分かってしまう…強まる気持ち──────…二つの気持ちが










transmigration 第十八話










「今日はごめんね、あかねちゃん 嫌な思いをさせちゃった…
 ボク、どうしても彼に気持ちを説明したかったのに、上手く言えなくて…何も伝えられなくて…」


辛い気持ちが伝わってくる。
その言葉にあかねも、も胸が締め付けられる。



そんな事ないのに……きっと、きっと…どこかで伝わった…
今はアクラムには勝らないかもしれないけど…でも、何も伝わってないって事はない…

じゃなきゃ…あんな風に………反発したりしないよ…………



の言葉は誰にも届かない。
思うばかりで、誰も聞いてはくれない気持ち。



どうして…どうしてあかねは……そう言ってくれないの…?



もどかしい気持ちは膨れるばかり。
誰にも聞届けてくれない気持ちは、吐き捨てられるばかりで空回り。


「詩紋くんは頑張ったじゃない 次は通じるかもしれない 頑張ろうよ」


「そうかな…そうだと…いいな そうなるように、頑張るよ」


にっこりと、あかねの言葉に少しだけ寂しそうに、けれど嬉しそうに微笑んだ詩紋。
そんな表情が少しだけ痛々しく見えたのは、の目の錯覚だったのだろうか。


「今日はボクのワガママに付き合ってくれて、本当にありがとう。
 それから……いろいろとごめんね、あかねちゃん」


そう言うと、詩紋は駆け足で部屋から出ていった。
すぐに姿は見えなくなる。


「…………謝らなくたっていいのになぁ…」


見えなくなった詩紋の去った方向を見つめ、あかねはポツリと言葉を漏らした。
それにはも同意だった。









「あ、詩紋くん!」


「あかねちゃん?」


「うん、そうだよ」


掛けられたあかねの声に、首を傾げた詩紋。
今までが今までだったのだから、その反応は正しく、あかねは苦笑した。


「それより、今日これから黒染に行ける?」


「あ、呪詛の手がかりだね?うん、大丈夫だよ」


コクリと頷く詩紋に、あかねはホッとした。
「じゃぁ行こう!」とあかねは詩紋の手を取り駆け出し────

トンッ…


「わぷっ!?」


「…すまない、神子 大丈夫か?」


前からやってきた泰明の胸に顔面激突。
衝撃にビクともせず佇む泰明は、ぶつかってきたあかねに視線を向け問い掛けた。


「だ、大丈夫れふ あいたたたた…
 それより、泰明さんどうしたんですか?」


鼻の頭を軽く触りながら瞳を細めた。
それからゆっくりと上目使いで問い掛ける。


「…これから黒染へ向かうのか?」


「え?あ、はい…そうだよね、詩紋くん」


「あ、うん 今、丁度行こうって話をしていた所なんです」


あかねのいきなりの振りに慌てて頷いた。
視線を問いの本人である泰明に向けると、言葉を続けた。


「そうか では、私も同行しよう」


「本当!?泰明さんが一緒なら安心だね、あかねちゃん!」


泰明の言葉に詩紋は嬉しそうに微笑んだ。
あかねだって力はあっても、女の子という現実。
そして泰明は力も強ければ陰陽師という出で立ち。

安心できるのは詩紋だけでなく、あかねもそうだった。


「うん、そうだね それじゃ…行きましょう」










「詩紋くんと一緒にここに来ればいいって藤姫は言ってたけど…」


黒染に到着し、あかねは呟きながら辺りを見渡した。
それらしきものなんて、全く目に入らない。


「詩紋くん、何か分かる?」


「…うん、分かる 分かるけど…」


あかねの問いかけに、少しだけ言葉を濁らせた。
その様子にあかねは眉を潜めた。


「詩紋、何かあるのか」


「うん、大丈夫 ごめんなさい」


泰明の率直な問いかけに、少しだけ間を空けると即座に答えた。


「元気ないみたいだけど、詩紋くん大丈夫?」


「え?」


「何か気にかかる事でもあるの?」


まさか、あかねからそんな指摘をされるとは思わず、詩紋は目を丸くして声を上げた。
だからあかねは苦笑を浮かべ、首を傾げた。


「うん、あの…鬼の人達、本当に朱雀を呪詛してるんだなって思って…
 ボク、まだ信じてるんだ 信じていたいのに………ごめんね、あかねちゃん
 こんな事言ってても朱雀は解放されないのものね」


