決して結ばれることがないと思っていたあなたが…
今は──────










傍にいる










嫌です、私、離れたくない!


そう叫び、帰ろうとする敦盛に抱き付いたのは、結構前。
悲痛な表情を浮かべると、悲しげな表情を浮かべる敦盛。

二人の時間は合さるはずのなかったものだった。


あなたを、帰したくない!


そう強く思ったのは、本当に心から人を、敦盛を愛したから。
ここまで強く思う程、は今までに人を愛した事があっただろうか。


もう、会えないなんて……そんなのは、嫌なんです


振るえる声が、今も鮮明に思い返される。
目の前で、静かな寝息を立てる敦盛を見ていると。


「あなたを……苦しませはしないと誓ったはずなのに、私はこうして……あなたを苦しませているのだな」


怨霊であることには変わりない敦盛。
時間が合わさらない敦盛を見ていると、悲しくなってくる。

もっと、普通な出会いを果たしていたら、こんな運命にはならなかったのかと思ってしまう。

だから、敦盛に感づかれてしまうのだ。
一緒に居ることは苦しくないし、悲しくない。
それでも、運命を考えてしまうと苦しくなる。

どうして、怨霊なのが敦盛なのかと、思ってしまう。


「苦しんでいないです、私は 敦盛さんが敦盛さんだったから……私達は出会えた
 だから……私は、この運命を悔やんだりしていません」


半分嘘。
半分本当。

敦盛を怨霊に仕立て上げた運命は悔やんでいた。
それでも、出会いを後悔しては居なかった。


「私、言いましたよね?『私は幸福は貰わなくていい』って
 そして…こうも言いましたよね?『私は敦盛さんと幸せになる』って」


「神子……」


「敦盛さん 私はもう神子じゃありません
 敦盛さんを愛する一人の女人です」


ハッキリと言い切るの姿を見つめ、少しだけ悲しげな表情の敦盛。
名前をポツリと漏らし、を見つめれば抱き締めてくる細い腕。

もう、剣を振るう事のなくなったの腕は、徐々に普通の女性の腕へと変わりつつあった。


………」


「敦盛さん……決して、私の前から居なくならないで下さいね?」


首をかしげ、真剣な眼差しを向けて来るに敦盛は瞳を細めた。
柔らかな笑みを浮かべる。


「勿論だ 私は…あなたの傍にいると誓った」


「…それなら、いいんです 私の不安は……ただそれだけなんですから」


それだけが不安だった。
目が覚めたら、いつの間にか敦盛が居なくなってしまうんじゃないかと不安でたまらなかった。

今までの事が夢じゃないかと、幾度も幾度も熱を重ね、幾度も幾度も身体のあちこちに出来た刀傷を確認してしまう。


「敦盛さん……これが、私の気持ちです
 後悔なんてしていない…私の、あなたを思う大切な気持ちです」


頬をキスを一つ。
そして、は敦盛に紫色の包装紙の箱を差し出した。

おずおずと戸惑いながらも、敦盛はそれを受けとった。


「ハッピーバレンタインデー 来年も…再来年も……十年先も、ずっとずっと…傍に居て下さい
 決して……私の前から、姿を消さないで……」






.........................end




バレンタインフリー夢です。
神子は敦盛の正体を気にし、敦盛は神子の幸せを気にして弱気になってくれればいい。(ぁ)
そして、二人の気持ちを確認し合って、より強く結ばれてくれるといいな、なんて。

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