大好きだから、抜け出してでも……








共に居たかった








「……見つかりませんよーに」


コソコソと、金髪碧眼の少女が洞窟を抜けだした。
誰にも分からない様に、布を頭から被り京の町を駆ける。


「ハァッハァッ……ハァッハァッ……」


荒い息を肩でしながら、少女、はある少年を探していた。
時折立ち止まり、辺りをキョロキョロと見渡しまた駆ける。

次第に周りの景色も変わり、見覚えのある場所に出た。


「……ここが、天真の居る場所……」


が見詰める先にあるのは、天真が寝起きし暮らしている屋敷──藤姫の館──があった。


「ったく あかねもしょうがねぇよな」


肩を竦め、庭に姿を現したのは天真だった。
腰に手を当て、肩を竦めて大きく溜め息。


「天真!」


小さく、けれど届く位の大きさの声では天真に声を掛けた。
は鬼で、天真はお館様であるアクラムと敵対する龍神の神子の八葉。
それは分かってはいたが、逸る思いは止まらなかった。


!?お前……」


聞こえた声に反応し、視線を向ければ見慣れた姿。
愛しく思い、心を寄せる相手。

それは、誰にも知られてはいけない秘密の相手。


「……なんでここに居るんだよ 危ないだろ?」


「ごめん でも……どうしても、今日来たかったんだ」


天真の言葉はごもっとも。
もそれを重々承知だったからこそ、申し訳なさそうに肩を竦めた。
眉が頼りなくハの字に下がる。


「何でまた今日なんだよ?」


「前に……天真が言ってた 誕生日だって」


の言葉に天真の瞳が見開かれた。
覚えていてくれた嬉しさと、"誕生日だからこそ"来てくれた事への嬉しさ。

時代は違うし、風習だって異なる。
まして人と鬼とでは、余計に"そう"だろう。
それでも、は天真の元へと訪れた。


「それで……どうしても、今日、天真にお祝いの言葉を伝えたかったんだ」


風が吹いた。
の綺麗な金色の髪が、ユラユラと揺れる。

まるで、今が夢、幻なのだと言われているかのように。


「……夢じゃないよな?」


「冗談言わないでよ 夢だったとしても、私は起きたらまた来るよ?」


「……だよな」


くすくすくすくす

互いのやりとりに、天真もも楽しげに笑った。
瞳を和らげ、互いが互いの事を愛しいと目で伝え合う。

ギュッ……

物陰に隠れ、密かに抱き締め合った。


「……天真、お誕生日おめでとう」



これで良かったんだよね……?



呟きながら、は少しだけ不安だった。
初めての事だったから。

この時代には、誕生日を祝うなんていう風習は存在しなかったから。


「ありがとう、
 なぁ……の誕生日っていつなんだ?」


の言葉に嬉しそうに笑みを浮かべた。
が、すぐに天真は何かを思い付いたかのように問い掛けたのだった。


「え?私の──……誕生日?」


気にした事もなかったし、気にする必要もなかった。
だから、自分が生まれた日なんてはうろ覚えだった。

いつ頃だっただろうか。


「……大雑把にしか…覚えてない」


「それでも構わないぜ?」


ポツリと零したの言葉に、天真は言い切った。
別に、今日みたいに"その日"を祝ってくれるのも嬉しい。
けれど、一番大切なのは"その日を祝ってくれる"事ではなく"生まれた事を祝ってくれる"事なのだから。


「……私が生まれたのは、だいたい────……」









.......................end




四月二日は森村天真の誕生日でした!!
という事で、遅いながらも天真の誕生日フリー夢小説をUPです!(^O^)/
誕生日は読者様の誕生日で、という事で……ここで話は途切れます。(ふふふ)
それ以降は、想像する皆様の自由ですっ!!(^O^)/

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