視線を下げたまま、ポツリポツリと元気じゃない理由を述べた。
先日のセフルとの事が、未だに心に残っているのだろう。


「うん、やっぱりそうだ」


「どうかしたの?」


いきなり上がった詩紋の声に、あかねは逆側に首を傾げた。


「空気が重い気がする どうしよう、あかねちゃん 朱雀が苦しんでるのが分かる…」


眉間にシワを寄せ、眉をハの字にして言葉を続けた。
胸がギュッと締め付けられるような感じを、詩紋は感じた。


「でも…青龍の呪詛を祓ったみたいに、朱雀の呪詛も祓おうよ!
 ボク、一生懸命頑張るから だから、一緒に頑張ろう?」


「うん、頑張ろうね!」


心配してしまっているのが伝わってしまった。
一番しっかりしなくちゃいけないのに、と思いながらも詩紋の言葉に大きく頷いた。


「泰明さんも、頑張りましょう?」


「ああ、無論そのつもりだ」


あかねの言葉に、いつもの調子の泰明。
相変わらずな答えに詩紋もあかねも苦笑した。


「あのね たぶん…なんだけど、呪詛がある場所は分ったよ」


「え!?」


「何だか嫌な感じがするから…」


「鬼がその穢れを使って朱雀を操っている」


詩紋の言葉に驚くあかね。
泰明は驚きを表情には表わさず、淡々とした口調で告げる。


「どこから感じるのだ?」


「ええと…」


泰明の問いかけに神経を研ぎ澄ませる。
瞳を閉じ、詩紋は必死に嫌な感じのする方向を探った。

それは、すぐに感じる事の出来るものだった。


「十祖の方角は北西だよ、これは間違いない だから、ここから北西の場所を探しに行こう!」


「そ、そうなの?」


ハッキリと言い切る詩紋に、驚くあかね。
神子なのに役に立たない事に、少しだけ心の中で落ち込むも呪詛解除を急く気持ちが疼く。


「うん 北西の方から嫌な感じがするんだ
 嫌なにおいって言えばいいのかな…ボクにも上手く言えないけど」


「北西っていうと……何があったっけ?」


首をかしげ、京の地図を脳裏に浮かべるあかね。
けれど、霞んでよく見えず何があるのか思い出せない。

それは、まだ京に来たばかりで、しかもずっとが現れていたから。


「桂、野宮、双ヶ丘、吉祥院天満宮、松尾大社か」


「あと、蚕ノ社と清水寺も範囲内だと思うよ」


出てきただけでも七か所。
その多さに少しだけ頬が引き攣るあかね。


「い、一か所ずつ回って探してみるしかないよね」


そう言うと、一つ息を吐き捨て「頑張ろうね!」と声を上げた。
頑張らなければ進展しないのだから、仕方がない。


「っと…まず、どこへ行くの?あかねちゃん」


「そうだね ええと──────」



あかね…あかね…



「────清水…」



蚕の社──────…そこに…行って……



聞こえたようなの声。
実際にはあかねには届いていないのだが、それでも何かを感じたあかね。

清水寺と口にしようとしたが、その言葉はピタリと止まった。


「…あかねちゃん?」


「神子、どうかしたか?」


全てを言わず止まったあかねに、詩紋も泰明も首を傾げた。



何も聞こえてない…けど、清水寺じゃない気がする…
多分………たぶん、関係ある場所は───…



あかねはそう思うと、再度口を開いた。
ゴクリと息を呑み、それが当たりであることを祈る。


「蚕の社 そこの気がする」








To be continued...............





呪詛解除イベー!
やっぱりヒロインが登場してくれないよー!!(涙)
いつ復活させよう?させよう?(もんもん)






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