行け─────…

追いかけろ──────…

我が神子よ────…我が神子を……











transmigration 第二十九話











シャン…

シャン…


「………?」


聞こえた鈴の音に、は足を止めた。
それは泰明と共に、清明邸にある泰明の庵へ帰る途中の事だった。


、どうかしたのか?」


「あ、泰明さん んー…気の所為かもしれないし……」


鈴の音は聞き慣れたもの。
けれど、一体何なのか分からずに眉を顰めた。


我が神子、よ─────…我が神子を追え


「─────っ!?」


聞こえた龍神の声に、パッとは空を仰いだ。
居るはずもない姿。
けれど、そこに居るような感覚。

頭に響く、声。


?」


船岡山へ────…


「船岡、山……」


龍神の声を復唱するように、はポツリと唇を動かした。
それからパッと泰明の方へと視線を向けた。


「泰明さん!船岡山…船岡山にあかねがいるみたいなの!!」


その言葉に泰明は驚きの表情を浮かべた。
コクリと一つ小さく頷くと、と同時に船岡山の方へと駆け出した。



あれほど屋敷から出るなと言ったというのに……



ギリ…

泰明は奥歯を噛みしめ、後ろをついてくるを気遣いながらも先を急いだ。











そのころのあかねといえば……


「はぁ、はぁ……急いでここまで来ちゃったけど…
 どうしてこんな所に来ちゃったんだろう?」


到着した船岡山で、息を切らしながらも疑問を口にした。
呼ばれた、という言葉が正しいような感覚。


「───誰だ?」


「ラン!あの……私……」


聞こえた声に、あかねはすぐに誰だか分かった。
驚いたように声を上げ、それから言い辛そうに言葉をかすかに漏らした。


「あの…あなたがいる気がして……」


「……… …… …………」


そういうあかねの言葉に、ランは反応を示さなかった。
無機質な瞳で、ジッとあかねを見つめるだけ。


「お前を────」


ゆっくりとしたペースで、ランは唇を動かした。


「排除するのが、お館様の望み」


「え…?どうし、て…嫌だよ もう……戦いたくない!!」


ランの言葉にあかねは悲鳴に似た声を上げた。
仲間である、同郷である天真の妹のランと平然と戦えるほど心は強くなかった。
冷酷でも、なかった。


「……でも、だって…」


「泰明さん、あそこ────!」


ランがそう言った瞬間、はあかねの姿を目に捕らえた。
泰明にそう伝えるとコクリと頷き。


「破邪!」


陰陽師の術を使った。
そして慌てて、はあかねへと駆け寄った。


「あかね、大丈夫?」


「泰明さん……大丈夫 私は大丈夫だけど……」


「…………」


あかねの向けた先に居たのは何も言わずに佇むランの姿。
あかねの心配の対象は、自分自身ではなくランだったのだ。


「鬼、神子を惑わし、手に掛けようとは」


キッとランを睨みつけ、ハッキリとした口調で言い切る泰明。
手に掛けようとしたのは、から見ても確かだった。

ただ、惑わしたのかは分からなかったけれど。


「八葉…そして、生まれ変わりの お前達を排除する」


ランの視線が捕らえたのは、地の玄武である八葉の泰明とあかねの生まれ変わりであるだった。
ゴクリとは息をのんだ。


「ラン!こんな所にいたのか」


「………」


銀色の炎と共に現れたイクティダールに、ランは視線を静かに向けた。
けれど、それ以外に何も言葉を発する事はなかった。


「お前は今、不安定な時期だ 戻るんだ」


「…分かった」


イクティダールの言葉に忠実に従い、ランは共に姿を消した。
鬼の使う力、怨形の力だった。


「行っちゃった……」


「うん」


の言葉に、あかねも静かに頷いた。
視線を上げると、丁度歩み寄ってくる泰明の姿が目に留まった。


「神子」


「は、はいっ」


「「私を呼べ」と言わなかったか?」


いけない事をしていたという意識があったのか、あかねは泰明の呼び声にビクリと肩を揺らした。
そして、淡々とした口調で指摘された言葉にシュンっと落ち込む。


「あっ、ごめんなさい……」


「謝れとは言っていない 怪我はないか?」


謝るあかねに溜め息を吐く泰明。
そして、気遣う言葉をあかねに向けた。


「あ、はい これからは気をつけます」


落ち込んだまま、そう言うあかね。
しかし、泰明の口から出てきた言葉はまたもあかねを凹ませるものだった。


「期待はしていない」


「…ごめんなさい〜〜〜」












「ただいま〜」


「誰も居ないのに何故、言うのだ?」


の言葉に泰明は首を傾げた。


「何でって……だって、言った方が帰ってきた〜って気分になるでしょ?」


「…そういうものなのか」


「そういうものなの」


の言葉に、面白い話を聞いたと言わんばかりに相槌を打つ泰明。
その言葉にはクスクスと笑みを零し、コクリと頷いた。


「六月九日までに…呪詛を解けばいいんだよね?」


「そのように藤姫は言っていた」


の再確認に、泰明はコクリと小さく頷いた。
そして、柔らかに優しく微笑んだ。


「大丈夫だ、 私が傍に居る」


「………うん、そうだね」


もその心強さに微笑みが零れた。
そして、外へと視線を向けた。


「まずは北山 そこに行けば手がかりが見つかるかもしれない……」








To be continued.......................




とうとう初日イベは終了です。
ヒロインと泰明をラブラブにしたいけど、上手く出来てるかが不安は今日この頃。
泰明ってラブラブになると、ストレート発言連発しそうですよね。(笑)






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