南校舎の最上階の北側廊下の突き当たり。
の毎日の日課の場所───…










“BBSオンリー17万HITプロジェクト!”苦い気持ち











「「「「「「「いらっしゃいませ。」」」」」」」
「今日も環をご指名で?」
扉を開けると、ホスト部員全員が出迎えてくれた。
そんな中、黒い帳簿を書き込みながら問いかけてきたのは部活の裏の部長と言われている鏡夜。
「ええ。環様でお願いします。」
「では…あちらのテーブルへどうぞ。」
コクリと頷くと、指し示されたのは窓際の1席だった。
ペコリと頭を下げると、は指定された席へと足を進めた。
椅子に腰掛けると、環が席までやって来た。
「いらっしゃい。また指名してくれて嬉しいよ、姫。」
そう言い椅子を引き環は席へ腰掛けた。
「相変わらずですね、環様。」
「今の俺から変わってしまう事を望まない姫様が居るからね。」
そう言いながらニッコリと微笑を浮かべの瞳を真っ直ぐ見つめて呟いた。
その仕草にドキッとしてしまうのは、当たり前だろう。
そして、いつもの事でドキッとした余韻に酔いしれている余裕はなかった。
姫。」
「あ、はい。なんでしょうか?」
掛けられた声にハッとして、すぐにニッコリ微笑み返した。
「何かお飲みになりますか?」
環がこの席へやって来る際に、持って来たのはお菓子のみ。
もしも飲むのであれば、これから頼む事になるのだ。
「ええと…それでは、アッサムを頂けますか?」
軽く首を傾げて、飲みたい紅茶の名を告げた。
このホスト部で出しているアッサムは、くせの少ない力強くコクのある味での最も好きなものだった。
「ああ、ハルヒ。」
「はい、なんですか環先輩?」
姫にアッサムを持ってきてくれ。」
丁度トレーを持ち近くを通りかかったハルヒに環は声をかけた。
その様子を見ると少しチクリと胸が痛むだが、気にする必要なんてないと言い聞かせていた。
ああ…環様から、ハルヒくんが女の子だって聞かなければこんな思いしなくて済んだのに…
ハァッと環にバレないようにため息を吐いていた。
「ああ、姫。」
「何ですか?環様。」
「ハルヒの正体の事は…───」
「分かってます。秘密、と言いたいのでしょう?」
ハルヒがアッサムを淹れに環と離れて歩き始めた瞬間、環が声をかけてきた。
その声に反応し、偽りの笑みを浮かべて環を見つめた
呟かれた途中の言葉で、は環が何を言いたいのか分かってしまい少し作った笑みを浮かべて呟いた。
「大丈夫です、環様。私は誰にも言うつもりはありませんから。」
ニッコリと微笑み呟く言葉は、環には嬉しい言葉だろう。
しかし、その言葉の裏に隠されたの感情には気付いていないようだった。
言えば環様が悲しむから……
それがが誰にも秘密を言わない理由だった。
全て環中心に、の世界は回っていた。
「お待たせしました、アッサムです。」
「あ…ありがとう、ご…ざいます。」
唐突に上の方から掛かった声に短く小さな声を漏らした。
トレーの上に2つのティーカップを乗せて佇むのはハルヒだった。
大きな音を立てない様に、静かにゆっくりとティーカップを環の前との前に置いた。
「それでは、自分はこれで失礼します。」
そう言うとハルヒは1歩後ろに下がってからペコリと礼をし立ち去っていった。
その後姿を見つめてからスッと視線をティーカップへと向け、手を添えた。
カップに唇を軽く付けて、アッサムの味を確かめつつ飲んだ。
「…美味しい。」
「お口に合ったようでよかった。」
「私、ここのアッサムが1番好きなんですよ。」
両手でティーカップを支えながらチビリチビリ飲み、環を見つめて苦笑を浮かべて呟いた。
