いくら冗談でも……もう二度として欲しくないな……








エイプリルフールと素直な気持ち








待ちに待ったヒノエの誕生日がやってきた。
は事前に譲から教わり、立派にケーキも焼けるようになっていた。


「あ……ヒノエくんは昔の人だし……ケーキより和菓子の方がよかったかな」


はそう首を傾げた。
うーん、と悩んでしまうがすでに作ってしまってあるケーキ。


「仕方ないよね うん、ケーキを渡そう」


そう決心すると、円形のケーキを綺麗に箱に詰めた。
綺麗にラッピングし、リボンで結ぶと出来上がり。

キッチンには、ご満悦なの笑顔があった。







ピンポーン

ヒノエが現代で過ごす様になって、どれくらいが経っただろうか。
現代での最終決戦の後、皆と一緒には帰らずヒノエは一人残った。
そして、ヒノエは仕事をしながら一人暮らしをしていたのだ。

ガチャ……


「おや?姫君、いらっしゃい」


「もー、ヒノエくんってば……でいいのに」


少しだけ照れ隠しに頬を膨らませた。
それでも招いてくれるヒノエの好意に甘え、は部屋へ上がる事に。


「おっじゃましま〜す」


靴を揃え、ヒノエの後ろについていく。
通されたのは、ヒノエの自室だった。


「それで、今日はどうしたんだい?」


「あ、あのね 実は、今日ヒノエくんに渡したいものが────……」


そう言いつつ、は後ろに隠していた箱をヒノエへ差し出した。



さっきから必死に隠していたのは、それだったのかい



ヒノエは内心そう思い、微笑んだ。
必死に隠していても、ヒノエには筒抜けだったのだ。


「ありがとう、姫君 いや、 凄くうれしいよ」


耳元で、ボソリと囁く言葉。
はゾクリと何かを感じ、背筋を伸ばした。


「ははは 俺の声で感じてくれたんだ?」


「ヒノエくんっ!!!」


真っ赤なをからかうヒノエに、の声が響く。
けれど、ヒノエは悪びれる様子もなくクスクスと笑うだけだった。


「もー…そういう意地悪してると、これあげないからね?」


「ふーん はそういう意地悪をするんだ?」


渡そうとしていた箱をスッと後ろに隠す。
ジリジリとヒノエがに迫ってきた。


「……え?ちょ、ヒノエ……くん?」


少しだけ、身の危険を感じた
引き攣った笑みを浮かべ、はゆっくりと後退していった。


「……んっ」


重なる唇、何度も何度もヒノエに吸われた。
そして、何度も何度も互いの舌が絡み合う。


「……ヒッ、ヒノエくんっ」


「ごめんごめん でも、あんまりにもが可愛くてね」


そう言われてしまえば、が何も言えなくなってしまうのをヒノエは知っていた。
ニヤリとしたり顔を浮かべ、に「ん?」と首を傾げる。

それは催促の合図。


「しょうがないなぁ……」


溜め息を一つ吐き、は隠した箱をヒノエに差し出した。
ヒノエはそれをゆっくりと開く。


「これは……」


「……チョコレートケーキ ヒノエくんの口に合うか分からないけど…私の手作り」


箱の中身を見つめ、ヒノエは目を丸くした。
そして続けられたの言葉にも、さらに目を丸くさせたのだった。


の……手作り、か へぇ、これは大層なものを貰っちゃったねぇ」


呟くヒノエの口調は、かなり上機嫌のものだった。
見ると、ヒノエは凄く満面の笑みを浮かべていて。


、ありがとう 凄くうれしいよ」


そう呟き、ヒノエは男らしい掌での頭を撫でた。


「……わっ」


いきなりの出来事に、つい首を縮めてしまう。
頬が赤く紅潮する。


「なんて……言うと思ったかい?」


「え?」


いきなり変わったヒノエの口調に、の顔が強張った。


「全く 少し気があるように見せればこうだもんな……」


「ヒノエくん?」


「八葉としてのすべき事はしたんだ もう神子であるとは無関係だろう?」


冷たい瞳がを射抜く。
今までの出来事はすべて夢だったのか。
が見ていた、現実逃避な夢だったのか。


「ひ、ひどいよ……ヒノエくん
 じゃぁ、どうしてここに残ったりしたの!?なんでみんなと一緒に帰らなかったの!?」


悲痛なの声が響く。
けれど、ヒノエは悪びれる様子など全く見せない。


「ここの世界を見てみたかったから それが理由じゃいけないかい?
 お前はただの理由に過ぎないんだよ」


「────……っ!!」


ヒノエの言葉に、の瞳に涙が溜まった。
目を見開き、閉じれば今にも零れおちそうな位大きな粒が。


「酷い……よ……ヒノエくんの馬────……っ!?!?」


泣き叫ぼうとした瞬間だった。
の唇を塞いだのは、ヒノエの唇だった。


「ん──!!!んんんんっ!!!」


ドンドンドンドン

何度も何度もはヒノエの胸を叩いた。
離してと、離れてと、思いを込めて。


「────……っ いきなり何をっ!!!」


「エイプリルフールだよ、姫君」


「なっ」


怒るに、ヒノエは飄々としたまま言った。
その言葉に、驚きを隠せない

今すべきじゃなかっただろう、と怒鳴りたかった。
しかし、それすらも叶わなかった。


「ヒ、ヒノエくん?」


ヒノエはギュッとを抱き締めていた。


「俺は本当に嬉しかったよ
 少し……姫君にサプライズをするつもりだったんだけど……ごめん、やっちゃいけなかったようだね」


「……もぅ…ヒノエくんはいきなり過ぎるんだよぉ
 エイプリルフールでも、嘘はしていいものと悪いものがあるんだからね?」


「分かってるよ、 もうしない」


その言葉を合図に、ヒノエとはまた唇を重ね合わせた。
そして、唇から離れると、今度は涙の溜まった瞳へと吸い寄せられる。


「俺は……ずっとが好きだよ 絶対に離さないから」









.........................end




ヒノエの誕生日が四月一日……エイプリルフールという事だったので、やりましたw
エイプリルフールの嘘、だったんだけどヒロインが気付かず本気で取っちゃったみたいな。
でも……ヒロインの言うとおりしていい嘘と悪い嘘がありますからね♪

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