「姫さ〜〜〜ん」


聞こえた声に、振り向いた瞬間。


「キャァァァ────!!サッ、サザキ!?」


は盛大な悲鳴を上げていた。










弱点は水










船の外。
海の上をヘロヘロと情けなく飛んでいるのは、サザキだった。
何があったのかと驚き、船の上に倒れるようにたどり着いたサザキに駆け寄りながら悲鳴を上げた。


「ひ、姫さん……大げさすぎだ」


苦笑を浮かべるサザキ。
けれど、は一大事だと勘違い。


「どっ、どうしたの!?」


「いや……姫さんにうまい魚を食わせてやろうと思って跳ね上がるのを待ってたんだけどな?」


「う、うん」


ドキドキとしながらサザキの話を聞いていた。


「誤って、水を被っちまったぜ」


あっけらかんと言い放つものだから、はポカンとしてしまった。
けれど、ふとサザキの羽に目をやればずぶ濡れになったソレが見える。


「サザキにとって羽って大事なものでしょ!?濡れちゃったらヤバイんじゃ……」


「ああ だから、こんな状態」


それでも、命に別状はない。
羽を落とすわけでもないのだから、大丈夫。
その事実に、は胸を撫で下ろした。


「と、とりあえず……どっ……どうすればいいの!?」


羽を持たない
だからこそ、こういうときの対処の仕方が分からない。
慌てていると、背後に立つ人の気配に視線を向けた。


「カリガネ」


「……大丈夫だ 飛ばずにいればいずれ乾く」


淡々と語る言葉に、は「あ」と納得した。
確かに、乾けばいいのだから飛ばなければ今みたいな大変な状態にはならないはずだ。


「姫さんは、本当に大げさだな」


「だって……サザキが心配だったから……」


笑うサザキに照れながらも、少しふてくされる
その表情が無性に可愛かったのか。


「っかー!!姫さん、その表情は反則だ!」


叫ぶと同時に、サザキはを思いっきり抱きしめていた。


「…………」


真っ赤になる
ひたすら「可愛い可愛い」と連呼するサザキ。

このバカップルを見ていられなくなったカリガネは、踵を返し何も言わずにその場を去った。


「ちょ、サザキ!カリガネ行っちゃったよ!?」


「はっ、いいんだよ 今は……二人っきりを満喫しようぜ、姫さん」


ちゅっ

リップ音を鳴らし、サザキはの頬にキスをした。
間近に見えるサザキの顔に、今度はがお返しのキス。


「っかー!!姫さん、最高だぜ!」


余計にサザキの抱きしめる腕に力がこもる。


「い……痛い、サザキ……」


「あ、悪い!姫さん、大丈夫か?」


慌てて腕を緩め、身体からを軽く離す。
そして、心配そうにを見つめると、は微笑み頷いた。


「好きだぜ、姫さん いや……


「私もだよ、サザキ 大好き」












オレは水が苦手だ
大事な羽が濡れりゃ、飛べやしない
だけど、こんな風に姫さんに介抱してもらえるんじゃ……たまには苦手な水に濡れてみるのもいいもんじゃないかって思うんだ









......................end




サザキとにとって、たぶん一番一大事だったのはサザキの羽を落とすって出来事だったんだと思う。
そりゃ、水で羽が濡れればそれも一大事だけど……(笑)
だけど、羽を落とすことよりかは楽で……だからこそ、親身になるに介抱されるサザキはそう思うことがあってもいいんじゃないかな。(笑)






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