一夜が明け、達は早速呪詛探しの為に町中へと繰り出した。
まずは藤姫の言っていた通り天真を誘い、丁度仕事もなく空いていた泰明に供を頼み音羽の滝へと向かう事にした。



上手く呪詛を解く事が出来ればいいんだけど…



そんな事を思いながらも一向は音羽の滝へと歩み続けた。













transmigration 第五話














「…どう?天真くん」


「ああ、大丈夫だ あか…じゃなくて、が封印の力を使えるように俺達八葉も力が強くなってるみたいだな」


「そうなの?」


音羽の滝で心配気に天真へと問い掛けた。
分からなければ意味がない。
分からなければ、他の方法を探すしかないのだ。

けれど、天真から紡がれた言葉には嬉しそうに微笑んだ。


「ああ だから、今感じてるんだぜ?呪詛のある方向」


「え!?」


「こっから…西 そっちの方で呪詛の気配を感じるな」


「西??えーっと…ここから西って言うと…???」


天真の言葉に首をかしげ、何があるかと考える
現代生まれだとしても、まだ観光で来たばかりの土地。
しかも、今居る場所は遙か昔の土地なのだから分からないのも当然だった。


「吉祥院天満宮、東寺、桂、蚕ノ社、松尾大社辺りか」


「それに、桂川川辺や羅城門跡もそうだろうな」


悩むの代わりにスラスラと答えたのは同行者の泰明だった。
さすが、と言わんばかりに次々に出てくる場所の名称。
そんな泰明の言葉に付け加えるように天真も場所の名称を口にした。


「うわぁ…七か所もあるんだ 一か所ずつ回って探さないといけないね…」


「だが、そうしなければ呪詛は解けない」


「うん 分かってるよ、泰明さん 頑張ろうね!」


言われた名称を数えていたは、うんざりそうに呟きながら肩を落とした。
けれど、前に進ませるかのように背中を押すかのように、現状を理解させる泰明の言葉には力強く答えた。


「んじゃ、まずどこに行く?」


「えーっと…松尾大社!」


天真の問い掛けに、少し首を傾げながら考えた。
どこに手掛かりがあるか分からないが、日も数知れず。
ゆっくりしてる訳にもいかず、一番初めにポンッと頭に浮かんだ場所に行く事にした。

それが一番正しいと、は思ったから。












「えっと…ここが松尾大社かぁ…
 あ、天真くん、泰明さん!あの人に聞いてみようよ、鬼の一族を見かけた事あるかどうか!」


「あ、ああ…」


「分かった では、そうしよう」


勢いあるの言葉に、一瞬たじろぐ天真。
それとは打って変わって、いつもの態度で淡々と返事をし歩み始める泰明。

と天真は慌てて歩き出している泰明を追いかけた。


「あの、いきなりですみません 少しお聞きしたい事があるんですけど…」


「なんじゃなんじゃ 民草ばかりが集まりおる」


の言葉に、鬱陶しそうに視線を向け『しっしっ』と言わんばかりの口調で答えたのは京に住まう貴族だった。
その様子に、天真は今にもキレてしまいそうに米神をピクピクと痙攣させていた。


「お前達は二人とも、左大臣殿の変わり者の姫君に養われておる者じゃったのぉ?
 物好きな事だ、あの姫君も」


「…なんだ?このおっさん、ケンカ売ってんのか?」


怒りを露わに拳を握りしめ、貴族を睨みつける天真。
その様子には慌てて制止しようとするも、一歩遅かった。


「おお、乱暴な事だ これだから下々の者は困ったものだ
 左大臣殿も、このような民草を養うとは余裕がおありだ
 ご本人の病ばかりではなく、桂の所領に鬼まで出ておるのにのぉ…おそろしやおそろしや」


