今でも夢に見る……
あなたを失ってしまったときのことを────……
「柊っ ひい、らぎっ……」
名前を呼び、必死に手を伸ばす。
最後には、いつも声にならない悲鳴を上げる。
悲しみに、陥った、闇の、悲鳴を。
もう大丈夫だと言って
「姫?姫……」
「う……」
掛けられた声に、はゆっくりと瞳を開けた。
目に映った姿に慌てて飛び起きた。
「柊っ!!」
「はい 私はいつも我が君のそばにおります」
抱きつくに、柊は微笑んだ。
微かに震える肩に気付けば、そっと抱きしめ返す。
「何か……怖い夢でもごらんになりましたか?」
「……ううん 大丈夫……何でも、ないよ」
起きれば、ちゃんと柊は居る
あれは……夢の中だけのこと……だから、大丈夫……大丈夫……
柊の問い掛けに、はにっこりと無理に微笑んだ。
大丈夫だと、何度も自分に言い聞かせるのは恐怖に打ち勝つため。
「私には姫の不安を取り除くことは出来ないのですね」
悲しげな表情。
その表情は、見覚えのあるものだった。
だから、つい、は息を呑んでしまった。
「やだっ……そんな顔……しないで……」
柊の最期を見たとき、柊が浮かべていた表情。
の築く未来をともに見ることが出来ないのだと、悲しげに呟いたときの────……あの表情に酷似していた。
怖い……
その顔をされると……柊が居なくなっちゃいそうで……
震える肩は、さらに強まった。
だから、柊は無言のまま強く強く抱きしめた。
「柊?」
「申し訳ありません、姫 私は……どうやら、我が君を悲しませてばかりのようだ」
サラリ……
の髪を撫でるように梳く。
柔らかい髪をひとふさ掴み、そこに口付ける。
「姫……もう大丈夫です 私は我が君のそばを片時も離れません
ですから……安心してください」
吸い込まれるような瞳。
は、ずっと聞きたかった言葉を柊から聞くことが出来た。
ずっと、安心したかったのだ。
もう、あんな事はないのだと柊の口から聞きたかったのだ。
「……うん うん……絶対に……離れちゃ嫌だからね?」
の言葉に、柊は何も言わず。
ただ、頬に口付けることで『はい』と返事をしていた。
愛しい人……
『もう大丈夫です』という言葉を聞くことで安心するのなら……
私は何度だって言いましょう
もう……大丈夫です
安心してください……我が君
...................end
一度でも死を見てしまえば、きっと時空を超えて助けたとしても夢に見るんだろうな。
そして、存在するぬくもりに擦り寄るんだ。(ぉ)
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