離れ離れ
だけど、心はいつもそばに










dragon King only for mediums










「……白龍」


ポツリと言葉が漏れる。
空を見上げれば、そこは白龍の翔る空。
今はない懐かしい姿が、空に浮かんでいる様に感じた。


神子、泣かないで…


「白龍!?」


聞こえた声に、は慌てて辺りを見渡した。
けれど、それらしい姿は見当たらない。


「…当り前だよね 白龍は…もう、いないんだ」


くしゃ…

は自らの手で、自分の前髪を握り締めた。
形を変え、指の合間合間から毛先が飛び出ての表情を隠してくれる。


たとえ離れていても…私はいつも神子の傍に居る



違う……
それは白龍の声じゃない
私のただの……願望の表れ



白龍の声を、は聞こうとしなかった。
確かに幻、そこには存在しない声。

けれどは確かに白龍の神子だった。
通じるものがあって当然なのに。


天を仰げば私が翔けた空 地を見下ろせば共に歩いた大地
 神子…忘れないで 私は確かに、貴方と共にいる 世界は違っても……私は神子だけを思う
 私の神子は──────…



ドクン

高く波打つ脈。
目を強く閉じても、掻き消える事のない声。


────貴方だけだよ


「白龍!!白龍、居るんでしょう!?どこなの!?」


白龍らしい言葉に、は声を上げた。
振り返り、辺りを見渡し、薄紫の髪を揺らした。


「どこに……っ」


ガッ

足が何かに躓いた。
バランスを崩し、はその場に倒れ伏す。


「白龍……ねぇ……答えてよ、私の龍神」


そこから立ち上がる事も出来ず、の瞳に涙が溜まった。

さよならはした。
こうなる事は予想出来ていた。

なのに、こんなにも白龍の存在がにとって大きくなっていた。


「嫌だっ こんなのは…嫌だよっ
 私は…私は、白龍の傍に居たいっ 白龍の傍にいなきゃ…幸せじゃないっ」


地面に両手の拳を叩きつけ、地面を睨む。
涙が、徐々に地面を濡らし痕をつけた。


「本当は、クリスマスも、新年も、バレンタインも、白龍の誕生日も、ホワイトデーも…
 どんな行事も、一緒に過ごしたかった!」


それが、どんなに願っても叶わない事だと分かっていても。


「どうして白龍は神様だったの!?どうして私は神子だったの!?」


悲痛な叫びは止まなかった。
喉が枯れる程に、の叫びは空を翔けた。


「どうして……どうして………っ」


両手を地面から離した。
冷たくヒリヒリとする手の平を見つめた。

は自分の顔をゆっくりと、その手で覆い隠す。


「─────どうして私達は出会ってしまったのっ」


それは、白龍が神様でが白龍に選ばれた神子だったから。
ただそれだけだった。

それだけの関係で、終わるのが一番だった。


神子は……私と出会ったことを後悔しているの?


悲しげな白龍の声。
きっと、あの頃の白龍ならにそう問いかけていた事だろう。
悲しげな瞳を向け、顔を俯けて、言い辛そうに、オドオドと。


私は──────…私は貴方と出会えて幸せだった


そんな風に言われてしまっては、何も言えなくなってしまう。
は唇を噛み締めて、ゆっくりと顔を覆う手を退けた。

そして、空を睨みつけた。


「私はっ…こんな運命なんて……信じないっ
 私はいつか……いつか、白龍を迎えに行く!貴方の居る場所は神子(私)の隣だよ!!」


道行く人が、どんな目で見ていようと構わない。
はただ、空に居るであろう白龍に言葉を届けたかった。











届け………
私の───────…











「ハッピーバレンタインデー!
 来年こそは……面と向かって、言わせて頂戴よね、白龍!」








──────気持ち…











.....................end




バレンタインフリー夢です。
運命の迷宮の白龍END後…つまり、白龍とはお別れした編でお送りしました。
きっと、あの時は受け入れても、神子は白龍を追っかけてくれたらいいなって思います。

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