「姫……本当に、こうして隠れて……よろしいのでしょうか?」


申し訳なさそうにを見つめるのは、布都彦だった。
王となったにとって、部下に当たる布都彦と恋愛をするのは大変なことだった。
反対する人多数。
中には賛成して手助けしてくれる人だっているのだけれど。









大切なのはあなたの心









「ここで捕まっちゃったら、折角綺麗な花畑を見に行くのがパーになっちゃうよ」


シー、と口元に人差し指を持っていく
好き合うのが悪いことなわけじゃない。
ただ、立場の違いがその恋を難しくしているだけ。





「風早っ」


掛けられた声に、は満面の笑顔。
と布都彦の恋愛を応援してくれている人の一人。


「今のうちにあっちの出口から行ってください
 暗くならないうちに帰ってくるように いいですね?」


「はい 大丈夫です 姫は私が守りますっ」


少しだけずれた回答だったけれど。
布都彦がそう言うならば、きっと約束は守ってくれるだろうと風早は内心安堵していた。
そうして、風早の用意してくれた出口に向かって掛けていく二人を穏やかな笑みを浮かべ見送っていた。


「風早も人がいいな」


「そういう忍人こそ、十分人がいいと思うけど?」


影で三人のやり取りを見ていた忍人。
彼もまた、二人を応援してくれている人でもあった。












「姫、ここがその花畑です」


連れてきてもらったのは、一面が黄色い花で覆われた畑。
たくさんの種類のある中、色は黄色だけという変わった畑でもあった。
けれど、それがまた綺麗さを際立たせているようでもあった。


「わぁ〜綺麗っ!」


「気に入っていただけたならよかったです」


嬉しそうに声を上げるを見つめ、安堵したように柔らかい表情を浮かべる。


「布都彦、ありがとう」


「────っ」


にっこりと微笑みを浮かべる
不意打ちなそんな表情が、布都彦には輝いて見えた。


「布都彦??」


「姫……私は、姫を本当に……愛おしく感じます」


まっすぐな瞳。
まっすぐな言葉。

それらは、の頬を染め上げるのには十分な要素となった。


「私と、このように想いを重ね続けるのは……きっと姫にとっては大変な事だと思います」


「……布都彦」


呟く布都彦に、は近づいていった。
悲しそうな、怒っているような、とても複雑な表情。


「布都彦は……嫌だ?こんな風に……想いを重ねるのは」


「そんなっ……事はっ……ありませんっ!!」


激しくの言葉を否定するように、首を左右に振った。


「私は……私が一番大切にしたいのは、あなたの────……姫の心です」


の手を取り、まっすぐの瞳を見つめる。
呟く声が、間近で聞こえの胸は高鳴った。


「私は、隠れて想いを重ねようと、反対されながらも隠れずに想いを重ねようと……どちらでも構いません
 ただ……姫が悲しむことだけはしたくないだけです」


「布都彦……私は、今の現状が嫌なわけじゃないよ?
 そりゃ、みんなに受け入れてもらえるのが一番嬉しいけど……この想いを手放したいなんて思わない」


はっきりとは言い切った。


「私は、何があってもずっと布都彦を愛しているよ」


「私も────……変わらずに、ずっと姫を愛しています
 ずっと傍らに……ずっとお側にいます」












...................end




許されない恋ほど大変な事はないんだろうな。
でも、最終的には周りから祝福されてくっついてくれればいいのに!!(><)






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