「え…!?ちょっ…あなた鬼の事知ってるんですか!?」


貴族の言葉に制止する言葉は、驚きの言葉へと移り変わった。
質問に答えてもらえないと思い始めていたからこそ、情報を聞き出せそうで驚いた。


「失礼なことを申す出ないぞ この京にまろが知らぬ事などないのじゃ」


「す、凄い!!!」


「ふふん、当然じゃ 鬼が桂に現れた事は最近、我ら貴族の間では一番の話題じゃからな
 桂といえば、左大臣殿をはじめとした藤原一門の所領だからの」


の褒め言葉に気を良くした貴族はスラスラと情報を話してくれた。


「左大臣殿の病、それにこの鬼騒ぎ 大きな声では言えぬが、この世が左大臣殿のものではないという天からの知らせかもしれぬぞ」


「…ちょっとそれは言い過ぎじゃないですか?」


貴族の言葉に、ムッとした表情を見せる
その言葉に貴族の表情も上機嫌のものから不機嫌のものへと移ろった。


「なんじゃなんじゃ、教えてやったというに…」


「……………」


怒り爆発寸前の天真に変わり、貴族を睨む泰明。
その気迫に貴族はたじろいだ。
今にも後ずさりをしそうなほどだった。


「で、では…まろはこの辺で帰るとしよう
 そうじゃ、娘!まろの話は適当に忘れるようにな」


そう言い、慌てて立ち去る貴族。
達からある程度遠ざかったところで。

ドサッ…!

大きな音がした。
何かに躓いたのか地面に倒れた貴族は、慌てて立ち上がり着物についた埃を叩き落としまた走り去っていった。


「…派手に転んでたけど、平気かなぁ ま、それよりもこれからの事を考えなくちゃね」


「桂ねぇ…」


少し心配するをよそに、天真は唸りながら呟いていた。



他にヒントも何もないんだよねぇ…
私も、曖昧にしか覚えてないもんなぁ…



「他に手掛かりもないし、桂まで調べに行ってみない?」


「確かに範囲内ではある 、行くか」


「うん、桂に行こう!」


の言葉に、考えながらも行く方向で言葉を続ける泰明。
その言葉に嬉しそうに微笑みながら、は力強く頷いた。



分からないものはしょうがない
あかねだって、そうやって探してきたんだから…私も頑張らなくちゃね!

それに…曖昧にしか覚えてないけど…間違ってるって感じはしないし…



そう思いながら、達の足取りは今度は桂へと向けられたのだった。














「…なんか、広いよ…桂って」


「そうだ ただ闇雲に探しまわっても結果は出まい」


「だったらさ、誰かに話を聞こうぜ!」


桂について唖然とした
同意するように頷きながらも、ズバリと言い切る泰明にはさらに肩を落とした。

その様子に天真は苦笑を浮かべた。
腰に手を当て、一つ溜め息を吐くと提案してきた。


「うーん…そうしたいけどさ、私達なんだか怖がられてない?」


「どうする、


「そうだなぁ…やっぱり、人に聞くのが一番早いと思うよ」


私も悩んでるんだから、どうするか聞かないで!という訳にもいかず。
腕を組みながら首を左右に傾げ、やっぱり聞くという結果となった。

聞かずに探す事も出来るわけもないのだから。


「おや、何をしているんだい?こんな所で」


警戒しながらも、声をかけてきてくれたのは一人のおばさんだった。
これぞチャンスと言わんばかりに、は口を開いた。



このチャンスを逃すわけにはいかない…
きっと、この人なら話してくれるはずっ…!!



「実は、鬼のやってる事を確かめに来たんです」


「鬼の?そうかいそうかい まぁ、聞いとくれよ
 鬼を見てから悪い事ばかり起こるんだよ
 牛は病気になるわ、雨は相変わらず降らないわ、亭主はぐうたらだし、うちのガキは転んで歯を折っちまうしねぇ…」


