アクラムの狙いは一体なんなの…?
知ってる未来と知らない未来…入り混じるそれらが分からなくなる











transmigration 第十三話












「蘭!!やめさせてくれ!!!」


「………」


天真は必死にランに呼び掛けた。
の身体の繰り出す攻撃を、止めてくれと。

けれどランは天真の言葉に一向に反応を見せず、ずっとアクラムの傍に佇んでいた。
ジッとの身体と八葉達の戦闘を見物するかのように。


「………っ!!」


「ハァッ!」


の身体の繰り出す気の攻撃に、は息をのんだ。
やられる、そう瞬時に思い襲い来る痛みに耐えるべく目をつむった。

しかし、来ると思っていた衝撃は訪れず、代わりに泰明の声が身近で聞こえた。


「大丈夫か、


「や、泰明…さん?」


気遣う声にゆっくりと瞑っていた瞳を開いた。
目に留まるのは、を庇うように前に立ち片手をの身体へと突き出した格好の泰明だった。

繰り出された気の攻撃を、呪符を使って退けたようだ。


「ごめんね、泰明さん 私の身体が敵の元に渡ってしまってるばっかりに…」


シュン、と凹みながら謝罪した。
もし、の身体がアクラムの元に渡っていなければこんな苦しい戦闘なんてしなくて済んだはず。
攻撃も出来ず、だからと言って攻撃されるわけにもいかない。

