シャンッ…

シャンッ…


神子─────我が神子…


シャンッ…

シャンッ…


「………え?」


聞き覚えのある声に、聞き覚えのある言葉に、ピンク色の髪をした少女は足を止めた。
ピンク色の長髪を揺らし、振り返る少女の名前は
京都に観光旅行に来たは、第一目的地である一条戻り橋にやって来ていた。

そこで聞こえた鈴の音、声。
周りを見渡しても、声の主は居なかった。
それどころか人一人の姿も見当たらなかったのだ。


神子を助けろ 汝にしか出来ぬ事…


「──────いったい何を…」


言っているの、と言葉にしようとした
けれど、その言葉は音となることはなく呑みこまれた。

目の前の突如現れた不思議なものに意識全てを吸い込まれて。














transmigration 第一話













「う、うう……ん」


目に力が籠り、ゆっくりと瞼が開かれた。
どうやら、今まで眠っていたようで。


「神子、目が覚めたか」


の顔を覗き込むように呟く黄緑色の長髪で右側でダンゴを作ってる青年に、の視線は留った。
知らない人、知らない声。
けれど知ってる人、知ってる声。


「み、こ…?」


意味が分からないと言わんばかりに、は疑問の声を上げた。
ゆっくりと身体を持ち上げようとすると、金髪に青い瞳の少年が身体を支えた。


「あかねちゃん、どうしたの?
 まだ、具合よくならない?」


「あかね?あか、ね……」


金髪の少年の言葉に、は疑問符をつけた言葉を呟き続ける事しか出来なかった。
聞き覚えのある単語、聞き覚えのない単語、どちらともとれる単語の羅列に眉が潜むばかり。



誰?この子…
それに…この人達…私の事、あかねって…人違いか何か?



もやもやと疑問ばかりが浮きあがる。
けれど、違うという思いも浮き上がり意味が分からなかった。


「あの、人違いじゃない?私、あかねじゃないし…」


「何馬鹿言ってんだよ、あかね!お前があかねじゃないって言うなら、誰があかねだって言うんだよ」


の言葉に反抗するのはオレンジ色の短髪の青年だった。
その言葉にはムッ、とした表情を浮かべた。

勘違いも甚だしい。


「私は って言うの あなた達の言う、あかねって子じゃない!」


失礼しちゃう、と言わんばかりの口調で言い切った。
その言葉に黒髪の長い幼い少女が眉をひそめた。


「神子様 神子様は神子様、あかね様でございます」


そう言いながら、に差し出したのはシンプルな鏡だった。
それを受け取り、は鏡の使い道通りそれに自身の顔を映した。


「なんだ、やっぱり私じゃない ちょっと髪が短いみたいだけど…れっきとしただけど?」


ありがとう、とは黒髪の少女に鏡を返した。
口を尖らせ、どこをどう見たら他の人と間違えるかなーと言わんばかりに呟いた。

少しだけ、髪の長さが違う事が気にかかったがは気にしない事にしたようだ。


「それより私、みんなの名前知らないんだけど…誰?いったいどうなってるの?」


目が覚めれば知らない人に囲まれて目が覚めて。
目が覚めたと思えば、今度はあかねという女の子と間違えられて。
何が何だか状況を把握できず、肩を竦めた。


「おい、あかね!冗談はそれくらいにしろって!」


「うるさいなぁ、天真くん!
 ─────……え?どうし、て…?」


オレンジ色の短髪の青年の言葉に、面倒そうに声を上げた
けれど、口をついて出てきたのはオレンジ色の短髪の青年を指し示す名前。

何故、知らないのに出てくるのか疑問に思ったは、両手で口を押さえた。


「ほら、やっぱりあかねちゃんなんじゃない
 もう、悪い冗談はやめてよね」


冗談だったのだと判断した金髪の少年の言葉に、は怒りの表情を露わにした。


「止めて!!!私はあかねじゃない!だよ!」


「神子殿は神子殿だろう ここを守る力を持つ神子殿だ」


「力って何?私、何の力も持ってないよ」


「神子殿には五行の力というものがあるのですよ それを使って────」


「神子って呼ばないで、鷹通さん!」


緑色の長髪の青年の言葉に、声を荒げる
けれど、また口をついて出てきた名前に本人も含め全員が驚いた。

知らないと言っているのに矛盾する言葉。
けれど、その言葉とも矛盾するの反応に全員が眉を潜めたのだ。


「待、って…どうして私…名前を知ってる、の?
 知ってるだけじゃない…見た事もあるような…それに…この後って…」


何か脳裏に引っ掛かりを覚えた
けれど、まだそれが何か分からず首を傾げると。


「あなたは頼久さん それから天真くんにイノリくん 詩紋くんに鷹通さんに友雅さん
 永泉さんに…泰明、さん 星の一族の…藤姫ちゃん」


次々に当てていく名前に、それぞれがあっていると頷き返す。
そうすれば、の疑問は徐々に深まり眉間のしわが濃くなっていった。



なんで私…知ってるの?
どうして…知ってるの?

