あなたはいつもたくさんのチョコを貰ってきますね…

今年こそは……私だけのを…………貰って欲しい…










You among roses










「友雅さん!ハッピーバレンタインデー!」


「ああ、ありがとう ありがたく頂くよ」


それが現代に友雅が来てからの、他の女性とのやりとり。
心が通じ合い、恋人同士になれたはずの以外からも、チョコを受け取る毎年の友雅の姿だった。











「……今年も、来ちゃったなぁ…バレンタイン」


「何だよ 友雅の奴にチョコやるんだろ?
 んなしけた面してんなよ」


「そうだよ、ちゃん」


学校への通学途中、いつも一緒に通う天真と中学に行くまでの途中の間一緒に通う詩紋の二人に突っ込まれていた。
確かに、は毎年友雅にチョコを上げていた。
勿論、今年もはそのつもりだったのだが。


「何かあったの?」


詩紋の指摘には驚きの表情を浮かべた。
何かあった、というわけではないけれど、憂鬱になる理由はあった。


「…なんでわかっちゃうかなぁ」


ポリポリ…

頬を掻きながら、は苦笑を浮かべた。
分かってしまうのは、分かりやすい表情をしていたから。


「あのね…友雅さん、いつも私以外の女の人からもチョコを貰ってるの
 確かにかっこいいしモテるから分かるんだけど……」


がいるから他の人のチョコは貰って欲しくないと?」


「うん 天真くんの言うとおり」


呟くの言葉から、言いたい事を抜きだす天真。
その指摘にはコクリと頷いた。


「うーん でも、友雅さんの場合難しいと思うよ」


「詩紋くんもそう思う?実は、私もそう思ってたんだ
 あんなに京でも女の人にモテてた友雅さんが、いきなり女性断ちなんてできるはずないもんね…」


その発言に、天真も詩紋も『うわあ〜』と思った。
あまり信用されていない事が明るみになる発言だった。

確かに、友雅はを大切にしているし、一番に考えてくれているのは自身も分かっていた。
それでも、やっぱり嫉妬せずには居られない。

自分だけを見ていて欲しい。

そう思うのは、女なら当然なのだ。


「おや 私はそれほどまでに信用されていないのかな?」


「と、友雅さん!?」

突如後ろから聞こえた声に、は慌てて振り返った。
不敵な笑みを浮かべて後ろに佇む友雅の姿に、目を丸くした。


「いや…あの……そ、の…」


「ま、そういう事だろうな
 あっちの女にも、こっちの女にも〜って八方美人してたら疑いたくなるって」


言葉を濁すの代わりにズバリ言い切る天真。


「ふむ では、今年は殿のチョコだけを受け取るようにすれば信じてくれるかね?」


「そのあとも、ちゃんと誠意を見せないと駄目ですよ?友雅さん」


友雅の言葉に、詩紋が付け加える。
そのあと、またあっちの女にもこっちの女にもってやっていたら意味がないのだから。


「それくらい、私も大人だ 分かっているよ」


「それならいいんですけど…ちゃん?それでいい?」


「……う、うん」


なんだかいつの間に丸く収まっている状況に、は何とも言えない感覚を覚えた。
それでも、友人思いの二人が傍にいてくれてよかったとも思えた。


「ありがとう、天真くん 詩紋くん」


「別に 大したことはしてねぇだろ」


「ボクも、ちゃんの幸せな顔が見たいからやっただけの事だよ」


「おや 私の殿はモテるようだね」


その様子に友雅は苦笑を浮かべた。
その言葉には違う違うとパタパタと手を振るが、その行動が天真の心を傷つけている事は知らなかった。











「それじゃ、また明日!」


「おお、じゃーな 


下駄箱でそう挨拶を交わすと、は一足先に学校を飛び出した。
正門を抜け、外へ出ると────


「漸く終わったようだね」


「友雅さん!?」


正門の所で待っていた友雅の姿に、ピタリと足が止まった。


「どうしてここにいるんですか!?」


本当なら、このままデパートに向かいチョコを買いたかった
渡したい相手がいたのでは、買いに行けない。


「いやね、バレンタインのチョコを買いに行くなら放課後かと思ってね
 よかったら、私も一緒に同行させてはもらえないかな?」


信じられない一言に、は口をパクパクと開閉させた。
そして、何も発しないに、友雅は微笑むと自分勝手な解釈を始めた。


「返事がないのなら、承諾と受け取るが……いいようだね?」


そう言うと、「では行こうか」と呟きの手を取り歩き出した。











「どうして、バレンタインのチョコを買いに…友雅さんも一緒に来たがったんですか?」


デパートで、バレンタインのチョコを買い終わった
デパートの外に出たところで、は友雅にそう問いかけた。

貰うのを楽しみに待つのではないかと、疑問に思ったから。


「一緒に選びたかったのだよ、殿
 何より、滅多に一緒に買い物になどいけないからね」


その言葉に、はキュンとした。
の事を考えての行動に、ちょっぴり嬉しさを感じた。

チョコを買うときはどうしようかとも思ったけれど、今はそれはどうでもいい事に変わった。


「…友雅さん、また一緒に買い物とかお出かけとかしましょうね」


「勿論だよ 私はいつも殿の事を思っているからね」


その言葉に、の顔は真っ赤に染まる。


「紅に染まる君も……素敵だよ」


セミロングの髪の先を掴み、そこへ友雅は唇を落とした。
その行動に、はより顔を真っ赤に染め上げる。


「はっ、ハッピーバレンタインデー!
 友雅さん、これ…チョコです!食べて下さい!では、失礼しました!」


押し付けるように私、真っ赤な顔を俯かせ駆け出した
あまりの恥ずかしさにその場に佇んでいられなくなったのだろう。

火照る顔を両手で押さえながら立ち去る姿を、友雅は見つめていた。


「おやおや まだ殿は初々しいものだね」


そう微笑を浮かべて。









......................end




バレンタインのフリー夢です。
やっぱり友雅はモテモテじゃないとなーと思いました。
でも、最後は神子一筋になってくれなきゃ嫌っ!(嫌ってアータ)

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