あなたがいつも、何かを背負って来ていたのは分かってた
それが、九郎さんと頼朝の板挟みで起こっていた事だとしても……

知っていながら、分かっていながら、何も出来なかった当初の私を許してほしい────…










今はあなたを










────守りたいから…守る、から……



景時と手を繋ぐたびに、はそう思った。
思い出すのは、あの迷宮を崩した後の傍にいると誓った時の事。
そして、京の世界に居た時の何も出来なかった最初の頃の自分の事。


ちゃん?」


「あ、景時さん ごめんなさい…少し、ボーッとしてたみたい」


掛けられた声で、はハッとした。
意識が明後日の方向に向いていたようで、苦笑を浮かべた。



駄目だ…
今はデート中なんだから……しっかりしないと



自分の駄目さに溜め息が出てしまう
その表情に、景時はの頭を撫でた。


「景時さん?」


「気にしなくていいんだよ ちゃんはちゃんのままで居ればいいんだからさ〜」


いつもの明るい景時の言葉。
こんな風に気を使わせてしまう事が、少しだけ申し訳なかった。


「景時さんは……元の世界に戻らなくて良かったんですか?」


その問いかけに、景時はピクリと肩を揺らした。
京の世界では、きっと景時を必要としている人達が沢山いる。

それなのに、自分の為に現代に残って良かったのかと思ってしまう自身が居た。


「言ったよね?『真っ直ぐな君の強さは眩しくて、ずっとオレは憧れてた』って」


それは、京でやる事を終えるまでもとの世界に帰りたいと嘆かなかったあの頃のを指示していた。
いつも必死に怨霊や平家と戦い、自らが傷つきながらも前へ進む事を躊躇わなかった。



オレはずっと……君の隣を歩いていけるのだろうかと迷っていた
こんなオレが…ちゃんの隣に居ていいのだろうかと……考えた時期もあった



ちゃんと景時はの隣を歩いているし、まして隣に居ていいという権利は誰が決めるものでもない。
に言ってしまえば、きっと『何を考えているんですか!』と怒鳴られるだろう。

そして、きっと最後には優しく微笑み返す。
傷ついた心を持つ景時を、仲間を幾度も裏切ってしまった罪悪感を持つ景時を、温かく包み込むように。


ちゃんはオレにとって、とても……何物にも代え難いほどに大切なんだ
 君の事を好きだというこの気持ちは……決して嘘じゃない」


「景時さん……」


「オレは……ずっとちゃんの傍にいるよ」


嬉しい言葉に、は頬を赤く染めた。
すると、景時の大きな腕がを優しく抱き締めた。


「あ……」


「後悔なんてしていない…これは、オレが決めた事なんだからさ」


明るい口調が耳元で聞こえるたびに、の顔が耳が首が真っ赤に染まりあがっていく。
その様子が愛しくて、可愛くて、景時の歯止めが利かなくなっていく。


「ありがとう、ございます……景時さん
 私も、景時さんの事が大好きです…ずっとずっと……傍に、居て下さい 居て……欲しいです」


抱き締めてくれる景時の背中に腕を回す
ギュッと優しく抱き締め返した。


「ねぇ、景時さん」


「うん?」


「今日、私の家に寄ってもらえますか?」


その言葉に景時の顔は真っ赤に染まりあがった。
勿論、その言葉を紡いだ自身も。

大人な二人ならば、恋人同士として付き合い始めた二人ならば、その言葉の意味は理解しているはず。


「渡したいものもありますし……」


にっこりと微笑み、それでも照れる姿は景時の好きな顔。


「でも、その前に……これだけは言わせて下さい」


ゆっくりとつま先立ちになる
その顔が、徐々に景時の顔に近づいていった。

ちゅっ

小さく音を立てて、と景時の唇が重なり合った。


「ハッピーバレンタインデー!景時さん」







.........................end




バレンタインフリー夢です。
景時はやっぱり、ちょっとばかり臆病であって欲しいですね。
でも、いざって時は神子を負かしてほしい!(笑)

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