あの日、あの時……私は明日で全てが決着がつくと思ってた
ああすれば、全てはうまくいくんだと……思ってた

ずっとずっと……目を逸らしてきたんだ

ああすれば、悲しむ人が大勢いることから……私の思う道に進むために……ずっとずっと────










transmigration 第三十七話










「……玄武が……玄武が、私達に味方してくれる これで……これで終わりなんだ」


余韻に噛み締めるあかね。
その様子を見つめていると、は嬉しくなった。
これで解放される、これであかねはもう心配する必要がなくなるのだ。

あとは、すべてが受け持つのだから。


「玄武が……力を取り戻した 四神が集う……」


泰明がそう口にした瞬間だった。

ポツポツポツポツ……

冷たい雫が肌を打つ。
そして徐々にその感覚が短くなり、ザァーっと盛大に地面を濡らした。


「雨が……」


「雨が降り始めた!!鬼の呪いが解けたの!?」


呟くの声に、あかねが大きく声をかぶせてきた。
嬉しげに雨の降る空を見上げ、嬉々とした色を見せる。


「終わりだ……どうする?」


「……そうか 力をつけたな……神子」


泰明の言葉に、イクティダールはフッと笑った。
まるで、勝ってくれてありがとうと言わんばかりに。


「アクラム!」


突如姿を現したアクラムに、天真は声を上げた。
ギッと睨みを利かせる。


「蘭はどうした!?」


その声に、アクラムは鬱陶しそうな表情を浮かべた。


「またお前か よくよく諦めの悪い……」


「蘭を返せと言ってるんだ」


「断る あの娘には、まだまだやってもらわなければならない事があるのでな」


くすくすと笑いながら呟くアクラムの言葉に、天真はカッとなった。
返せと言っているのに、いけしゃあしゃあと言う言葉。
ずっとずっと探していたのに、目の前にあるというのに、取り戻せない妹。


「……んだと!?」


「天真、待て」


怒りで突っ走りそうになるのを、泰明が制止した。
ギリ、と奥歯を噛みしめる音が聞こえた。


「あの娘は、龍神の神子の代わりだ 返せないのだよ」


ククク、と笑う声が木霊する。
人を何だと思っているのだと、は叫びそうだった。
けれど、帰ってくる答えは一つ。

『道具』だろう。


「やはり、黒龍か」


「さすがに陰陽師だな そうだ、ランはそれが出来る」


泰明の言葉に、アクラムは楽しげに笑った。
より、ギリと奥歯を噛みしめる天真にの音も重なった。


「なんてひどい事を……」


「──イクティダール、完敗だな 全力だったか」


「はっ」


あかねの言葉さえ聞いていないかのようなアクラムの言葉。
イクティダールは忠実に、アクラムの言葉に返事を返した。


「……そうか ならば行け もう、お前はいらぬ どこへなりと失せろ」


「…………」


「イクティダールさん!!」


アクラムの言葉に、少しだけ悲しげな表情を見せるとイクティダールは姿を消した。
あかねの声すら、聞かずに姿を消した。


「人の事を同情する余裕があるというのか?流石だな、神子
 では、私も去るとしよう」


ククク……

喉から零れる笑いが、その場を満たした。
すでにアクラムの元に仕えるものは、誰ひとりとして存在しない。
それなのに高貴な雰囲気は崩れはしない。


「ま、待ちなさいよ!!」


「決着を……明日、神泉苑で」


あかねの声に、アクラムがそう返した。
背を向け、視線だけをあかねに向けながら。

そして、アクラムさえも姿を消した。


「取り戻す、絶対に蘭を取り戻す!いつまでもあんな奴に操られてたまるか!!」


「明日……明日で全てが決まる」


天真の叫び声に、あかねはポツリと口にした。


「うん……大切なものを守れるかどうか」


あかねの言葉に、は頷き返した。



大丈夫……私はきっと守り切ってみせる
龍神と約束したんだ……私が、私を……捧げるって



「大丈夫……私が居る 私が……私が絶対にみんなと、あかねを…………守るから」


誰にも届かないかもしれない言葉。
最後に残る悲しみさえも知らないふりをして、は一歩、また一歩と歩み出した。











to be continued.....................




とうとう最終章へと進みますー!!
なんというか、この話(第三十七話)ではヒロインの出番が少なかった?(苦笑)






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