あなたとのいつもの時間は、図書館で静かに過ごすもの
時計が進む音が静かに耳に響き、ページをめくる音がリズムを取る

そんな毎日変化のない生活を、私は今日、変化させる─────…











first step to the change











ペラ…

ペラ……

ペラ………

静かに響き続ける、本をめくる音。

カチ…

コチ…

カチ……

コチ……

静かに続く、時を刻む音。


「そろそろ、休憩にしましょうか 殿」


「そうですね、鷹通さん」


にっこりと微笑み、目の前に座る鷹通をは見つめた。
深緑の髪を後ろで一つに束ねた、の彼氏。

図書館で毎日の読書が日課となっている鷹通の元へ、土曜と日曜にが通うのが日課となっていた。


「息抜きに外へ行きましょう」


「はい」


本を閉じ元の場所へしまうと鷹通の後に続き、は外へと足を踏み出した。
太陽の光が燦々と降り注ぐ外は、中よりも明るく、そしてこの時期は風がとても冷たかった。


「鷹通さん、飲み物を持ってきているんです よかったら飲みませんか?」


「そうなのですか?殿は気が利くのですね では、お言葉に甘えて頂きます」


の申し出に嬉しそうに鷹通は微笑んだ。
そして、コクリと頷きその申し出を受けた。

どんな飲み物だろうかと、鷹通は楽しみにしていた。


「ええと…ありきたりなんですけど、紅茶です」


そういい、水筒を取り出した。
紙コップにトプトプと温かい紅茶を注ぎ、鷹通に差し出した。

白い湯気が空気中に漂った。


「いい香りですね 頂きます」


ゴクリ

飲む姿を目に留めて、は美味しいかどうか気にする瞳を向けた。
その視線に、その視線の意味に気付き鷹通は微笑んだ。


「心配しなくても大丈夫ですよ とても美味しいです」


「あぁ〜良かったぁ〜
 もしも、鷹通さんのお口に合わなかったらどうしようかと思いましたよ〜」


鷹通の言葉に、はホッと胸を撫で下ろした。
心の中にあった不安感が、綺麗さっぱり拭われたような感じだった。


「あと…その……」


「どうかされましたか?」


首を傾げる鷹通に、は意を決したかのように大きく息を吸い込んだ。



言わなきゃ無駄になっちゃうっ



そう心の中で自分自身に喝を入れた


「実は、もう一つ鷹通さんにお渡ししたいものがあるんです」


ここまで言ってしまえば、もう後には引けない。
鷹通の反応を見ようとジッと見つめると、嬉しそうな表情が見る見るうちに浮かび上がった。


「お渡ししたいものとは、なんですか?」


嬉々とした表情を浮かべ、問い掛けてくる。
まさか、こんな反応をしてくれるとは思わなかったは、少しだけ拍子ぬけ。

けれど、ここまで自分からのプレゼントに嬉々としてくれるのは嬉しいこと。
は嬉しそうに微笑みながら、持って来ていた鞄の中から深緑色の包装紙に包まれた箱を取り出した。


「あの、これです
 今日、バレンタインデーなので…是非、鷹通さんに貰って欲しくて」


市販のものでも、やっぱり渡す事に意味がある。
箱を両手で持って鷹通へと差し出していた。


「………バレンタインデー、というのは確か…女性が男性に気持ちを伝えるために贈り物をする日の事でしたよね?」


それでいいんだっけ?と鷹通の言葉に対して思いながらも、は「はいっ!」と頷いていた。
すると、鷹通は嬉しそうに微笑んだまま、の手の中から箱を受け取った。


「ありがとうございます そういう事なら、私は頂きますよ」


またまた、ホッとする
安堵の息が微かに口から洩れていくのがよく分かった。


「確か、バレンタインデーと対になるホワイトデーというものがありましたよね
 それは確か男性から女性に……でしたよね?」


「え?はい、そうですけど?」


まさか…と思いつつも、そんな事あるはずないと心の中で突っ込む自分がいる。
鷹通を見つめ、は胸のドキドキ感を隠せずに居た。


「では、殿」


「はい?」


ドクン

鷹通の一言一言に胸が跳ね上がる。
何を言ってくるのか。
何と言われるのか。

そればかりが気になってしまう。


「ホワイトデーを楽しみにしていてくださいね?」


ニッコリと微笑む鷹通の顔が、は忘れられなかった。










..................end




バレンタインデーのフリー夢です。
鷹通はやっぱり土日は図書館で本を読んでるんだろうなぁ〜という妄想から。
といっても、遙かの現代エンディングのスチルがそうだったからなんですけど…(ぁ)

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