ねえ……泰明さん 私白状するよ………私ね──────











transmigration 第二十七話












「ごちそうさまでした!」


パンッ

両手を合わせ、礼儀正しく食事終了の合図。
が、すぐにフーと息を吐き満腹を示す様に胃を摩っていた。


「お腹一杯──!凄い美味しかったよ、泰明さん」


「それならば良かった 片付けてくる」


「えっ 私も手伝う!」


泰明の言葉に慌てて立ち上がる
その様子に泰明は一瞬キョトンとした表情を浮かべていた。


「…私、何か変なこと言った?」


ポリポリと頬を掻き、泰明の反応に疑問を向ける。
その様子も泰明のツボに入ったのは、微笑を浮かべていた。

滅多に見る事の出来ない、泰明の微笑。


「〜〜〜〜〜〜〜〜っ」


はそこで待っていろ」


その微笑みに真っ赤になったを見て、食事の台を持つとそう言い残し立ち去って行った。
には止めるすべはなかった。

照れてしまっていたのだから。



何あれっ
ちょっと……あんなの、いくらなんでも反則っ



両手で頬を覆い、ブンブンと首を左右に振る。
照れは絶頂を迎え、落ち着かせようとしても落ち付かなかった。





「あ、泰明さん もう片付けはいいの?」


「式がやっている」


その言葉に『なるほど』と納得した。

ここは陰陽師でもある清明邸の一角。
そして陰陽師でもある泰明の庵なのだから当然だろう。


「……泰明さん」


「なんだ」


「少し……お話があるの」


意を決したかのように、はそう切り出した。
その言葉で、その表情で、泰明も何の話なのかを悟ったようだ。

の前に、ゆっくりと腰を落とし正座した。


「泰明さんが…ちゃんと気持ちを言ってくれたから
 だから私も、ちゃんとしないといけないと思う」


ごくり

息を呑む音が二つ、聞こえる気がした。
確かに泰明もも息を呑んだ。
しかし、それが互いに聞こえるはずもないのだから、ただの気の所為なのだ。


「やはり……駄目だろうか?」


珍しく消極的な泰明の発言に、は微笑んだ。
いつもは、何に対しても自信一杯で突き進むのに、今の姿は想像もつかなかった。

誰も知らない泰明の一部を垣間見た様な気がした。


「ううん、そんな事ない 私ね……たぶん、ずっと……泰明さんに惹かれてた」


っ」


の言葉に泰明の嬉しそうな声が上がった。
イエスともとれる答えは、泰明には喜ばしいものだった。


「初めは、あかねの身体に宿っているから諦めなくちゃって思った
 そのあとは、龍神に与えられた使命を全うするためにも諦めなくちゃって思った」


の手が、徐々に汗ばんできた。
ドキドキとなり止まない心臓は、すべての音を遮断するかのよう。


「だけど……だけど、龍神が言ってくれたの 私の思うがままにって」


言葉を止めても、誰も何も言ってはくれない。
ただ話をし、自分の気持ちを伝えるだけ。

だって、泰明はの答えを待っているだけなのだから。


「だからね、私…正直になろうと思う」



この先の事は怖い



「私は─────…」



龍神が承諾をくれたからって…



「泰明さんの事が………」



それで本当に正解の道筋なのか分からない…
ただ、信じて進むしか出来ない



「………好き」



もう、諦めたくないから
もう、止められないから………



静かに微笑みを浮かべ、はそう口にした。
言葉と共に、心の中でも気持ちを決心するかのように、後押しするかのように。


「─────


スゥゥゥウウウウゥゥゥゥ

静かに、泰明の顔の印が消えていった。
それは、清明から施されたまじない。


「私は今……とても満たされている」


空虚だった泰明は今、恋というもので今は敷き詰められている。
満たされた泰明には、すでにの心の声は聞こえなくなっていた。


「………?」


目の前で頬を染め、嬉しそうな笑みを浮かべる
しかし、心の声が聞こえなくなったことで不安そうな表情を浮かべる泰明が居た。


「…泰明さん?」


「何も…聞こえぬ」


「え?」


「何も……の声が…聞こえぬ」


「私の声……聞こえてないの?」


「違う…その声ではない その声では─────」


そこでは気付いた。
泰明の言っている『の声』とは、以前泰明の言っていたの思考の事だと。


「もしかして…私の考えている事が分からないの?」


「〜〜〜〜〜っ」



ああ、やっぱりそうなんだ



泰明の表情で、は己の指摘が正しかったと確認した。
そして、微笑んで泰明を優しく抱き締めた。

まだ、少しだけ恥ずかしかったけれどそれどころではないと思えたから。


「大丈夫 それが普通、それが人間だよ…泰明さん」


トクン

トクン

静かに伝わり合う互いの鼓動。
それを聞いていると、も泰明も落ち着いてきた。


「普通?人、間…?」


「そう 人間はね…人の心とか考えている事なんて全然分からないものなの
 泰明さんは……ちゃんとした人間だよ だから、聞こえないんだよ」


「そう……なのか?」


「そう だから、安心して?何も変わってなんて居ない 私はずっと泰明さんが好きだし……」


そこまで言葉を紡ぐと、は口を閉じた。
そして、泰明にどうなのかと問うように視線を向けた。


「私も……ずっとが好きだ…」


その言葉に満足そうに微笑む
抱き締めていた身体を離し、もう一度最高の笑みを浮かべた。


「大丈夫 少しだけ人の考えが分からなくなっただけ 泰明さんは泰明さん…何も変わってなんていない」


ね?と問うように首を傾けた。


「ああ 私は私だ」


まるでその言葉を丸々呑みこむように、泰明は頷いた。
吹っ切れたかのように、けれどまだ不安は残っているかのような表情を浮かべて。


「大好きだよ………泰明さん」


ふわり、再度そう言葉を口にした。
その言葉に泰明は顔を赤く染めた。


「…私も、を愛している」


泰明も表情を緩め、愛情を言葉で表した。
すると、はボンッと効果音が鳴りそうな勢いで顔を真っ赤に染め上げた。











「あれ?泰明さん…そのまじない、戻しちゃうの?」


「ああ 他の者は、不思議に思うだろう だから……」


そんな言葉を交わしながら、泰明とは藤姫の屋敷へと共に歩みを向けていたのだった。








To be continued.....................






両想い、晴れて両想い────♪
子が巣立っていった感じがします。(笑)

漫画とゲームのあるシーンを、今回は夢に取り込みました。
やっぱり、あのシーンは欲しいなーと…でもあかねとだと……という考えからあかねではなく、ヒロインにお願いしちゃいましたw

さー、残るは玄武解放と最終決戦ですね─────!!(^O^)/






transmigrationに戻る