?入りますよ?」


ノックをしても返事のない
風早は首をかしげながら、部屋の中に居るに声を掛けた。


「…………」


けれど一向に返事がない。



勉強疲れが出てしまったかな……



そう思いながら、風早はの部屋のドアを開いた。
机に突っ伏すように身体を預け、静かな寝息を立てていた。


「……全く、俺の姫君は」


そんな苦笑を浮かべ、部屋の敷居をまたいだ。









平穏なことの喜び









「風邪を引いてしまいますよ」


呟く風早の声にかすかに反応を示す
「うぅーん」と声を漏らしながら、顔を軽く動かす。


「……ん すぅー」


が、すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。
眉尻を下げ、苦笑を浮かべた風早は起こさないように静かにの身体を机から離した。



全く……こんな所で眠ってしまったら、逆に疲れてしまう



机から離されたの身体。
背中に腕を回し、もう一本の腕は膝裏に回し姫抱きにした。


「……ん かざ、はやぁ……」


「はい?」


「……すぅすぅ」


呟かれた声に視線を落とす。
が、腕の中に居るは静かに寝息を立てていた。



寝言か……
いったいどんな夢を見ているんだろうか



安心しきった顔。
呟かれた名から、は風早の夢を見ているのは必至。



ん……暖かい……
それに……この、香り……



微妙に意識が覚醒していた
けれど、完全には覚醒していない所為か風早の胸に擦り寄っていた。

とさ……


「今日はこのまま、寝ちゃっていいですよ……


ゆっくりとベッドの上にをおろす。
布団を掛けながら、風早は愛おしそうにを見つめた。



……優しい声……



「……かざ、は……や?」


「ああ、起こしちゃいましたか?」


うっすらと瞳を明けるに、風早は苦笑を浮かべた。
けれど、まだ夢見心地なの瞳はトロンとしていた。


「んーんー……」


あいまいな返事は、また夢の中へと戻ろうとしている証拠。

ふわ……

サラリ……


「おやすみなさい……


「おや、すみ……なさ────……」


柔らかなその髪を撫で、風早はを夢路へと後押しした。
その言葉に、は微笑みゆっくりと瞳を閉じた。

言葉はすべて、吐き出されはしなかった。
けれど、風早には伝わり寝息が聞こえてきたのを確認すると踵を返した。


「今日は、男二人で食事か……」


苦笑を浮かべ、パタンと静かにの部屋のドアを閉めた。








こんな幸せも、ここが平穏だからこそ許されるもの
をここへ連れてきたことを、本当によかったことなのかと迷ったこともあったけれど……
こんな日常を見つめていると、俺は間違っていなかったと思いたくなる

いや……きっと間違いではなかったんでしょう

の笑顔を守れることが……きっと一番の幸せだから











................end




現代夢って事で。
柊がの前に現れる────……というか、那岐に勉強を教えてもらってるイベがある日よりも数日前の出来事って事で。(うわ)






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