そんな話を聞いて、は率直に思った。



それが鬼と何の関わりがあるのかな…



そんな思いがまるで分かっていたかのように、天真と泰明は同時に口を開いた。


「そりゃ、鬼とは関係ないだろ?」


「それは、鬼とは関係ない」


「関係ないとでも思ってるのかい!?全部鬼の所為に決まってるじゃないかい!」


「─────!?」


天真と泰明の言葉にキッパリと言い切るおばさんの言葉に、は言葉を失った。
まさか、そんな風に言い切るなんて全く思っていなかったから。


「うちだけじゃないんだよ よその家だって悪い事ばかりが起きているんだ」


「でも…全部が全部鬼の所為ってわけじゃ…」


「馬鹿言うんじゃないよ ここの井戸だってね、鬼を見てから枯れちまったんだよ
 鬼どもが何かしたに違いないんだよ」


全てを鬼の所為にしないで、と言おうとした瞬間。
の耳は他の言葉へと意識を取られた。



井戸が……枯れた…?



「あのっ!もしよかったら、鬼を見た時の話を聞かせてもらえませんか!?」


他の話へとそれないうちに、は勢いよく問い掛けた。


「いいよ」


その言葉と同時に、おばさんは鬼を見た時の事を事細かに教えてくれた。


 その辻を探しに行こうぜ」


「急ぐべきだ 


「うん!おばさん、お話ありがとうございました!」


天真と泰明の言葉に力強く頷き返すと、は踵を返し駆け出しながら話をしてくれたおばさんにお礼を言った。
軽く手を振りながらも、急ぐ


「どこらへんだろう…」


「─────っ!」


軽く小走りで辺りを見渡していると、聞こえた天真の息を呑む声。
足を止め、天真の方へ視線を向けるとどこか辛そうな表情に慌てて駆け寄った。


「天真くん、どうしたの!?大丈夫?」


「…頭がいてぇ 呪詛、があるな…」


の問い掛けに、頭を軽く抱えながら天真は呪詛の在り処を探した。
そして見つけたのは石の様なもの。


「とっととなんとかしちまおうぜ 痛くて仕方ねぇよ…」


「埋まってるけど、どうすればいいのかな…」


天真の言葉に頷くが、地面に埋まっている呪詛にどうすべきか分からない
石を目の前に、悩むは言葉を発していた。


、それを取り出すのだ お前の手で」


「おい、泰明 いいのか?そいつに触らせて やばいもんなんだろ?」


「これはでなければならぬのだ
 それは『呪詛の種』 地中に根付き、龍脈に食い込み四神を狂わせている…
 埋められている場所から、清らかなお前が取り出せば効力を失うのだ」


「私が?とりあえず…取り出せば、いいんだよね…?」


泰明の説明に、一瞬照れる部分もあったものの急いで石へと手を伸ばした。
触れて、地面から取り出すと何かが変わったような不思議な感覚が訪れた。


「それでいい 穢れは祓われた」


「…なんか、思ったよりも簡単だったね
 それより、また同じものが埋められたらどうするの?」


思った以上にやる事が簡単で拍子ぬけの
けれど、それよりも気にかかるのはまた呪詛を埋められたらどうするのか、という事だった。
もし、また埋められてしまったら堂々巡りじゃないかと。


「それはない その呪詛の種はすでに穢れは祓われた
 お前が触れた事で、お前の五行の力がこの地を浄化したのだ」


「それって、ここに流れた五行の力が呪詛をはねのけるって事?」


「そうだ」


「でも、浄化って?」


呪詛の種が埋められなくなったのはよく分かった。
けれど、それ以外に気になったのは泰明の紡いだ『浄化』という言葉だった。


「分からなかったのか?」


「うーん…何となく?でも、よかった…四神の呪詛を解く事が出来て」


「そうだな これで思う存分青龍と戦えるな!」


ホッとするとは裏腹に、燃える天真。
青龍解放まで、あと少し。


「この調子で、これからも頑張ろうね!」


天真に触発されるように、もより一層やる気になった。
元に戻る為に、助ける為に、仲間の為に。










To be continued...................





某攻略サイト様の攻略スケジュール(?)を参考にさせていただいております。
その為、途中の戦闘シーンなどは…抜かしちゃってますのでのでw

必須戦闘シーンは入れますけどね?ね?(汗)






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