がニッコリ微笑みを浮かべると、環もつられて笑みを浮かべて“それは良かった…”と呟いた。
「あの…失礼します。」
「え?」
突如聞こえた声には驚きの声を上げた。
すると、環は声がした方へ向きハルヒが立っている事に気付くと“ああ”と声を漏らした。
「合同接客だな?」
「あ、はい…お邪魔、でしたか?」
環の言葉にポツリと呟き頷き返すと、軽く首を傾げて問いかけた。
その問いに環はの方へと視線を向けた。
「…か、構わないですよハルヒくん。」
「だ、そうだ。」
そう環が返すとハルヒは“ありがとうございます、姫”と返し席に腰掛けた。
を挟んで左側に環が、右側にハルヒが腰掛けていた。
「そういえば、環先輩が誤って姫に自分の正体バラしてしまったようですね。」
「何でハルヒが知ってるんだ!?」
ハルヒの言葉に驚いたのは環だった。
環自身がにバラしたのに、その驚きようはなんなんだろうとは首をかしげた。
「部員全員が環先輩が姫にバラしたって知ってますよ?」
「…環様って…結構ドジなんですね。」
ハルヒの言葉を聞いてはキョトンとしたまま呟いた。
他言無用なハルヒの正体を、誤ってに喋ってしまった辺りでドジだとは思っていたが。
バラした事が部員全員に伝わっている事知らないのもまた、バカな話だろう。
「まぁ、環先輩のドジっぷりは今に始まったことじゃないですけどね。」
そのハルヒの苦笑した言葉に、はチクリと胸を痛めた。
そんな風に環様の全てを知ったように言わないで……っ!
そう言えてしまったらどんなに楽だろうか、とは心の中で呟いていた。
決して口には出さないの気持ち。
これは世間一般的に見て言えば“嫉妬”というものなのだろう。
「ハルヒィ…そんな風に言わないでくれよぉ〜」
「……すみません。気分が悪いので…今日はこれで失礼します。」
「「…え?」」
情けない声を出す環の言葉を聞いてから、グッと唇を噛み締めた
カタッと立ち上がり俯きながら呟くと、クルリと背中を向けて扉の方へ歩き出した。
が俯いて居た為、ハルヒと環にはの表情が全く見えていなかった。
「…おや、姫。どうかなさいましたか?」
いつもの営業の時にしか見せない鏡夜の嘘で塗り固められた笑顔が、この時ばかりはの脳裏に焼きついた。
「…気分が悪いので…失礼させて頂きたくて……」
「うちの部員が何か気に触ることでもされましたか?」
「……。」
俯きながら呟くと、すぐに鏡夜の問いかけが返ってきた。
その問い掛けにはは答え様とはしなかった。
「…ふぅ。」
「?」
一度環の方へと視線を向けた。
ハルヒに合同接客を言い渡したのは鏡夜。
少し申し訳なく思うのか、ため息を吐くとが首を傾げて鏡夜を見上げた。
「…少し、お時間いいですか?」
「え、どこに…?」
スッとの手を掴み鏡夜の手の上に乗せると、スッと少しだけ上に持ち上げた。
鏡夜の言葉にはキョトンとした表情で問いかけた。
その問いにはニッコリと微笑みで返すだけで、チラッと一度環の方へと視線を向けた。
「環。少々姫をお借りするぞ。」
そう言うと、には見えないように何処となく嫌な予感を感じさせるようなニヤリとした笑みを鏡夜は浮かべた。
その笑みを見ていた環は一瞬にしてサァァァァっと血の気のない真っ青な表情になった。
「ちょっ…何処に行くんですか!?」
痛いと言わんばかりに嫌がりながらも、男である鏡夜の力には叶わず部室の外へと連れ出された。
バタン……
「環先輩、姫を追いかけた方がいいんじゃないですか?」
閉まった扉を見つめて、ハルヒは問いかけた。
その言葉で環の背中を後押ししたように、環は扉へ一直線に駆け出していた。












