ありがとう











「あれ?忍人さん……?」


首をかしげ、は忍人の姿を探した。
けれど、一向に見つからない。
忍人がよく訪れる場所へ行っても、その姿は見つからなかった。



忍人さん……どこっ



姿が見えないだけで、凄く心が乱されていた。
あの戦が終わり、奇跡的に忍人が助かって。


「君は何を慌てている」


「忍人さんっ」


だから、突然後ろから聞こえた声に。


「二ノ姫?」


泣きそうな顔で。


「忍人さんっ!!」


振り返ってしまった。


「何を泣いている」


だから、忍人もを抱きしめ──ゆっくりと、腕の中へとその姿を納めた。
すると、忍人の腕を伝っていった。
その腕の中で、が安堵していることが。


「忍人さん、また私を"二ノ姫"って呼びましたね?」


「ああ……すまない 癖だ」


ばつの悪そうに、の言葉に苦笑した。
長年二ノ姫といい続けてきたのだから、即座に『』と呼ぶようになるのに時間が掛かるのは当然だ。


「まあ、いいですけどね」


「に……?」


そっぽを向いてしまうに、首をかしげた忍人。
二ノ姫と呼びそうになった言葉を慌てて飲み込み、代わりに吐き出したのはの名前だった。

その言葉を聞き、は喜び、満面の笑みで見上げた。


「ありがとうございます、忍人さん」


ぎゅっと、抱きしめてくれる忍人の身体に腕を回し、から抱きついた。
その様子に、そしてのお礼の言葉に困惑するばかり。


と呼ばれることが、そんなにも嬉しかったのか?」


だから、そんな予想外の言葉を出してしまった。


「それもありますけど、違います」


きっぱり否定され、余計に忍人は困惑してしまう。



やっぱり分からないかなぁ……



上目遣いで見つめ、内心苦笑した。
そこがまた、忍人らしくていいのだけれど。


「今日は何日ですか?」


「十二月……二十一日、だな」


思い出すように、日付をに告げる。
その様子に、は満足そうに微笑み。


「ありがとうございます、忍人さん」


「だから……」


同じ言葉を続けた
その意味が分からないと口にしようとした忍人を遮り、はまた口を開いた。


「生まれてきてくれて そして……生きながらえてくれて」


その言葉に、忍人の瞳は丸くなった。
予想外のの言葉。
忍人自身だって、忘れていたことだった。


「ああ……ありがとう」


「はい」


生まれてくれなければ、出会えなかった。
生きながらえてくれなければ、同じ時間を刻めなかった。

生まれてきたことも、生きながらえたことも、全ては運命。

けれど、その運命さえも──切り開くのは当人たち。


「「ありがとう」」


呟き、そして顔を見合わせ微笑んだ。










...................end





十二月二十一日が忍人の誕生日ってことで……慌てて書き上げた、フリー夢です。(笑)
とりあえず、ゲーム本編終了後……しかも、忍人の書だけど忍人死ななかったぁぁぁぁ!!みたな感じで。






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