あの時……リズ先生の言う事を聞いていなければ……もうすぐ─────……










future when my regret produced it.










「…先生の居ない未来なんて…意味がないのに……」


雨が燦々と降る中、は静かに灰色に覆われた空を見上げた。
青い空は見えないくらい上の方に隠れ、見たい顔も聞きたい声も見えないくらい過去に隠れてしまっていた。


「先生……先生は、これが私の幸せだと言うんですか?」


辛い気持ちは目頭を熱くする。

ジン…

涙を流し、大声をあげて泣いてしまいたい。
けれど、それを堪えてしまうのはリズヴァーンがの幸せを願っての行動だったと知っていたから。


「私はっ……私の幸せは────────」


静かに、瞳を閉じた。
真っ暗闇の中に、もうリズヴァーンの顔は浮かばない。



先生と……一緒に居ること……だったのに………



あの時言う事を聞いていなければと、後悔ばかり。
あの時の選択が違っていれば、はリズヴァーンと離れ離れにはならなかったはずだ。

カチ…

丁度、時計の針が〇時ジャストを示していた。


「………一月…九日……先生の誕生日……」


ポツリ、またポツリと言葉が漏れた。
違う選択肢を選んでいれば、もしかしたらとリズヴァーンは一緒に誕生日を祝っていたかもしれない。


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」


涙が込み上げてきた。
堪えても堪え切れない、悲しみの涙があふれ出てきた。


「先、生 せんせ……い」


ふらり

ふらり

の揺れる足取りはどこへ向かうのか、想像もつかないものだった。
行っては戻り、戻っては行って……それの繰り返し。

目的もなく、ただフラフラと歩くだけ。


「先……せ…………い せっ……」


震える声は、もう言葉にすらならなかった。
涙で目の前が霞み、建物の輪郭すら分からないくらいに歪に歪んでいた。


「うわああああああああああああああ!!!」


崩れるように、泣いた。
その場にしゃがみ込んで、泣いた。

大声で、恥ずかしいほどに。


神子……私の、神子……泣かないで


「白……龍…?」


聞こえた声に、しゃがみ込んだままポツリと呟いた。
聞こえた声は確かに成人した頃の白龍の声だった。

低く、耳によく残る声。


私の最後の力で………神子を違う時空の今に


「………え?」


グラリ…

目の前の空間が歪に歪んだ。
白と黒が交わるように、歪んだ。











「……神子 神子」


「──────う」


小さく声を漏らし、瞳を空けると目の前に見えた姿には目を見開いた。
だって、そこには見れるはずもないと思っていた顔があったのだから。


「……先、生?先生っ!」


歓喜のあまり、は勢いよくリズヴァーンに抱き付いた。
同じ制服、同じ場所。
けれど、違うのはリズヴァーンが居るか居ないか…ただそれだけ。


「どうしたのだ?神子」


優しい声。
優しい手。

その手が声が、をソッと包み込んでくれた。


「──────逢いた、かった…」


だからも、優しくリズヴァーンを抱き締め返した。
かぎ慣れた香り、聞き慣れた声、触り慣れた感触。

今ここに、リズヴァーンが居ると実感できた。


「…分かっている、神子 そなたは……あの時空に居たのだな」


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」


リズヴァーンの過去を知っていたにとって、その言葉だけで何を物語っていたのかがよく分かった。
だからこそ、眼尻がツンと熱くなった。


「……先生、今日が何の日か…分かりますか?」


「?」


「今日は……先生が人の世に生を受けた日です」


にっこりと微笑み、リズヴァーンの胸板から顔を離した。
涙が込み上げる。
涙で、視界が滲んだ。


「ずっとずっと……言いたかった 言えないと思って……ずっとずっと後悔していました」


のその言葉を、リズヴァーンは静かに聞いていた。
熱く胸を焦がす思いは、恋という名の花。

大切だからこそ、後悔してきた。


「………神子?」


「私はです、先せ……ううん、リズさん」


ここはもう、あの戦場ではなかった。
武士なんて関係のない時代。

男と女、ただそれだけ。


「…?」


その言いなおしに満足気に、は笑みを浮かべた。
そうして、また優しくリズヴァーンを抱きしめた。


「リズさん お誕生日おめでとうございます」


「─────…


「来年も、再来年も……五年先も十年先も……ずっとずっと、私にお祝いさせて下さいね?」








......................end





リズ先生の誕生日、という事でフリー夢小説を書きました!
これは、運命の迷宮のリズさんルートの『閉ざされた時空の中で』で、『未来へ、行こう それが先生の望みなんだ』を選んだ時のバッドエンドルート後の話です。

きっと、ヒロインは後悔するだろうなーと思いながら書きました。
大好きな人と離れ離れで、しかも…どうなったかさえ分からないという……そんな世界は、私は嫌だなーという事から白龍を抜擢しました。
私の中で、きっと白龍はとっても上手く使える部類に入っているんでしょうね。(笑)
何かあれば時空を飛べばいい!みたいな……

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