いつも私をリードしてくれるあなた

だけど、今日くらいは私があなたを驚かせたい










Today only










「待たせたか」


「いいえ 私も今来たところですから大丈夫ですよ」


いつものようにデートの時の決まり文句。
逆の時もあるけれど、返答は変わらない。


「では、行きましょうか!」


「ああ」


微笑み歩き出すの手を、泰明がパシッと掴んだ。
それは手をつなぐ合図。


「今日はどこへ行く」


「そうですね…近くのデパートでショッピングなんてどうですか?」


だいぶ現代の世界にも慣れた泰明は、現代独特の言葉にも慣れつつあった。
の言葉に、泰明は間髪入れずに頷いた。


「分かった」


そう言うと、デパートの方へともくもくと進んでいった。


「そうだ、泰明さん」


「何だ」


「実は、デパートに着いたら寄りたい場所があるんですけど……いいですか?」


「問題ない」


の問いかけに、京に居た時からの泰明の決まり文句が口をついて出てきた。
その言葉には満足気に微笑むと。


「じゃぁ、楽しみにしててくださいね!」


そう楽しげに言った。
しかし、その意味が泰明には分らずに居た。

まだ、一年たっていない泰明。
バレンタインデーというイベントは、今日が初体験だった。

勿論、話だけは聞いてはいたのだが。











「わぁ〜やっぱり今日は人ごみが凄いですね」


「確かバレンタインデーというのは今日だったな だからかもしれないな」


「ですねぇ」


そう言いながら、はグイグイと泰明を引っ張る。
目的の場所に向かうために。

そして、泰明はいつも以上に強引なに少しばかり驚いていた。


「どこへ行くのだ?」


「私が買いたいものがある場所ですっ」


「それは分かっている 何を買いたいのだ?」


泰明の問いかけに、は答えなかった。
否。
答えられなかった。
答えてしまえば、企みがバレてしまう。


「ひっ、秘密です!」


そういい、は慌ててまた泰明を引っ張りだす。


「そこまで急がなければならない場所なのか?」


「え?あ、はい まぁ…出来れば早い方が─────」


泰明の問いかけに頷いた
その直後のの言葉に耳を向けず、泰明はを抱きかかえた。


「へっ!?やっややややや、泰明さん!?」


「急ぐぞ 道案内はお前に任せる」


「ちょっ」


文句をも言わせず、泰明は駆け出した。
周りの人の注目の的になっているのも気にせずに、泰明はひたすら走り続ける。










「……は、恥ずかしかったぁ…」


「買いものは終わったのか」


「はい 無事に確保できました」


買いたい店に入り、泰明には廊下の長椅子に座って待ってもらっていた。
店の中に入り物色していると視線を感じたは、やはり抱きかかえられていた事が注目の的になっていると確信した。

そんな恥ずかしい思いをしながら買い物を終え、戻ってきたを泰明は出迎えた。


「それで……これ、プレゼントです 泰明さんに」


「………私に?」


「はい」


黄緑色の包装紙に包まれた箱を、泰明に手渡した。
問い返す泰明の言葉に、は頷き受け取ってもらえるのを待っていた。


「驚いた まさか…これを渡すために急いでいたのか」


「そうですよ どうしても今日、泰明さんに渡したかったから
 ハッピーバレンタインデーですよ、泰明さん」


その言葉に、泰明は目を丸くした。
自分にはバレンタインなど関係ないと思っていたからこそ、余計に驚いたのだろう。

そして、同時にがぐいぐい引っ張っていたのは、強引だったのはこの為だったのだろうと確信した。


「……ありがとう、


箱を受け取り、泰明は嬉しそうに微笑んだ。
瞳を細め、愛しそうにを見つめた。









...........................end




バレンタインフリー夢です。
泰明はきっとデートの時は何も考えてなくてもリードしてくれる気がします。
しかも、神子にとっていい方位の方に!(笑)
だから、逆になると驚いてくれると嬉しいな!なんて…ねw

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