臣の弟である譲には絶対に言わない様にと念を押した。
「ああ、分かってるって」
「なら良かった」
念を押すに将臣は苦笑を浮かべた。
コクコクと頷きながら、承諾し、それにはホッとした。
「────…将臣くん」
「ん?」
「ハッピーバレンタインデー!」
........................end
バレンタインのフリー夢です。
ついこの間まで、年上だった将臣の姿と同い年になった将臣の姿が重なりあったら…いろいろ思い出すといいなぁ〜という願望w
やっぱり賑やかなメンバーが去ると、きっと寂しくなりそうですよね。
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