慣れた出来事
だけど、今までと違うのは──────…
linked heart
「天真くん!」
一匹狼的な部分のある天真に、明るく声をかける。
その声に、天真はくるりと視線を向けるとふわりと微笑んだ。
それは、学校で良く見る光景の一つ。
けれど、今までと違うのは二人を纏う雰囲気だった。
「なんだ、か どうした?」
「どうしたじゃないよ!朝話したでしょー?」
「……ああ、今日渡すものがあるって話か」
の言葉に今朝の話を思い出した天真。
おお、と納得するように声を漏らした。
「ああって……もしかして忘れてた?」
「わりぃ」
「天真くん!」
忘れてた事を認めた事に、は頬を膨らませた。
「んな顔すんなよ 貰わないっつってるわけじゃねぇんだし」
「だって……」
いつまでもムスッとしているに、天真は顔を近づける。
徐々に顔が赤くなっていくに、実は内心笑みを浮かべていた。
天真の考えと、の考えはイコールで結ばれていなかった。
「ちょっ、て……てててて天真く─────…いだっ!」
「何期待してんだよ、」
いきなり感じたおでこへの痛み。
目をギュッと閉じると、聞こえてきた笑い声と言葉。
それにはめられたと気付いたは、より顔を赤くした。
「紛らわしい事する天真くんがいけないんでしょぉ!?」
そう言いながら、は天真にオレンジ色に近い茶色の包装紙に包まれた箱を投げつけた。
その際に、中からカコンと何かが揺れる音がした。
「!?」
「もう知らない!それが天真くんにあげようと思ってたものだよ!」
そう言うと、は天真の言葉を待たずスタスタと歩き始めた。
その様子を見て、やり過ぎたかと後悔した天真は後を慌てて追いかけた。
「おい、」
「ふーん」
「聞けって」
「知──らないっ」
どんなに声を掛けても素っ気ない態度。
顔を見ようとも、視線を合わせようともしないに天真は徐々にイライラが募っていく。
「待てって、!」
「わっ!?」
勢いよく進むの腕を掴み、引っ張る天真。
当然、のバランスは崩れ天真の方へ寄りかかってしまった。
「て、天真くん……?」
「悪かったよ ちょっと……からかったというか…反応が可愛かったから……つい……」
おどおどと天真を見つめると、頬を染め恥ずかしそうにしている天真。
視線を外しながら、シドロモドロに言葉を紡ぐ様子には微笑んだ。
「しょうがないなぁ 許してあげるよ」
「…」
「う・そ 初めから怒ってなんていなかったよ」
にっこりと微笑み、天真の方へと向き直る。
辺りをキョロキョロと見渡し、人通りが丁度なくなった瞬間。
「──────え?」
の顔が天真に近づいていった。
まるでスローモーションのようだったが、実際には一瞬の事。
微かに、の唇が天真の唇を掠めた。
それは、触れるだけのささやかなキス。
「ハッピーバレンタインデー!」
そう言うと、トンッと天真から離れた。
楽しそうな軽い足取りで、立ち去って行った。
そこには、放心状態の天真が残されていた。
.....................end
バレンタインのフリー夢です。
天真は時々神子に意地悪的な事をすればいいと思う。
そして、怒った神子にどうしようとオドオドすれば可愛いと思う。(うわ)
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