九郎さんの、あのプレゼントには絶対に敵わない
それでも、私は九郎さんに喜んでもらいたかったの……









Wooden animal and chocolate









「〜♪」


今日は恋人の九郎とデートの約束を交わしていた
本日はバレンタインデーとあって、心躍る

携帯につけた以前九郎から貰った、木彫りの犬を見つめベンチに座り九郎を待っていた。


「何を楽しそうにしている?」


「あ、九郎さん!」


掛かってきた声に、パッと視線を上げれば不思議そうな視線で見降ろしてくる九郎の姿があった。
その姿を確認すると、の顔が見る見るうちに嬉しそうな笑顔になっていった。


「うん、前に九郎さんに貰った木彫りの犬を見ていたんです
 なんだか可愛いし……九郎さんからの贈り物ですから、嬉しくて」


はにかむように微笑みながら、携帯からぶら下がっている犬を見つめ、また瞳を細めた。
その表情に、九郎も嬉しそうに微笑んでいた。

微かに、その頬を染めながら。


「それで、今日はどこへ行くつもりだ?」


「たまには、公園デートもいいかなぁ〜と思ったんですけど…」


そこまで言うと、携帯を鞄の中へ戻し九郎を上目使いで見つめた。
軽く首を傾げれば、長い髪がサラリと流れる。


「駄目ですか?」


「だっ、駄目ではない!俺はそれで構わないっ!」


の問いかけに、顔を真っ赤に染め上げながら言い切る。
その答えに、満足そうに微笑むが居た。



早く……プレゼントを渡したいな…



驚き喜ぶ九郎を想像すると、は楽しみだった。
早く、早く、と九郎の腕に自らの腕を絡ませた。









「あ!九郎さん、あそこにクレープ屋さんがあります!」


嬉しそうに声を上げる
そして、その様子にふわりと笑みを浮かべる九郎の姿がそこにはあった。

だいぶ慣れたこの世界で、九郎はもうほとんどの物を『これはなんだ!?』と聞く事はなくなった。


「食べるか?」


「いいんですかっ!?」


「当たり前だろう 今日はデートだからな」


嬉しそうに九郎の申し出に声を上げるが、九郎は可愛くてしょうがなかった。
微笑は、愛しい者を見つめる笑みへと変わっていた。


「ありがとうございます、九郎さん!」


「では、そこで待っていろ 今買ってくる」


コクリと頷くと、はクレープ屋へと歩みを向ける九郎の後姿を見つめていた。



今日はバレンタインなのに…クレープ屋さんに気を取られて……
失敗だったかなぁ…



苦笑を浮かべ、今の行動を振りかえっていた。
それでも食欲には勝てないは、戻ってくる九郎の姿を見つけると明るい表情が浮かんだ。


「待たせたな」


「全然待ってないですよ うわぁ〜美味しそう」


ベンチに座り待っていたの隣に、九郎は静かに腰をおろした。
そして買ってきたクレープを片方、へと差し出すとそれを受け取った。

美味しそうな匂いが、鼻腔掠めた。


「本当には食べるのが好きだな」


「うっ だ、だって美味しいものは好きですし……」


そのの反応に九郎はクスクスと微笑んだ。

クシャリ

の頭を軽く撫でる九郎に、は不思議そうな眼差しを向ける。


「責めているわけではない 俺は、美味しそうに物を食べるは好きだが?」


照れる様子もなく、唐突に言われた言葉。
顔を真っ赤に染め上げるのは、だった。


「なっ」


「ははは 、顔が赤いぞ?」


「そういう九郎さんは、全然顔が赤くないですー…」


笑いながらの紅潮した顔の事を指摘する九郎。
ヘナヘナと肩の力を抜きながら、はいつもなら顔を真っ赤にする九郎が今は赤くない事を指摘した。



なんだか悔しい…



そんな感情に火を灯してしまったことを、九郎は全く知らなかった。


「頂きます」


パクッ

は一声掛けると、クレープにかじり付いた。
バナナとチョコレートの味が、口内に広がっていく。


「ん〜〜〜美味しい」


「そうか、なら良かった 俺も頂くとしよう」


そう言うと、九郎も手に持っていたクレープにかじり付いた。
その様子をはジッと見つめていた。


「九郎さんのは何味なんですか?」


「ああ、俺のはバナナとカスタードだな それがどうかしたか?」


ゴクンと口に含んでいたものを飲み込むと、九郎はの問いに答えた。
すると、はフフッと笑みを浮かべ。


「九郎さん、あーん 少し食べたいです」


と、口を軽く開いた。
「そうか?」と九郎は首を傾げると、そのクレープをの口へと近づけた。


「んぐ ん〜美味しいですっ」


もぐもぐと味わいながら、そう口にした
そして、それを飲み込むと悪戯っぽい笑みを浮かべ九郎を見据えた。


「何だ?」


「間接キスですね?九郎さん」


その言葉に、九郎はの予想通り顔を真っ赤に染め上げた。


「やっぱり、九郎さんはそうじゃなくちゃ駄目ですよ!」


なんて、楽しそうな声が上がり続けた。
肩を揺らし、ケタケタと笑うが愛しくて、けれど何だか自分が情けなくて。


「んむっ!?」


つい、九郎はの唇に自分の唇を押しつけた。


「んっ、は……む……んんっ」


「…愛しい人と間接的でもキスをするのだ 恥ずかしいと思うのが男だろうがっ」


真っ赤な顔をしたまま、唇を離した九郎は言い切った。
は、九郎から行われた濃厚なキスに未だトロンと蕩けたまま。


「むぅ……九郎さんってば、時々大胆な行動をしますよね」


あー恥ずかしい、と顔を染め上げる
けれど、嬉しいのだから満面の笑みを浮かべていた。


「九郎さん、ハッピーバレンタインデーです 本当は今、私からキスしたかったんですけどね…先越されちゃいましたから」


苦笑を浮かべ、は九郎に明るい茶色の包装紙で包まれた箱を手渡した。
バレンタインの美味しい美味しいチョコレート。


「味わって食べて下さいね?」


勿論、それは市販のもの。
九郎はそれを嬉しそうに受け取っていたのだった。












..............end




バレンタインフリー夢です。
九郎は照れなきゃ九郎じゃないと思います!(必死)
でも、たまーに自ら発言する言葉には照れないでほしい!(うわ)

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