私……は…あかねじゃない



「私は元宮あかねじゃ………な、い…」


出てきた名前は、フルネーム。
に九人の視線が一気に注がれた。

知ってるんじゃないか、分かってるんじゃないか、と。
つまりは、やっぱりあかねなんじゃないか…と物語るような視線が。


「違う…私…私、は…違う違う違うっ!!!!」


スクッと立ち上がり、九人から離れながら声を上げるの様子に泰明がハッとした表情を浮かべた。

シャンッ…

シャンッ…

鳴り響く鈴の音はにしか聞こえず。


────我が神子を助けろ


その聞こえた声に、はピタリと動きを止めた。
ダラリと腕が下がり、その様子に泰明は眉をひそめた。


「神子?」


どうやら、以外には声は聞こえていなかったらしい。
けれどは答える事無く、いっきに膝が曲がり踏んばる気配もなく床へと身体は倒れ込んだ。

ガシッ…!


「神子殿っ!?神子殿!」


慌てて手を伸ばしたのは友雅だった。
意識のないを抱きかかえ、声を掛けるもピクリとも動かない。















声が聞こえる…
聞こえるのに、声が出ない…

ここはどこ?
私はどうして…あかねなんて呼ばれるの?

この姿は…どういう事?



疑問は絶えず出てくる最中、が目覚めたのは暗い暗い不思議な場所だった。

シャンッ…

シャンッ…

そして、聞こえる音は耳慣れた音。


「汝、神子 我が呼んだ、神子」


「誰っ!?」


聞こえた声は、今まで空耳の様に聞こえてきた声と同じだった。
声を上げ振り返ると、不思議なシルエットが一つ。


「我は龍神 汝、神子を助けよ
 汝のみ、未来を知る者 神子の望む世界を知る者…」


「何それ、どういう…」


脳髄に届く低い声に、怪訝そうに問いかけようとするも。
流れ込む映像に言葉は止まった。


「思い出したか、神子」


「だから、私は神子じゃなくてだってば」


は神子だ そして、神子はとなる」


龍神の言葉にはワケが分からず首を傾げるばかりだった。



神子ってあかねって子の事だよね…?
つまり、私はあかねで…あかねは私となる?



意味の分からない言葉の羅列。
だし、神子は神子のはずなのに、目の前に居る龍神は違う事を口にする。


「思いだしたのか、神子?」


「思い出したって?何を?」


「記憶を」


ポリポリと頬を掻きながら、龍神の言葉に首を傾げた。
視線を上へあげ、考える素振り。



思い出したかって…つまりは、さっきの映像の事?
さっき鏡に映った女の子…私、じゃなくてあかねって子が繰り成す物語の映像?



「記憶だか知らないけど…変な映像は頭の中を流れたよ?」


「それが記憶だ 我が神子の…記憶」


その言葉には考えを止め、視線をシルエットへと向けた。


「ちょっと待って 記憶って…あのあかねって子の?」


「そうだ」


「何で見ず知らずの私が、そんな記憶を知ってるの?
 しかも、未来のはずなのに…なんで記憶?」


話が分かれば、次々と疑問が浮かんだ。
腕を組み、眉を潜め斜め下を見つめる


「汝は神子とは関わりのある存在 見ず知らずではない
 そして…あの世界では未来だが、汝にとっては記憶となっている」


ますますワケが分からない。
組んでいた腕を解くと、ワシワシとは自身の頭を掻いた。


「ちょっと待って、話を整理するわ
 私はあかねって子と関わりのある存在で、だからあかねって子の記憶…まぁ、今は未来なんだけど…それが分かると
 で、龍神は私にあかねを助けろと?どうやって?」


とりあえず、分かっただったが理解、とは程遠かった。
けれど話の筋道を立てればそういう事で、の言葉にシルエットは静かに頷き返した。


「汝の知る記憶で、その通りの未来へと進めろ
 それが神子を助ける事となる」


「今の私はどうなってるの?なのにあかねって呼ばれるし…」


「それは汝の魂が神子の身体に入っているからだ」


「どうして私なの?」


「汝にしか出来ぬ事だから」


「どうして私にしか出来ないの?なんで私はあかねの記憶を知ってるの?どうして私は…私は知らないのにあかねと関わりがあるの?」


上げればキリのない疑問だけれど、口をついて出てきてしまう。
けれど聞かずにはいられなかった。


「それはまだ…知るべき時ではない お主はただ、知る記憶の通りの未来を築きあげればよい」


「…分かった それで私は…元の世界へと帰れるのね?」


その問いかけに龍神は静かに頷いた。
分からない事はまだたくさんある最中、それでも帰る為にやるべき事は分った
疑問は尽きなくても、前に進む事は出来る。



やってやろうじゃないっ…!



そうして、は強く決心したのだった。








To be continued........................




うえー…分かりますか?ついて来れてますか?(汗)
私はついて来れていません!(笑(駄目じゃん!)

まだ疑問点は残したまま、ストーリーは進んでいきます!
次回も楽しみに待っててくださいにゃ☆






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