「姫、殿下がお待ちです」
リブの声に、は立ち止まった。
振り返り、笑顔を向ける。
「アシュヴィンが?分かった、すぐ行くね」
リブには、なぜこんな夜更けにを呼び寄せるのか分かっていた。
けれどは全く分からず、けれど疑問も持たずに頷くのだった。
結婚初夜
「アシュヴィン?リブから呼んでるって聞いて来たんだけど」
そう呟くと、アシュヴィンの部屋のドアが開かれた。
中に居たのは、満足そうな笑みを浮かべたアシュヴィンの姿。
「来たか とりあえず、入れ」
「うん」
招き入れられる部屋。
綺麗に片付けられた部屋だけれど、王としてすべき責務の名残があちらこちらに見える。
「それで────……」
はアシュヴィンを見上げた。
ゆっくりと近づいてくるアシュヴィンは、まさか次の瞬間間抜けな声を漏らすことになるとは予想していなかった。
「いったい何の用なの?こんな夜更けに呼ぶって事は一大事なんでしょ!?」
また戦が始まるのだろうか。
それとも、どこかに攻め入るのだろうか。
あらぬ心配をするに、アシュヴィンは目を丸くした。
「は?」
そして、間抜けな声を漏らしてしまったのだ。
「え?違うの?」
純粋無垢とは、まさにこのこと。
アシュヴィンが考えていたようなことを、は全く考えていなかった。
さて……どうするべきか……
違うのかという問いかけに対してのアシュヴィンの答えを待つ。
なんと答えるかと、悩んでしまう。
契りを交わしたのだから、別に正直に『お前を抱きたい』と言ってもいいんだろうが……
チラリとの顔を見ると、どうしてもアシュヴィンは言葉を紡げなかった。
「アシュヴィン?」
「は……男が女をこんな夜更けに自室に呼ぶことが何なのか……本当に理解していないのか?」
真面目な顔。
真面目な声色。
けれど、ところどころで見せるのは誘うための色気。
「────っ」
言っていた言葉の意味が分かった。
一瞬にして顔は真っ赤に染まりあがり、その顔を必死に手で隠そうとしていた。
「分かっているなら話は早い」
「まっ、待って!」
じりじりと近寄ってくるアシュヴィンに、感じてはいけない恐怖を感じた。
一歩一歩と後ろに下がりながら、アシュヴィンに待ったを掛けた。
その声に、アシュヴィンは眉間にシワを寄せ『なぜだ?』といった表情を浮かべていた。
「私……そんなつもりじゃ……」
その行為は、まるで未知の世界。
まさか自分が────なんて、は全く考えたこともなかったのだ。
「ふっ、分かった が嫌なら、俺は手を出しはしないさ」
苦笑を浮かべ、けれどすぐに微笑に変わる。
ツカツカとに近づくと、ぽふぽふとその頭を撫でた。
恐怖を、感じ取ったから。
だから、安心させようと。
怖がる奴を無理に抱く趣味はないからな
身体を屈め、の頬にキスをする。
屈めた身体を起こすと、がアシュヴィンを見上げ真っ赤な顔をする。
唇を当てた頬に手を当て、幾度も瞳を瞬かせる。
「今日は、これくらいに留めておくさ」
再度身体を屈め、耳元で囁けば。
「〜〜〜〜〜〜〜っ」
の顔は、茹で上がったタコのよう。
愛している、
だから、今はまだ……この関係を続けていこう
.....................end
結婚後のとアシュ。
あのラブラブっぷりは、本当に赤面したよ……なので、そんな妄想から。
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