あなたが……あかねの──────……









transmigration 第三十一話









「……よく気付いたな、


「え?」


あかねの部屋へ向かう最中。
いきなりの泰明の言葉に、は首を傾げた。


「朝?夢?どうして私の夢に……ランが?」


「神子様、泰明殿と様が………」


キョトンと、状況が把握出来ずクエスチョンマークを背後に飛ばしているあかね。
藤姫が訪ね人の事を伝えようとするが一歩遅かった。


「神子 気が乱れている」


「あ…さっきの泰明さんの言葉ってそういう意味か…」


その言葉では、泰明がさっき言った言葉の意味を知った。
なるほど、と手を打ち合わせ泰明の言葉を待つ。
何か手があるのだろうと、その表情を見て分かったから。


「一緒に来い、神子」


「あかね連れてどこか行くの?」


「ちょっと…泰明さん、どうしたの?な、何?」


ぐいぐいと進む泰明に、ついていけない様子のとあかね。
二人は顔を見合わせ首を傾げた。


「いいから、着いてこい 行けば分かる」


「私も行った方がいい…よね?」


首をかしげ泰明に指示を仰ぐ
その言葉に泰明はコクリと頷き返し、また歩き始めた。


「「あ、待って!」」


とあかねの二つの声が同じ言葉を紡いだ。











「ここって……」


「北山…?」


あかねの言葉に続く様に、が首を傾げた。
確かにそこは、北山と呼ばれる場所だった。



何だか分らないけど……今は黙っていた方がいいかな



あかねはそう判断し、何も口にはしなかった。
しかし、はその対照的な行動をとった。


「泰明さん ここに何かあるの?」


「そうだ ……あれを見ろ」


の問い掛けには、コクリと頷き返事を返す。
指示する先に居る影を、あかねとはジッと見つめ────…同じ色の四つの瞳がその姿を捉えると。


「「!」」


驚きの表情を浮かべた。


「あれ……ランじゃない!どうしてこんな所に?」


「分からない」


あかねの驚きの言葉に、泰明は首を左右に振った。
ランがここへ来ている理由を、泰明が知るはずもないのは一目瞭然だ。


「本人に聞くしかなかろう」


「え?」


ポツリとそう告げると、泰明はスタスタとランの方へと歩き出した。
あまりの突拍子もない行動に、あかねも目を丸くしていた。


「鬼の娘、何をしている?」


「………?」


掛けられた声に、ランは静かに振り返った。
一体何だろう?と不思議そうな瞳は、泰明を捉えると一瞬にして色を変えた。


「……ああっ……」


両手で頭を抱え、悲痛の声を漏らした。


「思い出せないの……何も 本当は─────…」


声が絞り出されるように発された。
それが痛々しく見えて、は眉間にシワが寄った。


「───…本当は、戦いたくなんかないのに…」


それがランの望みだった。
その気持ちは、アクラムに操られ戦わされていたにはよく分かるものだった。

目を、逸らしたくなった。


「何が思い出せないの?私で良かったら…話を聞かせて」


柔らかな口調で、あかねがそう切り出した。
軽く首をかしげ、ランの様子を伺いながら。


「お館様が…私の封印、弱くなったから……」



まさか─────…



ランの言葉に、は目を丸くした。
身体がカチコチに固まってしまったかのようで、動けずにいた。


「また、術を施すと仰って天天でも、お館様の術は怖いっ」


両手でランは自らを抱き締める様に、肩を抱いた。
恐怖をぬぐい去ろうと、ランは目を頑なに閉じていた。


「術を掛けるお館様は怖いっ」


「だから……逃げてきたの?」


ランの言葉の続きをが紡いだ。
そこで、ランの瞳にの姿が映り込んだ。


「ああっ」


そこには、見覚えのある姿。
共に術を掛けられ、意思とは逆の行動をさせられていた────…いわば仲間。


「この娘の気が異質している」


「え?」


泰明の言葉に、は首を傾げた。
その瞳は泰明を捕らえ、言葉の続きを促した。


「いや、薄皮となっていた鬼の術とやらがはがれたのか……」


一人そう納得すると、へと視線を向けた。


「この辺りの気が乱れているのは、この娘の心の揺れの影響だな
 鬼に利用されるほどの……強い、気だ」


スッと瞳を細めた泰明は、淡々とした口調でそう告げた。
そして、今度は泰明の瞳はあかねへと向けられた。
少しだけ間を空けてから、ゆっくりとその唇を開いた。


「───この娘の気は、神子の気の波動によく似ている」


あかねは龍神の神子、それも白龍を受け持つ神子。
そして、ランは──────…

はあかねの生まれ変わりで、五行を扱う事が出来るが神子ではない。
同じ龍神に選ばれる神子は一人、なのだから。


「ちょっ、ちょっと待って下さい、泰明さんっ!」


その言葉に、あかねが慌てて静止の声を上げた。


「私とランの気が似てるって……どういう事ですか?」


「言葉通りだ」


「お館様は…私に言った」


あかねの問い掛けに泰明が完結に答え。
ランがアクラムから言われた言葉を思い出していた。


お前は黒龍しか呼び出せない半端な神子だ
 黒龍は破壊を、白龍は再生を……だから白龍を呼び出せる真の龍神の神子が必要だ



その言葉を思い出しながら、ランはそのアクラムに言われた言葉をあかねや、泰明に伝えた。
その言葉に、あかねとは顔を見合わせた。



ランの言ってる…白龍を呼び出せる神子って……あかねの事、だよね



そうは内心呟いていた。


「龍神は……一つじゃ、ないの?」


その問いは当然のものだった。
泰明は一つ息を吐き出すと、あかねを真っすぐ見つめた。


「私もお師匠に聞いた事がある 龍神は二つで一つだと 万物には陰と陽があり、龍神も二つで一つの陰陽を成すと……
 白龍は創造を司る陽の龍 そして、対極の黒龍は破壊を司る陰の龍 太極図は双龍が絡み合った姿でもある」


その言葉を聞き、はあかねとランを交互に見つめた。



ランが…………あかねの対の存在……
白龍の神子であるあかねの、対である黒龍の─────…神子



はそう、心の中で紡いでいた。
知っていたはず。
なのに聞くと驚いてしまう事実。

白龍の神子の友達の妹が対である偶然さに、必然さを感じてしまった。









to be continued......................




中日イベ、まだまだ途中────♪
何気に、結構長いものなんですね。(笑)






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