堂々巡り。


「気にする事はない の責任ではない」


「そうだぜ、 こういうのはアクラムが悪いんだからな!」


泰明と天真の言葉は真っすぐにの胸に届いた。
悪くないと言ってくれる言葉は、本当に胸が温かくなる。

責める自分を温かく、優しく包み込んでくれるようで。


「ククククク 仲間思いな事だ だが、それが命取りとも知らずにな…」


「つあ!!」


「ぐっ!」


アクラムのその一言と同時に、天真と泰明が苦痛の声を漏らした。
の身体から発された気を必死に退けるも、数の多さに撃ち落とせないものもあったようだ。


「ククク 哀れなものだな 必死にそなたを守ろうと、傷ばかりを負う」


「くっ!!!」


「かはっ!」


打ち出される気を防ぐ暇もなく、天真と泰明はダメージを受ける。
身体は徐々に動かし辛くなり、ただただ痛みに耐えるばかり。


「やめて!!!アクラム、もうやめて!!!」


そんな制止も虚しく、の身体は二人への攻撃を一向にやめない。


「私の身体を返して!私の身体で、そんな風に皆を苦しめるなんて…嫌!」


「ククク そんなに八葉どもが大事か?」


「当り前でしょ!!!」


悲痛な叫びにアクラムは笑みをこぼす。
アクラムの問いかけに怒り任せに肯定の言葉を叫んだ、
キッとアクラムを強い意志で睨みつけた。


「…八葉の中でも…あやつは特別か」


「─────…」


アクラムの言葉に、は何も返さなかった。
何も、返せなかった。

大切な、特別な人が居たとしても、それはの身体あっての事。
あかねの身体に憑依しているような形の今、そんな感情は無意味でしかないのだ。


「そなたが、その身体ごと我の元へ来ると言うのであれば…身体を返そう」


「…あかねの身体をどうするつもり?」


アクラムの言葉の裏を読んだ
それはアクラムの『神子の身体は丁重にもてなそう』という発言から、きっと何かが待っていると予測出来たから。


「そなたには関係あるまい 元の身体に戻れれば、そなたは神子の身体とは無縁の存在なのだから」


「無縁だとしても、関係はあるわ」


ジッと瞳が混じり合う中、は臆することなく呟いていた。
答えられないという事は、何かがある事は確か。

ならば、そう易々とあかねの身体を渡すわけにはいかないと。


「それは、そなたが神子の生まれ変わりだからか?」


「そう あかねの身体に何かあれば…きっと未来の私は居ないわ」


「ククク 賢いのは嫌いではないが…命取りになるぞ」


アクラムの問い掛けにの答えはイエスだった。
今のあかねあってこそのなのだ。


「それはつまり…あかねの身体をどうにかしようとしているって…とっていいのね?」


「クククク ハハハハハ
 本当にそなたは賢いな その通りだ、


否と答えて欲しいと願っていた
けれどアクラムの答えはイエスだった。
否とは答えてくれなかった。


「だが、それをそなたに教えるほど、私は寛大ではないぞ」


「だろうね」


まるで見越しているかのようなの言葉が、アクラムは面白くなかった。
怖れおののいたり、驚き慌て伏したり、そんな姿を見たかった。
けれどは冷静なままアクラムの目論見を感じ取っていた。


「…いくぞ、ラン」


「はい、お館様」


アクラムの言葉に、忠実に返事を返すラン。
そして、人形の如くなんの表情も浮かべず何も言わずアクラムにつき従うの身体。


「待って!どこへ行くつもり!?」


「まだ…始まったばかりだ」


「だから何だって言うの!?」


立ち去ろうとするアクラムを制止しようと声を上げた。
けれど、クスクスと笑いながらアクラムは言葉を返した。


「せいぜいあがいてもらおうか、


「待て!正々堂々と勝負しろ!!」


笑い声と共に聞こえるアクラムの言葉。
アクラムに必死に叫び喰いかかろうとする天真。
無言のままアクラムの傍に佇むランとの身体。


「ハハハハハ…苦しむがいい もっと苦しみ、叫ぶがいい!
 おのが無力さを…とくと思い知るといい」


アクラムのそんな言葉が空間に響き渡る。
鬼の使う力の一つ、瞬間移動ですでにアクラムの姿はどこにもなかった。


「ちくしょう…ちくしょう!!!なんで…なんでなんだよ、どうして────…っ」


悲痛な声が天真の喉から絞り出された。
そんな天真が痛々しくて。


「天真くん…諦めちゃ駄目だよ ラン、少し反応してた」


「────え」


「希望は、あるよ だから、希望は捨てちゃ駄目」


反応してたのは確かだった。
それが天真の声じゃなく、龍神の鈴の音だったとしても。
アクラムの声以外に反応を示すのは、確かだったのだから。


「ああ…そう、だな サンキュ、


「ううん、どう致しまして 泰明さんも…今日は、ありがとう」


お礼を口にする天真に、にっこりと微笑みを浮かべ首を左右に振った。
当然の事をしたのだから。

そして、共に戦ってくれた泰明にもはお礼を述べた。
心から、本当に助けられたと思ったから。


「礼を言われるほどの事はしていない
 私はただ、すべき事をしたまでだ」


「フフフ 泰明さんなら、そう言うと思った」


肩を竦めた。
純粋無垢に感じる泰明ならば、きっとそう言うんじゃないかと。
そう思いながらも、お礼を口にせずにはいられなかった。


「……何故、は私の考えが分かる?」


「え?」


「………は、私とは違うというのに」


何故と問われた言葉に、一瞬の事ですぐに返事が出来なかった。
けれど、そのあと紡がれた泰明の言葉にの意識はとらわれた。



違うって……どういう、事?



それが疑問だった。
けれど、頭の隅の方で何かが見え隠れした。
それはきっと、過去の記憶。

あかねが泰明に聞いた話の─────…断片。








To be continued....................





第六章終了です。
そして、ヒロインと泰明も進展していけば……いい、のだけ…れど…(遠い目)
とりあえず、主人公の急展開恋愛イベの前に泰明の秘密がヒロインに明かされるのか?
どうしよう…ど、どどどどどど、どうしよう!!(汗)

てか、完全にゲームと漫画がごっちゃになってるよ!!(汗(笑)
────…まぁ、いっかっ!(ぉい)






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