「………」


「…」


無言のまま歩く二人のシルエット。
夕日に照らされて、地面に長く長く色濃く伸びていた。



何も言わずに合わせてくれる歩幅…
そんなかすかな心遣いが、私にはとっても嬉しいの

だって、それは貴方が変わった証拠の一つ…













私と貴方の歩幅の距離は














「………っ」


先を歩く黄緑色の髪。
美形で長身で、そして冷たい印象を受けるその性格の持ち主である安部泰明。
そんな泰明の後を必死に小走りしながら追いかけるのは、軽くウェーブのかかった少女、だった。



は、早いっ…



身長差があれば、歴然と足の長さも違ってくる。
足長な泰明のペースに合わせようとすれば、自然と無理が出てくるのだ。


「……大丈夫か?」


「あ、はいっ 問題ないですよ、泰明さん!」


ピタリと足を止めて振り返り、問い掛けた。
その言葉にはにっこりと微笑み、泰明の口癖である「問題ない」の言葉を口にした。


「…そうか」


そう言われてしまえば、そう返すしかない泰明。
すぐに視線は前に向いてしまった。



私だけの為に、泰明さんのペースは乱せられないし…
それに……



「泰明さんって変わりましたよね」


「何を言っている 私は変わってなどいない」


くす、と微笑みながら口にした言葉に泰明は淡々と言葉を返した。
変わっていないと言われても、変わったとハッキリと言えるほど出会った当初の泰明と今の泰明は違っていた。


「変わりましたよ 全然違います」


その言葉に振りかえる泰明。
その表情は、疑問に満ち溢れていては思わず笑ってしまった。


「なぜ笑う?」


「だって、泰明さん全然分からないって顔してるから…」


クスクス、と笑いは絶え間なく零れ落ちる。
すれば、泰明の眉間のシワも一層色濃くなった。



本当に…泰明さんは気づいていないんだなぁ…
歴然とした違いに…



だけが分かっている事実。
それはなんだか特別な感じがして、心がポッと温かかった。


「泰明さん 歩くペースとか歩幅とか変わらなくても…待ってくれるようになったじゃないですか」


「それがどうした」


「昔は、泰明さん全然気にせず一人でさっさと行っちゃってましたよね?」


の言葉に意図が分からない泰明。
だからこそ紡がれた言葉に、は苦笑しながら言葉を続けると。

こくり。

泰明が小さく一つ頷き返した。


「でも、今は待ってくれている それは、泰明さんが変わったって証拠ですよ?」


「……そう、なのか?」


まさか、そんな切り返しが来るとは思わなかった
不意打ちを食らったように、きょとんとした表情を浮かべてしまう。

けれど、すぐに表情はクシャッと緩んだ。


「そうですよ 泰明さんは変わりました」


そう言うと、は両手で泰明さんの両手を掴んだ。
小さな両手で、泰明の大きな両手を包み込み瞳を細める。


「好きですよ…」


「…


「昔の泰明さんもですが…それよりも、今の泰明さんが、ね」


頬を染め、泰明を見つめ微笑んだ。
その様子に、泰明も頬を軽く紅潮させて嬉しそうに微笑み返した。

ギュッ…

そして、身体に感じるのは強く抱き締められる感覚。


「やっ、泰明さん?」


…私も────」


驚きの声を上げるに、構わず言葉を続けた泰明。
抱き締める泰明の唇はの耳の傍にある。

吐息が、熱い言葉が耳をくすぐる。


愛している














.............................end




泰明さーんw
純粋無垢な泰明さん…でも、きっと変わったら態度に一番出そうな気がして…(笑)
そして、結構ストレートな言葉を言いそうで…書いてて照れます。

泰明、神子はどうした、神子は。(待て)






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