「鏡夜様!?痛いです、離してください!」
そう言われ、鏡夜はの手を離した。
「こんなところに連れ出して…一体どういうおつもりですか?」
少しだけ1歩後ろに下がりは鏡夜に問いかけた。
その言葉にフッと笑みを浮かべると、中指で眼鏡を押し上げた。
「貴方はお気づきですか?」
「え?」
「嫉妬にまみれた瞳で環を見ている事に。」
「!」
鏡夜の最初の問いには意味が分からず首を傾げたが、続けられた言葉でハッとした。
ハルヒと仲の良い環の姿を見ているのが辛く、一体どんな表情を浮かべていただろうか。
「そして…俺の気持ちに。」
「!?」
自分の事ばかり考えてて…なんて思い返していると、いきなり引かれたのは自身の腕。
いきなりの出来事に対応がつかず、バランスを崩し鏡夜の方へ倒れこんだ。
「や…っ!やめて下さい!」
「鏡夜!何をしている!離れろ!」
ほぼ同時にの悲鳴と環の助けの声が上がった。
「お前に止める権利はないはずだが?」
「なんだと!?」
姫とハルヒの間を行ったり来たりしている環には止める権利はない!」
鏡夜は力強い口調で環に向かって言葉を飛ばした。
確かに、あっちにウロウロこっちにウロウロしている環には止める権利は皆無だった。
「ハルヒは俺の娘だ!娘として好きなだけだ!恋やら愛やらとは違う!」
の事はどうなんだ、環。」
懸命に違うと主張している環に鏡夜は淡々とした口調で問いかけた。
…の事は好きだ…愛している。」
「!」
環の真剣な口調に、はカァァっと顔を紅く染め上げた。
こんな形で告白を聞くことになるとは思って居なかったから。
「ハルヒは…確かに初めて見たときは可愛いと思った。でも、それは家族愛というものであって…」
「もういいです!」
環の懸命な説明にも耳を向けず、は環に思い切り抱きついていた。
瞳に薄っすらと涙を浮かべて、嬉しそうな笑みを浮かべて抱きついた。
「私の事を…好きと、愛していると言ってくれただけで嬉しいです。私も…私もずっと環様が好きでした。」
ギュッと環を抱きしめる腕に力を込めて、懸命に好きと言葉を絞り出した。
「ですので鏡夜様…貴方の気持ちには…」
「俺の気持ちがどうした?俺はただ、貴方の嫉妬の目で環を見ていると経営に影響が出ると思っただけだが?」
「「…は?」」
クルリと鏡夜の方を見て、断りの言葉を述べようとすると鏡夜の黒い笑みと言葉が返ってきた。
さっきの“俺の気持ちに”という言葉は、経営妨害のことだったようだ。
そんなに怖い目で見ていたのだろうか…などとは考えてしまった。
「良かったな、環。」
「…きょ、鏡夜…」
「もう2度と手放すんじゃないぞ?」
「…ああ!」
ポツリと呟きながら鏡夜は部室へと戻る為に来た道を戻り始めた。
環とすれ違う時、手放すなと念を押すように呟き環の返事を聞くとフッと笑みを浮かべた。
「環。今日はこのまま帰っていいぞ。今日は姫と一緒に居てやれ。」
そう言うと返事も聞かずにスタスタと歩き出した鏡夜。
「あっ…ありがとうございます、鏡夜様!!!」
は頬を染め上げたまま、背を向け歩く鏡夜にお礼の言葉を投げ掛けた。
しかし、その言葉に返事も返さずに鏡夜の姿は扉の向こうへと消えていった。
「…好きで居てくれてるとは思わなかった。今までハルヒハルヒと言ってて…ごめんな。」
「…ううん。最後にはちゃんと私を好きと言ってくれました。ですから…構いません。」
環のシュンとした表情と態度、そして謝って来る言葉にはニッコリ微笑み首を横に振った。
確かにハルヒハルヒといい続けていた頃の環はイヤだった
しかし、今はキチンと自身に思いを向けてくれている事実が存在する。
だからこそ気にせずに居られる。
大好きだから、大好きだと分かったから。
環の大好きな自分のままで居よう…とは内心密かに決心した。







.................The end





はい、あとがきあとがき、あとがきっス!

こんな感じのドロドロっとしたようなサラサラっとしたような出来上がりになりました。(何
とりあえずギャグよりほのぼの系に行かせて頂きました。
え?どの辺がほのぼの系かって??
…環とヒロイン2人っきりでの接客時がほのぼの系MAXなトコロですね!
嫉妬が入るとやっぱりドロドロっとする時ありますからねぇ〜
とりあえず、鏡夜とはあんな感じに絡んでみました。
うわ。バッチリ鏡夜と環とハルヒ以外出てきてねー…(笑
えーっと…夢リクして下さったパル様のリク通りに…仕上がっているでしょうか?
そこだけが不安です……↓↓

ええっと…えっと…楽しんで頂けたら幸いです…はい。
という事で、“BBSオンリー17万HITプロジェクト”のリクエストもう1つ解消という事で!
パル様のみお持ち帰りが可能です!






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